第30話 村改造の結果は予想以上に凄い事になっていた。
楽しんでもらえれば嬉しいです。
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
衝撃から抜け出せずにいた。今まで剣を握った事もなかったチユが、神子になり、3日、4日程度で本当に強くなった。
最初は武器が優秀なだけだと思ったら振るう剣の技術に無限のバリエーションを見た。同じ振り下ろしでも状況に合わせて力加減、振り方、体制を絶妙に変えている。あれは何者だ?
どんな戦闘経験を積んでいるのだ?
俺の殺気にもやんわりとかわし、さらに強い殺気で返す。
強さの底が知れない目をしていた。
そして実際斬り合ってみたら、俺は木刀如きで圧倒されてしまった。
真気収束の真髄に到達しつつある。それに、剣術だけじゃない。体術までも一級品だ。その最たるものは体幹にある。
身体が柔らかく、どんな体制からでもベストな攻撃を繰り出してくる。やばいと言ったらありゃしない。
やばいといえば観察眼もだ。初見で全ての攻撃を見切られていた。それに俺の奥の手まで読んでいた。なかなかの洞察力・・・空いた口が塞がらない。
奥の手と魔法を駆使すればもう少しは戦えたのだろうが。今日はあれぐらいでいい。大体基本的な事は理解した。8歳であの実力は末恐ろしい。
ガイルはきっと、神子様に鍛えられ。<朱雀>を破った。そしてその神子様の実力は計り知れない。もしや、この村1番の実力があるのではないだろうか?
俺は今後の娘の成長に胸が高鳴るのを感じているのであった。
ふと、遠くの方でエルフ族の祭ごとを担当する文官がチユに話かけている。なにやら問題が起きたようだった。聴覚強化魔法で盗み聞きする。
どうやら<朱雀>が3体。北門に現れた!?
なるほど。それは一大事だ。先回りしよう。
「アロンか。緊急事態ではあるが、とりあえず見張り台から戦況をみておれ。」
向かった先、お婆婆様からそう指示があり、俺は訳も分からず見張り台の上に登る。
俺の戦闘スタイルなら、門の外で待ち構えていた方がよく活躍出来るのに。俺を出撃させないつもりだ。
言われるまま見張り台に登ると・・・驚くべき現象を見た!!<朱雀>はまだ、弓矢も届かぬほど遠くにいた。見張り台の上に立ち、視力強化魔法でようやく見えるほどの距離。
前々から土の壁で村の周りを囲っているのは知っていたが、壁の上にちゃんと登るスペースがあり、弓矢部隊が弓矢で攻撃しやすい造りになっているではないか!?
しかも、あの壁の上部に取り付けられた巨大な槍を飛ばす兵器は一体!?
弓兵長が次々とその兵器を使用する。シルフエンチャント・・・つまり風の精霊による風魔法付与をして放つその槍の威力が想像を絶するほどのもの。
弓矢兵長は10キロ先のミミズにすら矢を当てるほどの実力者だ。そんな奴があの兵器を使ったら・・・
凄い風切り音が鳴る!!
スピードは速く、回避出来るレベルではない。そしてあの重量・・・
<朱雀>のが防ぐ。剣が弾け飛んだ!!
弓矢すら届かぬ位置から必殺の一撃を見舞い続けているのだ。この兵器はやばい。エルフとの相性が抜群ではないか!!
それを、装着、巻いて、発射とテンポ良く繰り返していく。
10秒に1発。必殺級の槍が飛んで来るのだ。まさに敵も悪夢だろう。
俺が到着して4発・・・
敵は撤退していく・・・。
剣がボロボロに砕け散ってもう予備がないからだろう。
このまま強行突破してもエルフ達の矢と魔法の餌食になるだろうと踏んだのか去っていく。
神子様のおかげでこの村の防衛力もだいぶ上がったんだな・・・。その神子様って、俺の娘なんだよな・・・。
嬉しい反面、危険を背負って立つのはまだ8歳の娘だ。心境は複雑というものだ。
「お婆婆様!!追撃の許可を!!」
「ならん!!アロンは待機じゃ!!敵はお主を血眼になって探しておる。行ってはならぬ!!」
だろうな。だが、アイツらは風の精霊、シルフの力を纏った槍の一撃を受けた。後でこっそりその痕跡を追えばいい。
俺は見張り台から村側に飛び降りた。シルフの力をお借りして着地を軽減。するとそこへ、チユの姿をした神子様がやってくるのであった。
「あれ?お父様?」
「残念ながら出番はないぞ。」
と言うと神子様はキョトンとする。
「もしかしてバリスタだけで追い払ったのですか?」
あの槍を飛ばす兵器はバリスタというのか。なるほど。
「そうだ。」
「え?嘘ですよね!?」
「何故俺が嘘をつなげればならない。」
「いや。そうです。そうですけど・・・。」
神子様は自分でその兵器を作っておきながらその強さを疑っているようだった。
◇◇◇◇◇◇
いや、そんなはずはない。たかだかバリスタ程度で打ち破れるほど弱くはないはずだ。インターネットで作り方を調べながら、土壁のスキルとチユの魔法グロウで作り上げたハリボテ感満載のバリスタだ。
<失礼ですね。この時代に合ったエルフと一番相性が良いものをチョイスしたのです。弱いはずがありません。>
見張りのエルフに使い方を説明するついでに試し打ちして見たが、銃弾以上、大砲以下の威力である。
せいぜいその程度である。何が起こった?
<朱雀>は弱体化したのか!?
<大砲以下だなんて失礼ですね。Bランクモンスター撃退用に作ってますので<朱雀>撃退も当然の結果ですよ。>
(この前俺が試射した時はせいぜい木を粉砕した程度だったぞ。)
<それはエルフの習わしに乗っ取って・・・いや、なんでもないです。>
テマルンドといいアマタイルといい、マスターに口答えするサポートAIだな・・・なんて頭によぎった途端にテマルンドが押し黙る。
「危機は去った。俺はまた狩りに行って来るぞ。」
と言って、北門から出ようとするお父様。視線は遠く、獲物を狙うような目をしていた。
絶対、<朱雀>の後を追うな。そう確信した。その直感は俺だけのものではなく・・・
「アロン!!お前はワシと一緒に居なさい!!」
と村長も声を張り上げる。そしてお父様を捕まえた。
「なっ!!」
「良いな!!」
「はい。」
「お主は<阿修羅族>についていろいろ知っておるな!!」
「お婆婆様、その名をどこで・・・。」
「じっくり話を聞かせてもらおう。家に来るのじゃ!!」
「は、はい。」
村長にゆっくり連行されていくお父様。その背中を遠くに見ながら俺の視線はチラチラと北門の向こう側に。
お父様が<阿修羅族>について話す内容も気になるけれどそれより・・・
やばい、お父様が見つめていた視線の先、めっちゃ気になる。そう思った自分がいた。
<朱雀追跡ですね。わかります。私がソナーでサポートするので適当にしていてください。反応あれば伝えます。>
こういう時に本当に役に立つAIサポートシステム。
「なんか企んでるだろ。」
不意に声がしたと思ったらお兄様がそこにいた。悪い顔をしていた。
「いや、別に企んでなんかいません。」
「言えよ。逃げた<朱雀>の後を追おうと思ったんだろ?俺も連れて行け。絶対に連れて行け。」
なんて洞察力!!いや、生半可な気持ちでついて来てもらってはダメだし。
「嫌ですよ。遊びじゃないんですよ。追跡です追跡。」
「おう半信半疑だったんだが、やっぱりそうか!!白状したな。よし良い子だ。出発だ!!」
な・・・
「騙したのですね!!酷い!!」
「騙される方が悪い。さあ、案内してくれ。」
「嫌です。私も知りません。」
知ってるのはテマルンドだし。
「知ってるから行こうとしたんだろ?」
「いいえ。そんな事ありません。」
「そんな事あるだろ。」
<マスター、子どもの言い合いになってます。グズグズしてると本当にサポート出来ないぐらい見失ないますよ。>
ぐ、それはまずい。
かくなる上は脱兎のごとく逃げる!!撒いてみせる!!そんな無謀な作戦に出るのであった。
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