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第33話 戦争準備にて神子は魔導兵器を友達価格で購入する。

楽しんでもらえれば嬉しいです。


 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 私はエルドラン。祭司長であり村長ジョアンヌの弟、年齢は700になろうとする。

 なんなんだあのガキは。散々エルフの村を改造したと思ったら、あんなひ弱な身体で俺たちの伝統ある魔術を愚弄した。


 何が総評だ?偉そうに口を開きやがって。

 謎の握手会を始めたと思ったら日が暮れると同時に家に帰って眠るとは・・・

 子どもではないか!!

 あんなのが神子とは信じられない。神子とはもっと謙虚でおしとやかで、叡智で、何より皆の見本でなければならないというのに・・・


「ちょっと聞きたいのだがここに神子はいるか?」


 このエルフの村に様付けしない人はいない。不審に思って声のする方を見た。

 逆光だ。月の光に溶けるように黒いシルエットが露わになる。巨大な身体に6本の腕。俺は見上げていた。


「お前は・・・阿修羅族。」


 俺の側近はどうした。何故俺はこの不審者と2人っきりで話をしている?不審者がいるのだ。村の兵士を連れて・・・


「ほぅ。その名を知っているというのはさすが祭司長、年の功ってものだな。」

「何故ここにいる。村には認知阻害の結界が貼ってある。簡単に中に入れない筈だが・・・。」

「その結界も何十年も変えてないのだろう?セキュリティが甘いんだよ。」

「なんだと!!」

「神子とはなんだ?」


 500年、エルフの皆が待ち侘びた世界を平和に導くもの。

 あのガキにもいずれそうなって貰わければ困るというもの。


「知らぬ。知ってても教えぬ。」

「神子を寄越せ。そしたら皆の命は奪わぬ。」

「それは出来ぬ。それに、モンスターを集結させていると言ったな。どのみち俺たちを殺すのだろう?鬼人族を襲撃するついでに。」

「そこまで計画がバレていたか。」

「殺すか?俺を殺すか?どのみちお前に協力する気は無い。」


 俺を殺せば俺の黒魔法が発動する。コイツ諸共巻き添えじゃあ!!

 黒いシルエットの鬼は俺の首を掴み、持ち上げる。

 苦しい。これが死というものか。


「老いぼれが。どうせモンスターの大群が通りすがりに殺して行く。今殺すのになんの価値がある?」

「うぐぐ!!」

「皆に伝えろ。計画は必ず実行する。お前たちの大事な神子は祠に匿っておくんだな。」


 鬼の赤い目が俺を射抜いた。俺は恐怖にその目を逸らす事は出来なかった。突如苦しみから解放された。


「ごほぉごほぉ!!おのれ・・・。」


 屈辱だった。この祭司長の俺が何も出来なかった。あれが朱雀という奴か。

 皆を逃さなければ。この村が亡くなってしまう・・・



    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 まさか、握手をするだけで昨日の残り時間全て使うとは思わなかった。


 そう振りかえりながらベッドから身体を起こす。

 ああ、毎日が濃い。こっちの世界では何もしていないのに何故か精神的に疲れてる。


 異世界ではないこの現実世界で俺がやる事といえばなんだろうか。もちろん身体を休める事ではない。チユの村を、皆を守る為に必要な準備はこっちの世界でしか出来ないからだ。


(チユ、お願いがある。)

(何でしょうか?)

(エイルに会おうと思う。今日一日、付き合ってくれ。)

(はい、もちろんです!!)


 アマタの世界で身体を動かすのは基本チユだ。チユが嫌がる事はしたくないのだが。こうも快く受け入れてくれると嬉しく思う。


 俺はチユに、何の目的でエイルに会うのか、何を言って最終的にどうなれば良いのか共有し、行動に移す。


(アマタイル、エイルにLINEを打ってくれ)

<了解です!!>





 エイルの親の会社、九条商事は50階建てのオフィスである。その会議室の一室を借りてエイルと2人っきりになる。


「今日はスーツなんだな。不自然なぐらい似合ってるぞ。」

「そうなのです!!」

「正装なのは正しい心構えなのだが、借りる相手を間違えてるぞ。」

「そうかな?」

「なんでレディースなんだよ。その中でもなんでスカートタイプなんだよ。」

「似合ってるならいいでしょう?」

「良くない!!」

「話を進めようか。」

「勝手に進めるなぁ!!まぁ、いいけどな・・・俺の精神的ライフを考えてくれ。」

「はい。考えます。」


 エイルの顔がここで引き締まる。いつも冗談を言い合っていたあのエイルの姿はない。大人として見ても遜色ない、社長の息子としての責任者の顔だった。


「本題だが、大体はLINEで内容を把握している。異世界で大量のモンスター相手に喧嘩を売ろうとしている・・・。そもそもアマタが新しくアバターを手に入れたって聞いてないんだけどな。」

「実は手に入れた。」

「そう簡単に言ってくれるな。アバターガチャはどこの会社でお世話になった?それによって戦闘用アバターか観光用アバターかに大きく変わってくる。」


<私アマタイルは『株式会社・天賦』産ですが、テマルンドは御社にございます。しかし宿っているチユ様はどこの会社にも属してない純粋なエルフにございます。この複雑な理由を説明するにはやはり異世界召喚の事実を説明しなければなりません。>


(なるほど。でもそれだとエルフの皆を新たな脅威に晒してしまうな。)

<そうですね。少なからずエルフでお金儲けしようと考える悪人は出るでしょう。>


 俺がそうアマタイルと相談しているとチユが身体を震わせる。


(エルフでお金儲け?)

(ああ。なんとかエルフの存在は隠したい。)

(分かりました。)


「言えない。」


 と返事する。


「お前、以前アコの名前を急に聞いて来たよな。関係はあるのか?」


(エイル、また話がややこしくなる事言いやがって。)


 どう反応していいかわからないチユはあたふたしている。


「沈黙は肯定とみなす。頼むから否定してくれ。」

「ごめんなさい。言う事が出来ません。」

「それは口止めされてるんだな。」

「はい?」

「とぼけずに正直に答えてくれ。一体誰に口止めされているのかを。」

「えっ!?」

「お前が変な組織に利用されてるんじゃないかって疑いを掛けている。モンスターの大群がシェルターに押し寄せてくるのなら、対応するのは異世界配属の軍隊がやる話だ。だが、お前にそんな軍から誘いがあったなんて気配は一切していない。ならなんだ?あのデタラメな回復薬の一件も踏まえて何かの組織が絡んでいると俺は推理する。間違いないか?」


(アマタさん、どうしましょう。)

(俺が言う通りに声を出してくれ。)

(はい。)


 チユは、俺の思い描いた文章通りに発言する。


「組織は絡んでません。あの、聞いて貰えますか?」

「ああ。言ってくれ。」

「ログインするとそこはシェルターじゃない場所です。森の奥、知らない人達に囲まれてました。小さな村です。」

「何!?それは原住民がいたという事か?」

「はい。そこで俺はそこの文化に触れていました。そこに異変は起きたのです。モンスターが攻めて来ると。」

「それで村の皆を守る為の兵器が必要だと。」

「はい。」


 エイルは考えこんでしまった。

 俺の言った内容はほとんど真実だ。村人はエルフであり、ログインとはチユにログインしているという意味なのだから。眠った瞬間にチユに切り替わるとか、細かい事は追々説明すれば良い。


「あのなアマタ。俺とアマタの仲だから言わせてもらうが、今の話をはいそうですかと信じられる程世間は甘くない。そして今回は兵器を注文したいという話だった。」

「そうです。」

「お前は一体何をしようと言うんだ?戦争でもおっ始める気か?」

「違います。守りたいものがあるんです。」

「えっと、Dから最高Bランクモンスターを数千単位で殲滅出来る兵器はな・・・個人で持てるレベルでは無い!!お前は特殊な環境にいて、国の軍事レベルの兵器を使うような環境に慣れすぎたんだ。」

「そう?」

「原子爆弾落とせば早いんじゃね?そんなレベルだ。もう国単位、それか、エリコさんの会社レベルの国が公認の組織ぐらいしか使用の許可は降りないぞ。」

「原子爆弾ばくだん?」


 そもそもチユには原子爆弾が良くわかっていなかった。、


(チユ、付き合わなくていいぞ。個人で待てないし冗談だからな。)


「冗談だけど、そのレベルでやばい兵器って事になる。そんな国にミサイルを売るような取引を今俺たちはしている。その理由説明がさっきの内容だと・・・親父や会社のメンバーにどう説明していいか分からないんだ。もっと納得出来る感じで説明出来ないのか?」

「信じてないの?」

「アマタ、お前は今まで嘘を付いた事は無かったな。信じていないかと言われたら、今の嘘みたいな話を信じたい気持ちでいる。」

「ならどうにか出来ない・・・かな?」

「更にお前がして来た注文もややこしい。異世界で、かつ、アバター以外でも使用出来る兵器だよな。」

「無いんですか?」

「いや、ある。不良在庫として置かれている奴が丁度。」

「本当に!?」

「お金の話になる。混乱しないように単位を円にするぞ。4000だ。」

「4千万円!?」

「4千億円だ。材料費だけでな。そんな金、個人では払えないのはわかっている。諦めてくれ。」


 俺は固まった。そんなの払えっこない。というか、会社の資産だとしても、それほど持ってる大企業ってこの世にどれだけいるのだろうか。

 俺は頭が真っ白になっていた。チユも察して何も言わなかったが、溜まらずチユは動き出す。


「お願いですエイル様。なんでもします。どうしてもそれが必要なんです!!どうか、どうか、助けて下さい!!」


 と、土下座した。


「おいおい、待て、卑怯だぞ!!女装してやって来て。俺が密室で女の子を虐めているみたいじゃねぇか!!おい、顔を上げろ!!というか事情を話せ。」

「さっき説明した話は真実なんです。信用出来ない話だと言う事はわかってます。でもどうしても必要なんです。みんなを助けたい!!」


 チユは頭を上げなかった。そして、理由も一切話さない。

 その様子にエイルは察した。


「お前、本当になんか厄介な事に巻き込まれてるだろ?」

「いいえ。」

「嘘だな。いい加減白状してくれ。俺はまだ高校生だけど、親父の会社のルールぐらいは知っている。会社の責任者を呼んでくれ。お金の相談もその人とする。」

「そんな人いません。エイルだけが頼りなんです。俺が動かなければ、全てを失います。そこに住む、家族も兄弟も皆、モンスターによって死んでしまいます。無理を承知でお願いします。その兵器を譲ってください!!」


 エイルは困った顔をした。


「まぁ、あの回復薬、毎日1個ずつ納品してくれたら40日で行けるだろうが・・・そんなレベルの取引だ。諦めろ。」


 聞いて、チユは目を輝かせた!!


「やります。」

「そうだよな。諦めるよな・・・って・・・は?」

「毎日1個ずつ納品します!!だから譲って下さい!!」

「おい待て待て待て、冗談だろ!?あの回復薬はお前がたまたまダンジョンから持ち帰った回復薬だろ?いや、不良在庫だから原価でいいけどさ・・・。」

「ありがとうございます。」

「いやでも、まさか、安定して回収出来る方法を知ってるのか!?」

「はい!!今言った通り、その村の特産品なんです。」

「マジかよ!?本当に回復薬、納品出来るんだな。」

「間違いなく納品出来ます!!」

「アマタ、俺はお前を信じてる。俺の会社の兵器を悪用しないと誓ってくれるな。」


 チユが「ぽかーっ」と口を開けている。


(誓いますって言っておけ。)

(つまり交渉成立って事?)

(そうだよ。やったなチユ。)


「誓います誓います!!やったー!!ありがとうエイル様!!本当に、本当にありがとうございます!!」


 気がつけばエイルに抱きついていた。


「アマタ、泣いてるのか?」

「もう、誰かが死ぬのは見たくないから。」


 まさかチユがそんな事を言うとは思わなかった。


(チユも過去に誰かを失った記憶があるのか?)

(エルフの村では毎年当然のように死んでますよ。私はそれを思い出して不思議と、そんな気持ちになりました。)

(そうか。)


 その思いはエイルに伝染する。


「アマタ、テマルの事、引きずってるのか?」


(逆に俺たちの中で引きずってない奴がいるのかよ。)


 俺が心の中でそう愚痴ると、チユはエイルの胸の中で「うん」と小さく返事した。


「そうか。」


 一通り泣き止み、エイルから離れる。


「その、兵器はどこにありますか?」


 と切り出した。


「あ、いや。この部屋にあったら大変だろ。魔素分離して会社のアイテムボックスにストレージとして入ってる。お前、そもそも、購入したとしてどう運搬するんだよ。どこに持って行くんだよ。」

「魔素のまま、アマタイルが受け取って、転送します。」


 うん、これはチユと相談した通り。よく言えました。


「お前は<アバター>かっ!?生身の人間がそれ出来るかよ!!」

「出来ます!!」

「冗談は寝て言えって。いや、そこまで自信満々に言うならやって見せて貰おうか。」


 エイルは半分呆れながら、会社のアバタールーム、システムコントロール室へ案内してもらう。

 ホログラムや、精密機械ばかりで圧倒されてしまう。


 空中に画面が浮かび上がり、その画面をエイルがタップしていく。


「ほら、受け取ってみろよ。出来るか?出来ねぇよな。」


(アマタイル、メインコンピュータにアクセスしてくれ。)


<了解です。同期完了です!!>


「送信先をアマタイルに設定して貰えますか?」

「へ?何故?転送先にアマタイルの文字が!?アマタイルと繋がった!?あ、いや、やるけど・・・アマタイルが生きてる?アコが復活させたのか?」

「なんの話?」

「いや、なんでもない。」


 操作して行くエイル。


<マスター!!受け取りました!!随分と容量のデカい代物ですね。>

(テマルンドへ転送してくれ。)

<了解です。転送中・・・転送まで残り30分・・・>


 急にエイルが頭を抱え始めた。


「俺は頭が痛い。俺はきっと疲れているんだ。現実的にあり得ない事が起こっている!!」

「疲れてるんですか!?ライトヒーリング!!」


 チユ!ちょっと辞めてあげて。


「体光った!!凄い、頭の調子が良くなった!!って、お前何したんだよ。もうツッコミ疲れたよ!!最近、お前といると退屈しねぇな。」

「ありがとうございます!!」

「褒めてねぇ!!」

「あれ?」


 エイルは頭を抱えながら話を進める。


「で、購入したとして、弾はどうする?火炎弾か?雷撃か?反重力か?真空波か?凍結弾か?」


(どうします?)

(森の保全を考えると氷結弾だな。)

「氷結弾でお願いします。」


「とりあえず、5発分、サービスしておく。」


(おい!!それはやり過ぎだ。1発何円するんだよ!!)


 という俺の心の中での突っ込みに・・・


「1発何円ですか?」


 飾らず、ストレートに訊くチユであった。


「おいおい、サービスって言っただろ。野暮な事訊くなよ。ってまぁ1発で×億円はするが、まぁ、お前の回復薬で稼がせて貰ってるからな。それぐらい許されるだろ。」

「ほにゃ億円?回復薬?」

「ああ、先日貰った回復薬を市場に出回ってる濃度にまで水で薄めてみたんだが、なんと、4500個取れた。1個100万で売れるから450億円。350億円の黒字になる。というか、回復薬って今品薄状態だろ?親父の奴、オークションに掛けたって言ってたな。もっと黒字だろう。」

「なんか腹黒い事してますね。」

「失礼な。ちゃんとしたビジネスだ。というか、返済無理って思ったら返せよ。兵器。レンタル料とか取らねぇからよ。」

「失礼ですね。しっかり揃えて持って来ます。」

「期待せずに待ってるよ。」


(チユ、本来なら俺が土下座してでもエイルを説得しないと行けなかったのに、代わりにやってくれて済まん。)

(なんでアマタさんがしないといけないんですか?)

(そりゃそうだろ。俺の発案なんだし。)

(私の村でを助ける為なので、私がするのが当然なのです。)

(違うだろ。俺の村でもあるんだから。)

(アマタさん、それズルイです。そんな事言われたら何も言えないじゃないですか!!)


 心の中でチユと会話していると、エルフは気を回してくれる。


「それで、村の皆を助けるんだろ?他にいるのはあるか?」


<チユ様、一度、魔道具のレシピ、データでくれませんかって聞いて見て貰えませんか?>


 うわっ!!アマタイルが変な事考えてる。


「魔道具のレシピ、データで全てくれませんか?」

「あのな、社外秘だぞ。それやったら親父に俺が殺される。そこは少しは遠慮しろ!!」

「ですよね・・・。」


 エイルはパソコンを操作する。


「でもBランクアイテムまでならレシピが本になって公開されてるからな。Amazonとかで買えるけど、書籍分はデータでやるよ。」

「あ、ありがとうございます!!」


 さすがエイル。言ってみるもんだな・・・。俺が兄と言って崇めるだけの事はある。

 というかエイルって客観的に見ると、こんなに俺に甘かったんだなって、改めて思い知った一日だった。

お読み頂きありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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