爆速で喧嘩を売る
「どうも、担任のタンニンです。今年一年よろしくおねがいします」
式の後、教室に戻り軽い自己紹介をしていた。
グラスやデネブとは別れたが、多分あっちは二人で合流しているはず。
なんでそんなことが分かるかって?
「皆さんご存じかと思いますが、シエル・カサブランカと申します。至らないところも御座いますが今年一年の間、よろしくおねがいしますね」
俺が要注意人物と同じクラスに割り振られているからだ。
多分全てグラスが仕組んだことなんだろうが、本当にどこまで優秀さを見せつければ気が済むのやら…
しかし話は聞いていたが周りは女子だらけだ。7割どころか9割は女子なんじゃないかな。
「俺はトドロキ、最強の雷使いとしてこの国に君臨する男なんでよろしく!」
なるほど。男子Aはトドロキ、雷使いか。確かデネブも雷使いだって言ってたな。
「拙者はハンゾー、炎使いで御座る」
口調は忍者かもしれないが、体系が太ってるせいでオタクにしか見えんぞハンゾー…
「次、ゼロ君」
おっと、もう俺の番か。
「俺はゼロ。そうだな、俺は……」
確か命令は目立て、だったな…
「俺はいずれ世界を救う男になるつもりだ、よろしく!!!」
よし、ファーストミッション・コンプリート
だと思ったんだが、直後に周りからブーイングが飛んでくる。
おかしいな、俺としてはいたって真面目…… いや嘘だ、半分はボケたがそこまでブーイングが来るとは思わなかった。
「皆さん落ち着いて。ゼロさんも、ここは神聖な学び舎ですよ?ふざけないでください。」
流石新入生代表、早速仕切り場を落ち着かせようとしてる。
しかし相手が悪かったな。今の俺はとにかく目立つ事、なんなら特にお前の記憶に残る行動だったら幾らでもするつもりだ。
「いいね、学級委員長みたいだ。流石は新入生代表。しかし俺を止めたいのなら力を示すことだな!」
俺は高らかに宣言する。
「どうせこの後は解散なんだろう?今から体育館を使って一試合してみないか?」
「馬鹿々々しい、誰がそんな事「逃げるのか?」
決まった、最強の一撃だ。この煽りから逃れられた奴を俺は見たことがない。
歳のくせに達観しすぎてるグラスには通用しないんだろうが。
「表に出なさい、後悔させてやるわ!!!」
あぁーこの王女様多分ちょろいわー
「今謝れば皆の前で恥をかくのだけは免れるけど、如何かしら?」
「逆に聞くが、王族の名に泥を塗る覚悟は出来てるか?」
「覚悟はよろしいようですね!!!!」
おいおい、怒りは思考を鈍くするぜ?
まぁ敵に塩を送る理由もないから言いはしないけど。
彼女は地面を蹴り、真っすぐに突っ込んでくる。
「単調な動きだがいい踏み込みだ」
わざわざ喰らったり防御してやる義理もない、そのまま受け流す。
「その動き、読めてますよ!」
避けたところに切り返し。流石に無策では突っ込んでこないか。
一歩後ろに下がり攻撃を回避する。
「下がりましたね!」
下がったのを好機と見たのか、そのまま怒涛の連撃でジワジワと押し込んでくる。
「見て、やっぱりシエル様ってかなり強いみたいよ」
「あの洗練された動き、無駄が一切ないわ!」
無駄、結構あるように見えるんだけどなぁ。
「あの男もずっと防戦一方だし、このまま勝っちゃうんじゃない?」
「文字通り手も足も出てないもんね!」
出してないだけなんだけどなぁ。
って言うかいつの間にかギャラリーにクラス以外の人間が混ざり始めてるな。
いやな予感が………… むっ、急に寒気が!??
「…………」
グ ラ シ リ ア 様 が 見 て る ! ! !
漏れてます!怒りで影の魔術が漏れてますグラシリア様!!!
いや待て、まだ怒られると限ったわけじゃない!
観客に紛れているグラシリアを盗み見、読唇術で言葉を読み取る。
あ、と、で、せ、っ、き、ょ、う、ね…………
どうやら逃げ場はないらしい。
「残念だが、非常に残念だが急用が出来た」
それまで防戦一方に見せかけていたが一転、シエルの踏み込みに合わせてこちらも大きく踏み込む。
そして相手より深く下に潜り込み、そのまま足払いの要領で足を持ち上げ、投げ捨てる。
「へ?」
勢いを殺しきれない彼女は結果一回転、その勢いで背中から地面に落下。
まるで魔法を掛けられたかのように場は静まり返ったが、俺はさっさとその場を後にした。
「いくら目立て、とはいっても初日からいきなり行動を起こしすぎとは思わなかったの?」
俺はその後、寮に戻ったときに待ち構えていたグラシリアから説教を受けていた。
「違うんです、要注意人物と手っ取り早くコンタクトを取るならこうしたほうが速いかなって」
「それで悪印象を与えてたら元も子もないと思わなかったの?」
ぐうの音も出ねぇ。
「全く… こんなことならあの子の監視よりも貴方の監視をしたほうが良かったかもしれないわね…」
あれ以下の評価は泣けてくるぞ!?




