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第38話 神子は戦争前に、レイア姉からレクチャーを受ける。

楽しんでもらえれば嬉しいです。


 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 昨晩の話である。

 ユメちゃんを家に招待したところ。


「迷惑はかけられない」


 と言って、野宿しようとしていた。

 一国の王女様を野宿させるとか、天地がひっくり返ってもあり得ない話なので、空き家を探す事に。でも空き家なんてあるはずがない。

 仕方ないので村長の家の錬金室ではない方。遥か家の上の食糧貯蔵庫にて2人で就寝することにした。

 何故かユメちゃんもチユもテンションが高く、眠くならなかった為、錬金室にお邪魔してユメちゃんと一緒に神子の霊薬を10個作り眠りにつく。

 ああ、毎日が濃い。

 運命のモンスターパレードは次いつに来る?


 そんなことを考えながら今日も雨宮アマタは目を覚ます。

 ベットの上にはいない、機械だらけの都会の喧騒を部屋の中から眺めていた。チユは車や電車が行き交うこの風景が大好きなのだろう。


「アマタ、最近お寝坊が過ぎるわよ。さすがに身体を動かしなさい。」


 そう部屋の外からレイア姉の声が聞こえて来る。

 気持ち的にエルフの村の防衛。ユメの抱えている問題。主犯格であろう敵ボスの尋常じゃないほどの強さ。全てひっくるめて、ゆっくりしたい。ダラダラしたいのだ。

 まぁ、それはチユが決める事なんだが。

 そう思っていたら部屋の扉が開け放たれた。レイア姉が侵入してくる。


「へ?」

「ちょっと来なさい。公園に。」


 いつも温厚なレイア姉が怒っていたのだった。




 公園にて、俺は柔道着に着替えさせられていた。レイア姉も何故か柔道着に着替えている。

 普通、こういうの、道場でやるもんじゃないの!?

 レイア姉の魂胆が見え見えだ。


「構えなさい。」


 レイア姉はこれでも空手の有段者。アバターに引きこもっていたアマタと比べれば筋肉のつき方も全然違う。女だと思って甘く見てると大怪我をする。


「え、ちょっと、構えるって?」


 おどおどしているのはチユである。もちろんチユは空手など一切した事ないので「構えろ」だの「型をなぞれ」など言われても本気でわからない。


 ーーーー!!!!


 レイア姉の回し蹴りが飛んで来た!!

 チユが思いっきり目を瞑った瞬間、コントロールは俺に移行する。寸前のところで見切る。斜め上から鞭のように振り下ろされる足を紙一重で回避。風圧で頬に傷が入る。

 幸か不幸か、戦闘になると俺は自由に動けるんだよな・・・と愚痴に似た思考が頭を横切る。


(アマタさんに神の祝福を・・・)


 まぁ理由は、チユが魔法に集中しちゃうからなんだろうけど。


(チユ、ブレスは要らない。ライトヒーリングだけ構えてくれ。)


(は、はい!!)


 有段者の拳は流石に受けると痛いどころの話ではない。だが、曲がりなりにも俺は、親から武術を教えられている。対応出来ない俺ではない。


 空手だけではない。ムエタイ、柔道。ボクシング、プロレス、空手、護身術、テコンドー。全てミックスした総合格闘技の合戦がただの公園で繰り広げられる。


「自堕落な生活してるくせに全然鈍ってないじゃないの。」


「アバター世界で長年命の取り合いをして来たんだ。勘はそう鈍らないよ。」

「そうかしら?」


 側から見たら、警察を呼ばれかねないぐらいガチの殴り合いをしている。


「レイア姉のそれ、何の拳法?全然、攻撃が効いてない。」


 そう、お腹周りを中心に濃いオーラを纏っているような感じ。それにより、レイア姉の総合的防御力が上がってるような。


「丹田っていうのよ。達人はこれで全ての攻撃を無効化し3トントラックを動かす。」

「すげぇ・・・人間じゃねぇ。」


 関心して見ているが。実質、真気収束も同じ要領ではないのか?

 普段、腕や筋肉に力を纏わせているけど、腹に集中させると、全体的に防御力が上がるとか?


 そう考えてるといきなり掴みかかって来た!!

 やばい!!投げられる!!

 必死に抵抗を見せ、手と手を握り合う取っ組み合いにもなる。うわっ握力強!!これ、筋肉量とかではなくて気だというのか?レイア姉、どんだけ達人なんだよ!!


 女だろうが関係ない、胸ぐらだって掴む。エロい意味はなく、純粋に投げられるから。必死なのだ!!


 俺の息はすぐに上がる。掴みを振り払うと、追撃でレイア姉の掌底が俺の腹を捉えた。


「あら、アマタも出来るじゃない。丹田。」


 いや、呼吸が止まるほど痛い。


「見よう見真似なんだけど・・・いきなり呼び出されて、殴られる理由を教えて下さい。」

「殴るなんて失礼ね。れっきとした試合じゃない。」

「いや、異世界じゃないんだから警察来ちゃうよね。決闘禁止法ってあったよね!!確か・・・」


 ブレスを掛けない俺は、弱い。でも、俺はこれから倍以上強い相手とマッチアップする事になる。筋肉ないからとか言う理由で負けてられない。

 今、このステータス的に不利な状況で勝てるとすれば、やはり技の読みに勝った方だろう。


「エイルから聞いたわよ。アマタ、何に巻き込まれてるの?」


 姉のパンチはフェイク、高速の蹴りを躱す。そこでカウンターのジャブを入れるが塞がれる。


「巻き込まれてるように見える?」


 と返しながら掴みにかかるが、ステップで避けられる。肘鉄が飛ぶ・・・

 肘って、当たると皮膚が切れるんだよな・・・

 反射で躱す。


「1日16時間寝てるわね。見えない。」

「だろ?」


 おかげでチユが寝不足だ。今はエルフの村が活動のメインだ。すまんチユ。もう少し我慢してくれ。


「でも、様子が変。ボス戦の前の日のアマタってこんな感じだった。」


 図星です。ダンジョン攻略ではないけど、ボス戦前のアマタです。

 言葉で発する代わりに俺は回し蹴りを放った!!

 いつものように、ムチのようにしなった滑らかな動きだった・・・。


 ガードの上から顎にクリーンヒット!!


「あ!!レイア姉!?ごめん!!」


 地面に横たわるレイア姉に俺は慌てて駆け寄る。


(チユ!!)

(ライトヒーリング!!)


 応急処置をした。傷は残らないと思うが。心配だ。


「痛た・・・。星が見えたわ。アンタ、空手も柔道も平凡なくせに蹴りだけバカに強いんだから。今の蹴り、関節どうなってるのっ!?って動きしてたわよ。」

「そうかな。普通だけどな。」


 ゆっくり上体を起こすレイア姉。そのまま改まったように言葉を発する。


「アマタ、種明かしするとね。来月から行く学校、物理的に強くないと生きて行けないから。」

「ああ、学校でいじめられるって話か?」

「いじめもそうなんだけど。舐められたら終わり。凄い荒れてるのよ。学校。今のレベルの乱闘が校内の至る所で行われているわ。」

「ん?昭和なの?その学校だけ時代が違うの?」

「いいえ。今現代の学校事情が深刻なだけ。これからアマタには、対魔導具戦を想定した戦闘訓練をしてもらうんだけど・・・」

「待って、ちょっとついていけない。校内にテロリストでもいるの?」

「授業で使うって言ったわよね。みんな持ってるわ。ルール破って影で魔導具の悪用が耐えないのよ。」

「なんで?」

「そういう文化。」

「ダメでしょう!!」

「皆、私達にバレないように陰でやってる。本当手に負えないんだから。」

「いや、レイア姉にバレてる時点で公じゃん。先生達は何してる!?」

「事情があって取り締まれない。」

「どんな事情だよ!!」

「複雑なのよ。だから手っ取り早い話、アマタに魔導具慣れして貰おうと思って特別講師を呼んでおいたわ。」

「レイア姉が教えてくれるんじゃないんだ。」

「正直、私より強いわ。来て!!」


 フレンドリーな感じで手招きをするレイア姉。一応講師なんだよな・・・

 レイア姉の視線の先には褐色でスタイルの良い男が立っていた。ゆっくりと公園の敷地内に入ってくる。


「ってエイルかっ!!」

「昨日ぶりだな。今日は・・・普通か。」


 柔道着着て公園に立ってる姿のどこが普通なんだよ!!

 いや、普段から普通じゃない格好してるからこれが普通に見えてしまってるのだ。可哀想に・・・


「女装じゃなくて悪かったな。」

「心臓に悪いからこれがいい。雨宮先生の言ってる事、現実だからな。冗談って思ってたら入学して痛い目合うぞ。」

「マジで!?俺、学校行くの嫌になって来た。」

「まぁ、そういうな。楽しもうぜ。」

「楽しむ!?何に!?」

「学校生活だよ。俺は今日は講師として、現代魔導科学の最先端の魔導具を用意してきた。アバターとは勝手が違うぞ。まぁ手始めに魔導具抜きで一戦やろうぜ。」


 竹刀を渡してくるエイル。俺はそれを受け取った。

 対するエイルは・・・まずは竹槍か。まずは様子見で魔導具なし。


 そう考えて、ふと思った。エイルと模擬戦って何年やってなかったっけ?エイルに勝った事ってそもそもあったのか?

 流れで模擬戦する事になったけど、生身のエイルに勝てずして、<阿修羅族>との戦争に勝利出来るのか?


「久しぶりだな。勿論勝つつもりで行くからな。」


 俺は宣言する。


「お前、俺に勝った事あるのかよ。模擬戦だと思って気を抜くなよ。怪我する。」

「怪我しても回復薬があるだろ?存分にやろうぜ。」


 俺が殺気を放つと、エイルはニヤリと笑ってそれ以上の殺気を放って返して来る。


「言ったな!!」


 エイルが槍を構えるその姿は普通の高校生と思ったら度肝を抜く。まるで超えられない壁。戦国時代の名武将がこの時代にやっ来てたのかと錯覚させられる。

 あまりの迫力に、足が震えそうになるのだ。


「アバターとリアルじゃ違うんだよ。そこを忘れるなよ。」


 魔法無し。まずはこれでどこまで行けるか。

 そう思ったら、動物でも突っ込んで来たのか!?と思うような衝撃が手に走る!!


 エイル通常攻撃。ただの捻りもない突きの一撃。竹刀で直に受けたらマジで重い!!うわっ!!手が死んでしまう。


 ひゅひゅっ!!2連の風切り音。俺は寸前で見切り避ける。長い槍を振り回してるだけのエイルなのだが、槍回し、早すぎる。やばい。


 俺は回避に専念する。攻めないのではなく攻めれないのである。剣の間合いで戦わせてくれないからだ。

 ガードを取ると、接近出来るが手が痺れる。下手したらガードの上から崩される。これはやばい。


「さすがアマタ、簡単にはお前のガードは崩せないよな。それは知っている。だが、後10手で詰みだ。」


 そう、近寄らせてくれない上にこの技の質・・・そしてこの筋肉量の違いにより勝てない。そして竹刀と竹槍、双方の耐久性が持たない。


「さて、どうかな。」


 俺は回避に徹する。エイルの槍をふきとばそうと、持ち手を弾くように突いた。


「あめぇ。」


 読まれていた。俺の突きひょいっとかわし、上から下、強力な叩きつけるような斬撃が降る!!


 重い!!やばい、これ、本物の槍なら確実に剣ごと両断されていた!!のけぞってしまう。


「エイル、読んでたな!!」


 どうせのけぞるなら・・・俺はバク転しながら体制を整える。その際に足を思いっきり振り上げたのだが、空を斬る。

 これも読まれてた。寸前で避けられ・・・


「まぁな。戦闘経験の差だ。」


 確かに10手目にして竹槍が俺の首に突きつけられていた。

 悔しいな・・・負けないって決めたのに。


「馬鹿いえ。そんな変わらないだろ?俺に何が足りない?」

「アマタ、お前は少しはポーカーフェイスを覚えろ。アカネを見習え。表情で読まれる。アマタ、お前は守りは優秀だが攻め手に欠ける。もっと技のバリエーションを広げろ。」


お読み頂きありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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