第25話 村に帰るまでが遠足。
楽しんでもらえれば嬉しいです。
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
先程の兵士との会話で気になった事があった。
「ユメちゃん、ところで、イバラ姫ってなに?ユメちゃんの話聞かせて?」
「私の話なんてつまらないわ。チユ、あなたの話が聞きたい。」
「え、私もそんな面白い話ないよ。」
そんな事を言うと村長が「何を言っておりますか!!」と食い気味に訂正にかかる。
「村長さん?」
「村の近くに出た災害級の魔物を魔法で軽々と粉砕したり、エルフの村、1、2を争う戦士を赤子の首を捻るかのごとく倒してしまったり、村の周りに1日で謎の土壁を出現させたり、もう・・・村中パニックですぞ!!!」
村長の本音を聞いた。そうか、普段から「好きにやってくだされ」と言ってくれてたあれは気を遣っての事。本音ではなかったのだな。
「パニックになってたんですか!!」
「そうですぞ。もう1万年以上変わらなかったエルフの暮らしが急速に変化しております。」
村長すみません。貴方がそんなに影で苦労していたとは気づきませんでした。
「チユは凄いのね。また今度エルフの村に行ってみたいわ。」
そう言うユメに村長は喜んだ。
「是非、何もないところですが案内致します。来る際にはまた、父上様と一緒に来られてくださいませ。ではなければ村の結界に追い返されてしまいます。」
「結界ね・・・。」
「左様でございます。彼の方は認証登録されておりますゆえ、結界をすり抜けられます。」
何もないところってなんだよ。そんなんだから他の種族に舐められるんだよ。なんか名所的なの作ってやる!!
そんな風に思って拗ねていると。
「もうすぐ最下層ね。ここから地下道を通って真っ直ぐ道を進んだら城下町に着くわ。私はここまでしか案内出来ないけど。頑張って。」
と、お別れの時はすぐやって来た。
「ありがとう。また会いましょう。」
逃してくれた好意に感謝して俺は手を振った。
「絶対に、絶対よ!!」
振り返すその手を見て、くるりと踵を返す。不思議な女の子だったなと思い返しながら前を見て歩く。無事に村長達をエルフの村に送らないとダメだ。
(チユ、気配遮断をみんなに掛けてあげられないか?)
(みんなにですか!?はい。やってみます。)
俺と村長と、文官3人流石にウェイトが重いかな?そう思った時だった。
(あ、出来ました!!)
<さすがチユ様です。今回はサポート無しで出来ました。>
(そうなの。生活魔法クリーンを掛けてあげる感覚でやったら出来た。)
<凄いです!!>
テマルンドがチユをベタ褒めしている。
(チユ、凄いぞ。ありがとうな。)
(へへ。褒められちゃった。)
嬉しそうだった。
「これは神子様の魔法ですか?私らがまるで闇に溶けたようです。あの、これだと味方全員がちゃんと着いてきているのか分からなくなりますよね。」
と、文官の女性は言った。敵から認知されない代わりに味方からも認知されない。これは盲点だった。
「はぐれないように、皆で手を繋ぎましょうか。」
みんな仲良く手を取り合って脱走するのであった。
チユ達が城を脱出している頃、暗い螺旋階段の下でそれを見えなくなるまで見つめていた。
私の事を人々は蔑んでこう呼ぶ。イバラ姫と。鬼人族の王の娘、第二皇女にあたる。
しかし私は生まれた時より先祖返りという体質により魔力が闇に染まってる。
私はその力を制御出来ない為、無自覚にその魔力を振り撒いた。私の付き従う人は大抵五年以内に衰弱し、死ぬ。だからほとんどの時間を自室に幽閉されていた。
「セバス!!いるのでしょう?」
「私はいつも影で見守っております。」
1人の燕尾服に身を包んだ初老の鬼が私の目の前に立つ。幼い時から付き従ってくれた従者であり、最強の護衛である。
「貴方の目から見て神子様ってどう思う?」
「貴方様の敵になるのなら早めに殺しておいた方が良いでしょう。あの子はすぐに誰の手にも追えないほど強くなりましょうぞ。」
「でも友達になるって言っちゃった。どうしましょう?だって、あの子私の魔力を完全に弾いたのよ!!あり得る?こんなの初めての経験よ。」
「つまり、敵になったら最悪な存在、仲良くなったら最高の存在って事ですな。良かったじゃないですか。家臣意外で初めての友達ですぞ。ユメ様の好きにしたら良いと思います。ただ、神子様はユメ様の魔力に薄っすらですが気付いておいでなさった。警戒を強めております。友達というのであれば余計な誤解を招く前に早めにお話をしてあげた方が良いでしょうな。」
「そうよね・・・。ああ、こうしちゃいられない。父上様に相談しないと。」
「姫さま?こうしちゃいられないとは?」
「会いに行くに決まってるでしょう!?」
「まさかそんなすぐに!?」
「ええ。」
「ダメです。あの村はすぐにでも<阿修羅族>との大きな戦いに巻き込まれます。」
「あら、いざとなったらセバスたちが守ってくれるでしょう?ああ、それいいわね。親善大使として私が派遣されたって事にしない?そしたら恩も売れるしチユに会える。」
「姫さま・・・・・・。」
「セバス、小言はたくさんよ。黙って付いてくる。オッケー?」
「承知致しました。」
そんなやり取りが行われていた事はツヤ知らず、アマタ達は順調にエルフの村に足を進めていた。
ちなみに鬼人族の街の門番はスキル・グラビトンで地面にへばり付かせて突破した。
皆、王子の息が掛かってる。しかし、そんな強い相手は今のところ現れていない。
森の入り口に差し掛かった時。
<3時、6時、9時方面より敵意を感知しました。警戒をお願いします。>
俺の気持ちが引き締まる。モンスターではなくテマルンドは敵と言った。このタイミングで敵と言ったら<朱雀>しかいない。
<すみません、マスター。感知した事を感知されました。>
(なんだって!?)
気配の読み合いかよ!!そう心の中で突っ込んで俺は号令を出す。
「3時、6時、9時方面、敵襲です!!」
「な、なんじゃと・・・」
皆を守りながら3体相手はキツイ。どんな相手かもわからないのに。剣の鞘に手を掛けた。
(アマタさん、勝てますか?)
(絶対に勝つ。悪いが手加減は出来ないから、襲い掛かってくるなら容赦なく殺す。チユ、すまない。)
(アマタさん?なんであやまるのです?)
(俺は人に手を掛ける。きっとショックは大きいだろう。)
(エルフの村に限らず、この世界で命の取り合いは当たり前です。お気になさらないで下さい。)
(そうか。)
チユの心は固まっている。でも俺の心がまだ、平和ボケしているのであろう。
そう考えた時、チユは咄嗟に気配遮断を解き、ブレスを唱えてくれた。その魔法が・・・俺の変な緊張を取り除いてくれるようだった。
(頑張って下さい、アマタさん。私も最後までお付き合いします!!)
チユに背中を押された。決心を固め、敵を睨んだ。
「ほう。気がつくか。殺気だけは一人前のようだ。」
闇に紛れ、ゆっくり忍び寄ってくる鬼3人。暗闇でうっすらとしか見えないが手は6本、2本の角、浮き出た血管。
(テマルンド、崩剣ディアブロスのクールタイムを教えてくれ。)
<グラビトン残り5分 土砂流残り10分>
イメージを固めろ。このメインスキル2つ抜きで倒すんだ。一つ一つのスキルの効率化が鍵になるぞ。
<敵のステータス上昇を確認しました。筋力100、耐久80、素早さ80、器用80です。>
村で一番強いであろうお父様をやっつけた存在。このステータスなら納得だ。そんな強い相手が3体。メインスキル無しで行けるのか?
「お前達が阿修羅族か?」
「ほう、鬼人族の村でそんな情報を入手したか。ならその情報を持ち帰らせる訳にはいかないな。」
「馬鹿いえ。初めから返す気ねぇだろ。お前ら、王子の差し金か?」
俺の言葉に敵は急に笑い始めた。それも馬鹿にしたかのように爆笑だった。あれ?違うのか?
「冥土の土産に教えてやる。アイツも傀儡・・・。所詮は踊らされてる人間よ。」
くる!!!真気収束、からの抜刀!!!!
周囲、広範囲に衝撃波を撒き散らす。当たりさえすれば手の1本吹っ飛ばせると読んでいたのだが。
「凄い衝撃波だな。初見殺しには丁度いい技だろうが、当たって無いぞ。」
余裕の表情の<朱雀>
単純な技で仕留められるとは思ってはない。今の技で、散らばっていた敵がある程度目の届く範囲に収まってくれた。
「土壁!!」
村長達を守るように土の壁でドームを作り、更にその延長戦で戦闘フィールドを作るかのように土壁を配置。
ようは、一つのスキルで、防空壕と、巨大な壁で囲まれたドッグランの2つを作ったという事だ。
「お前は馬鹿か?1対3の状況を作りやがった。ステータスに劣るお前がこの状況で勝てると?」
「勝てるさ。」
剣はいつのまにか銃の形に変形を果たす。
俺は壁に背もたれ、銃口を阿修羅族・・・<朱雀>に向ける。
「射撃のコースが定まって狙いやすいだろ?」
スキル、ニュートンカノンの発動。
反重力を利用したそのエネルギー弾はこの武器の最高火力とも呼べる技だ。
壁際の阿修羅族に向けて一発。
一直線に黒い稲光のしたレーザーが敵を捕らえた。
敵は回避行動に移っていた為、肩に掠める程度だったが。当たった瞬間、化学反応を起こし、大きく肉片が飛び散った。
(見るなチユ!!これはモンスターに向けて打つ技だ。人に向けるもんじゃねぇ。その悲惨さに気持ちが悪くなるぞ!!)
(は、はい!!)
お読み頂きありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
戦闘シーンにつき、2話連続投稿です。




