表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢(ゲーム)と現実  作者: 光頭無稽
7/8

イグレシアス=ミヌエット

【攻略対象 イグレシアス=ミヌエット】


 ディアモンド第一王子の卒業後、イグレシアスは生徒会長に就任した。

 前会長の第一王子を補佐してきたイグレシアスに、貴族学院の学生と教師が期待していた。イグレシアスも期待に応えようと努力した、、、つもりだった。


 しかし、後ろから見てきた第一王子と同じように振る舞っても上手くいかなかった。他の生徒会役員達に任せた仕事には粗が多く、手抜きとすら感じてしまった。ついには嫌がらせと思い、彼らを追い出してしまった。ただ残ってくれた人達もいた。アリーシアもその一人だ。

 追い出した人達の分はイグレシアスが抱え込んだ。優秀なイグレシアスではあるが、一人で捌ききれる量ではなかった。しかし優秀で誇り高いイグレシアスは他人を頼ることを知らなかった。いや、信じることが出来なかった。そして限界が訪れ、イグレシアスは倒れてしまう。


 目を覚ますとアリーシアが側にいた。


 安心からアリーシアは目に涙を浮かべるが、突然イグレシアスを叱り出す。そこで初めて自分の失敗、第一王子とイグレシアスが違うことを諭され理解する。

 翌日、アリーシアが追い出した元生徒会役員達を連れてきた。お互い謝罪し、許し合い、認め合うことで生徒会は結束し元に戻った。しかし全てが元通りというワケではなかった。「自身の至らない点をアリーシアに叱り飛ばして欲しい」という我が儘から、イグレシアスはアリーシアを副会長に抜擢してしまった。この我が儘は、一人を除いて好意的に受け入れられた。


 そしてエンディング。

 王宮の執務室でディアモンド第一王子を間に挟んでイグレシアスとアリーシアが言い争う。周りに控える者達は「また始まった」と慣れたものだったが、文字通り間にいる第一王子はたまったものではなかった。何とか宥めようと声をかけるが二人から怒鳴られてしまう。


「「貴方が適当なことを言うから、こんなことになってるんでしょう」」


 いつもの如く2人は第一王子を説教し始める。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 アリーシアが2年生となり2ヶ月ほどが経った。


 エファンディ先生の研究室に向かう途中、怒鳴り声が聞こえてきた。

 声の方に顔を向けると、ベンチに項垂れているイグレシアス様をアイリーン様が罵っていた。貴族学院に入って以来よく見かける光景であったが、最近は毎日のようにここで行われている。

 噂では、第一王子が卒業して以降、イグレシアス様に近づく者が全くいなくなってしまったらしい。その事をアイリーン様がしつこく嘲り罵っている。

 最初はイグレシアス様も現状に対する怒りをアイリーン様にぶつけていたが、毎日罵りに訪れるアイリーン様に嫌気が差したのだろう、今は反応することなく聞き流していた。


 私はその場を後にして歩き出す。


 -イグレシアス様は自業自得でしょうけど、アイリーン様もいい加減にしないと-


 イグレシアス自身は第一王子のフォローをしてきたつもりであったようだが、その実、周りの者に押しつけていた。卒業式で第一王子の立場が微妙なことが判明し、側近候補のイグレシアス様についていく利点がなくなったことで、皆離れてしまった。ただ、本人は理解していないのか認められないのか、ただただ怒りをぶちまけていた。

 そしてアイリーン様も、今まさに友人や取り巻きを減らしていた。

 仲が悪いを通り越して憎しみを抱いているかのように、アイリーン様は落ちぶれたと言ってよいイグレシアス様を毎日探し出して罵っていた。さすがに共に行動することに辟易して、アイリーン様から距離を取り始める者が出始めている。


 アイリーン様の罵りに耐えられなくなったイグレシアス様が大声で反論し始めた。驚いて振り向くと、遠目でも2人が嘲り合っているのがわかった。

 ただ、つい先程までいたアイリーン様の後ろに控えていた2人の取り巻きの姿が消えていた。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 ドアがノックされ、朝食が運ばれてきた。

 朝の訪れを知り、私は目を覚ましベッドから立ち上がった。窓がなく陽の光が一切差さないこの部屋では、食事でのみ時間を知ることが出来る。

 今朝も固いパンと具のないスープだけであった。食事が一向に改善されないことに、私は今日も使用人の入れ替えを決意する。

 考えることは沢山ある。今はこのような扱いを受けているが、ディアモンド様が皇太子になられた際には必ず自分の力を必要とされる。その時には、私を閉じ込めた父や言うことを聞かなかった使用人達を一掃しなければならない。その選別は大事であった。それに、今日も隣の部屋で喚いているアイリーンもいい加減どうにかしたかった。キッカケが何だったのかわからないが、いつの頃からか私に敵意を向けてきた。それは毎日のように続き、貴族学院卒業後も続いた。


 卒業後、私とアイリーンは公爵領に連れて行かれた。私としてはディアモンド様の側近として王宮で勤めたかったが、何故か認められなかった。それどころかディアモンド様と連絡を取ることすら出来なかった。ディアモンド様の為に働けない王宮に魅力はなく、私は言われるまま領で仕事をすることにした。

 しかし1年経ってもディアモンド様から連絡は来なかった。私から手紙を送ったりもしたが返事は来なかった。


 私はディアモンド様が行方不明であることに気づいた。


 しかし第一王子が行方不明であることを父に訴えても、何故か聞き入れてくれなかった。領から出ることの出来ない私は使用人や商人など使い捜させたが、半年経ってもディアモンド様を見つけることが出来なかった。私はついにディアモンド様に捜すべく王都に向かうことを決意する。

 そして荷造りをしていると、父が部屋にやって来て私を地下室に閉じ込めてしまった。


 ここに閉じ込められてから何日過ぎたのか、どれだけ時間が過ぎたのかはわからない。しかしディアモンド様の為に考えることは沢山ある。いつか迎えに来てくれるディアモンド様の為に、今、できるだけのことはしておかないと側近の名折れである。

 ディアモンド様の統治には、私、イグレシアスが必要不可欠なのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ