時は流れて
「それじゃあ… 行ってきます!!」
ゼロ歴12年、4の月。
遂に俺も学園へと通う時が来た。
「ウゥム、やはり心配だ。頼むから問題を起こして退学、というのだけはやめてくれよ?」
「お任せください旦那様、私が必ず彼を退学にだけはさせません!」
「グラシリアがそういうのなら任せましょう、あなた?」
両親に見送られながら俺は馬車に乗り込む。
自動車を普及させたら売れそうだな、なんて考えながら。
馬車には大三角の一角ことデネブが既に乗っていた。
「なんで俺がテメェと同じ学園に通わねぇとならないんだ…」
男嫌いな彼女的には不満しかないようだ。
「仕方ないじゃない、他の二人に比べてあなたが一番心配なんだもの」
グラス的にも彼女の男嫌いは不味いと認識してるらしい。
ちなみに他の二人は別れて別の国に潜入、調査をしてもらっている。
デネブも調査に出かけてもらう訳なんだが、彼女の性格がやばすぎて我々と同じ国の配属となったわけだ。
「彼女は良いのよ、一応信頼してるから。問題は貴方よ。」
グラスがこっちに向き直って話を始める。
「学園での立ち振る舞いを確認しておくわ。はいどうぞ」
「学園ではできるだけ目立つ、禁忌の魔術は使わない、退学にもなっちゃダメ」
「よくできました」
俺の役割はグラスが影で動きやすいように表で激しく動き回るヘイト役… いや、グラスが影だから俺はある意味太陽役だ。
で、退学になっちゃダメってのは言わずもがな。
問題は禁忌の魔術だ。あれから調べたがやはり禁忌の魔術は忌み嫌われているようで、俺の周辺だけ謎に受け入れられているらしい。
女神さまの祝福か何かかな?
「もし魔力を使う時は属性が発現していないフリをしなさい」
うーん、ごり押しスタイルは嫌いじゃない。
何て雑談してると急に馬車が止まる。
慣性の法則で馬車内はゴチャゴチャだが、男の意地として女性陣に荷物が激突することだけは避けた。
「おのれ慣性め…」
「難しいこと知ってるのね」
何事かと思い外に出ると、盗賊らしき奴らが道を塞いでいた。
「ヒャッハー!命が惜しくば荷物を全て置いていくんだな!!」
「あわわ、どうしましょう皆様!」
可愛そうな運転手だ、まさかこのタイミングで盗賊に襲われるとは。
それに加えてさらに可愛そうなのは盗賊だ。襲撃したのが俺たち以外だったら成功してただろうに。
「じゃあちょっと気晴らしとしばらくお別れになる禁忌で遊んでくるわ」
「ちょっと、これから入学式なんだから返り血… は自分の魔術で染み抜きできるでしょうし、制服のしわだけ気を付けなさいよ?」
こんな気軽に処される盗賊さんちょっと哀れだな。命だけは助けてやろう。
それはそれとして久々の戦闘はちょっと楽しかった。
「えー皆様、王都魔術学園への御入学おめでとうございます」
学園での入学祝を聞き、ようやくスタートラインに立った実感がわいてくる。
ちなみに今演説してるのは今年卒業、その後は騎士団の部隊長へとエスカレーターみたいに出世が決まってる稀代の英雄、付いた異名は【無敗の終剣】エーデル・フラム。
(彼女は来年にも国の重要なポジションに付く人材よ。上手く口説いて取り入れば実質的な政権を握れ、一気に戦争終結の足掛かりになるわ、頑張ってね)
隣でグラスが耳打ちしてくる。
(お前それでいいんか!愛しのゼロ様が他の女とくっついても!!)
(男ならハーレム作るとか言いなさいよ)
ごめん愛しのゼロ様をまずは否定して?恥ずかしくて顔から火が出そう。
「それでは新入生代表、シエル・カサブランカに挨拶をしてもらいます」
「!!?」
今の瞬間、俺の中で二つの衝撃が同時に発生した。
一つ目はこの国の第二王女であるシエル氏が同学年として入学してきたこと。
そしてもう一つが新入生代表、という評価を貰っていたことだ。
「新入生代表と言えば俺だろうがよォ!!」
と、思わず抗議に立ち上がろうとしたがそこはグラスに抑えられた。
(抑えなさい。新入生代表が王族を差し置いて、しかもよりによって男だなんて許されないと判断されてもみ消されたのよ)
確かに、この女尊男卑的な世界なら仕方なくはあるか。
(それにこれは好都合、次の試験にいきなり学年1位を奪還して見なさい?いい意味で目立てるわよ?)
その言葉を聞き、俺はそっと椅子に座りなおした。
ふふふ見てろよエーデル・フラムにシエル・カサブランカ、今からお前らの約束された出世ルートをぶち壊してやるからな!




