第36話 鬼人族の姫をお迎えしての戦争準備
楽しんでもらえれば嬉しいです。
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
ああ、これから戦争始まるっていうのに本気でこの村に居座る気なのだろうか、このユメ王女は。
そう頭を抱える俺。村を周りながら「あの家は寝床に丁度良さそうね」ってなんか吟味し始めている。
今、俺たちは再び魔導砲が置かれている西門の城壁の上に来ていた。
「へぇ、見た事ない兵器が置いてあるのね。こっちは巨大な弓かしら?」
「バリスタって名前よ。そしてこっちが魔導砲。」
「魔導砲?」
「戦争の兵器です。」
凄い凄い!!と言ってはしゃぐユメ王女。その隣には、護衛は要らないって言ってたくせに白髪オールバック。白髭のタキシードに身を包んだ老執事が立っている。
「ほう、懐かしい。このバリスタは先代神子様も使っておられた武器でございますぞ。こちらは見た事ない兵器ですが、きっと、発動すればどんなモンスターでも4、5千は軽く葬り去る事でしょう。」
この老人、先代神子様を何故知ってる?鬼人族の寿命って500年も生きられないよね。それに一目でこの魔導砲の真価を当てるとは、その観察眼は恐ろしささえ覚える。
普通に考えて、お姫様の護衛がこの1人で完結するほど、この老人は有能だろう。
「えっ!?セバス本当!?エルフの村凄い!!」
いや、でもさすがに4、5千は言い過ぎでしょう。俺はせいぜい1000までかと考えている。
この老執事、本気で気配が無くて怖い。
俺はある程度相手が放つ気配を読み取って相手の実力を測っている。
気配が無さすぎて全く読めないなんて経験した事のない出来事だ。単純に魔力抜きにして、戦闘経験だけの話をすれば俺の実力を遥かに越えた人物である。
身近にそんな先輩が今まで居なかった為、是非とも技を盗んでやりたい気持ちになる。でもここは、俺たちの実力を示さなければと思い立つ。
「弓兵長さん、バリスタを使用して見せて下さい。」
俺は呼びかける。
「御意!!」
短い返事と共に準備にかかる。まぁ矢は装填されているので撃つだけなのだが・・・。
弓兵長さんはまるで機械のように手慣れた動きでバリスタに矢を装填する。風の精霊が一瞬、バリスタの槍に入り込むような気配を感じた。これはエンチャント付与って魔法か?さすがに盲点だった。エルフ族はこんな魔法を扱えるのだ。
弓兵長さんが狙いを定めて・・・放つ!!
一瞬台風が巻き起こったのかと思った。
余波で目も開けられないほどの突風の後、遠くの山が風穴を開けて変形しているのを見た。
(え?バリスタってこんなに強かったっけ?)
<だから、私がエルフ族に1番合う兵器を開発したと言いましたよね。それに合わせて昨日、チユ様の魔力アップのおまじないが効いてるのでしょう。>
なるほど。エルフの実力を訂正せねばならない。
「これも、左の兵器ほどではありませんが程度の低いドラゴンなら倒せそうな威力ですな。」
「いつの間にこんなに強くなったの?エルフの村ってこんなにやばかったっけ?面白い!!」
老執事とユメとの会話に誇らしげなチユ。老執事はアドバイスを残す。
「神子様。大変失礼な事をお聞きしますが、差し支えなければご意見を一つよろしいでしょうか?」
「はい、是非とも聴かせて下さい。なんでしょう?」
「そのバリスタに装填する槍は木製ですか?鉄は試してみました?メタルは?ミスリルは?それによって、鉱石で作った槍を使えば更に威力が上がる事でしょう。」
「なるほど。相性の事ばかり考えてそれは失念してました。」
これはチユが植物魔法グロウで作った木の根の矢だ。今度エイルから購入した矢を使ってみよう。
「いえいえ。要らないお世話かも知れませんけどね。」
「とんでもないです。気になった事、全て言って下さい。」
セバスさんにそう返事をし、ユメに向き合う。
「・・・・・・あの・・・ごめんなさい、戦争前の最終仕上げをしようと思います。10分ほど作業に集中します。案内中にすみません。」
「良い。存分にやってくれ。」
俺はそう言ってユメちゃんを待たせ、城壁の周りに設置出来るだけのバリスタをどんどん制作、設置していく。
制作と言っても、魔素分離した素材をボックス内調合し、召喚するだけなのだが。
これは元々朝一早めに済ませてしまおうと思っていた事だった。
ついでにセバスさんの助言通り、鉄の槍も制作しておこう。でもこのアイテムストレージ内で物質調合するだけの簡単なお仕事。技術は楽ちんでいいが、品質的に並以下のものしかできない。本当に最高のものを作ろうと思ったら村長の家の錬金釜をお借りするしかない。
(アマタさん、名前間違えてます。調合釜です。錬金釜って怪しそうな名前じゃありません。)
でも、今は質より量。その手際の良さにユメちゃんもセバスさんも感服していた。
次の場所へ移動する。
「へぇ、エルフ族が遂に農作業を始めたのね!!」
畑仕事をする人の中には、お母様、お姉様の姿もある。
結構大人数集まっているのだが、何をしているのか?
「お母様、何をしてますか?」
「収穫よ。」
「え?もう?」
まだ3、4日程度しか経ってないじゃないか。
「植物魔法グロウのおかげね。」
そうか。凄いなエルフって。と思っていたらお姉様が悲鳴をあけていた。
「チユ、畑を荒らしにやってくるモンスターがいるの。倒すの手伝って!!って・・・あ。どうも。」
泥だらけになったお姉様が弓を構える。土壁の上から侵入してくる猿型のモンスターに向けて放つと綺麗な曲線を描き、3体まとめて貫いた。お姉様は俺の隣にいたユメ王女に気がついたのか、ペコリと会釈。
ユメちゃんは着物の裾を持ちご挨拶。
「こんにちは。鬼人族のユメと申します。チユのお姉様、私の事はお構いなく。」
「私はニーナです。ちょっと妹お借りしますね。チユ、行くよ!!」
<モンスターと言ってもFランクでこちらに敵意はありません。純粋に農作物を食べたいのでしょう。>
俺はお姉様の手を引っ張られ、敵の狙い易い位置に移動する。崩剣ディアブロスを砲撃モードにし、弾なしのエネルギー弾を放つ。
作物を狙うのはサル型のモンスター、ウッホと、鳥型のモンスター、ポルポだ。追尾機能付きなので外す余地がない。
ここでもセバスさんの技術指導が入る。
「チユ様は不思議な武器をお使いのご様子で、アドバイスのしようがございません。ですが、姉殿の場合、エンチャントがまだあまりよろしくないようですね。追尾、着弾時破裂、貫通強化。弓にも矢に付属出来る魔法は実に200種類。それに、魔法の矢を召喚する魔法マジッククイーバーですな。これは別に弓につがえる必要ありますか?」
老執事の持っている知識は半端なく役に立つ。引き出しの多さにビックリする。もしエルフの村に学校が出来た際には臨時講師として招待したいぐらいだ。
<なるほど。どうせ生成するなら、ファイヤーランスみたいに放ってしまえという事ですね。>
言われてみればそうかもしれない。弦を弾かなくてもいい分、6本召喚したのなら6本瞬時に発射される。
「なるほどです。それだと効率が全然違う。勉強になります。」
それも熱源を探知し追尾するのなら最強だろうなと思いながら返事をする。するとチユから好奇心が伝わってくる。
(私、やってみたい!!)
<マスターからのイメージも転送します。>
(面白そう!!)
空中に展開された魔法陣。その巨大な円の外側に力の塊が集中する。
「マジッククイーバー!!誘導エンチャント!!」
発動した魔法の矢は10本、俺の背後に均等な円を描いて宙に浮く。ただ浮いているだけではなく、そのままドリルのように高速回転している。
チユが身体を動かした。その指差すその方向に矢は一斉に飛んで行く。
そこには逃げたウッホ達がいる。必死に逃げるが、誘導エンチャントにより回避しても矢は直角に曲がる。回避不能。更に当たった瞬間、あまりの威力に弾け飛ぶ。
結果は全滅。一瞬の出来事だった。
<アマタ様のイメージ通りです!!ナイスですチユ様!!>
「チユ・・・今の何?」
呆然と立ち尽くすお姉様。それはユメ王女様も同じであった。俺ではなくチユが発言する。
「面白そうだからセバスさんの助言通りにやってみました。褒めて!!」
「チユ、こんな魔法無いわよ!!あんたオリジナルの魔法を創れるの?」
「オリジナル魔法?魔法ってイメージですよね。」
「イメージ?文官達の言葉を借りるなら『魔法は詠唱による精霊の御業』なのよ。チユ、あんた魔法を創るなんて本当に凄いんだから。少し前まで魔法が使えなかったなんて思えないわ。神子様らしくなってきたんじゃないの?」
「お姉様、それは褒めすぎです!!」
このやり取りを見て老執事は笑う。
「ハッハッハ。これは愉快。アドバイスした事を瞬時に実行してしまう手腕、末恐ろしい逸材ですな。ユメ様も見習ってくださいませ。」
「セバス、うっさい。」
実力者も、お姫様には敵わないって訳か。
「ねぇ、チユ。今の魔法私にも教えて!!」
「え?私が・・・お姉様に!?そんな恐れ多い。」
「何よ。その魔法、独り占めする気?」
お姉様に睨まれる。これは参った。
「独り占めじゃないです。教えます。教えますから。」
チユはお姉様に今の魔法のやり方を手取り足取りレクチャーする。
その間、ユメちゃんは結構離れた位置から私達を見守っていてくれた。
人見知りなのだろうか人が近くに来るのを嫌がっている感じ。文官達やエルフの戦士達だけではなく、お母様ですらセバスの後ろに隠れて、話しかけて来るのを必死に拒んでいたのだった。
お姉様には火のエンチャント、土のエンチャント、雷のエンチャント。突撃強化、貫通強化など、知りうる知識をチユは教えた。
マジッククイーバーで矢を召喚した時点でエンチャント付与を済ませていれば時短にもなる。
というかそもそも、これも金属製の矢を作り、それを弓につがえ、いろんなエンチャントを施してから放った方が威力は高いのでは?そんな事を思う俺であった。
畑を離れ、村の中央へ戻る。
「ごめん。ついついお姉様に教えてたらユメちゃん放置してた。」
「姉妹同士で仲良いのね。羨ましいわ。」
「お兄様とも仲良いのよ。ケンカばっかりだけど。」
「同じ3人兄弟の末っ子なのにこうも境遇が違うなんて嫉妬しちゃう。」
「えっ!?ユメちゃん、兄妹仲悪いの!?」
「最悪。」
「そうなんだ。可愛そう。仲良くする秘訣は、相手を尊敬する事よ。」
「今更無理よ。絶対。この話はやめ。」
「ええ!?もっとユメちゃんの話聞きたい。ユメちゃんって人見知りなの?」
「うーん。そう。だと思う。」
「煮え切らない返事。」
ふと遠くから何かが聞き覚えのある声が響く
「おーい、チユ!!返事しろぉー!!」
お兄様の声だった。
「私はここでーす!!」
声のする方へ手を振ってみる。すると猛ダッシュで接近するお兄様。
「エルフの戦士と模擬戦する。プロシュートさんと模擬戦をするんだ。お前も来い!!あ・・・」
プロシュートさんって誰!?そう考えているとお兄様とユメちゃんの目がしっかり合った。お兄様はビックリしたように途端にパッと目を逸らす。
「初めまして、チユのお兄さん。私はユメと申します。」
「が、ガイルです。よ、よ、よろしくお願いします。」
お兄様がかみかみだ。挨拶も明後日の方向を向いてやってるしどうしたのだろう。
「チユには村の案内をしてもらってます。どうか、模擬戦の見学をさせてもらってもいいですか?」
「か、か、構わない・・・です。」
お兄様はソワソワしている。声が裏返ったりしてどうしたのだろうか?
そう思ったらセバスさんがニヤニヤしている。
「ユメ様はまた殿方の心を射止めてしまわれたのですな。」
なるほど。ユメちゃんみたいな東方系美少女がお兄様の好みなのか。なるほど。
「セバス、茶化さないでちょうだい。」
どうやら、大体の戦士達との模擬戦は終わったらしく、これからプロシュートさんとお兄様が戦うようだが。
プロシュートさんって誰!?
うわっ筋肉ダルマが立ってるし!!というか、ユメにウインクしてる。さては、プロシュートとは筋肉ダルマの事で、プロシュートもユメ姫さまに一目惚れと・・・
<マスター、マスター、プロシュートさんは貴方様にウインクをされてます。ほらまた。>
いいや、それは絶対にあり得ない。筋肉ダルマとは仲良くなるフラグなかったよな!!
お兄様、これには衝撃だったようで筋肉ダルマに食い気味に突っかかる。
「プロシュートさん。ウインクしてましたよね。まさか一目惚れですか?」
<ガイル兄さま。(ユメさんに)という主語をお忘れですよ。主語を入れないと誤解されますよ。お兄様にそう伝えてあげてください。>
そのテマルンドの親切心に内心ビビる。
(嫌だよ。巻き込まれたくないし怖い。)
とやんわり回避。展開を見守る。
「(神子様に向けて)ウインクしたぞ。慕っているだけだ。」
「なんだと・・・。許さん。真剣で勝負だ!!」
「急になんだ?まさか(妹に)恋しているのか?」
「悪いかよ。(ユメさんの前で)無様な姿は見せられねえ。」
「なら俺も(神子様の前で)無様な姿は見せられねえ。兄だかなんだか知らねえが、お前を倒してアームレスリング大会にお誘いする!!」
「はっ?いいぜ。(ユメさんと)一緒に見に行くのはこの俺だ!!」
<この人達、主語が無いから双方、盛大に勘違いしてます。何故カッコの分の主語をちっさい声で言うんですか!!>
なんか興奮してきた。この鬼人族の美少女にして姫様、ユメを取り合って種族を越えた禁断の恋が始まる。その始まりがこの決闘からなのである。
(アマタさん。私もワクワクします!!)
だろ!?
「ふふっ。チユちゃんは村のみんなからモテモテなのね。可愛いいもんね。嫉妬しちゃうわ。」
とうの本人はまさか自分の為に決闘が開始されてるなんて微塵も思っていないようで、呑気なもんだった。
<マスター、その解釈も半分不正解ですからね。>
「ユメちゃん、この戦いはユメちゃんを取り合う決闘だよ。何勘違いしてるの?」
「いや、今の流れでどうしてそうなるの?あのプロシュートさんが『お兄さん、妹さんを俺に下さい!!』『俺を倒してそれを言え!!』て展開じゃないかしら!?」
「ど、どんな解釈!?うわっ妄想したら鳥肌立ってきた。怖っ!!」
お読み頂きありがとうございます。
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異世界召喚帰りの人達のせいでリアルが大変です。〜発現したスキル[精霊の守護]によって精霊の師匠を得て錬金術を極めてアイテム無双します〜
ローファンタジーで、主に九州が舞台となっております。




