第73話 神子がダンジョンを復活させた後の話
俺はアマタからの電話に仰天した。遺跡の中で生徒会長が悪事を働いている。そこ知らせを聞いて問題の遺跡へ訪れた。
しかしそこに待ち受けていたのは予想外の出来事だった。
「よう、エイルじゃないか。丁度私達は帰るところだ。凄いニュースだぞ。」
一年生を連れて嫌な笑みを浮かべている。
「ニュースだと?問題行動でもしたんじゃねぇのか?」
「問題行動?なんだよ。私は生徒会長自らオリエンテーションしてただけだ。でももう不要だ。」
「不要?」
「地震が起こったと思ったらこの遺跡、ダンジョンへと復活しやがった。私は良い第一発見者だ。」
「ダンジョン!?おい、帰って来た一年はこれで以上か?」
「いや。知らんな。」
アマタや三科さんが中にいるはずだ。
「ふざけるな!!」
「じゃあな。」
俺は薬師寺 澪にいろいろな思いが込み上げて来たが、今はアマタ達の安否が心配だ。俺はダンジョンの奥地へと足を踏み込んでいく。
ダンジョンに単身乗り込んで行くのは馬鹿だと知ってる。しかしそれ以上にアマタが心配だったのだ。
ボスモンスターからのドロップアイテムは3つ
俊敏を20上げるマジックアイテム瞬速の腕輪だ。
エンペラーコンガの魔石で出来たカード。
そしてエンペラーコンガの素材達、毛皮、牙、骨、尻尾である。
宝箱を開けてドロップアイテムをゲットする感覚。まるで異世界のダンジョン攻略の時みたいな感覚になる。
「何よこれ。まるで生きたダンジョンよ!!」
帰り道そう言って新井さんが悲鳴をあげている。チユの魔法がない以上スキルの限りを尽くして敵を殲滅した。
唯一の救いが、三科さんが多少戦えるようになっていた事だ。レッサーコンガ程度なら遅れを取らない。十分に成長している。
そしてビックリする事に無限に湧いて出てくるモンスターを倒すと魔石を落とすのだ。
たまにアイテムを落とす。まさにダンジョン復活といえる。
(アマタさん。このダンジョンの奥にオリジンと呼ばれる大精霊が住んでいました。)
(チユが助けてあげた精霊?)
(はい。オリジンは言います。ダンジョンを活動させるには大量の魔力が必要になる。しかしこの世界には魔力が少ないと。だからオリジンの魔力は枯渇し、ダンジョンに魔力を供給する事が出来なくなりました。)
(そうか。)
(なので私が契約を結び、オリジンに永久に魔力を供給する約束を取り付けました。オリジンはこのダンジョンを守る事が望みだったから叶えてあげました。)
(それってチユがずっと魔法が使えないって事だよな。)
(はい。ずっと欠乏症で頭がガンガンします。)
(健康的にも大丈夫か?)
(大丈夫だと思います。)
(頼む、無茶する時は俺に一言相談してくれ。)
(アマタさんだってチユに相談しないくせに。)
(それは!!・・・そうだけど。)
つまり、チユの魔力を吸ってこのダンジョンは生き続けるのだ。でもそれってどうなんだろう。
心配事が増えた一件だった。
「ジョーカー、しんどそうね。この辺の敵にも慣れて来たし見ててよ。」
真気解放をしようにも頭が痛すぎて無理。魔法ストックも気が付いたらゼロになっていた。チユと俺の魔力は共有のものだ。だからチユが魔力欠乏症なら俺も当然欠乏症なのだ。頭痛がする。
「愛佳、悪いな。」
「名前・・・。もう隠す気ないのかしら?」
と三科さんに呆れられた。
「ちょっと、私も戦闘参加するわよ。アンタなんかに遅れを取ってたまりませんもの。」
対抗心を燃やす新井さん。愛用の剣を振り上げレッサーコンガに向かって相手取る。
立ち回り的には新井さんはアタッカーか?
俺は護りに徹する動きが多いが、新井さんの動きは最前線で剣を駆使してパワーで押し切るタイプの戦闘スタイルだ。
重戦士。ウォーリアともいう。
そのタイプにしてはちょっと細身な感じがする。現に剣の腹で敵の攻撃をガードしている。
「新井さんはもっと大きめの剣を振り回せるようになろうか。その剣だと、攻撃を受け止めきれない。」
「え!?私にも指南してくれるのかしら?」
「どうだろうな。」
かかしに放ったダメージ5000の攻撃も剣に備え付けられている魔導具であった。
新井さんが1匹倒す間に三科さんは5体の敵を葬る。
「私だって!!」
新井さんが三科さんに負けないよう、敵の集団に飛び込んでいく。
「馬鹿!!」
Dランクモンスターは弱い装備のまま倒せる相手じゃない。ポジション取りを間違えたら・・・
2体のレッサーコンガに囲まれて新井さんのガードが崩れる。そのままボディーブローが決まる。
吹き飛ばされる新井さん。
<リフレクター、残HP20%>
「私、こんなに弱かったけ?」
レッサーコンガはお決まりのワン•ツー・フィニッシュの構えを取っている。これは終わる。
俺は滑り込んでレッサーコンガを斬り捨てる。
新井さんを片手で抱き抱えると、
「土砂流!!」
スキルで3体まとめて一掃するのだった。
「なんでそんな軽々と倒して行くのかしら!?武器の振る姿が見えないし。」
と三科さんは呟く。
そんな事より新井さんだ。
「なんでわざと敵の集団に飛び込んで行った?死ぬかもしれないって思わなかったのか?」
「私・・・。」
「無茶はするな。自分のペースを崩さないように戦え。」
「はい。ごめんなさい。」
そのやりとりを見ながら三科さんの目が鋭い。
「いいな。私も教えてよ。」
「教えてるって。」
「手取り足取り。」
(アマタさん。女の子には優しいお願いしますよ。)
チユの声が聞こえる。
「わかった、三科さん、鞭の基本戦術を見せるから覚えてくれ。その後、新井さんにはクレイモアの基本戦術を見せる。いいな。」
「やったー。ありがとう!!」
「クレイモア?」
「大剣の事だ。」
「大剣ですって!?」
立ち回り的に大剣が合ってると思ってたんだけど・・・。
一通り役回りを見せて見る。
「なるほど、鞭は間合いに入られないように上手く立ち回る必要があるのね。そのパターンは何千通り。」
「クレイモアも何千通りのパターンがあるわよ。まさか、こんなにも流れるようなコンボがあるなんて。」
クレイモアはいつでもガードに移れるよう体勢が崩れてはダメだ。それを理解して、斬り、凪ぎ、背で打撃、突き、切り上げ、ジャンプ斬り。いろんな組み合わせで敵を薙ぎ倒す。
基本的に火力重視なので魔導具発動して爆炎斬でも放ってくれれば良い。
そこへ、エイルがやって来た。
「ジョーカーとクイーン?」
エイルは警戒している。
「エイル。よく単身、ここに辿りつけたな。」
そう俺が言うと、緊張とか心配とか口に含んだいろんなものを「ぶぅふう!!」と吹き出すように吐き出す。
「おいおい。その声・・・ジョーカーの正体がまさか!!」
そういうエイルは明らかに怒っている。まず、新井さんに雨宮アマタって事は伏せておきたい。俺は新井さんをチラリと見て言った。
「この姿の時は1人の女の子、ジョーカーって呼んでくれ。」
と言うとエイルは新井さんをチラリと見て察した。面倒くさそうな顔をするも、
「わかった。尊重しよう。」
と言ってくれる優しい奴だ。
「ありがとう。」
「まず質問。ジョーカー、お前何をやった?」
「何もしてない。」
「じゃあ、この遺跡の中はなんでリアルモンスターに溢れてる?まるでダンジョンが復活したみたいなんだが。」
「さぁ、知らないなぁ。」
「嘘つけ!目が泳いでるぞ。」
「気がついたら遺跡が復活したんだ。」
「えっと、クイーン?」
話を振られ、三科さんは堂々と答える。
「ジョーカーはダンジョンコアを復活させて、ダンジョンを蘇生させました。」
「はぁ!?」
「その際にポーションのようなものを振りかけてました。」
「えっ!?あれを・・・。いや、聞いた俺が馬鹿だった。」
「嘘みたいな本当の話よ。」
「いやいやいや。えっ!?クイーンが嘘つくとは思えないし・・・。」
俺を睨みながらエイルは続ける。
「お前といるとトラブルが絶えないな。」




