序章 追放から始まるアマタの大転落
楽しんでもらえれば嬉しいです。
この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。
俺はいつものようにとある施設に入る。そこで幼馴染3人の姿を探した。受付の人に聞くとその3人はログインしているようなので俺も足を早める。
いつものように白い空間に入って行き、サウナルームのような全身がすっぽりと入る大きさの機械の中に入る。
蓋が閉まると、真っ暗な空間から目の前に3つの選択肢が広がる。
ログイン
装備セレクト
キャラアップデート
俺はいつもの癖でキャラアップデートを選択しかける。皆を待たせているのだ、異世界攻略に遅れが出てしまう。そう思って俺はログインを選ぶ。
すると視界は暗転、蓋が開くように徐々に視界が開かれていく。カプセルが開かれた・・・同じような白い空間にいるが、ここは異世界だと自覚する。
『ログインを確認しました。状態を確認します。オールクリア。シンクロ率を確認。40%を維持。ハロー、マスター。ようこそ異世界へ』
俺は聞き慣れた電子音を聞きながら起き上がり歩き出す。錆び付いた機械のように「ミシミシ」と悲鳴を上げていた。
ーーうん、今日も相変わらず絶不調だ。
苦笑いを浮かべながら異世界攻略するために、転送ゲートへと動き出すのであった。
『異世界攻略』そんなフレーズを聞くと転生モノやダンジョン攻略を想像するだろう。
生身の身体で異世界に赴きダンジョンを攻略していくのではない。極限まで鍛え抜かれた身体一つでドラゴンに立ち向かうなんてファンタジー小説や漫画だけの話だ。
異世界に俺の魂を入れる器がある。モンスターの素材を基に造られたその器は馬力があり、耐久性に優れ、人間を遥かに超えた動きをする。通称<アバター>と呼ばれている。
VRゲームをプレイするかのように異世界を自由自在に動き回ることができる。
アバターの使い方は人それぞれだが、俺たちの活動は会社ありきの活動になる。アバターを使いダンジョンを攻略し、独自の転送システムでアイテムを持ち帰る。これが毎日のルーティンになる俺たちのミッションだ。
何故ルーティンになったかといえばそれは5歳まで遡る。
5歳になると皆、アバターガチャを回す。
魂の同調率というものがあり上からS A B C D Eとあり、Sが最強、Eは活動限界領域である。俺のアバターはSランクだった。これにより、同じモンスターの素材を使ったアバターより潜在能力をより強く引き出せるのだ。その為幼い頃に特殊機関に入れられた。
別に拒否権はあったけど、幼い俺は誰も到達した事のない世界が待っている事に興奮し、その誘いを断るなんて選択肢は無かった。
特殊訓練を受け、特殊な体術をたくさん身につけ、どんな武器でも扱えるようになった。
気が付けば幼馴染達と共に毎日学校とダンジョンを行ったり来たりする。これが日課だ。
だから普通の生活を知らない。毎日ダンジョン、来る日もダンジョン・・・それが俺の普通だ。
そんな昔の事を思い出しながら俺は転送ゲートを通過し、前回ダンジョンの途中で帰還した場所から再開する。そこは海底都市ダンジョン。
洞窟の中で空気は冷たく潮の香りがする。水は青白く不気味に輝き、その透明な水の底にボスの待つ海底都市が存在する。その海底都市を地上に引きずり出すには仕掛けを解かないといけない。
洞窟の奥には海洋モンスター達が獲物を探して徘徊している。それを薙ぎ倒している3人がいる。それが俺たちのパーティだ。
仲間達は俺の到着を待たず、先に雑魚モンスターの殲滅を始めていたようだった。
現実世界で会うよりも大人びた容姿をしている幼馴染の1人に大声で呼びかけられる。
「遅いぞ雨宮アマタ!!今日はボス戦だろ?ぼさっとしてたら死ぬからな。わかってんだろうな?」
仲間達はピリついている。俺の名を敢えてフルネームで呼びかけてくる所を見るとかなり神経質になっているようだ。
「済まない、すぐ行く!!」
それに反して俺はワクワクの方が強い。ボスの素材は良い武器、良いアバター素材に使えるのだ。
見慣れた光景。また、真っ白い空間だ。俺は任務を終えて現実世界に帰って来たのだった。ボス戦は最高のパフォーマンスで倒せてだと思う。
俺はカプセルを内側から開き起き上がる。
ただ白い部屋に無数にカプセルが存在している。丁度同じようにみんなのカプセルが開いた。起き上がり際に皆に睨まれた。
・・・・・・えっ何故!?俺そんなキレられる事したっけ?いつと同じように立ち回れていたよな。
見た限り皆、不機嫌である。
「もう限界。アマタ、あんた足引っ張りすぎ。正直言って気が散る。ウザい!!」
小柄で茶髪のツインテールの女の子、ミーヤは殴り掛からんばかりに俺に詰め寄った。豊満な胸が腕に当たりそうだが・・・気にするところはそこじゃない!!弁明だ!
「待て、俺はいつも通り立ち回れていたよな。」
今日の海底都市のダンジョンの攻略だが、ボスの水竜は本当に強く、俺はほとんど攻撃に参加する事は出来なかった。
敵のモーションを瞬時に判断して皆に的確な指示を出してたし、アイテム投げて目眩し、麻痺矢、ポーション投げて的確に皆を癒す。また水竜を毒の状態異常にしたんだから俺は仕事をしたと思っている。文句を言われる筋合いはないと思う。
状態異常にしなかったらアイツ水中からなかなか出てこないし。
・・・何が不満なんだ?
思っていたらレイモンドが背後から俺の肩を叩いた。金髪イケメン、ブランド服で身を固めた男・・・レイモンドは残念そうに言う。
「俺も思ってたんだ。どんどん強くなって行く俺たち、それに対してどんどん弱くなって行くお前。もう一緒に活動して行くのは限界だなって。」
言われた事はその通りだった。俺はアバターにログインしている間、常に節々が痛み、思ったように動けずにいた。アバターの同調率もSランクまであったのが、今やCまで下がっている。
「いや、待ってくれ。」
「待たない!お前の活躍を考えて見ろ。何をした?一撃でも攻撃食らったら即死だから逃げ回り攻撃に一切参加しない。サポートだけしかしてないだろ?俺たちならボスの攻撃10発なら余裕で耐える。」
何故レイモンドと俺にそれだけの差が出来たのかと言われれば同調率に起因する。レイモンドの同調率はSランク、300%である。俺も過去には200%まであった同調率は今や40%まで落ち込んでしまった。これがどう影響するかといえばステータスに直結する。アバターの基礎攻撃力、防御力が100あるとする。
レイモンド300%なので300ずつ。
俺は40%なので40ずつとなる。同じ素体だった場合でもここまで差がでる。
さらにレイモンド達は自前のお金でかなりカスタマイズしている。だからそれだけ差が出てしまった。
別に本物の身体じゃないからと言って油断はしてはいけない。HPがゼロになると死ぬ。もちろん全神経と魂を接続している為、現実世界のカプセルに入ってる人間も共に死ぬ。
それを危惧しての警告・・・まさに戦力外通告だ。
「俺・・・きっちりサポートしてただろ?」
周りで残念そうな空気になった。
「サポートだけの人材なんて要らねぇんだよ。」
そのレイモンドの声に同調するようにミーヤも声を上げた。
「戦闘中、私の目の前をチョロチョロ動くなし!!邪魔!!その癖すぐ死ぬ雑魚ならサポートなくていいし!ボス戦参加するな!!」
この怒り具合は、本気なんだろう。そして無言を貫いていたアカネを見た。
真紅の長い髪を後ろで束ね、凛々しい顔の子。なんとも言えない悲しい顔をしていた。
味方になってくれるだろ。
そう期待しつつアカネの発言を待ったが・・・
「アマタ、あなた無理してるでしょう?あの事件以降ずっと・・・気付いてるよ。」
追い討ちだった。しかも痛いところを突いていた。
アカネの言う事件とは俺がこんな症状になってしまったあの事件の事を言う。俺は8歳の頃<アバター>を大破している。ボス戦で、いわゆる死んだのだ。
本当に痛かったし苦しかった。もう二度と同じ苦しみを味わいたくないって思う程辛かったし怖かった。
本来なら魂の消滅。アバタールームで帰らぬ人となってもおかしくないところ、俺は奇跡的に一命を取り留めた。俺は1週間目を覚さなかったという。
それ以降、俺は弱くなった。アバターを修理して再接続する。アバターを動かす事は出来るのだが動きに違和感がある状態。酷い時は激痛で動けない・・・いわゆる拒絶反応だった。
「待ってくれ、だから荷物持ちでもいいから」
食い下がる俺に眉間に皺を寄せるレイモンド。
「お前さ、モンスターのブレス、キャンセルさせなかったら死んでたぜ。なぁミーヤ。」
「そうよ。私達にはなんでもないブレスでも、アマタは死ぬ。本当になんなのって話。自殺志願者?」
「お前の方からエリコさんに言って部署移動するなり辞めるなりしろよ。」
レイモンドの口からエリコさんの名前が出てきた。この組織のトップ。ここの研究所が軍隊ならば総司令官といったところ。きっとこの話をしたら他のパーティに移動になるか、部署移動・・・つまりダンジョン攻略するグループではなく、資源を採取するグループに割り振られるだろう。
でもそこまでしてこの会社にいる理由もない。給料払いはいいのだけれども。
「俺の中で他のパーティと組むつもりもない。幼い時からそう言い合ってただろ?みんなで最強になるって。」
レイモンドは口を押さえて笑いを堪える。
「は?ちょっと待って、なんのギャグだ?いつの話だよ!?8歳の頃の話持ち出さないでくれ。俺を笑い死にさせたいのか。部署移動が嫌なら会社辞めろよ。」
それを聞いて暗い顔するのはアカネだった。
「アマタ。悪いけど、あなたを思っての事。このままじゃ今度こそ間違いなくアマタ死んじゃうわ。」
アカネからも言い渡される。
「アカネ、はっきり言ってやれよ。役立たずって。俺たちアバター集団<テンプラー>から出ていけ。お前の顔は見たくないって。」
「いやさすがに、そこまでは思って無いわ。」
「言えって。締まらねぇだろ。」
相変わらずのグダグダなのだが、俺を追放する流れは変わらない。俺はもう聞いていられなかった。
「もういい。お前達の気持ちはわかったから。今日、辞表出す。」
それを聞いてレイモンドは満面の笑みを浮かべた。
「それがいい。」
もう誰の顔を見たくはなかった。俺は踵を返し、この白い部屋、アバタールーム立ち去ろうと立ち上がった。
・・・あれ・・・?
宙に浮く感覚。目眩がして・・・それで・・・
読んで頂きありがとうございます。
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異世界召喚帰りの人達のせいでリアルが大変です。〜発現したスキル[精霊の守護]によって精霊の師匠を得て錬金術を極めてアイテム無双します〜
ローファンタジーで、主に九州が舞台となっております。