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第68話 神子のダンジョン内無双

「雨宮君、私、本当に似合ってる?」


 本日何回目の確認かってぐらいしつこく聞いている。

 はっきり言っていい。別人だ。言い方を選ばなければ、田舎の芋娘が帝都で垢抜けてパリコレデビューぐらいのギャップがある。

 ドレスアップの魔法の威力も凄いのだが、メイクアップの魔法って人にやってあげても強力に作用するんだなって思う。

 そばかすとかニキビとか全く無くなってるし、普通になんでもないショートヘアーがドレスを引き立てるようにお洒落にセットされている。


「バッチリだ。まるで別人だよ。」


「鏡が欲しいよ。雨宮君も変装バッチリだね。これがパーティ会場ではなくダンジョンの奥地にいるって状況が不思議すぎるんだけど。」


「そうだな。同感だ。一つ言わせてもらえば、その眼鏡がナンセンスかな。」


チユがその服と眼鏡はナンセンスとうるさいので俺は眼鏡を奪った。


「え?ちょっと返してよ!!ド近眼なのに・・・。あれ?見える。」

「眼鏡買うならもう少し似合うオシャレな眼鏡を買おうか。それと、その服着てる時は視力強化のスキルが付いている。眼鏡は不要だ。」

「うん。眼鏡取ったの何年振りだろ。」


 三科さんがなんでこんなに心配になっているかといえば、皆の視線である。


 下層にいる、人間達の気配。これを辿って探索していると1年A組の生徒達に遭遇している。

 しかもどの状況もみんなオークにどこかに運ばれているような状況である。

 俺が助けるついでにオーク共を一撃のもと両断するとビックリしたように俺を見るのだ。ついでに三科も。

 男性は間違いなく鼻の下が伸びる。女性でも顔を真っ赤にしてモジモジとした反応になる。

 魅了しまくっているのだ。俺と三科さんのビジュアルに。


 「なぜダンジョンの奥地に美女が2人いるの?」って突っ込みたくなるのは当然だろう。

 「天使が舞い降りた!!」ってアホな発言をする生徒もいた。三科さんが「なんでやねん!!」って殴って黙らせたけど。


 男の子からも女の子からも憧れの眼差しで見られる事に慣れてない三科さんは正直言って自分が今どんな姿なのか疑問に思っている。


 生徒達を助けるたびにそんな質問をされるのだ。

 かなり嬉しそう。というか癖になってないか!?


 そして助けた数も5班分になる。どのオーク達も巣を探してウロウロしている状況に俺たちが横から奇襲する形で終わっている。


 助けた生徒達は、引率の先生に引き渡す。


「君たち名前は?」


 さすがに5回目になると顔を覚えられてそんな質問をされたのだが、


「2.5次元ガールズです。」


 三科さんがユーモアたっぷりの返答。


「ここにいるって事はこの学校の生徒で1年だよね。こんな強い逸材がいたなんて・・・名前覚えないと。」


「私はダイヤのクイーンです。」

「隣の美女は?」

「隣の黒いゴスロリファッションの人がキン・・・いや、この強さはジョーカーよね。」


 なんでトランプなんだよ!!


「いや、あだ名じゃなくって、本名。」


「ジョーカー!!逃げましょう!!本名聞かれるなんて破廉恥だわ!!退散退散!!」


 三科さんはパワードスーツの性能を活かして全力で逃げ出したのだ。三科さん。破廉恥の使い方、間違ってる。


 そんなやり取りが先程まで繰り広げられていた。


 オークの話に戻そう。

 オークって巣に持ち帰り、子種を孕ます習性がある。男性でもオモチャにされるって聞いてるから負けたみんなには恐怖の対象でしか無いのだけど、持ち帰る習性が吉と出た。死者はゼロなのだ。


 なんでオーク達が巣を探してウロウロ回っていたかといえば・・・オークの巣は、下層に降り立ってすぐに俺が殲滅した。

 まだ被害者が居なかった為良かったが、オークの大人、子ども、合わせて四十匹が俺に襲いかかってくる。

 スキル、土砂流を発動し殲滅し、巣を埋めておいた。だからオークの巣は存在しない為、それを知らないオーク達はウロウロして回っていたのだし、そのおかげで生徒達の命は守られた。


 みんなハッピーだ。


 そして、ど本命が最深部にある。


<ダンジョンボスと思われる強敵と、薬師寺澪と思われる個体反応が交戦中。>


 アマタイルのソナーにより、この暗いダンジョン内でも敵味方、誰がどこに居るのか一目瞭然で分かるのだ。


(なんで生徒会長がこのダンジョンにいるの?)


 疑問に思うチユである。

 でも真っ先に頭に思い浮かぶのは、今回、やたらと出現する敵が強かった。これは誰かの策略に違いないと思っていた。そんな中、薬師寺澪の存在だ。


 犯人は現場に戻るという。


 奴の仕業に違いないのだろう。

 でもなんでわざわざダンジョンボスを攻略しに?よく分からないな。

 というか、どんな戦いをするのか少し気になっているのも事実。


「三科さん。ダンジョンボス倒すの手伝って貰える?」


「え?ダンジョンボス!?私、怖いわ。」


「大丈夫。見てるだけでいいから。」


「そうよね。この異常事態、誰かが収拾付けないとね。」


 俺たちは鍾乳洞を抜け、1番の地底を目指した。




<気配遮断発動!!>


 この魔法を使ったのは、2年、3年とやたらすれ違うからだ。さすがにすれ違うたびに影に隠れるのはしんどい。


 なら魔法でステルス使った方が良いのでは?という発想だ。


<ステルスな訳ではないのですが・・・>


 でもどの先輩達もリフレクターの残HPがゼロになっている。よほどの大乱闘なのだろう。


 狭い通路を通り、開けた空間に出た。


「三科さんは通路から見ててくれ。」


「待って、生徒会長がいる事にはビックリだけどさ。助けるの?」


「分からない。何かあったらなんでも出来る位置に移動したい。」


「このレベルのモンスターがこんなにいっぱいいるのに!?」


「このレベルって、せいぜいCランクだろ。」


 オルドとどっちが強いって話だ。

 オルドはBランク上位の実力はある。アーティファクトが無ければ負けていた。


 ボスはゴブリンジェネラルだった。ゴブリンキングがBランクであるならその一つ下のランクCランクに属している。正直言って敵では無い。


 でも普通の人の感覚なら生身の身体で戦うのは正直言ってしんどいって話。アバターなら別人。

 後、ボスクラスになると仲間を召喚する。


 まさに今、ジェネラルが雄叫びを上げた。

 呼び寄せるモンスターは10、20どころじゃない。

 100体だ。それもダンジョン特有の、壁から沸いて出てくるパターン。

 伏兵ならあからじめ対策出来るのだが、これには対策は出来ない。

 スキル雄叫びを!失神スキルで中断させる以外に対策はない。さらに最悪なことに、ゴブリンジェネラルがもう一体出て来たでは無いか。


 生徒会長と、幹部達5人はしばらく話し合った後、幹部5人は逃げ出した。


<薬師寺澪はどうやらまだスキルを隠してます。それを発揮出来ないから逃げろと言ったらしいです。>


 どう考えても、「ここは俺が食い止める!!」状態ではないか。

 一瞬、俺はウロボロス戦を思い出した。

 俺は何分もウロボロスの攻撃を食い止めた。レイモンド達の逃走時間を稼ぐために。


 あの時はテマルが共に戦ってくれた。寂しくなかったし結果勝てた。

 あの時もし俺1人残されて戦っていたのなら・・・そう考えると絶望感の何ものでもない。

 なんか嫌だな・・・。


 生徒会長、自業自得だって思うけどさ。なんか見殺しって嫌だな。


(アマタさん。優しいのですね。)


(チユ、暴れるぞ。)


(はい、わかってましたよ。シルフィード行きます。)


 来い、崩剣ディアブロス!!真気収束!!


「グラビトン。」


 スキル名を告げた。


 天井に密集していたタランチュが地面へと落下。

 更には身動きを封じている。


 シルフィードの効果で、竜巻が俺を包み込んでいる。俺はただ歩くだけでモンスター達を即死させている。


「誰だ!?」


 生徒会長は振り向かない。だが気配を感じて声を掛けた。


 正直に名乗るつもりは無い。


「2.5次元シスターズのジョーカーです。この異常事態、あなたの仕業ですよね。どうしてこんな事を?」


<マスター、三科様の言葉を借りるなら2.5次元ガールズですよ。オリジナルがすごい。>


 どっちでもいいわ!!


「答える義務は無い。」


 一体のゴブリンジェネラルはボロボロであり、生徒会長と対峙している。鍔迫り合いの最中である。

 だが、もう一体のゴブリンジェネラルが大きな斧を構えて生徒会長に、襲いかかる。


 3メートルの巨体が軽々と空を飛ぶもんだ。


「なっ!!」


<結界魔法発動しました!!>


 壁に阻まれたノーダメージのゴブリンジェネラルは俺の方向に転がってくる。体制を整えながら俺に斬撃を加えて来るが、


「・・・解放!!」


 真気解放!!それをスキル絶対切断を加えて斬る!!


 斧ごと、一刀両断にした。


 一瞬で魔石に変わる。


「なんだ、そのデタラメな力は!?あの鉄壁の装甲を誇るゴブリンの将軍が、ワンパンだと!?」


「手助けはいるか?」


「いらん!!コイツは私の獲物だ。」


「強がりを・・・。わかった。俺はそれ以外を一掃する。マジッククイーバー」


 ×5だ。

 その魔法の矢が25本。いつもなら、空中にただ浮遊しているのだが今回は・・・シルフィードの竜巻に巻き込まれるように、一定の方向にぐるぐると回っている。


「吹き荒れろ!!」


 と一言掛けるとマジッククイーバーは縦横無尽に飛び回った。


 いつもと違う所は、どんなに遠くへ飛んでいこうとも必ずモンスターを貫き、台風の目に戻って来る事。


 以前はこんな組み合わせは出来なかった。


 シルフィードとブレスでチユの要領はいっぱいいっぱいなのだ。だが、ブレスが要らない分、魔法のストックに回せる為、今回見たいな合体技が現れたのだ。


「ハッハッハ!!私はなんてものを見せられてるんだ!?なんか劣等感を感じるなんて久しぶりの感覚だな!!」


「笑ってないで早く倒せ。」


 と思ったらゴブリンジェネラルが雄叫びを上げた。


 地面から、ゴブリンウォーリア、オーク、レッドウルフ、スケルトン・エースが現れる。そして・・・ゴブリンジェネラル1体追加。


 今回は上からのモンスターは無し。


「生徒会長さん、ちょっと失礼。重力操!!」


 今ので重力操がディレイになった。クールタイム待ちとなる。


 浮かすのは生徒会長と、対峙するゴブリンジェネラル。


 宙に浮かして俺も飛ぶ。


 地面に向けて、崩剣ディアブロスを砲撃モードにし・・・


「ニュートンカノン!!」


 精一杯拡散するように遥か上空からスキルをぶっ放す!!


「空中戦かっ!!戦いずらいわ!!」


 と言いながら、生徒会長の剣がまるで黒く形を変え、ゴブリンジェネラルの頭に噛み付いた。

 何のスキルだろうと思いながら・・・意識を目の前に戻す。


 元気なゴブリンジェネラルが、ニュートンカノンを回避して、俺を無視してジャンプ。生徒会長に切り掛かってくる。


 シルフィードの風の壁を蹴りながら接近、


「ディザスター!!」


 剣を振り抜いた!!


 ぐしゃぐしゃに切り刻まれてゴブリンジェネラルは魔石に変わる。


 そしてまた、ゴブリンジェネラルの雄叫びが・・・


「さぁ、ジョーカー、どう戦う?」


「遊んでるだろ。遊んでるんだな薬師寺さん。」


「馬鹿いえ。私の獲物も残りHP5%だ。後少し。」


<シルフィードを発動しました。>


 もう一度同じ技を使う。そして


「イグニッション!!」


 炎の竜巻が吹き荒れた。


 俺の周囲の敵だけ倒す。


「マジッククイーバー!!」


 後は、時間稼ぎだ。と思ったら勝手に矢は、モンスターを殲滅していく。


 モンスターがゼロになったらまた・・・モンスターを召喚される。

 案の定、ゴブリンジェネラルは雄叫びを上げる。


「はっはっ!!これは傑作だ。沸き殺しというハメ技か?」


「うっさい!!そろそろ飽きたわ!!」


 俺は死にかけのゴブリンジェネラルの顎をハイキック!!

 ゴブリンジェネラルは舌を噛み、1秒失神、スキルストップ。


「失神スキルか。芸達者だな。雷斬!!」


 生徒会長の剣か稲妻が走り、ゴブリンジェネラルにとどめを刺した。


「いや、これはただの蹴り・・・」


「ジョーカー!!先生達が集まってる!!逃げるよ!!」


 三科さんの声を聞いた。


「すぐ行く!!というか逃げる必要ある!?」


「変装がバレちゃう。」


「確かにバレるの恥ずかしいけど、やましい事はしてないからな!!」


「知ってる!!」


 俺たちは気配遮断を発動し、ダンジョンを逆走。

 

 ダンジョン内に負傷者がいないかどうか確認しながら帰るのであった。

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