第64話 神子は三科さんのバイト先にお邪魔する
今日は土曜日、本来休みの筈だが、エイルから学校に呼び出される。
「なんで学校待ち合わせで私服なんだよ。」
「いいでしょう?休みなんだし。」
「風紀委員の活動って言っただろ?普通制服じゃないか?」
「そうかな?次から気を付けるね。」
「それで、三科さんは?」
「家に呼びに行ったら不在だった。アルバイトに行ってるって。」
「おい待て、あの子まだ15歳だろ!?ダメだろ!?どんなアルバイトだ!?」
「さあ?」
「で、アマタ、お前・・・なんで女装なんだよ。メイク完璧に決めて来てさ、目立ちまくりだろ!!」
これは完全にチユのせいだ。朝起きて、休みと知って、エイルと会うって言ったら変なスイッチ入ってしまって、部屋の中物色した結果、こうなった。
「そうかな?」
「そうなんだよ!!」
学校の部活動の先輩達から
「あの可愛い子誰かな?」
「エイルの彼女か?羨ましい。」
「他校の生徒かな。見ない顔だし。」
なんて注目を浴びている。
「アマタ、変装って言う観点から見たら100点満点だけどな。」
「エイルありがとう!!」
「褒めてねぇよ!!というか、三科さん探すぞ。あの子に最低限自分の身を守れるようになってもらわないと困る。」
「アルバイト先ならお母さんから教えて貰ったよ。行こう!!」
「知ってるなら連れて来てくれ。バイト終わる時間に待ち合わせでも良かったじゃねぇかよ。」
と言ってチユはエイルを連れ出して街に繰り出すのだった。
とあるカフェ、突入する俺たち。
エイルを見て固まった三科さん。我先にと俺たちの元に駆け寄り席へ案内する。
「エイル先輩。昨日はどうもありがとうございます。ここで働いてる事は、学校の皆には内緒でお願いします。」
「やはり学校の許可得てなかったのか。」
三科さんは耳元で囁くような小声になって・・・
「はい。後、私の年齢の事はバイト先の皆には秘密でお願いします。」
「わかってる。」
「話が早くて助かります。本当に可愛い彼女さんですね。」
と俺を見て微笑む三科さん。
やはり、俺をアマタと認識していない様子だ。
チユは笑顔で手を振ってみた。
釣られて笑顔で手を振り返る三科さん。これ、なんの時間!?
「三科さん。コイツ誰だか分からないか?」
「誰って・・・私の知ってる人?ま、まさか・・・生徒会長、薬師寺 澪!?」
「じゃねぇよ。アマタだよアマタ。」
「苗字は?」
「雨宮・・・。」
「ぶぅふ!!!!!」
思わず吹き出してしまった三科さん。バイト仲間から注目が集まる。
「いや、誰だってそんな反応になる。変装完璧すぎるだろ!?」
「え!?嘘、え!?どうなってるの!?毛、全剃り!?というか性転換手術した!?こんな肌露出して変装完璧って何!?普通変装って肌隠すでしょう!?というかセクシーすぎる!!肌艶どうなってるの!?女の敵でしょう!?」
「頑張った。」
「雨宮君、頑張ったで済むレベルじゃないわよ。」
「三科さん、今日バイト何時終わり?」
「えっと3時。」
「ちょっといろいろ伝えないといけない事があるから後で連絡するね。」
「伝えたい事!?まだあるの!?実は女装が趣味なんですって事以上にビックリする事はないと思うけど。え?もっと凄いカミングアウト!?」
「昨日のLINEの事。」
「ああ!!それね。確かに重要だわ。目を通してるから知ってるわ。エイル先輩までいるって事は、風紀委員のメイン活動だよね。わかった。」
案内された席に座りメニューを開く。
「イチゴトルネードパフェ!!後、ハニーグリーンティーラテ!!」
メニューを見て即決のチユ。
「甘っ!!何その甘々のコンビネーションは!?重すぎて胸焼けするどころの騒ぎじゃないわよ!!」
「三科さん、コイツ最近究極の甘党なんだ。糖尿病ってなんだろうって話を今度してやってくれ。」
「あ、はい。好みがやばいって問題ではなく糖尿病になるのが問題って・・・さすがエイル先輩ですよね。」
「親友なんだから当然だろ?俺の注文だけどアールグレイのレモンティーで頼む。」
「かしこまりました。」
そう言って下がる三科さん。
「昨日の魔石でリフレクターのチップをって話だがな。在庫があったからそのまま持って来たぞ。」
「本当に!?ありがとう。」
「後、魔道具もな。」
「助かる。」
「それで、学校生活は順調か?」
「それが、友達が出来なくて。」
「アマタはテンプラーだったから目立ってる。元々生徒会長から目をつけられててな、ちょっと声掛けづらかったんじゃないかな。」
「そうなんだ。知らなかった。あの生徒会長め〜。課外授業あるのに・・・グループ組めないよ。」
「あの課外授業な。インスタントダンジョン。レトルトモンスターが出てくるんだろ?強いモンスターを沢山多く狩ったグループの勝ち。パーティ組まなくても勝手に余り物の班になるだろ」
「そうなの!?」
「普通そうだろ。」
「なんだ。授業参加できないと思った。」
「心配するところそこ!?三科さんは守ってあげろよ。」
「うん。」
◇◇◇◇◇◇
私、三科愛佳は困っていた。
クラスメイトの雨宮君がまさか女装趣味だなんて。
こうしてエイル先輩と会話してるところを見ても良いカップルにしか見えない。
雨宮君の喋り方も随分と丸いし戦闘時より1オクターブ高いから女の子に見えるのだ。
しかもパフェを食べてるあの顔は、私の知ってる同級生達より乙女顔なのだ。
最初は私の話をしていたと思ったら、幼馴染の話に以降し、昔話に花咲かせ、かと思ったら生徒会長の黒々とした話題に移る。
かと思ったら兵器の話をし始めて、億単位の値段の取引を始める。一体なんなのこの高校生は?
そして、長話なのだ。お前ら女子かっ!?って突っ込んでしまいそうだ?
結局、私が上がる3時まで居座ってしまった。
「お待たせしました。」
「まぁ座れよ。腹減ってるだろ。」
「いや、まかない食べてるので満腹ですし、バイト先は気まずいですって!!」
「そうだな。場所移そうか。」
と、バイト先を出る。
私は緊張していた。
エイル先輩といえば、一年の間でも隠れファンの多い人物。
頭脳明晰、有名会社の御曹司、美形。そして性格が良好。
彼氏にするなら最高の物件なのだ。そんな超有名人が隣にいるのだ。
「ところで雨宮君、なんで女装なの?」
「それは・・・。気分。」
「気分!?」
なんて適当な返しなのだ?
「三科さん、アマタの本気の私服みた事あるか?」
「ないけど。」
「写真見せる。何故俺が変装を許可したのか分かる。」
見てビックリした。まるで整形レベルだ!!
売れっ子俳優もビックリの超絶美男子が写真に映っていた。や、やばい。私もドキドキして来たし、まともに凝視出来ない!!
というか、この中央に映ってるのはテンプラーのアカネさんでは!?やばい、この写真レアすぎる。
「女子がこぞって写真撮影ねだって来て、騒ぎになった。」
「ああ・・・このビジュアルならそうですよね。」
「だろ?」
「それで、女装ですか。というか雨宮君がそもそも本気のメイクをしなければ良いだけの話では?」
「うーん。それじゃ気分が上がらない。」
そう雨宮君がわがまま言うと、エイル先輩は頭にチョップ!!
「気分屋かっ!?」
「それで、今日は私の魔道具指導ですよね。」
「そうだ。」
「緊張します。」
そのまま歩いて、近くの公園に到着した。
渡される魔道具は全て高級そう。それをほぼ無償のレンタルでオッケーとかエイル先輩が神すぎる。
でもそれは生徒会長達に目をつけられているからで、本当に何かある前に私は強くならなくては。
パワードスーツ、装着オッケー。リフレクター装着オッケー。武器は・・・この植物魔法。
ダイバーみたいなウエットスーツ姿の私に対して
対戦相手は・・・丸腰の雨宮君。
「ちょっと、雨宮君!?なんで丸腰なの?フル装備の私に対して流石に舐めすぎでしょう!?」
戦闘モードになると雨宮君の表情は引き締まる。
「それは俺に一撃でも与えたら言うんだな。」
「いや、でも。」
私は植物魔法の鞭を軽くしならせる。すると、近くにあった岩が砕けた。
「おっかねぇ威力。」
とエイル先輩は呟く。
「でしょう?」
「でも三科さん。多分アマタには一撃も当たれねぇぞ。俺と互角以上の戦いしてるからな。覚悟しな。」
「え?丸腰で、エイル先輩と互角以上!?」
いや、雨宮君って魔法あるの知ってるけど。それって不意の一撃には対応出来ないんじゃ。
でも来いって言ってるし。行くしかない。
元新体操部のリボン捌き、ならぬ鞭捌き。ご覧あれ!!
「遅い!!」
雨宮君も同じ蔓の鞭で対応する。
私と全く同じ動きで相殺されてしまった。
待って!?パワードスーツってステータスがチートレベルに上昇するんでしょう?パワー同じって一体何!?
もう一度、もう一回!!
結果は同じように塞がれる。
「鞭術には振り回す、振り下ろす、撃ち抜くいろんなショットがあるけど360度隙なく攻撃し、自分を守れる事が利点だ。だが、相手の間合いに入られない為の細やかな足運びも求められる。」
雨宮君と戦っているのに何故かエイル先輩が説明している。なんで!?
確かに、剣士と戦うのなら、剣が届く間合い同士で闘うと部が悪いという話。なのは分かるけど。
「テンプラーに入れば、一通りの武器の使い方のレクチャーを受ける。幼少の時にエイルも俺も全ての武器の扱い方を学んでいる。」
「そうなんだ。」
「俺は剣と鞭、ボウガンが相性良かったな。エイルは槍、剣、後砲撃だっけ?」
「飛び道具はなんでもいいんだけどな。」
そんな話す余裕のある雨宮君に対して、私は必死に当てようと思って繰り出すのに全く当たる気配がしない。そう思っていたら、雨宮君、突然目隠しで対応して来た。
本当にムカつく。
「なんで目隠したの!?なんでかわせるの!?」
「三科さんは表情で次の攻撃の軌道が読めるから目隠ししてる。それでも空気感で状況が読めるから対応出来てる訳で。ちょっと、俺の本気、見ててくれ。」
と、雨宮君はエイル先輩と向き合った。
「鞭か。相手するのは久しぶりだな。」
雨宮君は2本の鞭を持っている。
それが縦横無尽に空を舞った!!
左右で鞭の軌道が違うし、攻撃を繰り出すタイミングも全てバラバラなのに一度も二つの鞭が絡み合う事なくエイル先輩に攻撃が届く。
エイル先輩も槍の絶妙な位置に立てるよう移動するが、雨宮君は後ろに飛んだりして優位な位置をキープしている。
「アマタ、お前本気出したら10本の鞭振り回すよな。」
えっ!?そんなに同時に!?曲芸の域・・・
「スレイブニルの事か?あれはテマルンドがいなきゃ無理だ。」
「アバターサポートAIのな。アマタイルじゃなくて?何故その名を?」
「あ・・・。気にするなよ。」
「アマタストップ!!あまりやりすぎると、歯止めが効かなくなる!!」
「そうだな。」
この2人は次元が違う・・・そう思ってしまった。
そうして私は雨宮君の鞭の真似をした。
何回も繰り返して同じ動きを真似したが全く同じ動きにならない。何故?
そういえば昨日、雨宮君、魔法はイメージだって言ってだっけ?
というか私のこの鞭も魔法である。
そういえば太さも自由自在、長さも軌道も自由自在だっけ?
そう思ったら、いい事思いついた。
物理的法則無視してもし、この鞭の先端が伸びたら雨宮君、驚くだろうな。
そう思って繰り出す振り下ろしの一撃。
回避されるのはよんでいた。それが不自然に直角に動いて雨宮君のお腹を捉え・・・・・・ない。
雨宮君は消えた。
いや、空を舞っている。バク宙の逆さまの状態にあり、同時に雨宮君の鞭が私の両手を縛っている。
えっ!?いつの間に!?
と、思ったら両手が引っ張られ、宙に浮く浮遊感。ジェットコースターのような加速をしたと思ったら、なんとも言えない浮遊感。
そう、空中に引っ張られ、私は空を舞っているのだ。
もうどっちが地面か分からないけど・・・私どうなるの!?
そう思ったら、雨宮君がキャッチ。気がついたらお姫様抱っこされていた。息を切らしている私。
「コツ、掴んだ?」
息も切らさず一試合終えてしまった雨宮君。いや、この人凄すぎでしょ!!




