1 唾棄すべき学友達
「チッ、イケメン共が」
苛立ちを隠しもせず、クッチャクッチャとこれ見よがしにガムを噛みながら、ブサイク金髪が毒づく。
「入学早々、友人作りでなく女漁りとは嘆かわしい」
無駄にガタイのいい黒髪ソフモヒが大げさに天を仰ぎ、武骨な顔面をでかい掌で抑える。
「……ゴリラのドラミングと何ら変わらない。能ある鷹は爪を隠すということをまったくわかっていない。知恵ある人間社会で生き残るのは陰で暗躍するものだというのに。まったく意味のない愚かなマウンティングだ」
無駄に前髪の長いガリヒョロ細モヤシがブツブツ呟いている。
「バカなの? 死ぬの?」
Gパンに革ジャンというTPOガン無視クソダサバイカーもどきが、不気味な笑顔で首を傾げた。
残念四天王の視線先。
講義室前方で、顔面イケメン共が多くの女子とにこやかに戯れている。
ハハッと何が楽しいのかそこで一層楽し気な声が上がれば、周りの顔面性格破綻者共がチィッと大きな舌打ちで呼応した。
何なの、この心醜き嫉妬マン共?
言いたいことがあるなら直接言えばいいじゃない。俺まで仲間みたいに見られるから、周りに集まるのを止めて欲しい。
そんなことを考えていると、顔面イケメンの一人が可愛らしい女子の頭をデコピンし、された俺好み黒髪清楚系女子は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「「「「「アアン!?」」」」」
魂の濁声が唱和する。
「チッ、甚だ不愉快だ! 帰るぞ、野郎共!」
腹立たしい空間から離脱するため、俺は乱暴に席を立つ。
「まったくだ! 不快極まる!」
「神聖な学び舎を何だと思ってるんだ!」
「動物レベルの求愛行動。知的生命体として恥ずかしくないの?」
「死ねばいいのに。逝ねばいいのに」
肩を怒らせ、俺達はオリエンテーションが終わり用済みとなった講義室に背を向け、苛立ち任せに重い鉄製の扉を力強く開いた。
懐かしの嫉妬マスク。あの作者さん、今なに描いてんだろ?