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第17話 チユの魔法と現代魔導具

暴走パート続きます。


 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 引っ越しを進めながら、終始チユはワープゾーンに興味深々であった。


(どこからどう見てもただの箱・・・よね。なんで通り抜けられるの?)

<それはチユ様、ワープゾーンという魔道具だからです。空間と空間を繋げる魔道具です。>

(出来るようになりたい!!)

<チユ様、『出来るようになる』とは魔法で、という事ですよね。イメージに必要な基礎知識が足りません。理論理屈をしっかり理解した上で私は教えます。>

(うーん。残念。)


 魔法でワープゾーンを発動出来たらちょっとしたロマンかもしれない。

 でも、さすがにレベル高い内容だった為に無理だった。


 段ボールにあらかじめ纏めてくれたおかげで、引っ越しは早く済んだ。


 一つ一つが重い段ボールでもこっそりチユが身体上昇の魔法、ブレッサーをかけてくれたお陰で捗った。


 ブレッサーは凄い。冷蔵庫、洗濯機も1人で楽々持ち上げられる。筋肉系のオリンピック選手になった気分だ。


「アマタ、アバタールームに篭ってばっかりで筋肉無いもんだと思ってたんだけど。結構・・・力持ちなのね。」

「そう?」


 チユは調子乗って食器棚を片手で持ち上げている。

(チユ、やりすぎ。これは流石にドーピングがバレるだろ。)


「力持ちなのはわかるけど、調子乗って怪我しないようにね。」


「はい。」


 レイア姉さん?スルー?明らかに筋肉量見合ってないよね。自分で言うのもなんだけど、モヤシが大根持ち上げてるぐらい違和感だよね!!


「アマタ、急な学校変更ビックリしたでしょう?本来なら都立の学校に行くのに。」


 改まってレイア姉さんはそんな事を言って来た。

 学校変更に関しては、<アバター>に潜れないと医師から判断された時点で薄々は感じていた。

 理由は3つ。


 都内の私立高校は学費が高い。テンプラーでの収入が命の保障が無いだけに破格なまでに良かった為、行けたものの、それを失ったら正直、両親とレイア姉さんの稼ぎだけでは無理な話だ。


 二つ目に、その学校は中高一貫なのだが、<アバター>を扱う事に関して専門的な技術者、知識を学ぶ場所。<アバター>を失った俺にはもう通う事が出来ない。


 三つ、引っ越しの為、家から遠くなる。


 まぁ、引っ越しの理由も都内のマンションの家賃がめちゃくちゃ高いからなのだが。

 毎日電車で往復2時間とか俺も嫌だ。そんな理由。


 チユは俺の思考を読み取り発言する。


「それはわかってました。楽しければなんでもいいの。」

「病院内では「人生終わった」って顔していたのに。同じ人間とは思えない開き直りね。」

「アマタはいつでも元気!!」

「周り回って一人称アマタになったのね。ずっとそのキャラで行くの?」

「うん。」


(それは辞めてくれ。普通に俺で頼む。)

(ほえ!?)


「戸惑うからコロコロとキャラ変えないでね。」


 すげぇレイア姉さん。もうチユの暴走に適応してる!!

 そう俺が関心していたら、レイア姉さんは言葉を続けた。


「本当は私、アマタを<アバター>集団のもとにやるの反対だったの。子どもに、命の保障が無い事させるってどう言う事!?って思ってたけど、アマタが毎日楽しそうに、『今日は何々のモンスターが倒せるようになった』とか『エイル、ミーヤ、レイモンド、テマル、アカネ、6人で最強のチームになる!!』とか夢を語って・・・それは止められなかったわ。辛かったな。」

「お姉さん?」

「私、最低な事言うね。私はアマタが<アバター>に潜れなくなって不謹慎だけど嬉しかった。もう命の危険に晒されなくて済むんだって。異世界に行かなくても楽しい毎日が待ってるよって知って欲しかった。」


 レイア姉さんの気持ちは分かる。俺だって現実でも楽しいって事わかる。でも、<アバター>に、夢を見たっていいじゃないか!!


 そんな事を思っていた時だった。ポロポロと涙が零れる。

 あれ?おかしいな。俺人前で泣いた事ないんだけどな。涙止まらねぇし・・・


「お、お姉様ぁぁ!!がんどぉですぅ・・・。なんて愛が深いのでしょうか!!」

(おいチユ!!なんでお前が泣いている!?)

(だって、だって・・・・・・・・・だてだてだって。)

(感極まって、「だって」しか言えてねぇ。)

「アマタ。いつそんなに泣き虫さんになったのかしら?困ったわね。よしよし。」


 俺は姉に頭を撫でられている。

 俯瞰してこの状況を整理しよう。21歳の姉の胸に、15歳の男が子どものように泣きついている。・・・アウトだろ。


 精神年齢で見て見よう。

 21歳の姉に8歳のチユがあやされている。

 ああ、これならしっくり来るよな。脳内変換ってスキルが今後必要になるな。俺、もっと強くなれ。


(チユ、そろそろ引っ越しの続きを。)

「そうだ、引っ越しの続きをしないと!!」

「立ち直り早いのね。」


 引っ越しの続きをする。しながら会話はまだ続く。


「今度行くとこの制服ね、男物で用意しちゃった。気が利かなくてごめんね。」


 いや、むしろそれでいいのです。お姉さんのそれは勘違いだ。


「いいんです。お姉さんありがとう。これからもよろしくね。」

「なんて可愛い弟なんでしょ。こんな一面あるなんて知らなかった!!」


 と満面の笑み。

 そういえば、姉とこんなにちゃんと話するのはいつぶりだろうか。


 最近の俺はほとんど家にいなかったり、帰って来ても部屋に引きこもってたり、何か質問されても一言二言で返して終わりっていうのが普通だった。


 こんなに姉って思ってくれてたんだな。


「後は掃除だけだね。アマタ、もう一頑張りだ。」

「それ、アマタ・・・俺がやります。」


 不意にチユは、魔力を込めた。俺は考えにふけっていた為に止めるのが遅れた。


「アマタ、掃除は2人でやった方が早いでしょう・・・・・・へ!?えええ!?」


 生活魔法クリーンが発動してしまった。

 光の泡で部屋中隈無く泡だらけ。むしろ何も見えないぐらい泡だらけなのだ。


「何が起こって!!助けて!!助けて!!」


 レイア姉さんが光の泡で溺れている!?いや、実害ないから!!溺れてるのは気の問題だって!!


「ほら!!ピカピカになりました!!」


 と、光の泡が綺麗に消える。残ったのは新築そっくりな内装だった。


(ピカピカになりました!じゃない。やりすぎだ!!)

(はい?)


「アマタ、今の何?」

「今のってこのクリーンの事?みんな出来るでしょう?」


(エルフならな!!ここは人間しかいない。明らかに怪奇現象だからな!!)

(ほえ!?)


「みんな出来るって言った?」

「間違いました。みんな出来ません。」

「どうやったの?」


(ど、どうしましょう!!アマタさん、助けて!!)

(とりあえず、魔道具でやったって言っておけ。)


「とりあえず、魔道具でやったって言っておけ。」

(おま・・・チユ。そのままそっくり復唱するなって!!)

(はぅあ!!)


「またそのネタ?誰に言わされてるのよ。」

「あ、いや、それは。」

「あのねアマタ。魔道具っていうのはね、全てに行政への許可書がいるの。このワープゾーンだって、引っ越し業者が許可書を取りに行ってるのよ。たまたま手に入れたからってむやみに使用したらダメよ。」


 チユはコクリとうなづきながら・・・矛先は俺に。


(アマタしゃん。怒られましたよ!?魔道具って嘘吐くから・・・)

(魔法を使いましたって言った方が余計変な奴だと思われるぞ。本当の魔法だけど。)

(魔法使い・・・変な奴・・・。もしかしてアマタさんの世界は魔女狩りが流行している世界ですか?)

(チユ、何故中世ヨーロッパの出来事を知ってる?夢で見たのか?)

(そうなんです。やっぱりバレたら私、火炙りの刑ですね!!)

(あ、いや。昔の話というか、そもそも国が違うし・・・)


 間違いを訂正していると、レイア姉が声を上げる。そのせいで俺の言葉が中断された。


「どうせエイル君から貰ったんでしょう?引っ越し終わったら返して来なさいよ。」


 レイア姉。勝手に勘違いしてるや。

 確かにエイル兄は・・・

『アバターの事なら九条商事になんでもお任せ。武器シェア率50%の実績を誇る九条商事はなんでもやります。』

 そのCMでお馴染みの大手会社のなんと社長の御曹司である。

 その会社は魔道具開発にも手を出していると聞く。なるほど。辻褄があう。上手いな。

 今度チユがやらかしたらこの言い訳を試してみよう。


(もう絶対に魔法は使いません!!!)


 いや、そもそも俺が身体を動かせたら万事解決なんだよな。

お付き合い頂きありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


『ブックマーク』と『いいね』をよろしくお願いします。


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