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第47話 神子に文句言う奴はもういないらしい。

楽しんでもらえれば嬉しいです。


 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 モンスターも全て殲滅し終え、無事にエルフの村に平和が戻った。

 祠に避難した皆をお父様達が迎えに行き、そして合流した。

 お兄様、お姉様、プロシュート、子ども達。皆に囲まれてバグをされた。本当かよ!?と思ってしまったのだが、


「神子様ならやってくれると信じてましたぞ!!!」


 と涙ながらにプロシュートに強く抱きしめられた時には窒息死するかと思った。


 エルフの村では宴が始まる。


 俺の事を悪く言っていたエルフはもういない。村長達や、エルフの戦士達、それと、いつもは疎遠な文官達ですら俺の周りに付き纏って騒ぎ立てるのだ、人混みに弱い俺は大いに困っている。


「いや、神子様。最後のあれには騙されました。誰もがあの光り輝く剣の一撃でトドメを刺すと思っていましたが、あれはフェイク。本命は足先の一撃に隠していたと。やりますな。」


「本当です!!誰も最後の一撃には想像が付きません。いつ、あんな大技仕込んでたのですか?」


「えっと・・・。いや、成り行きで・・・。」


 そもそも俺も蹴りが最後の一撃になるなんて想像も付かなかった。俺は本気で剣でトドメを刺すつもりだった。だからそれをフィニッシュに持って行くためにあの手この手を考えていたのだが敵も最大限に警戒していたのは事実だった。

 予想以上にチユの魔法が強かった。再現率が威力と共に最高だったのだ。もし、「ディザスター」がなかったら負けていたかもしれない。


「成り行きですか!?いや・・・本当に凄い。」

「神子様の蹴りは必殺の一撃。今度レクチャーしてください!!」


 このように、エルフの戦士に付き纏われて本気で困っているんだ。

 俺、こう見えて人見知りだぞ。


 村の広場の中央に薪木が組み上げられており、ふと、誰かがイグニッションを唱えたようだ。大きく、一気に着火、燃え上がる。キャンプファイアの完成だ。


(まぁ、良かったじゃないですか。お酒も飲んで、今日は騒ぎましょう!!)


 えっ!?チユ未成年だよ。まだお酒は・・・


(エルフの村に子どもはお酒禁止なんてルールありませんよ。)


 そ、そうだな。飲もう!!


 目の前にお酒が運ばれて来る。澄んだ透明な色をしている。日本酒に近いのだろうが。


「神子様の勇姿を祝して、乾杯!!」


 村長の音頭と共にグイッとお酒を喉に入れる。

 香りも豊かで少し甘いお酒だ。なんかグイグイ行けそうな感じだ。


「チユちゃん、ここにいたんだ。目立つね。」

「ユメしゃんじゃないですか〜。戦闘中どこ行ってたんでしゅかー。戦争に巻き込まれてないか心配だったんでしゅよ。」

「無傷よ。心配ありがとうね。それよりチユ、あなたが心配だわ。なんか出来上がってるし・・・」

「そんな事ないでしゅ。一口ぐらいで酔っ払ってたら、みんなの笑い者でしゅ。」

「でしゅ。」


 ユメがそう呟くとエルフの戦士から大爆笑が巻き起こった。

「神子様は戦闘は強いが、酒に弱い」とか、「中身は子ども」とか好き放題言っている。


 ユメちゃん、「でしゅ」ってそれは俺の真似か?またオーバーに表現して笑いに変えたな。そんな赤ちゃん言葉になるほど酷くないぞ!!


「ユメ様も聞いて下さいな。神子様の武勇伝を!!」


 村長がそっとユメちゃんを輪の中に招き入れた。ユメちゃんはソワソワしていたけど、受け入れたように・・・


「是非聞かせて!!」


 と笑顔で言った。


 村長は熱く語り出す。

 誇張表現が強すぎて、もはや人間の仕業とは思えない話のクオリティだ。


 なんでも俺は空を飛んでいたらしい。右手をかざせば絶対零度、冷却ビームを。剣を握ればまるで嵐のような斬撃が吹き荒れる。それでもって敵を神の雷を持って一瞬で制圧。その神の雷とは何かといえば・・・


「神子様の左足には気をつけろ。」

「剣を振るうより、素手の方が強い。」

「実は手加減する為に剣を使っている」


 なんて尾ひれがついている。これにはもう爆笑ものだ。とてもじゃないけどエルフじゃない。魔王だよ魔王。俺は笑い転げている。


 でも・・・そういえばユメちゃんってなんかよく分からないけど呪い持ちだっけ?


<呪い・・・以前そう表現しましたが、正確にはユメ様の持つ魔力が他の人に悪影響を及ぼしているだけでございます。>


(ユメちゃん、めっちゃ気にしてるよね。)


<そうですが・・・。エルフは1000年生きると言われてます。ユメ様の悪影響は10年一緒にいて1年程度寿命が縮まります。エルフの前でそんなに気にする必要ないのですがね。>


 そっか。ん?ならどうしてユメの家臣が5年以内に死ぬの?鬼人族って寿命短いの?


 俺の心配を他所に・・・


「信じられない!!いいな。私も見たかったな!!」


 と、ユメちゃんは興奮している。良かった。村長の話は誇張表現が酷いけどユメちゃん喜んでくれたようだ。遠慮も無くなってるみたいでエルフのみんなと馴染んでる。

 多少寿命短くなるらしいけど、今日は無礼講だ。飲もう!!気にせずどんどん飲もう!!


 村長の話を聞きながら一杯目を空にする。


「・・・・・・そうですな。まさに神ですぞ。」

「へぇ。凄い!!チユちゃんはまさに神!!凄い!!」


<マスター、村長達は盛大に勘違いしてますが、いつものように間違いをたださなくても良いのですか?>


(テマルンドも飲んでるか〜?)


<マスター・・・私は呑みません。チユ様、代わりに弁明をしてあげてください。>

(頭がぐわんぐわんしますぅー。水下さい・・・生活魔法アクア!!アクア!!酒よ、水になれ!!)

<チユ様、イメージがぐちゃぐちゃですし、生活魔法ではなく水魔法・・・ああ、もういいです>


 そこへ・・・文官達が騒ぎ立てる声を聞く。良く耳をすませてみると。


「おい!!誰がアイツを村に招き入れた?」

「アロンの旦那をボコボコにした赤鬼だよな・・・」



 文官達の視線の先・・・村の中央で酒を一気飲みする赤鬼がいた。あまりの豪快な飲みっぷりに目を奪われてしまう。


「おい!!お前ら酒弱いなぁ!!もっと強い奴はいないのかぁ!?」


 そういえば、アイツ、捕虜にして村長の家の裏の、木の牢獄に放り込んでおいたはず。

 なんで皆に混ざって楽しそうに酒飲んでるんだ?俺も混ぜろ!!


「お〜い、赤鬼〜!何してるの?」


 俺は声を掛けた。


「宴だろ?みんな楽しそうにしてるのに俺だけ1人ぼっちじゃつまらねぇじゃん?じゃあさ。牢屋抜け出してみんなで騒ごうぜって話。」

「なるほどね。お酒飲んでるか?」

「いや、それがエルフって酒弱いんだな!!張り合い甲斐がなくて困ってんだ。」

「なるほど。私が相手になぁる!!」


 俺は腕まくりをし、赤鬼、チャッピーの前に立った。


「おう。こんなちっちゃい女の子が相手かぁ?剣は強ええかも知れねぇが酒なら負けんぞぉ。」


 と赤鬼楽しそうにニカッと笑う。

 ソワソワし始めるのはエルフの戦士達だった。


「神子様!!貴方はもう酔ぱらってますからダメです!!」

「また吐きますよ!!後一口で、戻します!絶対に!」

「もう飲んじゃいけません!!」


 エルフの戦士達に後ろから取り押さえられた。赤鬼が遠ざかっていく。


「離せ、離すんだ!!じゃあ誰がアイツを倒すんだ?」

「少なくとも酒に弱い神子様じゃないことでしょう。」

「酒に弱い?どこが?」

「今まさに倒れそうじゃないですか!!何言ってるんですか?」


 そんなエルフの戦士達とのやり取りを見ながら


「じゃあ、誰が行くんだ?早くやろうぜ!!」


 と子どものようにチャッピル笑う。そこへ・・・


「ワシが行く!!」


 名乗りを挙げるのは村の長。皆に動揺が走る。


「お婆婆様!?」

「村の威信にかけて奴を倒す!!」


 と言ってチャッピル。睨んだ。


「ほう、老人が相手か?」


 この流れ、村長との一騎打ちに持ち込まれそうな流れなのだが。


「面白そう!!私も混ぜて!!」


 とユメちゃんが参戦。


「ほう。老人と子どもが。お前エルフじゃないのにエルフの肩持つのか?」

「いいじゃない。宴会の席は皆が楽しむものでしょう?その方が楽しいし。」


 とユメが言うとニカッと笑う赤鬼。


「かっかっか!!そりゃそうだ!!他に挑戦者はいないか〜。」


 「いや、私が・・・」と挙手して前に行こうとしたのだが全力で止められる・・・。なんで俺じゃダメなんだ!!?


 そうこうしている内に3人の勝負が始まった。


 酒樽を用意する審判。同じ大きさの木のジョッキが用意されて、わんこそばのように注がれていく。

 一杯、二杯と、まるで水を一気飲みするほどの勢いで飲んで行く3人。

 おお・・・なんであんなにハイペースで飲めるんだ!?

 村長はまだしも同い年のユメちゃんまで。

 さてはイカサマしてるな。絶対に中身は水が入ってるはず。


「審判!!あれお酒じゃないでしゅ!!あんなにごくごく飲めるものじゃありまへん!!」

「神子様。あれはお酒です。疑うのなら匂いを嗅いでみてもらえますか?」


 文官の一声に俺は・・・


「どれどれ?」


 と言って樽の中身を俺のコップに注ぎ、一口。爽やかな甘い香り・・・なんてない。喉が焼ける感覚・・・痛い!!熱い!!何これ!?頭がふわふわする!!


「の、飲んだのですか!!?止められてたのに。勝負用にアルコール度高い奴を用意しました。神子様、如何ですか?」


 う、うえー。の、飲めない・・・。頭がふらふらする。


「おおっと!!お婆婆様、早くもダウンか!!?そしてチャッピー選手とユメ選手が八杯目に突入!!これはハイペースです!!ユメ選手、そんな小さな身体でどこに収まってるのでしょう!?」


 会場は大いに盛り上がる。ユメと赤鬼の一騎打ちが始まった。


「姫さま!!赤鬼なんて捻り倒してくれ!!」

「俺たちの仇だぁ!!」


 と声援を受けるユメ。それを聞いた赤鬼は


「倒せるもんなら倒して見ろ。まだまだいけるぞ。」

「あら、奇遇ね。私も全然酔ってないわ。このお酒、アルコール入ってないんじゃないかしら?」


 そ、そうだ。何かイカサマが働いてるに違いない。


「審判、審判、それは本当に酒なのか?」

「そこに地面とキスしてる神子様とお婆婆様が何よりの証拠。」

「お、俺が誰とキスしてるって!?そんなデタラメ信じないぞ・・・。」


 ああでも、地面がひんやりして気持ちいい。身体ほてっちゃってなんか気持ちいい・・・


「なぁ、アイツらほっといて飲もうぜ。」

「そうね。決着をつけましょう。」


 そう言ってペースを上げる2人だった。

お読み頂きありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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