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第62話 地下生徒会に遭遇した

 校庭外周をぐるりと一周、生活魔法クリーンを掛けて回った。

 詠唱と身体の演出を同時にした理由としては、最も威力を発揮させる為に集中したら自然とこうなったらしい。


 本当に勘弁して欲しいが、おかげ様で三科さんの前では別に魔法を隠す必要が無くなった。これは気が楽なのかも知れない。


「本当便利ね。魔法って。これだけの範囲を15分で終わらせてしまった。」


「そうだよね。でも三科さん。みんなから仕事押しつけられないように強くなろう!!」


「ええ。そうなんだけど・・・魔道具が買えないんだよね。生活が苦しくって。強い剣が一本欲しいんだけど安いのでも100万はするでしょう?まさか包丁で戦う訳には行かないし。」


「剣とか包丁とか無理に使わなくてもいいと思う。」


「どうして?」


「三科さんは鞭が得意なんだと思う。」


「私にそんな趣味はありません。」


(趣味?)


(ああ、チユ。これは流して大丈夫だぞ。三科さんのユーモアだ。そういうことにしてくれ。)


「三科さん、新体操やってたでしょう?だからリボン得意でしょう?その延長で鞭術ってどうかなって。」


「新体操やってたって小学生の頃よ。今忘れたし。それに鞭とは勝手が違うでしょうに。どうして新体操やってたってわかったの?」


 逆にどうして辞めて、今では運動とは無縁の生活してるのか聞きたいが。


「体幹?身体の筋肉のつき方とか。」


 チユがそう発言して、三科さんは恥ずかしそうに身体を隠す。


「雨宮君、私の身体・・・ボディラインをなぞるように見てたんだ!!エッチ。」


 そう言われると動揺してしまうのだが、同性のチユには効果ほ今一つ。


「冗談言ってないで。練習しようか。多分ね、三科さんって植物魔法に適正あるでしょう?そんな精霊集まってるし。」


 チユ、一体何を言ってるの?俺もそんな情報初耳なんだけど。というか「精霊が集まってる」って何?

 そう言えばエルフの村で精霊ってワードを良く聞いたような・・・


<マスター。精霊は、エルフにしか見えないのです。だからマスターは存在も何も感知出来なくて当たり前なのです。>


 そっか。でもそれと三科さんが精霊に好かれてる事とどういう関係があるの?

 そう思った瞬間だった。チユは正面から三科さんの両手を掴む。

 それには三科さんも驚いてる。


「雨宮君、ちょっと、いきなり何するの?」


「集中して。緊張しないで、落ち着いて。」


「いきなり異性と向かいあって手を握られて、緊張しないでとか無理でしょう!!」


「うーん。そうかな。まぁいいや。」


 チユにはその感覚はまだ早いのかも。8歳だし。


「良くない。恥ずかしいから手を離して。」


「すぐ終わるから。魔力流すよ。」


 瞬間チユの魔力が三科さんに流れた。やっている事は少し前にエルフの村でやった握手会だ。あの時はエルフの皆の魔力が強くなって、戦争に大いに役に立った。

 今回の結果は・・・・・・なんと!!三科さんの手から植物の蔓が伸びた!!


「熱っ!!!え?ええ!?」


<熱く感じたのはチユ様の魔力が身体中に巡り、自身の魔力が活発に周り始めたからでしょう。>


 これって人間が魔法を使ったって事だよな。

 単純に考えて凄くないか?えっ?人間って条件満たしたら魔法使える生き物だっけ?人類始祖誕生以降・・・人類歴史5万年と言われているけど魔法の使用例って無い。

 チユは凄い顔をしている。何か真剣に悩んでいるのだろう。チユもまさか俺と同じ事を考えていたのか!?


「植物魔法・・・名前。なんだろう・・・。蔓発生する奴・・・。難しい!!」


 名前何にしようか悩んでた!!独り言が出るぐらい悩んでた!!えっ!?そこ重要なの?


<名前を決めておいた方が次また同じ魔法を使う時にイメージしやすいのです>


 どうでもいいよ!!武器!!蔓!!で良くない?


<マスターは適当です。>


 そんなやり取りをしていたら三科さんはこの魔法の感覚にずっと魔法で出した蔓の鞭を見つめていた。突然我に帰ったのか「はっ」と息を吸い訊ねる・・・


「何したの?手品?」


 チユは首を横に振る。


「魔法だからこんな風に伸縮性自在だし、思うままに蔓を振り回せるけど。魔法はイメージ。」


 答えになって無いと思うのだがチユはお構い無し。取り扱い説明をし始める。


「この蔓、私の意志で出し入れ出来てるんだよね!?え?嘘・・・」


 完全に三科さんのコントロールで蔓の太さも自在に変えていた。凄い事に触手のように伸び、鉄棒に「ベシン!!」と一撃重たい衝撃を与える!!


 今のインパクトで鉄棒が少し曲がる。チユはゆっくり頷いた。


「上手いね。」


「威力やばっ!!と思ったら消えたし。うーん。そして自在に出し入れ出来てる。不思議・・・」


 三科さんはこの植物魔法を完全にマスターしてしまったようだ。


「もう自分の物にしてるね。上手。」


「えっ?これ魔法?私魔法使っちゃったの?」


「うん。そうだよ。」


「ちょっと待って!!魔法契約なんてわたししてないよ!!『魔法少女になったんだから世界の為に戦ってよ』なんて言われても無理だからね。アルバイトあるんだし。」


 契約?魔法少女?なんかのアニメの話?

 アルバイトって新聞配達の話?


「そんなの無いよ。」


 ってチユ!!なんでチユが分かるんだよ!!何通じてるんだよ!!


 俺のツッコミは他所に三科さんの質問は続く。


「魔法使える代償として何かを失ったりとかしてない!?」


「そんなのないよ。」


「魔法使い過ぎるとモンスターになったりしない!?」


 それ、どんなカオスな世界ですか!?元ネタ何?俺知らない。


「欠乏症で頭痛くなるし、それでも無理すると倒れるけど、モンスターにはならないよ。」


「良かった。雨宮君、ありがとう。不良に絡まれたら、このぶっとい蔦で撃退するわね。」


「うん。頑張って!!」


 魔法のレッスンはひとまず終了みたいだ。

 一旦中断みたいになってしまったが、残りのどぶさらいもやってしまう。

 1回のクリーンで綺麗に出来る範囲は10メートルなので、それを何回か繰り返す。

 すると、職員棟の裏側のその先に来てしまう。普段用事なんて無いためこんな離れの場所まで来ないのだが、古びた校舎が見えてきた。

 それを見てチユはポツリと不安を呟いた。


「そういえば、こんな所まで来るのって初めてだよね。」


「旧校舎でしょう?普段誰も使ってないらしいけど。」


「なんかでも、不吉な匂いがする。」


「不吉な匂い?冒険心を駆り立てられるのはそうだけど・・・。」


「一緒に入ってみる?」


「えっ!?なんで!?不吉な匂いなら近寄らないのが普通じゃない!?」


「不吉な正体がなんなのか、わからない方が怖い。」


「感覚が独特なのね。わかったわ。私も気になるし行きましょう。


 校舎と、職員棟は渡り廊下で繋がっている。しかしこの旧校舎だけ、裏庭の先、人気のない離れた場所にあるのだ。


 何年も手入れされてないのか、苔がうっすら外壁にこびりついている。


「レッツ冒険!!」


 チユは腕を上げて校舎の敷居をまだぐ。テンションは上が上げ・・・


「子どもみたいにはしゃがなくても。」


 と三科さんに笑われるのであった。


 チユには何かを感じ取っている。それが俺にも伝わってくるようだ。


 幽霊ではない。透明な学生達がこの校舎で楽しそうに学ぶ姿。

 服装は学ランとセーラー服。それに髪型から考えて100年前になるのかな?


<チユ様がこの旧校舎に眠る精霊さまとリンクしました。旧校舎に眠る記憶がフラッシュバックされているようです。>


 そこで起こる喜怒哀楽を一瞬にして追体験するようだった。

 まだ現代ダンジョンが盛んだった頃、多くの生徒がこの旧校舎に集まって現代ダンジョン攻略方法を学び合い、語り合った。今は資源が枯渇し遺跡となっているが、ここはそういう街だった。


 沢山の人がダンジョンに繰り出し。沢山のクラスメイトが死んだ。

 それを参考にいろんなルールがここで生まれて。


(ああ。このルール知ってる。ダンジョン攻略の安全マージンの基礎中の基礎だ。ダンジョン1階層に出てくるモンスターと、そのダンジョンの深さを予測し、ダンジョンマスターの強さとレベル、種族とか攻撃パターンやスキルを予想する技法。)


 ここで誕生したのか・・・。

 100年前に頑張った先祖達がいて、今の俺たちのルールがある。当たり前の事だが、それを作った人達の犠牲と苦労を垣間見て、少し涙ぐんでしまうのであった。


「何これ!!面白い服!!」


チユは誰かのロッカーをおもむろに開け放つとセーラー服を取り出した。


「セーラー服ね。今でこそブレザーになったけど、昔はこれが女子の制服だったの。」

「面白そう。ドレスアップ!!メイクアップ!!」


テンポ良く魔法を唱えると、


「おお!!まるで手品ね。私の目の前に古風ギャルがいる!!」


三科さんも、ノリが冷静になって来た。


「ギャル?」

「そう。時代を感じるけど可愛いわね。」

「やった!!嬉しい!!」


(チユ、それはいいけど後でその制服返しておけよ。)

(はーい!!)


 この旧校舎で最も熱い場所。それは地下にある。

 地下に裏闘技場なるものがあって、当時の生徒達は武を競いあっていたという。


「雨宮君、どこに向かおうとしてるの?」


「地下だよ。」


「やっぱり。ちょっと不気味だし、怖いよね。何か出てきそうな予感。」


 人気のない場所である以上、日の光が届かない地下はまぁ不気味なのは同意する。


 地下トイレの横に、木の板で打ち付けられた空間がある。その戸をゆっくり開くと・・・

 更に地下へと繋がる空間が。


「どんなお宝が埋まってるのかな。」


 と、ワクワクするチユに対して及び腰になる三科さん。

 俺の手にしがみついてくる。


「新聞配達行かないといけないし。早く出ましょう。」


「後5分だけ。」


「それ、朝弱い人のセリフ。」


 地下に降りると更に扉がある。この先に地下闘技場があるはず。

 チユはワクワクしながらその扉を開け放った!!


 鳴り響くクラブミュージック。中には人が密になって集まりダンスや麻雀、ポーカーゲームをたのしんでいる。

 これは過去の記憶でも幽霊達の仕業とかではなく、リアルに学校の生徒達である。


「こんにちは。先輩達お揃いでご機嫌麗しゅう・・・。」


 チユの発言がおかしな事になっている。


 生徒会長、薬師寺 澪 初めてとする男女合わせて30人以上の先輩達がこの居合わせ、俺をガン見した。

 その表情と言ったらヤンキー漫画のライバル達のよう。殺気立って、背後から黒いオーラが見えて来そうな気配を感じる。


<敵意を感知しました。>


 だろうね。

 戦闘モードに移行。チユは即座に詠唱を始め、俺に身体のコントロールが移る。


「澪様、コイツらどうします?」


「自力でここに辿り着いたのは褒めてやれ。歓迎会をしよう。とりあえず、縛り上げろ!!」


 その号令を聞いた瞬間俺は何事も無かったように戸を閉めた。


<結界魔法を発動します>


 即席のチユの魔法を扉の上から押し当て、扉が開かないようにする。


「三科さん。逃げよう。」


「うん。私達は見てはいけないものを見てしまった。逃げましょう。」


 「開けろ!!あけんかゴラァ!!」と罵声が鳴り響く。ガンガンと扉を叩く音がするが、結界魔法に押しつけられて扉は開かない。


 多分魔道具を使用したのだろう衝撃音すらするが、扉は開かない。


 俺たちは逃走した。


「今、扉に何したの?魔法陣が展開されてるんだけど。」


「結界魔法張って扉を開かないようにしてるけど、もう無理かもな。先輩達魔道具使って壊そうとしてる。」


「ヤバっ!!というか見た!?裏闘技場よ!!賭け事してたし。生徒会長にあっちゃいけない姿だよね。」


「本気で口封じに来るだろうな。今捕まるのはまずい。口より足だ。早く逃げよう!!」


 そう言った瞬間に地下から轟音が響いた。絶対に扉がこじ開けられたのだろう。


<気配遮断魔法発動>


 チユの用意周到さには助かる。気配遮断した上で俺達は夢中で階段を3フロア分駆け上がる。


「雨宮君、待って行きすぎ!!ここ2階よ!!」


「ヤベッ!!引き返・・・せるかよ!!そのまま屋上だ!!」


「どうするの?」


「屋上から飛ぶ。」


「は?」


(チユ、沢山結界魔法のストック使っておいてくれ。)


(結界の階段ですね。了解です。)


 俺の気配遮断は何故か効果を示さない。

 追っては間違いなく階段を上がってくる。


<ソナーを複数感知。熱源でばれてます。>


 魔道具め・・・。この便利さが憎い。


 屋上へ上がった。


 屋上の周辺は、転落防止に高いフェンスで囲われていた。しかし。


 真気収束発動!!


「三科さん、信じてくれ。怪我はさせない。」


「あ、わかったけど・・・ちょ、ちょっと!?」


 三科さんを抱き抱える。それが丁度お姫様抱っこのようになっている。顔が近い。


 間近で見ると、整った顔をしている気がする。ニキビでボツボツしている肌だし髪も結んでいるだけなのだがちゃんとファッション決めたらもっと見た目可愛くなるかもって一瞬思ってしまった。


 俺は一息でフェンスの上に上がる。


「嘘!?何そのジャンプ力。」

「お喋りはここまで。舌噛むよ。」


 俺がそういうと、俺の手の中に顔を埋めるようにしがみつく三科さん。

 丁度背後から生徒会長 薬師寺 澪の姿が現れた。


「お前、見ない顔だな。」

「コスプレしてるから恥ずかしい・・・あまりジロジロ見ないで欲しいです。」


「はぁ!?この私を前にしてお前、余裕かっ!?どうするつもりだ!?地上には私の幹部がいる。飛び降りて魔道具で助かっても無駄だんだぞ!?」


「それぐらい分かります。はぁ、学校では目立ちたくないのに。」


「そんな格好して何言ってんだよ。目立ちたくないならここで素直に降参し、私に捕まれ!!」


「身バレするからダメ。マジで無理!!恥ずかし過ぎる!!」


「ふざけた野郎だ。さっさと降りて来い。着地した瞬間終わりだけどな。」


「なら地面に着地しない。この足でエイルの教室に直行する。」


「は?寝言は寝ていえ。そんな妄想信じる奴が・・・」


 生徒会長の話を全て聞いてやる義理はない。


<イグニッション発動しました>


 足元に火の柱を発生。その爆発力で遠くまで跳ぶ!!


「はぁ!?くそったれ!!お前ら追うぞ!!逃すな!!」


<結界魔法発動>


 その足場を頻繁に作りながら跳ぶ跳ぶ跳ぶ!!


「不思議。私達、本当に空を飛んでる!!」


「これ、地道なジャンプの繰り出しなんだけどな。」


 職員棟を飛び越え、そのまま結界伝いに現校舎・・・その2階エイルの教室へ目指す。


 最後は植物魔法で蔦を作り、現校舎の3階の手すりに括り付け、そのまま2階のエイルの教室の窓にターザン移動。


<結界魔法発動>


 最後は自身を守るための結界魔法をかけ、窓を飛び蹴りの要領で突き破って2年特Aクラスに侵入だ。


 三科さんを抱き抱えたまま受身は取れない。意地でも着地し踏み留まる。

 衝撃を吸収、そのまま顔を上げるとクラス6人全員の視線が集まっていた。


「エイル助けてくれ。生徒会長に絡まれた。」


「おいおいおい。アマタ、お前・・・。ここ数年いろんな生徒見てきたがやる事、弾けすぎだろ!!女装して女の子抱き抱えた状態で外から弾丸のように・・・しかも窓を突き破って侵入してくる奴なんて初めてだぞ。」


「エイル良かったな。ここ最近、初めてがいっぱいだ。」


「お・ま・え・なぁ!!!全部お前のせいだろ!!!自重しろってこの前言ったばっかりだろう!!!ああ・・・もう。」


 そう言って頭も悩ませるエイル。


「雨宮君、私もう本気で新聞配達行かないと。」


「こんな事あったばっかりだし、今日ぐらい休んだらどうだ?」


「生活かかってるし無理。」


「じゃあ、護衛に着いていく。」


「申し訳ないよ。大丈夫。」


「何かあったからじゃまずいだろ。」


「うーん。ありがとう。」


「という事でエイル。済まない。一緒に来てくれ・・・」


 エイルは突然「ゴホゴホ」と咳き込み始めた。喉に何か詰まらせたんだろうか?


「大丈夫かエイル?」


「『大丈夫か!?』じゃねぇ!!何が「という事で一緒に来てくれ』なんだ!!?まず事実を説明しろ事情を!!」


「ごめんなさい。本気で新聞配達遅れるから。」


「三科さんもマイペースか!!!俺の事情を考えろ!!」


「ごめんなさい!!お詫びはいつかします!!」


「いや、行くけどな!!行くけど!!歩きながらちゃんと説明しろよな。」


 三科さんは歩き出す。仕方ないので着いて行くのだが、まずは呆然と立ち尽くす2年の先輩達に振り向いて・・・


「2年特Aクラスの皆様、お騒がせしました。エイルお借りします。」


 と言い最後に生活魔法クリーンを発動。割れた窓を補修する。そして一礼し、三科さんの後を追うのだった。


 今日の出来事によって、生徒会長、薬師寺 澪達から「精鋭部隊を煙に撒いた一年」として睨まれると同時に、2年特Aクラスのメンバーからの注目度が跳ね上がるのであった。

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