第5話 神子のスペックはサポートAIによりチート化される。
楽しんでもらえれば嬉しいです。
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
村に向かって来る危険モンスターがいると聞き、俺はそのモンスターの元へ向かう。
(テマルンド、ステータスを確認させてくれ)
<かしこまりましたマスター>
チユ エルフの少女 8歳
HP(体力)100%
MP100%
腕力 2
耐久力 1
魔力 120
器用 20
素早さ 2
運 10
人間、一般人の平気ステータスは5だ。まず魔力とかMPはない。
チユは魔力がずば抜けてる。器用さは<アバター>には遠く及ばないものの高い。
もう10分は走っただろうか。深い森の奥は昼間であっても薄暗く視界が悪い。
モンスター達の騒めきが聞こえる。ミシミシと、木々が倒されていく音が聞こえる。それに、エルフの戦士達の雄叫び・・・
戦闘する音だろうか、問題のモンスターはすぐそこだ。
エルフの体格は他の種族に比べて細い方だ。その種族の中でも屈強な戦士と言われも、表現は悪いかも知らないが、ガリ勉に鎧を着せて戦わせているようなもんだ。木々の合間に隠れながら弓に矢を番えている。
問題のモンスターは開けた空間にいた。倒された木の上に立つそれは体長4メートルある巨大な紫色の芋虫のようだった。一心不乱に真っ直ぐ進む為、木が薙ぎ倒されていく。なので必然的にデルタワームの周辺には木々がない。まるで歩く災害だ。
確かに強そうな印象を受けるモンスターではあるが・・・
・・・ちょっとデカいだけのデルタワームだよな。どう見てもDランク上位モンスターだよな。
<だから言ったでしょう、マスター>
(うるさい!)
主張強めなAIに黙っておいて貰おう。
後方には傷ついた戦士達が集められており、医療部隊がポーションらしき液体を垂らしていた。俺はその効力の強さに驚いた。
腕の無い戦士の腕がニョキニョキ生えてくる。ポーション?これはもうエルフの秘薬だよな。
「総員放て!!!」
弓兵長の号令のもと先程の木々に隠れていたエルフの戦士達はデルタワームの方向を向き、矢を一斉に放つ。木々の合間を縫って寸分の狂いなくデルタワームに矢の嵐が降り注ぐ。命中補正でも掛かってるのだろうか?誰も外す事なく巨大な芋虫の表皮に刺さる。しかし威力の問題で決定打は皆無だった。
<デルタワーム、HP残量99%です>
何十本の矢が当たったのにほとんど体力は減ってない。
あれ?アバターではない人の身でモンスターに勝つ事は無理な話だろう。そもそも、武器スキルを使うなんて概念がなかったら確かに俺もデルタワームは無理な気がするし。
そう思ったら、エルフの戦士達の手が光る。魔術部隊が手から炎の槍の槍のような物を発生させた。
ーーおお、凄い!!あれが魔法か!!
エルフは魔法が使えるって言われる。御伽噺だけの話だと思っていた。武器スキルは魔法化学にのっとり、モンスターがスキルを使う理論を応用して魔法のような事象を起こしている。
種も仕掛けもある化学反応なのだ。しかし今エルフ達は無から有を生み出した。凄い!!
俺はその現象の一部始終を見届けた。10人で放つ炎の槍はまるで花火のように美しかった!!
凄い!!俺もやりたい!!
ワクワクに胸が震えたが、その花火は花火程度のものだった。生活魔法に毛が生えたような威力でしかない。ようは、アフリカ象相手にガスバーナーで相手をするようなもんだ。思わず口を開いてしまう。
「あれが正真正銘の全力か!?」
ビックリしたが、通用していない。武器として成立していないのだ。感動したけどこれじゃ返り討ちに会うのは目に見えている。
「そうじゃ。凄いじゃろう。」
凄いのは凄いけどこのままじゃ負けは確定だ。でも何故か誇らしげな村長。
「いや、褒めてないです。俺が行くので皆を下げて下さい。」
と言って俺は崩剣ディアブロスを構えた。
「承知致しました。・・・・・・・・・・・・。皆のもの!!神子様が来られましたぞ!!今より神の御技を成す。皆、後退せよ!!そして、神子様の勇姿を刮目して見よ!!」
村長さん。あれ?なんかハードル上げてない!?俺なんか下手な事したら皆の笑い者になるパターンじゃない!?ちょっと自信ないよ。もしダメだったら撤退すればいいかって思ってたぐらいだよ。ダメだよね。これ失敗したらダメな空気だよね。
皆瞬時に前線から離脱、好奇な眼差しで俺を見つめる。
ーーやばい、かなり緊張してきた。
(アマタさん。あのワームさん、とても苦しんでいます。とある森の王様なんでしょうけど、なんかとても変です。倒さなければならないのでしょうか?)
チユの心の声を聞く。それに対して冷静に告げた。
(ワームの進行方向上にはチユ達の村がある。戻って避難を呼びかける方法もあるが、村は壊滅、この進行速度から言って、今から俺たちが全力で村に戻ったとしても避難は間に合わない。死傷者は少なからず出る)
(そうですよね)
(でも、出来る事はやってみる。)
言って、俺は崩剣ディアブロスを掲げる。
「土壁!!」
崩剣ディアブロスは人類が開発した魔導武器である。魔物のコア、魔石を使い、そのモンスターのスキルを再現する事が出来る。
俺が今使ったのは魔法ではない。モンスターのスキル、土の壁を出すだけの単純スキルだ。
その強度は武器の強さに依存。それに同調率による武器補正。今の俺ならほとんど弱体化させる事なく武器の持ち味を発揮させられる。
この武器のスキル。高さ8メートル、幅1メートルの頑丈な城壁を瞬時に発生させた。
「おーー!!!これが神の御技!!」
「何という魔力!!!」
エルフの戦士達が騒いでる。これ、魔法じゃなくて武器のスキルだし。なんか変な誤解してません!?待て、今意識向けるのはそこじゃない。敵だ。デルタワームだ!!
この土壁でこのデルタワームの進行方向を変更出来るのなら戦闘せずに済むのだが・・・
デルタワームは往生際が悪く、倍以上の高さ、その聳え立つ城壁に向けて体当たりを始めた。
ドォォゴォォオオオ!!ドォォゴォォオオオ!!と、大地震か!?と思わせるような巨大な衝撃音に俺は思わず耳を塞ぐ。
「なんで、真っ直ぐ進もうとするかな!?城壁に沿ってやや左に向かって進めば良いじゃないかよ!!頭悪いの!?それともどうしても真っ直ぐじゃなきゃダメなの!?」
俺のツッコミは虚しく響いた。
8回目のタックルが炸裂した時、城壁の端に小さなヒビが生じた。
(チユ、すまん。俺はアイツを倒す)
(我儘言ってごめんなさい。正気を失ってるみたいです。楽にしてあげてください。)
俺はゆっくりデルタワームに近寄った。戦士達から警戒の声を聞く。
「さすがに神子様でも危険です!!やられます。」
と、腕を掴んでこようとするエルフの戦士の手を躱す。
「大丈夫です。」
言い放って、デルタワームの進行方向上に飛び出した。
ーーこんなスローモーションなモンスターに攻撃貰うかよ!!
心の中でツッコミながら。おれは崩剣ディアブロスを構える。
デルタワームとの距離はほぼゼロ。デルタワームの口が臭い。
次なるスキルはまた異なるもので・・・
「土砂流!!」
地面が突然、砂流が生まれた。それは巨大なデルタワームを飲み込み、圧倒的な質量で縦に真っ二つに切り裂いた。
<デルタワームに、クリティカルヒット!!オーバーキルです。>
この技は俺から距離が離れれば離れる程威力は下がる。むしろ発生源が近ければ、その噴射の出力でぶった斬る事が出来るのだ。
正直食われるんじゃ無いかってぐらいのゼロ距離からこのスキルを放ったもんだから、この結果は轢かれるリスクに伴った当然の結果である。しかし、博打でこんなことを行ったわけではない。俺の今の同調率ならこの威力を余裕で出せる。一撃で確殺出来るという核なるデータに基づく行動だ。
「神子様すげぇぇぇええええ!!!」
エルフの戦士たちから大声援を受けるのだった。
「神様・・・いえ、アマタ様、お見事でした。まさか、一撃で倒されるとは。本当に強力な魔力量で御座います。まさに神の御技。」
と賛美する村長。
「いや、そんな大それたもんじゃないよ。この剣持てば誰でも使える汎用なスキルで・・・」
「アマタ様は本当にご謙遜を。力をひけらかさない所が本当に魅力で御座います。」
「いや、謙遜じゃなくて・・・」
どんなに繕っても笑顔で流されてしまう。もう、こうなったら聞く耳ゼロだ。そして、村長はこんな事を言い始める。
「ささ、帰って宴を開きましょう。1か月分の食糧も手に入った事ですし。」
ん?狩りなんてしましたっけ!?
村人1か月分の食糧って何?
先行していた戦士達が大物を捕まえたのか?
「食糧?」
「はい。心配せずともこのモンスターは我が村の屈強な戦士達が責任持って村に運搬しますゆえ、アマタ様は家でゆっくりなさってくださいませ。」
このモンスターと指を差すその先にはデルタワームが映っている。
「え!?これ食うの!?」
「そうです。貴重な食糧です。似たようなモンスターの肉を先程の宴会でも振る舞ったと思いますが。」
食べた。なんか○○。なんかナ○○のような香ばしい香りのしたお肉・・・。
待って、俺食べてるじゃん。ゲテモノ食べてるじゃん!!待って・・・・・・リアルに想像するとマジで無理!!
「いやぁぁあ!!!」
もう、こんな村いやじゃ!!!!!
もう、この村の食糧、どうにもしませんか!?1か月虫が主食なんて無理ぃぃい!!!
ショックのあまり、俺は気を失った。倒れ際に
「神子様!!!」
皆の心配する声を聞いたのだった。
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