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第18話 『元テンプラー』の落ちこぼれにはチユというスルースキルが作動中。

暴走3話目ですが、楽しんでもらえれば嬉しいです。


 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものと類似している名前が多数出てきますが、全くの無関係でございますのでご了承くださいませ。

「さすが男子ね。あれだけ重いもの持ったのにこの余裕の表情。私なんてヘロヘロよ。」


 家の中は空っぽにし、俺の荷物を最後に姉の車に乗せて移動する。

 親、兄弟の思い出の品、いつ使うか分からない器具など、2人で移すには一日では終わらないかと思われた引っ越しが、なんと昼過ぎには姉の家に出発する事になるとは思わなかった。

 姉の話なんか上の空、チユは車の窓を全開にし、流れゆく風景を楽しんでいた。


(チユ、レイア姉がなんか言ってるぞ。)

「ほぇ?」

「車は好き?」

「うん。新鮮な感じだなって思って。」

「そう。休みの日、行きたいところあったら連れて行ってあげるからね。」

「ありがとう!!」

「アマタ、お腹空いてない?マックよる?」

「マック?」」

「アマタ、行った事なかったっけ?マクドナルド。」


(パンに、野菜とか焼いたお肉とか挟んでいる奴だよ。)

(なにそれ!!美味しそう!!)


「行ったことない!!なんか、楽しみ!!」


 この反応に衝撃を受けるレイア姉だった。


「高校生にもなってマクドナルドを知らないなんて・・・可哀想すぎる。」


 と俺を哀れな目で見ている。

 俺、マックぐらい知ってるぞ。知らないのはチユだからな。というか、家族で行った事あるだろうに。


 遅めのお昼はハンバーガーになった。

 ドライブスルーでも良いのだが、レイア姉がゆっくり食べられない。結局中で食べる事にした。


 商品を注文する・・・


「わあ。あれもこれも・・・。どれも美味しそうで決め切れない!!」


 チユは見た事ない商品に大興奮。そのテンションの高さに自然と客の視線を感じる。そりゃ、高校生にもなろう人のする挙動じゃない。


「あいつ、TVで見た事あるぞ。確か最強アバター集団の1人だろ?」

「チーム名なんだっけ?<テンプラー>?あの10人いる内の1人。確か実力不足でクビになったんだっけな。」

「確かにチーム内で足引っ張ってたもんな。なんでアイツサポート枠に入らなかったんだ?」

「知らね。」


 どうやら俺の挙動は関係ないようだ。学生、サラリーマン、店員さん。みんな俺を見て噂をしているようだ。噂は広まるのが早い。悪い噂なら特にだ。


 <テンプラー>は10人いるのは正解だ。

 1軍、2軍と別れており、異世界ダンジョンの攻略の際、1軍はメインで攻略を2軍はサポートに回る。それを全て含めてTVに放送される。

 俺が1軍で活躍させて貰っていたのはきっと、アカネやミーヤの口添えがあったからだろう。


 思った以上に俺の脱退に納得しているような雰囲気で、少し凹む。


 今、アカネ達、元気にしてるのかな・・・?



「私はチーズバーガーのセットでお願いします。アマタは?」

「えっと〜。店員さん!マクドナルドのオススメはなんですか?」


 そこ、店員さんに聞くの!?自然な流れはレイア姉じゃない?


「オススメはいっぱいあるんだけど。私はビックマックセットかな?」


 店員さんも敢えてそこ行く?個人の感想だけど初マックで頼むものじゃないって思うよ。絶対口の回りが汚くなるパターンだよ!!


「じゃあ、それでお願いします!!」


 お願いしちゃった。

 俺の心配を他所にレイア姉はお会計を済ませ商品を待つ。

 先程の噂話のせいだろうか、レイア姉さんは俺の顔をチラチラ見ながらソワソワしている。

 商品を手にすると、逃げるように二階へと上がっていく。

 二階の窓側の席に着く。人は沢山だが、アマタに変な噂をするものはいない。レイア姉はホッと息を吐く。


 そのレイア姉さんの心配をよそにチユは満面の笑みでビックマックに大口を開けてかぶり付いていた。案の定、ソースで手と口がベトベトだ。


「アマタ、その・・・大丈夫かしら?」


 この不器用な食べっぷりがでしょうか?

 いや、それにしてはレイア姉は恐る恐る聞いている。「大丈夫かしら?」とは先程の俺への誹謗中傷の事だ。意図を察しないチユはその質問に面食らう。


「はい?何がでしょう?」


 そもそもこの時のチユの心の中はというと・・・


(何これ、めっちゃジャージーなお肉が入ってます。うわっ絶品。こんな美味しいの初めて!!)


 という感想が滲み出ていた。話なんか聞いちゃいない。キョトンとした反応に、


「陰口叩かれてるのにダメージ無しね。」


 呆れを通り越して笑っていた。


「ダメージ?そんな事よりビックマックって最高に美味しい!!こんな美味しいものがこの世の中にあったなんて・・・。」

「アマタ、リアクションがオーバーよ。大丈夫?もしかして、世間の反応がショック過ぎて現実逃避でもしてるの?」


 まぁ、俺もマックに初めて行った時は感動したっけな。小学生の頃だったけど。


「レイア姉も食べて。」

「あ、そうね。家に持ち帰って食べようかと思ったけど必要無さそうね。思ったより強メンタルで安心したわ。」

「???」


 二階へ移動した事もあり平和であった。ここは、誰か俺に絡んで来て一悶着あるとか・・・そんな展開があるかもと身構えていたのだが、それは異世界だけの話。

 エルフの村では何かあるとすぐ決闘だった為、だいぶ感覚が麻痺しているかもしれない。


「それにしても、いじめられないか心配だわ。」


 考え事にふけってるとレイア姉からそんな独り言に似た呟きを聞く。


 そうだな。入学するまでに発言だけでも俺が出来るようにならなければな。


「いじめ?怖い人いるの?」

「うーん。2年にちょっと問題児が・・・。いや、なんでもない。忘れて。」


 忘れてなんて言われると余計気になるじゃないか!!実はエイルでしたって言わないでくれよ。

 そう一瞬考えを巡らせ、チユに説明とフォローをいれる。


(見た目とか、発言が可愛らしいとかで舐められたりするんだろ?チユ、心配するな。俺が付いている。)

(アマタさん、ありがとう!!優しい。)


 とは言ったものの良策はない。これはチユを安心させる為に言ったもので、実際ドSキャラに絡まれたらどうしようもない。

 チユに護身術覚えて貰って撃退してもらうしかない。


<マスター、忘れてますよ。チユ様には魔法があります!>


(いや、魔法は禁止な。いや、ブレッサーなら許可するが・・・)


 いや、待てよ。今まで派手な魔法ばかり使うから目立っていたんだろ?地味な魔法を開発して撃退してやればいいのでは?突然お腹が痛くなる魔法とか!!急に踊り出したくなってたまらなくなる魔法とか。


<全力でサポート致します!!>

(アマタイル。よろしく頼む!!)

(あ、アマタさん?チユに何をさせようと言うのですか?あまり酷い事は嫌ですよ。)

(何、悪党を困らせてやるだけの話だ。)

(本当ですか?凄い悪戯心を感じる・・・)


「アマタ、護身術が出来るとか、武術に覚えがあるからって調子乗ったらダメよ。さっきのアマタみたいに違法と知りながら魔道具持ち込んだりする不良もいるから気をつけなさいよ。」


 ああ、生活魔法クリーンな。『アマタみたいに』は余計だ!!俺が出来心でつい銃刀法違反した悪い奴みたいじゃないか!!そんな事思っていたらチユがドヤ顔で答える。


「大丈夫!!魔法で撃退するから!!」


 いやいやチユ、もう魔法って言っちゃってるし!!絶対隠す気ないでしょ。本当にいじめっ子達に睨まれて現代風魔女狩りに遭っても知らないぞ。俺本当にカバーしきれないぞ。


「魔道具の事?ダメよ。実習がある時に限って魔導具の持ち込みを許可してるけど、それを使って友達怪我させたら最悪警察捕まるからね。覚えといてね。戦争で使われるような違反魔道具をもし持ち込んでる生徒見かけたら先生達に報告する事。本当に見つからないし、何かあった時って大抵死者が出てるから。」


 おいおい。無法地帯かよ!!

 ああ、学校行くの不安になってきたよ。俺じゃなく、チユが行くんだぞ。俺はあくまで付き添い的なポジションだぞ。大丈夫かな?大丈夫じゃないだろ。俺のライフが幾らあっても足りないぞ!!


(チユ、学校行くの不安だったら無理しなくていいからな。)


 俺は説得にかかる。


(同じ年のみんなが集まって学ぶんでしょう。凄い楽しそう!絶対行く。絶対絶対絶対に!!)


 決意は固かった。

 チユはきっとわかってない。俺はまだ見ぬ不安に心の中でため息を吐くのであった。


 口をベトベトにしながらビックマックを食べ終えた。「口が汚れてる。」とレイア姉はペーパーを寄越すが、


「ごちそうさまでした。レイア姉、また来ようね。」


 と手を合わせながらチユは生活魔法クリーンを唱える。光の泡が一瞬で汚れを吹き飛ばす。


「アマタ、一体どこに魔導具忍ばせてるのよ。便利すぎるわ。今度私にも貸して欲しいな。」

「うーん。ごめんなさい。」


 チユは「はい」とは言えずに困っている。ついでに


(だって魔力の才能ないもん。)


 ・・・なんて失礼な事考えてる。


「ダメよね。残念。」


 レイア姉は肩を落とすのだった。



 マックでの一悶着もチユの華麗なるスルースキルで何事も無く終えられた。

 車内に戻り、レイア姉は車のエンジンをかけた。俺達はこのままレイア姉の家へと向かう。

 そこへ不意に、スマホが鳴る。


(チユ、スマホの画面開いてくれないか?)


 正直に言うと、俺は友達が少ない。LINEが来ると言えばエイルかミーヤかアカネかレイモンドかだ。

 両親からの連絡は姉と一緒にいる事がわかっている為、姉に来る。だから除外だ。


 車が今発車した所だから、スマホ見てチユが車酔いしなければ良いが。


(え、え、え?どうやればいいんですか!?)

(画面に触ればいいんだよ。)

(画面って?)


 まずそこからか・・・。実際やって見せた方が早いんだけど手で説明するとなると・・・ああ、俺の脳内にある言葉のバリエーションが足りない。


<マスター、私がスマホと同期して読み上げます。>

(おう、アマタイル、出来るのか?)

<もちろんです。>

(頼む、読み上げてくれ。)

<エイルさんからです。『退院おめでとう。明日にでもカフェ行くか?』とのメッセージです。どう返しますか?>


 そういえばカフェに行くって約束してたよな。男同士でカフェに行くってどうかと思っていたのだが。

 積もる話もある行ってみるか。


(明日、どこに何時集合する?)

<オッケーです。送りました。>


 後返事を待つだけだが。


(ふふふ。エイルさんってどんな人ですか?会うのが楽しみです!!)


 チユが興味深々になって聞いてくる。エイルってのは頼り甲斐があってまるで兄貴のような存在で・・・・・・。

 あれ?俺何か見落としてる事ないか?


(って・・・しまった!!)


 会うのは俺じゃなくチユだった事に今更になって気付くのであった。


(アマタさんのお兄さんなんですね。)

(違うから。幼馴染の友達。一個上だから兄貴みたいって話。チユ、会うのが不安ならこの約束断ろうか?)

(不安じゃないよ。チユ、頑張る。)

(俺が不安なんだけどな。なんとかなるか。)

(アマタさん、一つ質問です!!)

(なんだ?)

(エイルさんってカッコイイですか?)

(あ、チユはまだ会った事無かったよな。普通にイケメンだと思うが。)

(やったー!!凄く楽しみ!)


 チユがそんなに楽しみにするなんて、ますます断る理由が無くなった。エイルとのLINEのやり取りに戻る。


 そういえば、エイルなら知ってるかな?俺が思い出せなかった人物の名前をLINEで打つ。

 まぁ、アマタイル経由なのだが。


(『アコって名前の人知ってるか?』って送ってくれ。)

<了解です。送信しました。>


 異世界、魔境の地にてチユを蘇生させた人物だ。俺は頭の片隅にどこかで聞いた名前だなって思ってそのままにしていた。


<返信を読み上げます。『知ってるも何も、俺やお前、レイモンド、アカネ、ミーヤ、テマルの初期のアバターを作った職人の名だろ?』ですが、なんて返します。>


 はい?ちょっと待って。確かに俺たち5歳の時にお世話になったアバター職人の名前はアコさんだったけど。

 異世界、アバターで活動する拠点であるシェルターにお住まいの唯一の人間。ダンジョンアタックでアバターが重症を負った時もシェルター住まいのアバター職人に直してもらっていた。俺たちの担当職人は昔はアコさんだった。


(ちょっと保留で。)

<了解です>


 何故?どうしてチユのご両親と接点があるのかな?

 ってそんな事簡単だ。エルフの観点から言って魔境の地は俺たち人間が住むシェルターがある街の事を言っている。そう、繋がっているのだ。たまたまエルフの村に異世界召喚されたけど、人間達の住む街と繋がっている。

 俺たちはシェルター付近の荒地とダンジョンしか知らなかった。でも世界は広い。皆はエルフが生息している事を知らない。これは世紀の大発見では無いか?


(アマタイル、エイルにLINEを打ってくれ。)

(なんて打ちましょう。)

(・・・・・・・・・。)


 俺は言葉につまる。なんか頭がモヤモヤするんだ。

 もし、エルフの村が人々に公になったらエルフの人々の暮らしはどうなるのだろうか。何の為に森の奥地に隠れて住んでいるのだろうか。これは、公にしてはいけない内容なんじゃないか?・・・なんて。そもそもチユのご両親に確認すらしてないのに俺はなんでそんなに早まってるのだろうか。


(『明日ランチ楽しみ』って送ってくれ。)

<了解です。送信しました。マスター、デート楽しみですね!!>


 違うんだけどな!!

お付き合い頂きありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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