仕込み
「騎士団の調査結果、出たわよ」
明け方の報告時間、グラスが報告書を渡してくる。
「…なるほど、こりゃ汚職まみれだな」
目を通した報告書には騎士団の上層部についてまとめられており、特に賄賂がひどかった。
「おいおいマジか、このA級犯罪者集団のリーダーなんか金貨3枚で保釈してんのか!」
グラスとおんなじだな、なんて言ったらぶん殴られた。痛い。
特に目を引いたのは一部の犯罪者の扱いだ。
「すげぇなコレ、保釈金が支払われない、それでいて上からの監視がほぼないC級以下の犯罪者は裏組織に横流ししてんのか。やってること人攫いと変わんねぇな」
「その組織は表向きには宗教団体で、裏では人体実験で神か何かを生み出そうとしてるみたいよ」
「神か。…作れんの?」
「絶対無理ね。出来て悪魔… まぁ良いところ人間の出来損ないよ」
ドライだな、コイツ。
「ちなみにこの件に関してエーデル会長は知ってんの?」
「あのクソ真面目な会長様よ?わざわざ犯罪に手を染めてます!って彼らが自白するわけないし、知ってるとしたらそのまま放置するわけないと思うけど?」
つまり知らないってことだな。
「これさぁ、先輩に全部暴露してこっち陣営に引き込むってどう?」
「確かに、あの戦力はこちらとしても欲しいところではあるわね」
幸いにも先輩とは結構なコネ?みたいなものがある。
「情報が集まり次第彼女をこっち側に引き込み、一気に騎士団の黒い部分を叩いて乗っ取るって作戦はどうだ?」
「分かったわ、あの子にも話を通しておくわ。」
今後の方針は決まった
席を立ち、整理運動に出かける俺にグラスは一言声をかける。
「しかし意外ね。 貴方が重要なポジションの他人を組織に引き込もうだなんて。」
「まぁここから先は世界救済のために手駒は一つでも欲しいからね。」
それに、俺がいつでもどこでもフルパワーで戦えるわけではない。
何かに備えるなら戦力は増強しておくに越した事は無い。
「今日もあの黒コートの男に散々やられたみたいっすねぇ」
「彼はかなりのやり手、私以外が相対したら命はないものと思ったほうが良いですよ」
先日は投げナイフなんておもちゃだったが、今回は剣でぶつかり合った。
結果は見ての通り、一方的にやられ、恥ずかしながら手も足も出なかった。
「しかし、民間人には危害を加えない上、命も奪わないとなると彼の目的は何なんですかねぇ」
「恐らく、警告」
「警告ぅ?」
「この王都に… いえ、この国に良くないことが起こりそうだと警告しているような気がします」
これは私の感でしかないが、昨日の動きは私に稽古をつけているようだった。
そこを踏まえて、これ以上私を鍛える理由なんてそんなに多くないだろう。




