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第60話 AIサポートシステムはカンニングに含まれます。

 アマタの放った真気収束・・・からの解放が全生徒の目に留まったのは本人の知らない所での話だった。

 遠目から見ると一目瞭然。天誅が降り落ち、測定器が真っ二つ。それをやってのけたのは1年C組の最底辺クラスの誰か・・・。そんな噂が全生徒に知れ渡ったのだが、当事者は誰もそんな事思ってない訳で。


 クラス皆の心配は次の授業・・・筆記の小テストにあった。


 これも来学期からの特Aクラスに入れるかどうかの選考になる。外せない勝負の瞬間だ。


 俺も緊張バクバクである。何故なら受けるのは俺ではなくチユなのだ。

 チユは8歳の・・・こっちの世界を知らないエルフの少女。しかも文字の読み書きとか漢字とか一切書けない女の子なのだ。

 詰んだ。終わった・・・


 その二文が俺の頭の中をぐるぐると徒競走している。


<大丈夫です。この天才サポートAI、アマタイルにお任せあれ!!>


 なんで同じサポートAIなのにテマルンドとアマタイルはこんなに性格が違うのだろう?

 テマルンドは冷静沈着。物事を明確に分析し、淡々と最適解を導き出すのに優れており。対してアマタイルは、はっちゃけている。発言が少しお馬鹿っぽい所があるというか・・・人を不安にさせる節がある。何より喜怒哀楽があり、たまに反抗してくる。


 テスト問題にどうサポートAIが関与出来るというのか?


 カンニングか?カンニングなんだな!?

 でもカンニングってどうするよ。チユは漢字すら書けないんだぞ。そもそも文字すら無理なのに、テスト用紙に「へのへのもへじ」を書いて放置するに決まっている!!


<チユ様、お絵描きは大の得意と聞いてます。>


(アマタイルさん。私、お絵描きは大好きだよ!!)


<なら安心ですね!!一緒に頑張りましょう!!>


(はい!!頑張りましょう!!)


 アマタイル!!何が安心なんだよ!!答案用紙に「へのへのもへじ」を描く気満々じゃねぇかよ!!お絵描きが大好き=安心の図式がまず理解出来ねぇぞ!!

 気休めだろ!!気休めなんだな!!


 俺の心配をよそにレイア姉・・・いや、雨宮先生により答案用紙が配られる。そして問題も。


「では、始め!!」


 終わった。終わったぞ。明日から補習の毎日が始まる。毎日テスト用紙にお絵描きして終わり、先生に怒られて次の日を迎える負のスパイラルライフが始まる。

 俺の学校生活ももう終わりだ・・・。

 そんな事考えてももうテストは始まっている。これはやるしかない。

 いちからアイウエオの文字を教えて、漢字を教えて、書き方を教えて・・・。ダメだ。何時間どころか、一問解くのに何年かかるのってレベル。

 やばい。俺はもう無理だ。


<チユ様、問題をペラペラと見て貰えないでしょうか。>


(うん!!)


 問題を全て視界に移すように見ていく。


<では解答用紙だけで大丈夫です。その隅っこにある紙がそうですよ。>


 解答用紙を手間に手繰り寄せる。手には鉛筆を握りしめ、何をする?絵を描くのか!?


<イメージを送ります。そのイメージ通り、模様を描いて下さい!!>


(はーい!!)


 チユの筆が乗る。

 文字を書くという概念がない為、右下の1番最後の部分から筆を走らせている。


 何が起こるんだろうと見ている事数分。ちゃんと文字が描けている。


 しかも何かしらの回答として成立しているのだ。


(アマタイル・・・これは?)


<お絵描きです。模写です。>


 ・・・。成り行きに身を任せよう。

 そう思っていたら40分で答案用紙全てを鉛筆で埋めてしまう。

 最後に名前を右から(・・・)書き筆を置いた。


 書き方といえばデタラメだ。文字を反対から書き始めるのだ。先生が見たらビックリ特技である。そんな本当にデタラメなのだが、俺より綺麗な文字で、しかも無駄のない文章で答案用紙が埋まっている。


 ・・・これは・・・天才なのか?


<だから天才サポートAIアマタイルにお任せあれって言ったじゃないですか!!>


(これで赤点じゃなかったらな。)


 俺は最後まで認めない。でも、俺が指示してチユに書いてもらってもこんな仕上がりの答案用紙はまず作れないだろう。ひとまず安心してよいのだろうか。

 俺の不安をよそにチユもやりきった感を出して机に伏せる。


 もう、結果が出るのを待つだけだ。


 ◇◇◇◇


 私、雨宮レイアは、やはり弟の事が心配だった。

 学問のレベルは違うし、ちゃんと問題について行けてるのかなとか心配してチラッと見てしまう。

 贔屓している訳ではないのだけど、やはり心配なのだ。


 春休み中、勉強をしていた様子もないし。ここの学力のレベルも全国平均から比べて高い方だ。そしてこの問題。私の作ったテストに、ある教師が意地悪で問題を付け加えたのだ。

 絶対に解けない問題を。


 もし解けたら120点と、20点オーバーなのだがこれは仕方ない。それだけの難問が最後に用意されていた。


 弟は問題をパラパラと流し見ると・・・開始3分。問題を机の隅に追いやった!!


 なんで!?そんなことを思って凝視すると、あろう事か、解答用紙のみにかじりつき筆を進める。よく見ると絶対解けない難問から解き始めているではないか!!

 遠目だからちゃんと見えてないが、確かに答案用紙の最後の方から筆を走らせている。


 もしかして他の問題は解く価値無しとか考えてる??

 というか解けたら凄いし、意外とアマタって頭が良かったっけ?


 それから35分間筆が止まる事がなかった。

 何故か理由は知らないけど「カンカンカン」と情熱的に筆を走らせている為、音が良く響くのだ。

 皆が真面目に問題を解いている中、1人だけ美術品を仕上げているみたいな?そんな様子にも見て取れる。


 謎だ。我が弟ながら行動が謎すぎる。

 贔屓するわけではないのだけど、つい見てしまう。アマタの行動を・・・。


 長いテストの時間が終わった。


 答案用紙を回収し、ゾッとした。

 アマタの解答・・・全て埋まっている。絶対解けない難問まで完璧に解いてしまっている!!あり得ない。こんなのあってたまるかって話だ。

 だって下手すれば大学で習う内容だ。

 とある先生からの悪意を持った難問だったのに・・・


 しかも解き方が癖強すぎるのだ。開始3分で全ての問題を丸暗記し、問題がズレる事なく全て解いてしまったのだ。


 解答用紙と見合わせても一言一句変わらずの模範解答。

 文句無しの120点満点である。やばい。こんな神童だなんて思いもよらなかった。


 私、雨宮レイアは弟のアマタを、国内最高学力の帝都大学への進学を本気で考えるのであった。




 ◇◇◇◇


 学力テストから数日が経ったある日、エイルに連れられて俺はある掲示板を目にした。


(学力テスト学年トップ!?俺が!?)


 学校の職員室前に張り出されている掲示板にランキングがズラリと並べられており、その中で120点獲得の俺が堂々の1位を記録していた。


「アマタ、お前やるじゃねぇか。いつの間に勉強してたんだよ!!」

「やれば出来る子なんです。」

「いや、2位が80点だろ?やれば出来るレベルじゃないだろ?多分、阿久田川先生の悪質な問題を解いてしまったんじゃないか?」

「悪質な問題ですか?」

「おいおい。本人は無自覚かよ。あっただろ?理解不能な難問が。」

「さぁ、覚えてないよ。」

「覚えてない!!お前、クラスの皆にそんな事言ってみろ。炎上間違いないからな。」


 と頭を抱えるエイル。


(アマタイル、そんな悪質な問題あったのか?)


<はい。リフレクターの構造に関して詳しく説明して見ろという、大学で習うような悪質な問題がありました。私の知識にかかれば模範解答を用意出来ます。勿論一字一句無駄なく間違いのない解答を仕上げました。>


 え・・・


 すると、職員室の扉が開く。阿久田川・・・教頭先生が現れた。


「君が、雨宮君だね。」

「はい。」

「先生達の中で、君のカンニングを疑う先生が多くてね・・・。」


 ギクっ!!そうです。アマタイル先生の助言の通りやったらこうなりました!!すみません!!


 そんな事思っても言葉に出ない。チユは首を傾げた。


「カンニング?」


 その疑いに発言こそしないが、エイルは嫌そうな顔をする。


「そうだ。最後の問題、もっと詳しく説明して貰えないでしょうかね?」


 ニヤリと笑う教頭先生。絶対無理だと言わんばかりに鼻で笑っている。


(アマタさん。私分からない!!)

(俺もだ。)


<アマタイルにお任せあれ。>


「えー。リフレクターとは魔道具でありながらその素材はモンスターの核を軸としています。理論的に言えば・・・」


 それから15分間怒涛の理論展開が繰り広げられた。

 構造どころか、何故、リフレクターにはレベルがあるのか。レベルを効率よく上げるにはどうすればいいのか。なんの素材が1番耐久力があるのかを述べ、最終的に・・・


「・・・。なので私は魔道具の枠を越えて封魔武器と呼んでもおかしくはないと考えておりますが、先生はどのように捉えておりますか?」


 意見を求められて凄い困ってる。冷や汗が目に見えてわかる。


「わ、わかった。君の無実は証明されたから教室に戻りなさい。いいね。私は忙しいから、失礼します。」


 と職員室に戻ってしまった。


「ちょっと!!無実とかどうでも良くってですね!!」


 隣でエイルが笑ってる。


「あの阿久田川先生を頭脳で撃退するか。アマタも怖いもの知らずだな。」


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