第23話 事件発生は突然に・・・
楽しんでもらえれば嬉しいです。
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
「ところでアロンや、こっ酷くやられたようだが誰にやられたんじゃ?モンスターか?」
「角が2本。目は血走り、モンスターかと思われる人相だが人型。力は強い。手は6本ある。<朱雀>と名乗った。」
「何じゃと・・・そいつは不味いな。」
「安心してくれ。返り討ちにしてやった。俺はこのざまだ。どっちが負けだか、本当に分からない。」
「良いか、アロン。朱雀は集団名じゃ。、特殊訓練を受けた鬼人族の戦闘部隊の名だ。」
「なんだと!?あんな実力の奴がゴロゴロいるのか!?」
「さよう。お主、首を突っ込んだのか?」
「エルフの村周辺をうろつく不審な影があったから威嚇しただけだ。」
「思いっきり首を突っ込んであるな。殺したとあれば報復に来なければ良いが。」
「申し訳ございません。」
「良い。この村周辺を様子見してたという事は、遅かれ早かれアクションがある。それがたまたま早かっただけの事。アロン。お主は村から出るな。良いな。エルフの戦士達にも警戒を呼びかけておく。」
「かしこまりました。」
村長は向き直り、お父様を連れて来た文官に対して声をかける。
「お主は何をしておる?行動に移さぬか!!文官達を集めて、城壁の見張り台に立たせろ。<朱雀>が現れたら炎の槍の雨を降らせてやれ。」
「かしこまりました!!」
村長の号令でキビキビと皆が動き出す。
「ガイル、ニーナ、いるんだろ?」
「はい!」
「えっあ、これは・・・。」
お兄様は堂々と、お姉様はバツが悪そうに顔を出す。別に気配察知のスキルがあるわけでは無いが全然気が付かなかった!!
「アロンと神子様と共に家に帰るように。」
「は、はい・・・」
お兄様はお父様に寄り添う。
でもお父様はピンピンしていた。
「チユ、帰るよ。」
「あ、うん。」
お姉様もお父様のボロボロの姿がショックだったのか、俺の事、完全にチユ扱いだ。半分正解なのだが。
優しい声で『帰るよ』なんて言われるとつい姉として慕ってしまいたくなる。
村長の家を出て、チユ一家は家を目指す。
・・・なんかモヤモヤするな。
俺は村長の家に後ろ髪を引かれていた。
その想いは歩けば歩くほど強くなってくる。
(アマタさん。大丈夫ですか?)
(大丈夫って何がだ?チユこそ大丈夫か?お父様、ボロボロだったろ?)
(お父様は一命を取り留めました。私は平気ですよ。)
・・・ああ、スッキリしないな。
「ごめんなさい、ちょっと村長の家に忘れ物したみたい。」
「チユ、あなた荷物ないじゃない。何を忘れたの?」
「あ、本当に忘れ物。先帰ってて!!」
と、列を抜けた。
(チユ、気配遮断の魔法って出来るか?)
(突然そんな事言われても・・・)
<チユ様、マスターのイメージを伝えます。貴方は影です。音もなく、命の鼓動もまるでなく、気も魔力もまるでありません。存在すらしません。>
(イメージ出来ました。行きます!!)
途端に俺の姿が闇に溶けた。
流石チユ。上出来だ。その足で走って村長の家に向かう。
村長は文官数人と共に旅支度をしていた。
「命に換えてもお婆婆様、貴方の無事を保障します。」
「馬鹿言いなさんな。死ぬ時は皆一緒じゃ。」
ご高齢とは思えない足取りで家を出発する村長。もう日は暮れていた。
俺はその後を追う。
<お婆婆様の魔力の周波を記録してます。撒かれても追跡可能です。>
濃い森の中、暗闇が広がる。結構なスピードで走行するお婆婆様と文官達は絶対ブレス掛けてるだろうと予想はする。それもスピード特化の。
真気収束状態の俺のスピードとほぼ互角のスピードで、気を緩めたら見失ってしまう。
そんな心配を払拭するかのようにテマルンドは口に出したのだった。
(大丈夫。撒かれはしない!!)
朝のお兄様との特訓が役に立っていた。
俺は、真気収束状態の動きに120%パフォーマンスを発揮出来ている。
森を抜け、丘を降りる。遠くで巨大な城下町が見えて来た。
赤い提灯の光が優しく街を照らしていた。
街の周りは薄っすら中の透けるドーム状の結界で囲まれていた。これが敵の本拠地。お父様を討った憎き敵がいる場所!!
ああでもこの造り・・・これぞ異世界だよな。街の境界線は結界がスマートだよな。エルフの村なんて俺が作った土の壁。時代遅れもいいところだよ。
そんな嘆きを頭でよぎらせながら、村長と結界師達のやり取りを盗み聞く。
結界師の見た目は巫女服姿で頭に2本の角と和風なイメージ。
エルフ以外にも異世界人が居たなんて!!いや、感動してる場合じゃない。
「取り継ぎが出来ないじゃと!?」
「エルフの村から遠路はるばるやって来たのは分かります。ご苦労様です。ですが国王も忙しい身。何日もスケジュールで一杯なのです。」
「そこをどうか。エルフの村の一大事なのです。」
「すみません、規則は規則なので。」
追い返されそうとした時、村長の側近の文官が切れた!!
「貴様ら何故<朱雀>を我らの村の付近に寄越した?突然村が防衛を始めたから釘を刺しに来てるのかも知れないが、恥を知れ!!」
と怒鳴る。咄嗟に村長はその文官の口を手で塞ぎ、
「馬鹿。まだ黒とは限らぬ。早まるでない!!」
と叱る。どういう事だ?村長は何を知っていて何をしようというのか。てっきり敵の本拠地かと思ったが。
「<朱雀>がエルフの村に?おかしいですね。<朱雀>はここ、七日ほど全員王宮に集合しております。何かの間違いでは?」
そう言われて文官達がキレる。
「おい!!・・・・・・・・・。」
それを村長が宥めるように手で抑えた。
門番同士でヒソヒソと話し始めたぞ。
「少々お待ちください。」
何か心当たりがあるのか、門番の1人が奥へと走り去って行く。
待つ・・・・・・。まだ待つ・・・。なかなか戻って来ないな。
待つこと20分。ようやく戻って来たと思ったら、若い白の着服を来た男を連れて来た。艶のある長い黒髪を後ろで結んでいる。
その男を見た瞬間、ゾクリと背中に冷たいものを感じた。
「私の名はガイラバッハ。第一王子でございます。多忙の父に変わりまして私が話を聞きましょう。どうぞこちらへ。」
第一王子に連れられて村長達は中に入っていく。俺はあの男から何か分からないけど嫌な気配を感じた。村長達の身が危ない。
しかし結界の門がすぐに閉じられる。あの門が閉じたら入る事が出来ない。
<マスター、焦るのはおやめください。お婆婆様の魔力はマーキング済みです。下手に動くとバレてややこしい事になります。ならば、独自に潜入する事をお勧めします。>
(潜入?)
<提案なのですが、この結界と同じ威力の結界をぶつけるのです。摩擦相殺って現象が起こり、人が通れるだけの穴が開きます。>
(なるほど。チユの出番だな。)
<チユ様には気配遮断を解いてもらわないとなので、マスター、人がいない場所へ移動をお願いします。>
(そうだな。)
移動する。結界の門がある場所とは違う場所なのだが。透ける結界の向こう側は、屋根瓦の家々が立ち並んでいる。
<チユ様、気配遮断を解いて下さい。そして、この結界に同出力の結界をぶつけます。いいですね。>
(はい!!)
<見えない壁です。それはエネルギーの塊です。触れたもの全てを弾くエネルギーの壁、それは目に見えないものです。イメージ出来ましたか?>
(やってます!!)
結界と結界がぶつかり合っている。
<いい感じです。もう少し出力を上げましょう。イメージは、壁が溶けて無くなっていくイメージです。>
(き、きついよ・・・)
チユ、頑張れ!!
<もう少しです!!行けました!!マスター!飛び込んで下さい!!>
(オッケー!!)
俺は、結界に体当たりする。しかし、そのエネルギーの塊は、粘膜のように薄く伸び、裂け、通り抜ける事に成功した。
息が切れている。これはチユが頑張ったからだろうか。どっと疲れた感覚だ。
<潜入成功です。チユ様、気配遮断をお願いします。>
潜入、第二ステージのスタートだ。俺は住宅街を走り抜ける。
王様と聞くと西洋の大きなお城・・・いわばシンデレラ城を思い起こすかと思う。長さ及び深さ10メートルはあろう用水路で囲われたそのお城はまるで古来日本の木造建築の城だった。
用水路を越えるには橋を探さないといけないが、大体橋の周りには見張りがいるのは鉄板だ。
(チユ、イグニッションだ。)
(アマタさん、ここでキャンプでもするのですか?)
(違う。背中に爆風を受けて空を飛ぶ。)
<マスターも無茶苦茶な事しますね。チユ様、イメージを送ります。くれぐれもご自身の背中を粉々に吹き飛ばさないようお願いしますね。>
(はい!!)
緊張した面持ちでイグニッションを唱えた。それに併せて真気解放をし、助走をつけてジャンプした。背中に炎の柱が上がる。焼けるような痛みがあるが、その爆風を受けて宙を舞った。10メートルもの距離は軽々と飛び越えて敷地内へ侵入。日本庭園の整備された砂利に着地する。松の木の香りがした。
(チユ、凄いぞ。完璧だ!!)
(テマルンドさんのイメージが完璧なんです。)
その足で城内へ走っていく。
中は畳の敷いた和室が続く。和紙の貼られた襖を開けながら先へ進む。
すると、部屋の前に護衛が待機している・・・テマルンドの村長センサーは護衛の先にある。
あの護衛が<朱雀>なのか?
<お父様は手が6本って言ってました。あの人は手が4本しかありません。>
いや、手が4本でも十分怖いけどな。不気味で。戦闘を避ける為、表には出ない。聞き耳を立てる。
「我らの同胞に闇堕ちしたもの達がいます。きっとその人達でしょう。同じ鬼人族でありながら、欲に、力に溺れた者たちなのです。彼らにも<朱雀>という精鋭部隊がいます。きっとそれでしょう。」
「なるほど。そういう事か。疑って悪かったの。」
「いえいえ。とんでもない。むしろかつての同胞が大変失礼しました。」
「頼みなのですが、手を貸してもらえないでしょうか?我らの戦力では<朱雀>は倒せぬ。」
「私の父なら、こう考えるでしょう。『我らにメリットは?』と。」
「それは・・・回復薬を卸そう。万能薬、いろいろあるぞ。」
「それは大丈夫です。済みませんが、我々にとってエルフ族とはその程度の相手。お引き取り下さい。」
嫌な奴だ。困ったら助け合うのが人間だろうが。
メリットが無いから勝手に死んでくれって?どれだけ自分勝手なんだ!!頭に来る!!
<マスター。喧嘩を売るのはおやめください。聞こえは悪いですが、まだ常識の範囲内でのやり取りです。むしろ交渉しに来てるエルフ側が良いメリットを提示出来ない所に落ち度があるのです。>
悔しい。悔しい悔しい!!今に見てろ。
すぐにでもビックリするようなメリットを提示してやる!!
<例えば?>
(アマタさん、私はグルメがいいです!!パフェ、パンケーキを大量に売り出しましょう!!)
なんともチユらしい反応。
ああ、そうだな。舌を唸らせる絶品のパフェやパンケーキを目玉商品にしてスイーツの一大名所にしよう。鬼人族の村にもチェーン展開して引き締まったその身体を贅肉ぶよぶよにしてやるのだ!!
・・・って違う!!グルメを提示して、「お前らのパフェは美味しい。助けよう!!」ってなるか!!
ああ・・・なんかもういいや。ムキになる方が馬鹿だ。
村長も村長で、こんな奴らに助けを求める事無いのに。
結局村長は何も出来ずに退散する事になる。すぐに村長を追う事はせず、しばらく身を潜めて王子を見ていた。
俺の嫌な予感は的中する。
「お前ら、アイツらを捕らえろ。ババァはともかく、エルフの奴隷は金になる。阿修羅族に売ればいい金になるだろう。」
・・・・・・は?あの王子は誰に命じた?皆を・・・奴隷に!?
鳥肌が立つ思いがする。
と思ったら、護衛の4刀流<朱雀>が静かに口を開く。
「神子殿。やるべき事を間違えぬようお願いします。王子に刃を向けようものなら我は刀を抜かねばなりません。」
気配遮断を見破っていたのか!?しかも俺の素性まで看板している。アイツは何者だろうか?
「敵に塩を送るつもりか?」
「貴方の本当の敵は我らではありません。我らの同胞であり宿敵、阿修羅族であります。今日のところはお引き取り下さい。今回の件、私の方から国王陛下へ伝えておきますので。」
皆が皆、悪い奴とは限らないようだ。
「ありがとうございます。お元気で。」
俺は村長の後を追う。
すると、手が6人の鬼が村長の目の前に立ち塞がる。その人達の腕は2本しかない。なんの違いだろうか?
俺は様子を見ていた。
「嵌めたのか?」
「傷物にはしたくない。大人しくしていれば攻撃はせん。」
「ふざけるな!!お前らなんかに屈するものか!!」
これは女の人の声だった。文官は女でもなれるのか。
魔法を唱えようとするが、すぐ剣線が飛ぶ!!
斬られたと思った!!その文官は数メール吹き飛び、意識を失った。
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