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第13話 他者の思惑はあれど、神子は親睦を深めるのに忙しい。

楽しんでもらえれば嬉しいです。


 この物語はフィクションです。

 登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

 私はジョアンヌ。生まれも育ちもこのエルフの村で過ごし、かれこれ700年の間、世界樹の大木を護る任務をまっとうしてきた。


 私の家に集まってくる祭司達。

 この村には3つの部族が住んでいる。

 一つがエルフでありながら、魔法を見に纏い剣で敵を薙ぎ倒すタイプ。筋肉馬鹿タイプだ。

 二つ目が昔ながらの弓を使い、遠距離から獲物を捉えるタイプ。このタイプのエルフは、産まれた時に御神木から木を分けて貰う。その木を弓として加工し生涯共にするのだ。

 三つ目は精霊魔法に長けたタイプ。このタイプは伝統を重んじ、ルールや祭りごとに厳しく頭脳に長けている。頭が硬いともいう。文官ともいい、何かあると口うるさいのは三つ目のタイプである。

 いかに他の種族と関わらないように生きるか。そして森を大切にする役割を担っている。


「祭司長直々に出向いてどうした?エルドラン。」


 こやつの顔も若干の皺が目立ってきおった。私の弟なのだが、反発ばかりしてくる。ハンサムが売りの可愛い弟だったのに、歳には勝てないのう。


「ジョアンヌ、何故神子殿に好き放題させてる?村に土の壁で囲って何をしているというのだ?」


「好きも何も神子様はご自身で使命分野を考えて行動している。この村の発展の為に貢献して下さっているのじゃ。」


「やる事をやって無いではないか。村の事、全く把握していない。次の祭りのスケジュールもなにも知らない。おまけに女の身でありながら「俺」と称してガサツに行動する。責任感に欠ける存在である!!宴の準備や儀式の準備など、先頭に立って指揮を取るべき人物では?」


「最初の一年目は皆見習いよ。神子はこうあるべきだと縛っては、神子様は逃げ出してしまいましょう。」


「それが、今までエルフ達が行ってきた文化を壊してしまってもジョアンヌは問題ないというのか?」


「護らねばならない文化とはなんぞ?確かに神木は護らねばならない。しかし神子様は護る手伝いをしてくれておる。」


「ふざけるな!!あんな壁認めるか!!本来神子というのは数多くの大精霊を従え、その絶対的な力によって他の種族を虐げる存在。なのに・・・。大精霊と契約を結ぶまでアイツはただのガキだろうに。」


「口に気を付けてくれ。神子様への侮辱と取れるぞ。」


「ちぃっ!」


 先代神子様は精霊の力を知るまではまるで幼子のように弱かった。今の神子様は精霊の力無しにしても十分に強く頼りのある人物じゃ。私は見てみたい。精霊の力を手に入れて先代の神子様の実力を上回る人物になってくれる事を。」


「どうだか?精霊と契約を取れるとは限らぬぞ。」


「おかしいのう。チユは幼い頃から精霊に囲まれてあったのじゃが、もうすでに好かれてあるのに契約を取れないなんてあり得る話かの?」


「今はチユはおらぬ!!」


「いるのじゃ。共に共存しておる。その異常性も含めて私は楽しみにしておる。」


「今日のところは引き下がる。だが、教育ぐらいはしっかりしてくれ。」


「する必要があるかどうか分からぬ。」


「何故お前が村長なんだよ。俺だったら。」


「エルドラン。お前の頭は硬すぎる。もっと気を楽にして物事を、俯瞰して見てみろ。何故私が村長なのか良く分かるぞ。」


「くそ!!」


 段階というものを踏んでいかねばならないのにいきなり全てを押し付けては気が重いだろう。


 エルドランの取り巻き達が全員居なくなるのを見て私は息を吐く。8歳の少女がトップになった所で最初は誰も付いて来やしないのだ。

 今日、武闘派の部族を巻き込んだ事は大きな一歩である。今後のアマタ様の活躍に期待しよう。


 いずれ、神子様の正式なお仕事をして貰うとして、今はアマタ様のご計画の手伝いをしてあげようではないか。





 チユの自宅に帰宅すると沈むように夢の世界に誘われるのであった。

 眠ると俺のいる世界、現実に戻される。


 目を覚ますとそこは病院内。まずやるが事ない。


 相変わらずコントロールはチユのまま、俺は一切身体を動かす事が出来なかった。チユは飽きる事なく一日中散歩していた。雨の降る中、傘を差して病院の周りをぐるぐる回っていた。


 やる事が無くなると、部屋に戻って窓の外の景色・・・走る車をぼーっと眺めていた。


(楽しいか?)

(アマタ様の世界って不思議ですね。)


 ふふふと、満足そうに笑ってる。


(俺にとってはチユのいる世界の方が不思議だけどな。)

(どこがですか?何もないですよ。)

(たしかに何もないな。でも自然が豊かで、魔法がある。ここは機械とか建物ばかりで自然がない。無機質なんだよ。)

(でも便利な世界ですよね。)

(そうだな。)

(アマタ様。チユの村、いろいろ尽くしてくれてありがとうございます。全く関係ないのに申し訳ないです。)

(関係ない訳ないだろ。チユの村の発展は重要項目だ。)


 毎日チユの村にお世話になっている。このチユとの二重生活がいつまで続くか分からないのなら口に入れるのはとても重要な物となってくる。俺がしたいのは農業だ。食糧問題だ。虫を食うとかまず論外であって、穀物を育てたい!!


 食中毒とか寄生虫で死ぬとか残念な死に方絶対に嫌だ。これは死活問題なのだ。


(アマタ様、そんなに気遣ってくれてるのですね。チユは幸せものです。)


 あれ、なんか勘違いさせてしまったかも・・・。チユはなんでも感謝しちゃうエルフだからな。いつもの事か。気にしないでおこう。


(チユ、その・・・。アマタって呼び捨てでいいぞ。)

(アマタ様、急にどうしたのですか?)

(俺はそんなに偉くない。神様じゃないのに様付けなんて変だろ。)

(アマタ様は神様じゃないのですか!?)

(あれ?前に言ったよね。)

(で、でも、私にとっては神様です!!すぐ消える命だったのに救われました!!)

(事情はお母様に聞かせて貰ったけど、俺が入った事でチユの魂が安定したってだけの話。俺が何かした訳ではないだろう。)

(いいえそれでも神様です。)

(その言い方、なんかむず痒くて困るんだよな。)

(困るんですか?)

(ああ。アマタって呼び捨てでいいぞ。俺もたまにチユって呼び捨てしてるしな。)

(アマタ・・・様)

(さまって言った。)

(アマタ・・・さん)


 ま、いきなり呼び捨ては距離詰めすぎか。迷惑だよな。


(じゃあアマタさんで。チユ、改めてよろしくな。)

(アマタさん、よろしくお願いします。)


 今日はゆっくり出来た日だった。


 夕方、雨が止むと両親が見舞いにやって来た。チユの対応は特に違和感なく過ごせていたと思う。


 というのも、母が一方的に喋るもんだからチユが発言する必要がなく怪しまれなかったという話なのだが。


 両親の用事というのは俺の学校の話だ。

 俺が行く予定の学校は5つ離れた姉が教師を務めている学校で、「一人暮らしの姉の住まいにお邪魔させてもらったら?」という内容だった。


 よく話を聞くと、両親は、引っ越し先の部屋が狭いようで俺が邪魔なんだと。酷い話だ。


 精密検査の結果が分かるのが早く、異常なしという事で明日退院になった。

 退院・・・つまりこの敷地内で過ごす最後の時間という事を意味する。そもそもこの敷地内はエリコさんの会社、『株式会社 天賦』の敷地内。アバター集団テンプラーとそれをサポートするメカニック、および事務員、マネージャー、付属病院の関係者しか入ってはならないのだ。

 チユの自由気ままな散歩ではあったのだが、最後の景色を目に焼き付ける一日となった。

 部屋で眠る。




 視界はエルフの森へ。


 目を覚ますと、遠くからお兄様がこちらを見ていた。


「どうされました?お兄様。」

「ふん、なんでもねぇよ。」


 いつものようにお母様が朝ごはんを用意してくれる。

 恥ずかしい話「虫は嫌じゃ!」と昨日の夜散々喚いていたから、大量にあるデルタワームの干物の料理には出ない。


 平和なひとときを過ごした。

 チユに生活魔法、クリーンで皿を綺麗にして貰って。準備はOK。

 今日の予定はついに、畑を耕すぞ!!


「神子・・・様?また村長のところ行くの?」


 そう息巻いた矢先にお姉様からの質問にあう。妹に「神子様」は言いづらかったみたいだ。どうしたのだろうか?


「あ、今まで通り『チユ』でも大丈夫ですよ。呼びやすいように好きなように呼んで下さい。一応、チユの中の人間はアマタって名前です。村長の所に行くつもりだけど、どうしたのです?」

「昨日、あまりにも疲れた様子だったから心配で。今日、私も行っていいかしら。」


 過労・・・。うん、昨日は我ながら頑張り過ぎたと思う。


「いいですよ。」


 畑仕事だけど。大丈夫だよね。


「ところで、お兄様は何故俺の寝顔を見てたのです?」

「知らないけど、きっとチユが昨日フラフラになって帰って来たから心配してたんじゃないかしら?『クソ神様め』って呟いてたし。」


 チユの身体酷使し過ぎてお兄様にめっちゃ嫌われてるし!!


「そうか。今度お兄様と話しないとな。」


 それにチユへの配慮は必要だな。


(アマタさん、アマタさん。そんなに私に気遣うことないですよ。あなたが思うままに動いて下さい。)

(チユ、ありがとな。でも体力的にしんどい時は言ってくれ。夢中になってると気が付かない時がある。)

(ありがとうございます。優しいのですね、アマタさんは。)


「お兄様は、剣術でチユに負けて大変悔しかったのか毎日、素振りしてるのよ。多分近いうちに再戦あると思う。」


 そうか・・・。向上心があるのはいいけど、俺ももっと筋トレして強くならないとな。


「分かりました。負けないように頑張ります。」


(筋トレ・・・するのですか?)

(ああ。筋トレ。嫌か?)

(やった事ないので・・・。ちょっと不安です。)


 うん、わかるよ。やった事ないって。でもこの筋力の無さは平均以下だからね。


(心配するな。俺に任せろ。)



 村長の元へ行くと、エルフの戦士達は俺を待っていた。


「神子様!!待ってました。」

「いろんな植物の種、用意しました!!」

「どんなモンスターが現れても俺たちに任せてください!!」


 とひざまづくもんだからお姉様は軽く引いていた。対して気にしなくてもいいか。そう思いいつものノリを炸裂する。


「お前ら、今日は畑仕事をする。案内するからついて来い!!」


 俺の号令に皆、「おう!!!」と反応する。その声にびっくりしたお姉様。


「ちょっとチユ、今の何!?おしとやかに出来ないの!?」

「あ、お姉様、俺アマタです。」

「え?一人称が俺!?ちょっと、あなた女の子なのよ。『私』でしょう!?口調気をつけなさいよ。」


 お姉様から予想外の注意を貰う。


「いや、その・・・」

「『私』言ってみて。」

「俺は・・・」


 キィっと、その細い目で睨まれた。


「『私』って言いなさい!!」


 確かにチユの身体で「俺」って言い続けるのも違和感だろうなって思ってたけど。中身が違うんだしいいじゃないか!?というか今更「私」って言い辛いんだけど。


「僕」

「それじゃ、変なキャラになっちゃうじゃない。『私』って言って!!」


 テコでも譲らないお姉様に村長は声をかける。


「まぁ、ニーナや、アマタ様の好きなようにやらせれば・・・。」

「お婆婆様もなんでちゃんと言わないの!?戦士達にはこのノリで通用するかもしれないけど、一部のエルフの文官達は今のチユの事『野蛮人』って思ってるわ。正しい言葉遣いしないから舐められてる。それで大丈夫なの!?」


 お姉様の中で俺はチユなんだな。俺、アマタなんだけど・・・。確かに好きに呼べって言ったけどさ。言葉まで指摘しなくてもいいじゃない?

 でも周りに「野蛮人」って思われるのは嫌だな。言葉遣いも身体に合わせるかな・・・


「些細な事じゃ。」


 頑張れ村長!権限の全てを使ってお姉様を抑え込め!!

 そう思うもお姉様は一切譲ろうとしない。頑固である。


「私は嫌よ。気になるもん。一緒に歩けないでしょう?」


 ますます不機嫌になるお姉様に俺は折れた。


「わ、分かりました。『私』ですね。私って言います。」

「私の見てない所でもだよ。わかってる!?」


 表面的な返事では許さない。そんなオーラを纏ったお姉様はマナーに厳しかった。

目を通して頂きありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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