オルフェウス
――詩人オルフェウスに捧げる。
その端から端までの死を凝視られつつ女人、魂をもつひと
春の夜の竪琴の音はいっせいに火魂をほどいてはどこへいく
広広とあなたの口は呼吸して顔から子でも産むかのような
愛をうたう?(できるものなら)青銅のベルの冷たい朝がくるまで
冥府への道を知ること羨ましくなだらかに、なだらかに現身
地上から付いて来たのか舟底に昏く溢れる臭気の水は
夕がらすの声も届かず霧めいて亡者独りの影のしずけさ
分け入ろうと、引き返そうと、あなたから望まれなさい木立の丘で
それでも詩は救いになるか? 眠れない冥府の王の自我の減衰
残るのは風景だろう。素はだかの声をかそかに吸うヒヤシンス
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公式企画「俳人・歌人になろう!2023」参加作品です。
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