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第16話 引っ越ししてみよう。

楽しんでもらえれば嬉しいです。


 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 俺は後悔している。真気収束をやった事を・・・


 真気収束を解いたら突然、全身の筋肉が悲鳴をあげてるんだけど一体何故!?

 そりゃ普段から運動をしていないからだ。急に動かすから悲鳴をあげるのだ。ああ、最悪だ。


「なんで勝ったお前がそんな重症なんだよ!!」


 お兄様が呆れながら俺を見下している。


「いたたた。痛い・・・。お兄様が襲い掛かるから悪いのです。痛っ!!」


 戦闘終了後、チユにお願いし、お兄様と自分にライトヒーリングをかけてもらったのだが・・・。

 おかげでお兄様は完治してピンピンしている。

 逆に俺は、この有様だ。かけてもらったのに筋肉痛には効果無いなんてそんなのあんまりだ!!

 家の中の寝床に横になり、痛みに耐える。


「お前な・・・。これでも飲んで安静にしてろ。」


 渡されたのは、ココナッツのような果物に竹素材のようなストローが刺さってる。やたら突っかかってくるお兄様だけど、こんな優しい一面もあるのか。


「わーい。ありがとう!!」


 思いっきり甘えて見る事にする。


「今更女の子ぶったって騙されないからな!!」


 なんか言っておりますが、俺はジュースをすする。果物特有の風味、ほのかに甘い優しいお味。


「うん、最高〜。生き返る〜。」

「美味しいか?」

「美味しいです!!」

「そうか。それはよかった!!」


 この笑顔に釣られてお兄様も笑顔になる。なるほど。女の武器ってこういう事なんだな。今度お兄様がピリピリしたら思いっきり甘えてみよう。

 そんな不真面目な事考えながら、ふと我にかえる。何故お兄様が癇癪を起こしたか?そこには事前にお父様とのやり取りがあった。


「ところでお兄様はお父様と何を話してたのです?」

「そうだよ。父上の奴、本当にムカつく。エルフの村の周りに生息するモンスターの動きがどうもおかしいって言うんだ。」

「それと、お父様との喧嘩とどう関係が?」

「調査に俺も加えてくれと頼んだら、断られた。ガキにはまだ早いって。『俺はもう12になるし同年代には負け知らずだ』って言ったら笑われた。」

「そうですよ。8歳の私に負けて何を言ってるのですか。」

「お前が異常なんだよ!!なんでそんなに強いんだよ!!」

「経験の差です。私はずっと死と隣合わせの場所にいました。剣が弱ければ死ぬ環境で生きて来た。6歳から10年間。だからです。素振りも本気でしますし、生きる為ならなんでも使う。」

「お前、神様なのに年齢あるんだな。」

「自分の事を神様なんて思った事ないですよ。それに俺・・・いや、私もまだまだ弱くて。」

「なんだよ。今更一人称『俺』から『私』に変えても遅いっての!!」

「いや、お姉様にこっ酷く怒られました。『エルフとして、性別に見合った正しい言葉遣いをしなさい』って。エルフの文官達が納得しないのだとか。」

「ハッハッハ。ニーナらしいな。」

「お兄様、今度お姉様に言って下さい。もっと優しくして下さいって。厳しいすぎますって。」

「お前さ、そういえばなんで俺たちに敬語使ってるの?お前の話の通りなら16歳か?」

「正確には今年の誕生日で16なのですが。チユのお兄様ですから私のお兄様でもあります。」

「中身は神様だろ?イコールじゃないだろ。」

「神様じゃないですって!!身体はチユなんだし、身体に見合った振る舞いを・・・あっ痛たた。」


 叫んだら筋肉が悲鳴をあげた。


「気にしすぎだろ。神子様なんだ。この村で一番偉いんだから、威張ってたらいいんだよ。」

「いやですよ。キャラじゃないし。そもそも威張ってたら衝突の種じゃないですか。」


 事なかれ主義上等!!


「お前、変わってるな。」

「お・・・私からしたらこの村のみんな、変わってます。虫のモンスター食うし。」


 寝返りをうつ。

 すると、お兄様はこちらを見て真剣な顔をして言った。


「チユを頼むぞ。アマタ。」


 はい?お兄様変なもの食べました?

 虫を食べるのやめましょう?変な病気になってますって今。そう今まさに!!






 チユが眠る。すると場面はすぐにアマタへと切り替わる。


 時計は朝の6時だった。つまり、俺は6時に就寝したと言う事か。


「おはよう御座いますアマタさん。」


(ほらチユ。心の中で会話しようぜ。)


「あ・・・。」


 口を塞ぐチユであった。


(アマタさん。いつもチユの村の為にいろいろやってくれてありがとうございます。)

(何を言ってるんだよ。もう俺の村でもあるんだ。)

(そう思ってくれる事が私、嬉しいんです。)

(そうか。)

(なので、大好きなアマタさんに恩返しをしたいです!!アマタさん、何をしたら喜んで貰えますか?)


 このタイミングで言い出してくれるのはなんて嬉しいのだろうか。何故なら今日は退院、家族の引っ越しという二大イベントが待っている。


(『何もする必要ないよ』と言いたいところだが、一つお願いしてもいいか?)

(はい、なんでしょうか!?)

(今日一日、家族の引っ越しの手伝いをしてくれないか?)

(引っ越し・・・ですか?)

(エルフの村には引っ越しの概念が無いからな。家を移動するんだ。)

(家を移動!?わ、私に出来るのでしょうか?)

(移動って言っても中の荷物だけだからな。まぁ、今日の細かい動きはこまめに指示するから、今日はその通りに動いてくれ!!)

(分かりました!!)


 今日で最後の病人食を摂り、チユにお願いし、荷物を纏めて貰う。

 本日は病院を退院する。その足で家の引っ越しの手伝いをしなければならない。


 退院するというのにうちの家族は見送りに誰も来なかった。少し寂しさを感じつつも、これが当たり前かと病院を後にする。もう二度とこの敷地には帰って来れない。株式会社 天賦の門を出た。


(レイモンドもアカネもミーヤも、こんなに近くにいるんだから一回ぐらい見舞いに来てもいいだろうに。)


 追放したのはアイツらだ、そんな中会うのは気まずいものはあるだろうし、今攻略中のダンジョンもラストスパートをかけている。時間が無いのは分かる。

 でもまさか、追放と同時に俺たちの関係性まで終わりにした訳じゃないよな・・・


 ネガティブな考えを振り払い。帝都の我が家へ移動する。

 とは言ってもチユは場所を知らない為、俺が指示しながらの移動になる。


 チユにとっては初めての道。人が交叉するスクランブル交差点。初めての横断歩道。駅でスマホをかざして改札を抜ける。チユにとっての初めての電車。

 路線が沢山ある為迷わないように指示を出す。


 ひたすら「わぁ」とか「おお!!」とか言っていた。


 帝都メトロ線、特急に乗り2駅。


 電車の中なんて、窓の外の風景にかじりついて見ているもんだから、近くに座ったおばあちゃんに「ふふっ」と笑われた。絶対に田舎者と勘違いされた。


 肩が触れ合うほどの窮屈な車内。座席に座れる訳もないうんざりする通勤ラッシュ。

 そんな日常もチユにとっては新鮮で、終始上機嫌だった。


(チユ。楽しそうだな。)

(はい。大冒険です!!)


 そうか。俺にとってエルフの村が大冒険なように、チユにとってはなんでもないこのコンクリートタウンを歩く事が大冒険なのだ。


 駅から坂道を登り、マンションのオートロックを開け、中へ、エレベーターに乗り16階・・・そのフロアの家に上がる。すでに家にある荷物は段ボールに纏められてあった。

 両親に会えるかなと思ったら・・・両親の姿は無い。代わりに


「あら、アマタ。久しぶり。元気?」


 そこにいたのは姉の21歳になる雨宮 レイヤだった。


(俺がアマタさんのお姉様?綺麗な人!!)

(どこか抜けててガサツだけど。)

(どうしよう!!ご挨拶しなきゃっ!!)


「お、おおお久しぶりです、お、お姉様!!」


 チユ、慌てすぎて声が裏返っていた。


「アマタ?急にキャラでも変えたの?」


(チユ、まず落ち着け。俺の口調の真似しろ。エルフの村ではないし『お姉様』は変だ。)


「姉ちゃん。そんなんじゃねぇよ。」


 声を作っている。俺は頑張ってキャラを作れと言った覚えはないんだけどな・・・


「姉ちゃん?今度はツンデレキャラ?」


(アマタさん。なんてコミュニケーション取ったらいいんですか?)

(レイア姉は少しぼんやりしてるから適当でいいぞ。)

(適当ですか。わかったです!)


「そんなとこなんだぜ。」


(ちょっと待って!!それは変だって!!チユの中で俺はそんなキャラなのか?)

(えっ!?そ、そうですか!?)


 レイアは不思議そうな目でこちらをみている。


「だぜ?そんなに病人食不味かった?」


 と首を傾げた。


(アマタさん!!ことごとく突っ込まれます!!助けてください!!)


 チユが悲鳴をあげていた。


「え、ええっと。」

「アマタもしかして会わな過ぎて人見知りした?」

「はい。実は・・・。」

「正直でよろしい。今まで放置しててごめんね。でもこれからはいっぱい一緒の時間が持てるよ。緊張するかもしれないけど、お父さんお母さん仕事でいないから2人で引っ越し進めるよ。慣れてね。頑張ろうね。」


 俺はそこまで人見知りじゃないんだけどな・・・。第一に血の繋がった家族なのに。レイア姉、それじゃまるで親戚に引き取られた子どもする対応だよ!!


「はいっ!!」


 否定して!!まぁ、チユは緊張してるからこれでいいか。


「返事が良くてよろしい。」


 それにしても両親は仕事か・・・。俺、退院したばかりなのにLINEすらもないなんて、両親から避けられてるのかな?


 なんて考えてると不意にインターフォンがなる。


「来たわね。今出ます!!」


 と、レイア姉が対応する。引っ越し業者がやって来た。


「ワープゾーンの設置はここで大丈夫ですか?」

「はい。玄関にお願いします。」


 テキパキと電話ボックスのような箱を設置し、数種類の魔導具の配線を張り巡らせていく。


「設置オッケーです。もう、次の引っ越し先の玄関前に繋げてあるのでいつでもくぐって大丈夫ですよ。では、また今日の15時に回収しに来るので。」


 最近の引っ越し業者はワープゾーンを設置するだけという簡単なお仕事だ。全てお任せにすると楽は楽だが、値段もそこそこする。撤退していった。


(荷物運びは俺たちが全てやるのか・・・)


 親めケチったな。


(あ、アマタさん。私は苦じゃないですよ。そんな嫌そうにしないでください。)

(ああ、そうだな。考えがネガティブになっていた。)


「アマタ、ケチったとか思わないでね。家計いろいろ大変なんだから。それじゃ、引っ越し進めよう。」


 姉の指導の元、引っ越しが始まった。


(引っ越し先、狭っ!!ボロっ!!)


 俺の第一印象はまずこれだ。木造住宅、ベニヤのタンス、畳部屋。階段下収納・・・。築60年という話が詐欺に思えて仕方ない程の古民家風の場所。このRの時代にTの時代の部屋に住む?戦前かっ!?


「アマタ、貴方の荷物は私の家に運ぶから最後まで運ばないでね。」


(そうだぞチユ。俺がこれから住む家は姉の家だからな。間違えないように。)


「わかった!!」

「なんか今日のアマタ、素直で可愛い。」

「本当に?」


 そういえば姉とこんなに長い時間同じ空間にいたの何年ぶりだろうか。

 毎日のスケジュールが、起床、学校、仕事、寝に帰る。の生活で、休みもほとんどなく過ごしていたから6歳以降からほとんど家族と一緒の時間がない。


 荷物を運びながら姉は話始めた。


「私、正直な話、アマタと上手くやっていけるか不安だったのよ。ほら、アマタにとってアバターって命と同じぐらい大切なものじゃない。それがドクターストップ、全てを失ったんだから、なんて声を掛ければ良いか分からなかった。まぁ父も母も『どう接していけばいいか分からないわ』って言ってたしね。」

「そんなに落ち込んでたんだ。」

「ふふっ。なんでそんなに人事なのよ。自分の事よ。ああ、今日のアマタ、面白い。」

「あ、そうでした。落ち込んでました。」

「でも、立ち直ったみたいね。良かった。本当に良かった。エイル君のおかげかな?」


 いや、チユのおかげなんだが。


<なんですマスター?そこはハッキリ言ってあげないと。>


(あ、アマタイル!!急に話かけて来るなよ!!)


<チユ様が喜びますよ。もう一度、ハッキリ申し上げて下さい。>


(えっと・・・面と向かって言えるか!!)

(アマタさん、どうしました!?)

(なんでもない。)

(アマタさん。私、お姉様の質問にどう返したら・・・?)


 そうだった。姉に話かけられてたんだ。しばらく黙ってしまう俺に姉は首を傾げる。


「そこ真剣に考え込むところなの!?それとも言いにくい相手でもいるの?」


(エイルのおかげだって言ってくれ。)


「エイルのおかげだって言ってくれ。」

「『言ってくれ?』」


 チユは思わず口を抑える。


「はうわっ!!!」

「そういう事にしておいてくれって事ね。わかったわ。彼女でも出来たのかしら?」


 変に誤解しちゃったよ!!

 チユも『彼女』のワードに反応してなんか考えこんでる。


「彼女より・・・彼氏が欲しい・・・」


 なっ!!!ち、チユさん!?確かに貴方はそうかもしれないけど、俺目線で言葉を発して貰えません!?


「あらまぁ。アマタ、しばらく見ない内に。へぇ、そういう事なんだ。」


 ご、誤解だぁ!!!

ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


『ブックマーク』と『いいね』をよろしくお願いします。


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また明日もよろしくお願いします。

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