吸血鬼の時間
「さて、ここからは夜の時間だけど貴方の役割は流石に分かるわよね?」
昼、盛大にやらかしてるからか当たりが強いなぁ…
「夜は正体を隠して暴れて警戒を引き、その間にグラスが諜報活動。だろ?」
正体を隠す理由は勿論、表の俺が退学にならない為だとか、正体を探るために時間を費やせたりとか、色々と合理的な理由があるらしい。
「活動の際はこれを使って」
そういって仮面と黒コートを渡された。
「かっこいいコートだ。フードも付いて、裏地は真っ赤なんだな。ちょっと目立たないか?」
「むしろその格好で目立って欲しいのよ。黒と赤のコートで血の魔術だなんて、如何にも吸血鬼な装いでしょう?」
確かに、黒と赤って何故か吸血鬼を連想させる色だな。それに加えて血の魔術なんて使おうものならもう吸血鬼と断定されてもおかしくないレベルだ。
「逆に仮面は無機質過ぎて怖いな」
かっこいいコートとは対照的に、仮面は視界の部分以外は装飾もなく真っ白で不気味という印象を受けた。
「かっこよくなくていいのよ、むしろ正体を隠蔽したいんだからできるだけ不気味でいなさい。」
そんなもんか。しかしこれ、夜なのも相まってちびっこが見たら泣くぞ…?
「最後に必要ないと思うけど、一応確認ね。一般人には…」
「手を出さない。あくまで治安を乱す悪人のみを成敗、だろ?」
そう、俺たちの目的は世界を救うこと。
罪もない市民を巻き込んで何が世界救済か。
RPGの勇者は一般市民の家のタンスとか超漁ってるけどな!
「ついでに困ってる子を助けて脳を破壊して組織に取り込みなさい」
「脳破壊なんて言葉どこから覚えてきたんだよ!?」
と言う感じで夜の時間は正体不明の仮面吸血鬼として暗躍することになった。
なんか居たよな、眷属?のコウモリ?で変身する日曜朝のヒーロー。
残念ながら仮面が怖すぎてアレとは全くの別物なんだが。
と考えながら俺は建物の上から王都を一望していた。
この世界は科学系が発達してないせいなのか、建物の高さは精々3階程度、高くても5階が限度って感じだ。
耐震構造にも不安があるが、それに関しては日本が異常すぎるという方が正しくはある。
「キャー!誰かー!」
おっと、助けを呼ぶ声がする!!
「へへへ、命が惜しくば荷物全て置いていきなぁ!」
駆けつけた先では盗賊がいつものように女性の身ぐるみを剥ごうとしていた。
さて、どこから突っ込んだものか。
女性が一人、夜に出歩いていることとか、この世界の盗賊は毎回同じパターンでしか襲撃できないのかとか、そもそも王都内で襲撃のリスクを考えてないのかとか。
しかもコイツ警戒心が全然ないな、こっちに気付いてないみたいだから手刀で気絶させた。
あとは騎士団に突き出すだけだが、吸血鬼の力を見せつけないといけなかったな。
困ったな、グラシリアなら影での拘束も出来るんだろうけど血で拘束ってどうすりゃいいんだ。
血の杭でもぶっ刺そうかと思ったけど、いくら盗賊とはいえあんまり傷つけると逆にこっちがしょっ引かれるかな?
なんて思ってたら助けた女性が突然
「ギャー!誰か助けて!!」
なんて叫び出す。おいおい、今助けたばかりじゃないか。
「何事ですか!」
おっと、男女の騎士団が遂に駆けつけてきた。あとは彼らに任せて俺は退散しようかな、なんて考えていたんだが…
「貴方、付いてきて貰えますか?」
女性の騎士が剣を抜き、威圧しながら話しかけてきた。
冗談じゃねぇ!連行されるようなことはしてないし、黙って連れていかれたらグラスに何て言われるか分かったもんじゃない!!
そう思った俺はダッシュでその場から立ち去ることにした。




