第12話 アマタはトラウマを呼び起こして過剰にキレる。
楽しんでもらえれば嬉しいです。
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
何故俺は頭が真っ白になったのか?
その時俺は一瞬、過去の映像がフラッシュバックしていた。
この光景は二度と見たくはないと思っていたのに、こんなにも鮮明に思い出すなんて思わなかった。そのキーとなる出来事は、テマルが最後に使っていた武器とそれが奪われる事だった。
「てめぇ!!こっち向け!!必要以上にテマルを襲うんじゃねぇ!!・・・・・・そうだ。これでいい。」
触手だらけの巨大な闇の目の前に俺は立ち塞がる。テマルを狙い続けるその黒き闇に俺は無謀な接近攻撃を仕掛けた。その何千本もの触手は一本一本意志を持って動く。近寄れは飲み込まれるのは目に見えていた。
エリコさんの最強のエリート集団<テンプラー>が計算を見誤り準備を怠った最大の失態。負け戦と呼ばれたボス戦。現状では味方は俺とテマルを除いて皆、戦闘不能に陥っていた。
だから俺とテマルは仲間を逃した。
後は俺が時間稼ぎをしてテマルを逃せばいい。
俺の死で、仲間を救えるのだ。幸い、ターゲットは俺に向いてる。ダンジョンの奥底まで逃げて、テマルの逃走時間を稼ごう。
逃げきれはしない。恐怖の化身・・・ウロボロス。触手を剣で必死に振り払うが、触手は容赦なく手、足、膝と触手が絡まって行く。その巨大な影が俺を完全に覆った時だった。
「ニュートンカノン=ゼロ」
真っ黒に染まった俺の視界が急に開けた!!
テマルの必殺技が崩剣ディアブロスから放たれたのだ。それはまるでスナイパーの弾丸。残像が綺麗に残り、それは一筋の光がウロボロスを貫いたようだった。
<ウロボロスのHP5%です。マスター、たたみかけて下さいませ!!>
触手がバッサリと焼き切れ、急所のコアが丸出しだ。ウロボロスは隙だらけ。目の前にはコアにダイレクトで連撃を叩き込めと本能が叫ぶ!!
ウロボロスはテマルを見ていた。
テマルのスキル、その必殺技の後は隙がでかい。そして、ヘイトは使った奴の元へ行く。それを知ってか、テマルは安心したような、どこか諦めにも似た表情をした。
無情にもウロボロスの口から終焉のブレスが放たれた。テマルはその闇に飲み込まれる。
テマルを・・・。よくもテマルを殺したな!!
無我夢中でコアを斬りつけた。急所という急所を滅多斬りにした。勝てるから斬るのではない、テマルを救う為に俺は・・・俺は!!!
気付いた時には・・・
<ウロボロスの討伐に成功しました。やりましたねマスター!!お願いです。倒したのですから笑って下さい。倒したのですから、目を開けて下さい。マスター>
何も見えなくなった世界でアマタイルの電子音が響き渡る。
俺は触手に絡まれた事により呪いを貰い、その追加ダメージで俺も身動き一つ取れなくなっていた。継続ダメージにより命の炎を散らすのだった。
あの時、もし逆の立場なら。もしあの時俺がテマルの愛剣、崩剣ディアブロスを使う立場だったら。もしかしたら奇跡的に命を繋ぎ止めたのはテマルだったのかも知れない。そのダメージの元となった剣がまさに俺の手の中にある。
それが知らない野郎の手に渡ったとあったら正気を失うのも無理はない話ではないだろうか。
投げ飛ばしていた。この身長差で投げ飛ばせるの?って思うのかもしれないけど可能なのだ。武術の達人なら指一本で敵を投げ飛ばせる。
「てめぇ、武器が強いからって調子乗ってんじゃねぇ!!」
筋肉ダルマの叫びで現実に意識が戻された。
<身体能力強化の魔法を確認。筋肉ダルマの筋力、耐久力、素早さが10アップしました>
筋肉ダルマからの斬撃が迫る。筋力差的にもう物理的に倒すのは不可能だろう。「物理的に」の話だが。
「グラビトン」
俺は振り下ろされる剣を見ながら冷静にスキルの名を告げた。
筋力ダルマだけではない。俺を敵視する奴ら自身の体重の5倍の圧力がかかる。
「こんな小さな女の子に剣を向けるってどういうつもりだ?俺はチユから身体を貸してもらってるの。もしお嫁に行けない身体になったらどうしてくれるんだよおい。」
言葉でも圧をかける。プルプルと震えながら筋肉ダルマは立ちあがろうとする。
ならば。重力の圧を6倍、7倍と、威力を強める。
筋肉ダルマ含む、俺に敵意を向ける奴らはプルプルとやばいぐらいに痙攣し始めた。
10倍を越えれば命に関わる。
(アマタ様、お願いです!!そのぐらいにしてください!!私が皆に代わって謝りますから!!)
チユの心の叫びに正気に戻る。
・・・俺は一体何を・・・。この状況、まるで俺が悪役じゃねぇか。
状況を振り返ると不思議だ。チユは被害者なのに、加害者に代わって謝るって・・・。チユの懐の深さにびっくりする。チユの慈悲に免じて俺はスキルを解除した。
エルフの戦士達は大きく息を切らす。咳き込む者もいた。
(チユ、済まない。俺どうかしてた。)
(その剣は、それほど大切な剣なのですね。)
テマルの形見なのだ。それが奪わられかけたからと言ってチユの同胞を苦しめたり恐怖で支配するのは間違ってる。エルフの戦士達に向き合い。
「皆さんを傷つけて、すみません。なんとお詫びをしたら良いか。」
と頭を下げようとすると村長に手を握られ、その行為を遮られた。向かい合い俺を褒め称える。
「アマタ様、素晴らしいですぞ。こやつらはアマタ様を舐めていた。圧倒的な実力を示されたではないですか。」
「そんな褒められたやり方ではないですよ。このやり方は沢山の敵を産みます。」
「それはどうですかね。皆の表情を見てください。」
見てくださいって・・・武力で心をバキバキに折ったのだ。こんな事して恨みを買わない訳がない。そう思って皆を見た。
恨みの目?そんな目をした者は誰一人いなかった。
ここに集った8人のエルフの戦士達は尊敬の眼差しに代わっている。
「あれ?」
「皆、貴方様の指示に付き従う事でしょう。」
「へ?今ので?」
不意に筋肉ダルマが立ち上がる。
「ガッハッハ!!可愛い顔して、神子様はやるんだな!!」
へっ!?筋肉ダルマがにやけてる。キモいぞ!!!背中を叩こうとするもんだから反射で避ける。
「いや!!寄らないで。」
俺が咄嗟に出た言葉が乙女発言だった。言いながら顔を蹴り飛ばす。怯まないんだけど・・・。間接技決めないとダメ?
村長が俺に問いかける。
「アマタ様、先程の貴方様が使った重力魔法・・・敵意を持った人のみ魔法を行使されるというのは一体どんな御技なのですか?」
「そんなの簡単だろ。敵意センサーにタグ付けして放てば・・・」
「未知の技術!!!これはいやはや頭が上がらない。・・・皆のモノ!!神子様は悪意に反応して裁きを下さる!!心を洗い今日から清い気持ちで生きるのじゃ!!!」
村長様それは曲解だって!!いや、よく考えれば誰でも出来る事だろ!!タグ付けぐらい。
何?考えるの放棄してるの?
スキルとは違って魔法にタグ付けって無いのかな?無かったらどうやって敵と味方判別してるの?
もしかして毎回魔法使う毎に味方巻き込んでるの?
というか、村長に仕切らせたらダメだ。俺が神として崇められてしまう。
「神子様〜」
遅かった!!エルフ全員が平伏してしまった!!
あ、なんか。訂正しづらいよ・・・。神じゃないんだよ。中身人間なんだよ。顔上げてくれよ、崇めないでくれよ。
いっか。いいよな。今それ言ったら空気読めない奴だな。
考えると気が重い。俺はキリキリと悲鳴を上げるお腹を優しくさするのであった。
「さて、神子様。この壁の発生源はなんだと思いますか?」
一難去ってまた一難。
俺に敵意を抱く者が居なくなったと思ったら。この壁は誰の仕業なんだ?という問題に逆戻りする。
これは堪らず、白状した。
「あの、実は大変申し上げ辛いのですが・・・」
「アマタ様、犯人をもう突き止めたというのですね。神子様はなんでもお見通しなのですね。」
「村長、最後まで聞いて下さい。俺がこの壁を作りました。目的はモンスターの被害から村を守るためです!!」
俺は皆の呆然とした視線に晒されるのだった。
その後も作業は続く。
その日は朝から晩まで土壁を作り続けて、ようやく一周囲う事が出来た。
皆の前で「土壁を作った犯人は私です」と白状した時は「神聖なエルフの森を穢すな!」とばかりにリンチに遭うかと思った。暮らしの中で皆が森を大切にしてた事が分かっていたからだ。
(アマタ様、心配しすぎです。皆はそんなに酷くなかったでしょう?)
(それはあくまで結果であって・・・まぁみんな優しかったな。)
(私はわかってましたよ。大丈夫だって。)
俺がやったとわかった途端、みんなは安堵した。未知のモンスターを警戒していたらしい。
ああ、こんな思い込みをしたのも価値観の違いって奴だ。
村長さんも、「作るなら事前にご相談くださいませ。でしたらこんなに混乱はしなかったでしょうに、」と笑っていた。俺の空回りだ。失敗失敗。
エルフの戦士の皆が手伝いたいと言ってくれた。
土壁は俺が武器スキルで発生させた後の外壁に耐久性アップの特性塗料を塗ってもらう。
俺の住む街で使われる防犯用の塗料だ。窓に塗れば大砲でも割れなくなると言われる強化塗料がアイテムストレージに入っていた為、テマルの持ち物と知りながらちょっとお借りさせて貰う。
しかし順調に思えたこの土壁にも問題がある。7割がた囲っておいて気が付くなんて自分でも呆れる程の計画性の無さなのだが・・・
エルフの村は森と共にある。つまりただでさえ日当たりが悪く圧迫感がある。それなのに日差しを遮る土壁なんか作ろうものなら閉塞感半端ない。
なので日光を遮断しないよう対策しないといけない。
今更土壁を無かった事には出来ないから内側には色彩に関する塗料を塗ろう。
塗ると半透明になり、壁の向こうが見えるという便利アイテムが俺の住む街、帝都にある。リアルから異世界に転送しなければならないのだが、今度エイルに相談してみよう。
なんせエイルの親はそういう会社の社長なんだから。
その塗料の利点は外から敵が攻めて来た時、外からは中が見えないのに、中からは外の敵の様子が丸わかりになるという訳だ。
今日一日で外周を土壁で覆ってしまう。東西南北に4つの人の出入り出来る隙間を確保し、今日は日が暮れた。
明日は何をしようか。バリスタでも設置するか?もう畑を耕すか・・・だ。
俺の名はプロシュート。
昨日の儀式で子どもの身体に神が宿ったらしい。今日、そいつに会った。
色白で、筋肉もなく、人とケンカどころか虫も殺せませんみたいな顔してやがる。温室育ちのガキだ。何が神が宿っただ。なんの変化もないじゃないか!!
そんなガキがいきなり俺たちの大将になったのだ。納得いく話ではない。だから突っかかってみた。
俺はこのエルフの村の中で1、2を争う戦士だ。ちょっと殺気を送ったら大抵の大人でも小便ちびってしまう筈だが。
あの野郎、俺の殺気をスルーしやがった!!それとも殺気を探知出来ないほど鈍感なのか?
あの、武器。なるほど。あの剣から強力なオーラを感じる。デルタワームを一人で倒したといつが、さてはあの剣が全てのギミックだな。
あの剣を取り上げたら何も出来ないガキに違いない。
だから取り上げてみた。
ーー俺は後悔した。俺に向けられた殺気。只者ではない。
幾千幾万の修羅場をくぐり抜け、戦場での頂点に立った者の目ではないだろうか。それに・・・俺は投げられた事に気がつかなかった。
いや、スピード的には早くない。
流れる動き呼吸をするかのように俺を投げたのだ。
なんて事だ!!どこにそんな力が隠されているんだ!!
普通、戦闘する時、魔法で身体能力強化をする。ケンカをする時も同様だ。なのにアイツは一切それをやってない。それなのに軽々と片手で捻るように投げるなんて、なんていう馬鹿力なんだ!!あの見た目からは全然想像がつかない。
いやいやいや、待てよ。俺は気づいた!!気付いてしまった!!白いローブを身に纏い、皮膚を出さないようにしているが、その服の下にはきっと、外からでは判断出来ないような屈強な筋肉が付いているに違いない。
着痩せするタイプなのだ。
女の子だから筋肉を見せるのが恥ずかしくて隠しているのだ。そうだ。間違いない。
もし叶うのなら今度、アームレスリングの大会に誘ってみるとしよう。
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
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アマタにキレられたい!! ダルマさんとアームレスリングしたい! と思いましたら評価してください。
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