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明日が楽しみで

[第5、明日が楽しみで]


幸福なクリスマスが終わり直ぐ大晦日になるイベントが立て続けにある事子供なら喜ぶだろうある日イベントなんて関係ないと思った瞬間大人になったのかと少し寂しい気持ちになった。

大晦日から三が日は休みになっている事もあり棚卸しに大掃除と忙しなく音楽がなる、「使ったのがあれば横に、そうそうそれで」、少し従業員を増やし的確な指示を取る佐東に皆無駄のない動きだった、そのお陰もあって30日にはほぼ片付いていた、「流石佐東さん今年も完璧ですね」

「やめろ、褒めても飴しか出ないぞ」

「出るんですね」

この時期はのど飴を持ち歩く癖があり関西のおばちゃんの様配る事もある。

この前までクリスマス仕様だった店内は正月仕様に衣装チェンジだ、外には門松、佐東はカレンダーを眺めながら実家の事を考えた。

母親はスナックで働き父親は知らない、物心ついた頃から父と名乗る人が沢山いたそれが嫌だった本当の父を知らないどんな人かもけど酷い人だったのだろう、よく佐東を見ながら「あの人に似て嫌な顔」と言っていた、いい思い出は無かったのかもしれない記憶にあるのはいつも泣いている母親だった、佐東は知らない男に媚びて笑っている母親が嫌で嫌で仕方がなかった、知らない男が家いる知らない男に抱かれている母親が嫌いだった、いつも自分の事ばかりで佐東の事なんか見てはくれなかった学校で喧嘩して呼び出された時も補導され交番へ呼ばれた時も何も言わなかった、だけど彼女を初めて家へ招いた時その夜はよく喋った「やっぱりあの人の子なのね、あんたもそうなるのね、私あんたなんて産みたくなかった、女で居たかった」佐東は好きで産まれたわけじゃない何度も思った、違うこの人の子じゃないあんな母みたいに愛に飢えて苦しむ人生なんて歩まないそう思っていたのにやはりこの人の子なんだと笑うしか無かった、一番愛に飢えていたのは自分だった。

夕方、1人の来店があった「あ、あなた」桂木の声が聞こえ友人かと気にしなかった

「佐東さん、彼女ですよ」

スタッフルームに少し気まずそうに声を掛けた、佐東は直ぐに立ち上がり店内に出た、上原は少し頭を下げた

「楓ちゃんいらっしゃい」

終わるまで少しあると話すと、近くの喫茶店でと待ち合わせをし暫くして店を出た外まで見送り温かい店内へ戻ると桂木が「幸せそうで、お正月はどうするんですか」

「彼女は家族で実家だから、オレは一人正月だなー」

「…一緒に過ごします?」

え?と顔を見つめると、直ぐ目を離し赤面していく「冗談ですよ!期待しちゃいましたー」と背を向け笑う、まだ引きずっているのが見て分かる、佐東は頭に手を乗せ「そう言うのは好きな人にしなさい」と言いまたスタッフルームに戻った

「…っ失恋ソングばっかりになる…」。

椅子に腰を下ろした時携帯が鳴り開くと上原からだ[着きました、窓側の奥のテーブルに居ます]

マメだなと微笑みながら[了解、終わるまで待っててね]。

閉店まで3時間程最後まで気を抜かず作業にかかった、「よしチェック終了」

背を伸ばし店内を巡回するついでにCDを眺めていた(やっぱ綺麗に並んでると目がいくな…あ、こここっちの方がいいな)

「佐東さん!」

「ん!、なに?」

「集中すると聞こえなくなるのどうかしてください、電話です」

桂木が呆れたように言った、佐東はごめんと謝りながら電話に出た、仲の良い業者の方だった、互い正月休みになると来年も宜しくとそれ以外にも世間話をしていたら長電話になり、またと電話を切るとまた別の業者から来年も宜しくと言った内容で他何件か電話が鳴るどこも話し込んでしまった、電話が終わりレジチェックをしていたら「佐東さんってお母さんみたいに長電話しますよね」

「そうか?意外と話すことあるんだよ、でもお母さんみたいって言い方」

あはは、と笑いながら締め作業をした、戸締りと棚や楽器に布をかけ連休に備えた、売上は昨日の内に銀行へ入れたが残りは金庫へ、「裏に停めてるのって佐東さんの車ですか」

「そうだよ、閉めてる間取られちゃいけないのは自宅で管理するためね」

「入られたことあるんですか」

「オレは無いけど知り合いがあってさ油断禁物って」

閉店時間になり最後の挨拶を簡単に済ませ荷物を車に乗せた

「じゃまた来年宜しく」

皆「はい、お疲れ様でした」と返事をして今年の仕事が無事終わった。

車を出し近くの駐車場に停め上原の元へ向かった

「お待たせ」

「お疲れ様です、大丈夫ですよ」

ニコニコしながら話す上原の向かいに座る、メロンソーダを飲んでいたのか空いたグラス「お腹すいたよね何処か食べに行く?お母さん待ってるか少ししたら帰る?」

モジモジしながら「お母さんにはもう連絡してて、だから大丈夫です」

思わず抱きしめたくなったが店だからとグッと我慢した「そっか、じゃこの後どうしよっか、どこか行くなら荷物だけ降ろしたいんだけどいいかな?」

「はい」と話しながら思い出した、クリスマス行けなかったのもあると今から行ける場所を探した

(おココいいじゃん)「楓ちゃん今からここ行かない?」

と携帯画面を見せた、少し驚いたが好奇心が勝ったのか「はい、行きたいです」と会計を済まし車に乗った、メロンソーダ代くらい自分で払ったのにと申し訳なさそうだった、ごめんよと笑いながら一旦家へ帰った「降ろすだけだしちょっと待ってて」荷物を全て降ろし鍵を掛け車に乗った「お待たせ、さ行こっか」音楽をかけ出発した、上原は鼻歌を歌う、少ししたら目的地に着いた「着いたよ」

「わー夜のプラネタリウム初めてです」

受付を済まし席に着いた、上原はワクワクしている、(可愛いな)佐東は手を繋いだ、照れながら握り返す、お客さんは以外と居たがそこまで多くはなかった、アナウンスが流れ暗くなり始まった、繋いだままの手、キラキラした上原を横目に星なんて気にならなかった、(楽しそうで良かった)、たまに目が合うその度微笑む、幸せだなと噛み締めた、小声で「凄く綺麗ですね」佐東は思わず頬に手を伸ばし体を近付けた、音の無いキス上原は周りを見渡しぷくりと頬を膨らませた、指で突いたらゆっくり萎んだ、クスリと笑いもう一度唇を交わした、「ごめん 続き見よっか」。

プラネタリウを満喫し遅い晩ご飯にした、0時になっていた、車内で「遅い時間までありがとう」

「すごく楽しかったです、佐東さんと居るの好きです」

まだ慣れないいのか赤面する、初々しい彼女が愛おしい、もう少しで上原の家に近付く、佐東はわざと遠いところに車を停めた「佐東さん?」

子供だなと自分自身呆れしまうが彼女との時間が欲しい

「ごめん、オレのワガママ」申し訳なさそうに笑う、けど上原の携帯が鳴った、タイムリミットが近付く「もしもし、大丈夫、分かってる…。ごめんなさい」

「ううん」

まだ降りない、正直降りてほしくない願いが届いているのか、何か言いたそうだ

「楓ちゃん?」

顔を覗き込むと目が合い、顔が近付く、佐東の唇に柔らかい感触がした、初めて上原からのキスだ、柔らかい触感は直ぐに離れ恥ずかしそうだ、佐東は輪郭をなぞり耳に指を伸ばす、上原は擽ったい《くすぐったい》ったいのか肩が上がり息が当たる、上原は目を閉じる、口を合わせるさっきと違い音が車内に響く、佐東の服を掴む

(…これ以上は、そろそろ止めないと)

ゆっくり粘着質な音を奏でながら離すと上原もゆっくり目を開ける、潤んだ瞳がそそる、唇をそっと指でなぞり額にキスをした

「ここまで、オレが我慢できなくなる」

少し余裕がなくなった表情はいつもと違いより胸の鼓動が早くなる、手を繋ぎたまに甲にキスをしたり佐東は子供のように甘える、上原は頭をゆっくり撫でご満悦の笑顔だった「佐東さんが甘えてくれるの嬉しいです」

「楓ちゃんにだけだよ、…少し恥ずかしくなってきたな」

何度目のそろそろか分からない、けど会話が続く

「そうだ、お母さんにオレたちのこと話すって言った約束はどうだった?」

「それが…話すきっかけが分からなくてまだ」

それもそうかとでもいずれバレることだ

「でも、必ず話します…、佐東さん」

不安そうだ、優しくキスをし「大丈夫だよ」、安心したように明るくなった、もう一度電話が懸かった「…帰ります」

「うん、正月は一人だし時間があれば電話していいからね」

もう一度今年最後のキスをして別れた

「またね」

佐東も帰宅し風呂に入り就寝しようとしたが佐東も男だ、思い出し中々眠れない

「中坊かよ」と水を飲みに起きもう一度寝室へ向かった

上原とのキスを思い返すと体が熱くなる

「…楓ちゃんゴメン」と謝罪を入れたら、佐東は下半身に手を伸ばし脈打つ硬いものを上下に擦る、息が漏れ目を閉じると上原がチラつく。

「…はー、ごめん」

体はスッキリしたが罪悪感で胸がいっぱいになる、恋人で抜くなんて悪い事ではないのに何故か謝ってしまう、二人の関係がどうなるか分からない少し怖いが、今はなにも考えず眠りについた。

もしかしたらこれは最後かもしれない、そう思うとどの時間もかけがえのないものになっていく。

31日大晦日、今日は森宅で泊まりだ、互い仕事を終わらせた、森は三が日休みで2日に実家に帰る予定、朝日は1日の夜に帰り3日海外に立つ予定だ。

「もうすぐ向かいます」

森は返事をし退勤準備に入った

「森さん、正月朝日さんと過ごすんですか?」

「えぇ」

分かって納得していてもやはり寂しいものは寂しい、朝日が海外へ行くことを話した、杉野は驚きながら森を気に掛けた

「大丈夫ですか?」

「彼女が仕事と向き合っている姿大好きなんです、反対はありません」

自分に言い聞かせているように聞こえ杉野は「本当にこれでいいんですか」と言いそうになる声を必死に押えた二人の間に入れない二人の問題森は納得していると胸が苦しくなった「…私が言える事はありません、けど我慢しないで下さい」

「ありがとうございます」低く頭を下げジムを出た、‘我慢’という言葉がぐるぐると渦を巻く納得したはずなのに彼女を応援すると、森は足が止まった(笑顔で送らなくちゃ)前に進む足は鉛の様に重く感じた。

駅に着くと朝日が先に待っていた、彼女は小さく手を振り笑顔だった、森も笑顔を作り駆け寄った、手を繋いで家までゆっくり歩いた

「今日は随分ゆっくりね」

「そうですか?」

手から伝わるのか顔に出ていたのか、優しく握っている手が強くなった朝日の手は温かかった、森が立ち止まった

「すみません、納得したんです見送る準備もしたんです」

迷子の子供のよう悲しそうな顔のまま手を離さなかった

「俊貴さん、帰ったらプロポーズしてくれるんでしょ?」

「はい」

朝日は割れ物を抱えるようそっと森を抱きしめた

「…でもね、苦しくなって私の帰りを待ちたくなかったら、忘れていいのよ」

顔を見上げると和やかででも儚げに笑った、滅多に泣かない森の目から涙が溢れた、忘れるわけないこんなに愛している人を、いつまでも待てる、なのに離れる事がこんなに怖いとは森は壊れそうに強く抱きしめ返した

「俊貴さん、私嫌な女よ、貴方より仕事を取るのよ」

「…君は馬鹿だ、そんな君が好きなんですよ」

ガタイのデカい男が隠すかのようにすっぽり抱えた女、並べたら女性が小さく見える、そんなにでかい男が泣く姿は実に不思議に見える、二人は視線など気にせず話を続けた

「俊貴さんが初めてこんな私を本気で愛してくれるの」

今度は朝日も涙を浮かべた、強がっているのはお互いだったのだ、離れ手を繋ぎ直しもう一度歩いた、冷たい風が体に刺さる繋いでいる手だけが温かくこのまま時間が止まってしまえばいいのにと森は朝日の後ろを歩く、気付けば森の家に着いた。リビングで寛ぐ、森の腕の中で身動きが取れなくなっている

「こんな俊貴さん初めて」

フフと笑う彼女、こんな姿なりたくないと思う森

「葉さん、手紙でもいい電話でも」

「毎日はできないかも」

「葉さんが時間ある時で大丈夫です」

朝日は少し考えた、このまま森を束縛していいのか先のことを何も言えない自分ではなく別に方と幸せになったほうがいい、でも朝日自身他の人なんて考えられなかった

「葉さん、困らせてすみません、でも好きですずっと」

さっきまで泣いていた子供のような男の子は、立派に成長した男性になっていた

「…離れたくないって言いたくないのに」

「言ってくださいよ」

抱きしめ優しくキスをした、ゆっくり触れ合い音を出し口が開く濡れた熱を絡め合う声と唾が零れる、手が伸び朝日の柔らかい体を撫でる、ソファが揺れる暑くどっちの汗か滴る、腰が動くと同時に零れる音は部屋に響き渡る。

森の胸の中で呼吸を整える朝日、動物のように汗を舐め可愛らしい音でキスをした

「葉さんあなたに会えて良かった」

「私も、離れたくない」

「僕も、でも僕の好きな葉さんは選択を間違えないんです」

「酷い人」

フフと笑いながらキスをする

「他の人と付き合ってもいいです、でも愛してるのは僕だけにしてください」

「分かったわ俊貴さんも、ね?」

「はい」

きっとこの先どうなるか分からなくても一つだけ、本気で愛するのはこの人だけで体の関係を持ったとしてもきっと物足りなくなる互いを欲するそれは分かる。

「愛してる」

もうすぐで年が明ける、ゆっくり体を起こしテレビをつけた、紅白の歌番組だった、知っている歌に体がリズムをとる、森は買っておいたカップ麺二つに湯を入れ年越しそばにした、食べ終わる頃には除夜の鐘が遠くから聞こえる、ジャケットを着て御参りに出た、二人で願いを唱え、手を繋いで帰った

「何をお願いしたんですか?」

「秘密、俊貴さんは?」

「きっと同じことです」

「だと思った」

どこにいても何をしててもあなたの健康と幸せを。

108もの煩悩がある、煩悩とは人間の欲望と言われ108もあるのかと気になるが多分もっとあるかもしれないだが中村は108個も無いかもしれないただ望むのは安心それ以外要らない。

せっかくの休み、実家に帰ることなく一人で過ごした、昼くらいに起き寝巻きのまま一日を過ごすたまにコンビニへ行きカップ麺と酒を買う、大晦日は笑い番組を見て年を越す、腹を抱えて笑うほどの生気はない失笑するだけで自分から何か失っている事が悲しくなる、外からは除夜の鐘と賑わう人の声カーテンを開け見る「…年越したな」、また閉める、電話が鳴る母からだった

「明けましておめでとう、元気にしてんの?」

「明けましておめでとう、元気だよ」

「いつでも帰っておいでよ、無理しないで」

「うん、ありがとう、母さんもね父さんにも」

「大丈夫よ」など少し話し電話を切った、今帰ったらきっと心配掛けてしまう誰にも迷惑かけたくないとそればかり考えてしまう、また電話が鳴った河瀬だ

「よ、明けましておめでとう、今何してんの?」

「明けましておめでとう、何もしてない」

「初詣行く予定あんの?もし無かったら退院した時一緒に行かない?」

「うん」

河瀬はずっと病院もあって暇のかいっぱい話した中村は相槌を入れるだけだったでもたまにクスリと笑う声が聞こえ嬉しそうにする河瀬、その後も話し気付いたら寝落ちしていた

「中村?…寝たか、おやすみ」

河瀬は安心したようにLiNeにメッセージ送り眠りについた、「休み明けのお仕事大丈夫かな」。

遅い起床で河瀬からのメッセージに返事をし水を飲んだ、通知数がまだ付いていた木村からだ

[明けましておめでとうございます、お休みでどこかに出掛けましたか、もし良かったらどこか行きませんか?、今年も宜しくお願いします]

「木村さん」気を使わせているのか、申し訳なく思うどう返事をしたらいいか悩んだ結果

[明けましておめでとうございます、お気持ち感謝します、今年も宜しくお願いします]

と、当たり障りのない返事をした、暫くして木村から返信があり何度かやり取りをした。

木村は実家に帰っており明日の昼のは戻ってくる予定でそこからでも会えないかという内容も話したが、中村は家から出たくなかった、でも断るのも悪いと悩んだ

[すみませんせっかくの休みですもんね、無理言ってすみません]

察しが良すぎて少し驚いたが中村の返事を見れば誰でもそう言わざるを得ないだろう

[すみません]

謝ることしか出来ず、携帯を閉じた

「悪いことしたな…」

三が日何もすることなく家から出ることもなくあっという間に休みは終わった、明日から地獄のスタートだ、でも明日は会社のパーティ、中村は未だに乗り気ではないが、河瀬の分と考えたら仕方がなかった。

クリスマスからしばらく経っても何も変化がないきっとバレていないと思っているんだろう、連絡が来てもイマイチ盛り上がらないトキメキが無くなったのだ、昭子はこのままで居たって良い事はない、大晦日からずっと働くことしか出来なかった

「あっきー、あの人はいいの?」

「ママ…ワタシばっかり舞い上がって自惚れてたわ」

ママには全て話した、泣きじゃくって真っ赤に腫れた目を見てママは抱き締めてくれた、クリスマスから3日仕事を休んだ、何かあったのか聞いても返事がないのを気に掛けママは昭子の家を訪ねたのだ。

「やっぱワタシじゃ駄目なのね」

昭子はテーブルを拭きながら泣くのを堪えた、もう何度も泣いても流れる涙はあるんだと知った

「それでも好きなんでしょ。私たちは女にはなれないわいくら整形したって戸籍を変えたって、男だった事には変わらない、でもどんな姿でも誰かを愛することは皆平等、だからあっきーが好きになった事間違いじゃないのよ、ダメなんて事ないのよ」

そう言い昭子を優しく抱きしめた、大晦日はお客さんとお店の子達とでお参りに行った、神社に着くと携帯が鳴った、昭子は通知画面を見てそっと画面を閉じた、内容は分かっているだから見たくなかった、今日だって本当なら一緒に過ごすはずだったでも仕事の人と飲み会と言うから渋々了承した、それが嘘だと知っても店を出る前金田のSNSを見たからだ、彼女と楽しく年越しをお祝いしている写真、どうしてそこに居るのは自分じゃないんだろう、昭子は力いっぱい携帯を握った

「あっきーお願いしましょ、たーぷりね」

「ママいくら神様でもそんなに聞いてくれませんよ」

「俺は嫁が優しくなりますように、だな」

皆で笑いながら、賽銭箱に投げ手を合わせた

別れを言える勇気をくださいと。

お店は1~2日と休みでクリスマス程苦しまずにゆっくり休めた、大掃除もできていなかったとやっと取り掛かれた

「ふー、休憩」

まだ返事はしていなかった、トーク歴を眺めていると懐かしい名前があった

「…そういえば、彼ら何してるのかしら」

ベランダに出ると初詣に行くのかカップルが楽しそうだ

「いいわね…」

思い切り背伸びをして大掃除に戻った

「そうだついでに模様替えもしよ」

金田からのブレスレットが出てきた、捨ててやろうかと思ったが手が止まってしまった、どうしてこういう時直ぐ捨てられないのだろう、取っておいても何も意味は無さないのに、昭子はテーブルに置いた

「バカね…ホント」

力いっぱいに家具を移動させる、模様替えは不思議なもので気持ちも晴々する、じっとしていると嫌な事ばかり考えるのにこういう時は本当に助かる、心まで整理整頓されるみたいだ。

少ない時間を沢山過ごした、初めてかもしれない1日24時間では足りないと思ったのは。

元旦は時間ギリギリまで一緒にいた、傍に居すぎて体がくっついて離れなくなるかと思う程、唯一離れたのはトイレに行くときだけ、初めて彼女の手料理を食べた料理は苦手で少し焦げた部分も濃い味付けも火加減に苦戦する朝日が愛おしくその後ろ姿をずっと見ていきたいと思った

「また作ってくださいね」

「俊貴さんの方が上手いのに」

夜になり、そろそろ帰省の準備にかかる

「忘れ物は無いですか?」

「うん、全部まとめてる」

朝日の背中をそっと抱きしめた、回した手を優しく握り返す、森は朝日の肩に顔を埋める、大型動物に甘えられている様でクスリと笑う、未練はもうない何度も我儘を言った何度も納得をした、だから今度こそ笑顔で見送る。

寒く街灯だけの薄暗い夜道を二人はヴァージンロードのよう歩いた、静かな道に笑い声が響く、あっという間に駅に着いた、朝日は森に向き合う、今度は両手で繋ぐ

「母に言ってもいい、俊貴さんのこと」

「はい、僕も家族に伝えてもいいですか?」

「ええ勿論!」

抱き合いキスを交わす、電車がもう着いた、朝日は「次ので行くわ」と笑った、駅員に言いホームまで降りた、ベンチに座り少し話すと電車が時間通り来た

「お母さんに宜しくお願いしますと伝えてください」

「うん、俊貴さんもね」

ドアが閉まるギリギリまで話し、最後にキスをした、電車が小さくなるまで見送り、駅員にお礼を言い家に帰った、目を閉じれば朝日がまだここに居るようだった、お参りの帰りに朝日の家に寄り子猫もさっきまで居た、3日子猫を引き取る予定で既にゲージもお皿と森の家には子猫の家具でいっぱいだ。

ソファに横になり自分も帰省の準備をしお風呂に入り布団に入る、朝日と連絡をして寝落ちした。

2日連絡の続きを返しのんびり支度にかかった、走る時間あるなとウェアに着替え外に出た、やはり寒い、しっかりストレッチをしてスタート、ご近所の方に挨拶をしたり集中していたら携帯が鳴った、母親からだ

「おはよう、今日帰って来るんでしょ?何時くらい、買い物どうする?」

母親と言うのは一度にいっぱい聞いてくるものだ

「16時にはそっちに着くと思います、先に行ってても良いけど荷持ち多くなりそうだったら一緒に行きます」

「分かりました」

電話を切り家に帰ることにした。

シャワーを浴び、朝日からの連絡で時間を過ごす、無事に家に着いて安心したなど返事が遅くなるなど家族写真を送ってくれたり楽しそうだ、軽く昼食を取り、気付けが出る時間になっていた、戸締りの確認をし帰省した。

実家の最寄り駅に着いた、懐かしい、そう言えばこんな感じだったなと思い出に浸っている時父親から電話が鳴った

「着いた教えなさい」

「もう着きました」

すぐ電話が切られ、遠くから「俊貴」と呼ばれた、珍しいこともあるものだなと驚いた、あの父が迎えに来るなんて、父とはあの時以来で少し気まずく感じた

「…乗れ」

「はい」

勿論会話なんてない、彼は昭和の男を絵に書いたような人で森は苦手だった、記憶にあるのはいつも厳しく怒られてばかりだった、だからか今でも萎縮してしまう、その変わりか母親は優しくいつも守ってくれたでも森が悪い時は母親も厳しく怒った、森はヤンチャで周りに迷惑を掛ける方ではなかったが、門限はあまり守らなく家に帰らないことも度々あった、家の手伝いもしなかったのもある実家はパン屋近所で有名たまに他県のイベントに出品する程だ、小さい時から跡継ぎになれと言われ続けそれが嫌で家を出たのもある、何をするにも父親から許可が必要だった、母は何故こんな人と結婚したのか当時は疑問で仕方なかった。

「もう着くぞ」

知っている道、それもそうだ高校生の時の通学路なのだから、あの先輩の事次に付き合った人に事同級生の事ゆっくり思い出した

「懐かしい…」

全く帰っていなかったせいもあるのだろう、車が止まる、古びた看板には【大きな森のパン屋さん】胸が熱くなった、自分もいい大人になってしまったんだと気付かされる

「おかえり」

店の戸を開くと随分歳を老いた母親が笑顔で迎え入れてくれた

「…ただいま」

森が使っていた部屋綺麗に当時のままだった埃でも被ているのかと思ったが掃除をしてくれているようだった、荷物を置き茶の間に戻った、父は炬燵で暖を取り母はお茶を用意してくれた

「寒かったでしょ」

少し照れくさかった、母は嬉しいのかゆっくり話す、ご飯買ってきたよ仕事はどう?風邪は引かなかった?困ったことはないか?、など今までの分息子の事を知りたいのだろう、森は一つ一つ返事をしたその間父親は何も話さず、お茶を飲み無くなったら何も言わず母が茶を入れる長年の夫婦だからこそできる技だ、森は初めて夫婦の形を見た。

母の話の中で恋愛に関することは一つも聞かなかった、父は帰ったあと自分と朝日のことを母に話したのだろうか。

「夜は鍋にしましょ、朝はお節よ」

ご飯にするのは少し早くもう一度部屋に戻ろうとした廊下の壁に布が貼ってあった、少し捲ったそこには小さな穴が空いていた

「この家も古いからか」

ベットに横になるあの穴が気になって仕方ない、森は目を閉じ深呼吸をした、肺に入ってくる家の匂いが懐かしかった、その時思い出した、あの穴は自分が空けたやつだと、あれが初めての反抗期だった、初めて男性と付き合っていることがバレ父親に叱咤されその時は存在を否定され母親には泣かれた「ごめんなさい私の育て方を間違えたの、すみません」と森は意味が分からなかったなぜそこまで言われなければいけないのか、「何でそうなるんだ、僕の事知ろうとしないくせに押し付けるな」と壁を思い切り殴ったのだ、それが最初で最後の反抗だった。

「俊貴手伝ってくれる?」

「はい」

台所はあの頃のままだが小さくなっていた、母親が台所に立つ姿は何年経っても変わらない

「僕がやります」

「…ありがとう」

森の包丁さばきを見て自炊してると知りコツを教えてくれた、森はずっとこうしたかったのかもしれない、机を片付けコンロを出した、父は何もしないのはいつもの事でこのタイミングで風呂に行く

「変わらないな」

「えぇ丁度ご飯ができる時に上がってくるのよ」

違うそれに合わせて作っている子供のときまだかまだかと言ったことがある。

丁度鍋が食べ頃になった、父が戸を開け見事なタイミングで座り、冷やしていたビールをグラスに注いだ

「頂きます」

父が言って初めて「頂きます」と森、母親と続けて言う、食事中は私語なく黙々と食べる、食べ終わり一息ついた、「俊貴お風呂行っておいで」でもその前に話しておきたい事があった

「あの…お父さんは会ったことあるんですが、今結婚を前提に付き合っている方がいます」

両親の動きが止まった、避けてきた話題だったのもある森自身どう切り出せばいいか悩んでいた、朝日の事を話した、母は頷きながら聞いていた、父はなんの返事も目も合わない

「それでいつ帰ってくるか分かりませんが、それでも彼女の帰りを待つと約束しました」

「そうなのね…。お父さん」

まだ何も言わず部屋を出ていったしまった、とりあえずお風呂行きなさいと母に言われ入浴を済ませた「お風呂いただきました」

「…お父さんビックリしただけよ」

冷蔵庫からビールを出し飲んだ、朝日から連絡がきた

[こっちも鍋だったよ、母に話したら直ぐ写真見せてって大忙しだった]

[葉さん今電話大丈夫ですか?]

台所から動かないまま、缶ビールを飲み干した

「急にすみません、声が聞きたくて」

「…お父さんにダメって言われたの?」

「鋭いですね、何も言われませんでした、何も」

「そっか…諦める?」

「絶対有り得ませんね」

やっぱり朝日の声は安心する、勇気をくれる、自分は彼女に何を返せているだろう、話し込んで日付が変わろうとしていた

「そろそろ寝ないと」

「そうですね、葉さん愛してます」

「うん愛してる、おやすみ」

「おやすみなさい」

台所から出ると母が炬燵で寝ていた

「おや、もう電話は終わったの?」

「すみません」

母は温くなったお茶を飲み寝室へ戻り森もゆっくり休んだ。

3日の朝、いつもの日課のランニングを済まし家に帰る「おはよう、いつも走ってるの?」

「はい」

一緒に朝食の用意をし三人で食べた。

朝日は今日の16時の便で日本を経つ、それまでに父と向き合いたかった、だが何も言ってくれないこれ以上言えないと話が進まなかった

「東京から帰ってきたあの日俊貴に会った事話してくれたの」

「おい」

「気の強いしっかりしたお嬢さんてね」

驚いた、てっきりそう言うタイプは嫌いかと思った

「お父さんお話しましょう、ね」

森はまた驚いた、いつの間に父に言い返せるほどになっていたのかと、父親は少し考え深いため息をついた

「お前にあんな人が出来た事に驚いたんだ、一人で暮らし大分楽しそうな事にもな」

森は初め嫌味を絡めて言っているのだと思い、やはり父は何も変わっていないと残念だった

「…俺の知ってるお前は笑ったりしなかった、それだけお前を追い込んでいたんだな」

これはまた驚いた、実家に帰って何度驚けばいいのか、まさかあの父がそんなことを言うなんて、森は夢でも見ているのか足を抓った痛かった、夢ではない

「お前が男と付き合った時はどうしたもんかと思った、正直今でも理解はできん、がお前が選んだ事は最後まで責任持ってやればいい」

初めて父の言葉が聞けた、ちゃんと父の目を見て話している、何も変わってくれない何も理解して貰えないそう勝手に思い込んでいただけだった

「その葉さんというあの女性と結婚を真剣に考えているなら何時でもいい連れてきなさい」

「お父さん…ありがとうございます」

初めて、父の言葉で父の温かい言葉で泣いた、母親は森の背中を摩った、やっと家族として向き合えた

「今日立つんでしょ、その時私もお父さんも葉さんに会う日を楽しみにしてます、て伝えてね」

「はい」

昼食が出来るまで父と散歩をした、こうやって歩くのなんて幼少期以来だ、父の歩幅は小さくなっていた

「お父さん、体に気を付けてください」

「心配いらん、お前も若いからと油断するな」

「はい」

家族の会話森には照れくさくて初めての事で中々会話が続かない、散歩が終わり三人で昼食を食べ片付けを手伝った

「そろそろ行きます」

「いつでも帰っておいで」

「はい」

最寄り駅まで父が車を出した

「ありがとうございます」

「あぁ」

「また帰ります」

森が扉を閉めた時

「行ってらっしゃい」

「……行ってきます」

苦手だった父怖くていい思い出なんてなかった、でも今からでも変われる長い月日があったからこそ互いを理解しようとしたんだろう、あの時出来なあった思い出を今からでも作れるだろう、きっと大丈夫だ。

空港には多くの人で溢れていた、正月休みを満喫した家族が多かった、こんなに多いと朝日を見つけるのは困難で急いで電話をした

「葉さんどこに居ますか、…分かりました」

大きな荷物朝日がすっぽり隠れてしまう、難易度の高いかくれんぼだ

「俊貴さん、良かった間に合ったのね、ご両親とはどうだった」

森は父のことも両親とも朝日に会うことを楽しみにしていると全て話した

「そう良かった、俊貴さん紹介するわ」

と朝日の両親も見送りに来ていた、森は会釈し自己紹介をした、後は二人でと席を外してくれた

「お父さんの車に子猫が待ってるわ」

「はい」

「着いたらすぐ連絡する」

「はい」

「…好きよ」

「…はい」

「笑顔で見送ってくれるんでしょ」

「そうでした」

森の肩を引き寄せ唇を合わせた

「行ってくるわね」

「行ってらっしゃい、いつでも帰りを待ってます」

両親に手を挙げ荷物を抱えた、今度はいつ会えるか

「葉さん!これを」

大きな手の中には小さく見えるリングケース、朝日はこれが何かすぐ分かった

「俊貴さん…これ」

リングケースを開け朝日の右薬指に着けた

「帰った来た時今度は左手に着けさせてください」

朝日は大粒の涙を流した、笑顔で手を握りながら

「はい!」

「後これも」

とリングホルダーも渡した

「無くさないように」

「無くさないわ、でも治療の時とかこれで安全ね」

空港アナウンスが鳴る、今度こそさようならいやまたねになる、最後は森からキスをした

「行ってらっしゃい」

「行ってきます」

朝日は両親に別れを伝えエスカレーターに連れて行かれた、窓から飛行機が立つのを最後まで見届けた、飛行機は空に小さく見えなくなった、暫く眺めていると朝日母から声をかけた

「あの子を愛してくれてありがとう」

「僕の方こそ、ありがとうございます」

話しながら駐車場まで向かい子猫を預かりに行った

「近くまで送りますよ」

と朝日父に言われ断ったが「良いから」と言葉に甘えた、道中朝日の幼少期の頃や色々話してくれた

「ここで大丈夫です、乗せていただきありがとうございます」

「いーえ、葉が帰ってきたら何時でも遊びにおいで」

「はい」

とゲージの入った子猫を抱え頭を下げ車を見送った、子猫はミャーと鳴いた

「頼りないかもしれないけど、今日からよろしくお願いします」

「みー」

少し寂しいでもこの子がいるか、それにどこに居ても繋がっている気がするから森は沈んた空を眺めた。

何も無かったが何も無いことが平穏だった、そんな平穏が終わった、今日から地獄の鐘が鳴る、が仕事始めとなる4日社長の気紛れなのか謎のパーティーだ、中村は案内メールを読みため息を着く、会場の地図を見て迷わないようチェックした

「はぁ…」

仕事だって苦痛なのに知らない部署の人たち部長のご機嫌取り社交場は息が詰まる、中村は今更機嫌を取ったって何も変わらない、変わらないなら諦める中村は言われるがまま、会場でも部長に命令されたら従うだろう抵抗も抗議も諦めたのだから。

パーティーなんて行くことが無いため一張羅のスーツなんて無いあると言えば青木の結婚式で着た少しだけ高いスーツだけだ、正解な格好が分からないまま家を出た

[気をつけてな]

LiNEを開くとタイミング良く河瀬からメッセージが来ていた、既読をつけ携帯を閉じ電車に乗った、車内はサラリーマンで溢れていた、いつもの風景、中村は立ちながら案内表示を見ていた、人混みに押しつぶされながらも、降りる駅は間違えず何とか出れた、改札も通ると木村が見えた

(あ、木村さんだ、誰かと待ち合わせかな)

自分にはもう関係ないと、あんなに恋焦がれていた彼女にときめく事も喜びも薄れていた、逆に彼女から遠ざかっている

「中村さん」

木村に見つかり駆け足で寄ってきた

「おはようございます、早いですね」

「おはようございます、木村さんも早いですね」

躾の良いオウムそれかAI音声機能だ

「一緒に行きませんか?」

「はい分かりました」

会場に着くまで木村から話題を振るばかりで中村は覇気のない返事で会話が進まない、そんなことを続けていたら会場に到着した

「ここですよ、さ、入りましょう」

入口には歓迎看板が立たれていた、受付に名前を伝えロビーで待っていた、中村は10人目これでも早い方だ、中村より後輩や幹事が来ていたのだ。

「中村くんおはよう、中に入っても大丈夫だよ」

「おはようございます、分かりました」

大きな扉を開け会場内の入るいくつもテーブルが並べられ後輩たちは壁際に並んでいた、中村を見て頭を下げる、中村もその列に並ぶ、暫く経つとチラホラと人が増えていった、平社員は皆集まった時中村たちがふと扉を見たなにか来るその瞬間某映画の巨大ザメのBGMが鳴った、一番の見せ所で扉が開いた、中村たちは息を飲む

「ふん、胡散臭い奴らめ」

他の誰にも聞こえない中村たちにしか届かないよう小言を言い真ん中で社長を待っていると晴れ晴れした笑顔で登場する

「皆さん新年明けましておめでとうございます」

社長の挨拶と共にオードブルが運ばれウエイターがグラスを運び始めた

「どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

どこも欠点など無い完璧な姿、中村とは住む世界が違う、キラキラしていて余計自分が醜く感じる、足元に視線を落とす酔ってでもいる様歪む。

グラスが皆に渡せれ社長が最後の音頭を取る

「皆の今後の活躍に会社の為に乾杯」

「乾杯」

近くに居るもの同士乾杯をし飲む、皆飲食が進む、部長はゴマすりに忙しそうだ

「流石社長です、勉強になります」

同じ営業の人も初めは面倒だと言っていたが美味しい料理にお酒、顔採用されたであろう美人達との交流に顔が緩み満更でもない、女性と関わりがない男共からすれば指図めオアシスと言ったところか、中村を除いて

「中村さん、楽しんでますか?」

「え…あはい」

気を使わせていると思い、他の人の所に行った方がいいと伝えると、悲しい顔をさせてしまったと弁解しようとした時、部長と社長二人で近付いてきた

「楽しんでいるかね?」

一人一人回っているのだろう、部長は中村の腕を突き顎で合図をする

「は、はい楽しいです」

「すみません、コイツ口下手で、さ他のところへ」

「そういえば君と同期の彼は欠席だと聞いたがどうしたのかね?」

中村が驚いた、河瀬が骨折したこと報告していない事に、中村は言おうと口を開くと、部長に止められた

「中村くん少しいいかな、社長少しだけ席を外します」

中村の腕を掴みロビーへ出た

「このボケナス!何言おうとした余計なことするな、木偶の坊は木偶らしくしとけ!」

と頭に拳骨を落とす、鈍い音がした、部長も痛かったのか手を細かく揺らしまた戻って行った、扉を開けると盛れる歓声がうるさく段々小さくなる、静まり返ったロビーは深海のよう寒く孤独に落とす

「中村さん」

チョウチンアンコウの光みたいに木村が駆け寄る

「何されました?怪我は?」

「いいんです、もういいんです」

「良くないです!」

中村の腕を引き一緒に会場に戻った

「ここで待ってて」

そう言い社長のところへ行き何か話し二人で中村の所まで戻ってきた、勿論部長は止めようと必死だ

「何かね話とは」

「え?」

木村は部長の悪事をここで晒そうと作戦は木村の全てを賭けたものだった。社長から特に気に入られ可愛がられていたそれを利用したのだ。


「急にすみません、お話しがありまして、一つお願いがあります、何でもします」

「君がそこまで言うこととは何かな?」

「この会社はホワイトと仰っていますよね、でも実際そうでは無いことがあります、それを社長の目で見て欲しいのです、社員を救いたいんです」

「私が信頼している部下がパワハラでもしていると言うのか!いくら君でも許さないぞ」

木村は社長のセクハラも言ってやりたかったがまずは中村を救う事ばかり考える

「ですから社員一同集め飲食を楽しみ気が抜けた時必ず本性が出ると思うんです」

とパーティーの案を出したのだ

「もしここで誰も部下に手を出していない事が分かれば、社長の好きにしてくださって構いません」

「私は部下を信じるよ、もしいなかったら、そうだな」

ここまでする必要はあるのか、木村には中村を想いかけがえのない存在になっていた、好きな人を守りたいそれだけだった。もし居なかったら、社長が言うことを木村は既に分かっていただから自信があったのだ

「もし居なかったら、私を侮辱した責任をもって辞めてもらおう」

てっきり恋人になれなど言うものだと思っていた、でもこれでいい、木村は覚悟を決めた

「はい」

居なかったら辞める、でも実際居るということは辞めることは出来ない、木村はこのまま社長のセクハラに耐えなければならないという事だ、それでも中村のため戦えた。

中村の目の前には仮面のような笑みをした社長に覚悟を決め前だけを見つめる木村が立っていた

「中村さん、私から言いいましょうか?」

「え…」

「さぁ言いたまえ」

部長は疾風の如く三人の間に入る

「何もありませんよ皆健康に生き生きと仕事してくれてますよ、ねぇ中村くん」

周りの視線が刺さるこんなに痛いことは初めてだ、小学校の発表会のよう注目され呼吸が止まりそうだ、汗が止まらない、中村はその場で倒れてしまった

「中村さん!」

急遽ホテルの一室を借りた

「中村さん、大丈夫?、ごめんなさい追い詰めるような形をとってしまって、でもどうしてもあの部長のこと知らせたくて」

「木村さんもういいんです、社長に言ったところできっと何も変わらない、河瀬は俺を庇って骨折した俺のせいなんだ」

「違うわ!あの部長が貴方を殴ろうとしたから」

「木村さん…貴女がそこまですることはないです、もうやめてください」

中村は起き上がり部屋を出て振らつきながら歩いていたら、部長とぶつかった

「生きてんのか、全くお前はどれだけ俺に迷惑かけたら気が済むんだ?あぁ?」

倒れ込んでいる中村を蹴り飛ばした、横腹に入りダンゴムシのよう丸まり藻掻く

「このミジンコが!、お前はミジンコ以下だな」

そう言い何度も蹴り上げる、下っ端ヤクザのミンチだ、部長の足は中村の顔に直撃し鼻と口から血が流れカーペットを汚す

「舐めて綺麗にしろ」

四つん這いになったところシャッター音が鳴った

「なっ!」

顔を上げると木村が写真を撮ったのだ

「部長さん、これ社長に見せたらどうなります?今までの横暴さ河瀬さんが撮ってくれていたレコーダーもあります」

木村の脅しは本気だった

「やめなさい、消せ!」

木村は振り返り走った部長はその後を追うでも木村の方が勿論早い、二人が遠く見える中村が目を閉じた瞬間人か落ちる鈍い音が聞こえた

「え?」

中村は這いながら近付く。

「き、木村さん」

部長は間に合わないと知り近くにあった置物を投げそれを避け足を崩し階段から転落したのだ、鼻息を荒くその場から逃げた

「木村さん…そんな、きむらさん!」

中村の赤い道には透明な線ができピンクに染る、鼻から入る血生臭い塊は忘れることは無いだろう、中村は綺麗に輝く内装の中嗚咽を吐いた。

暫くして社長と数人の上司が駆け付け二人の様子を見て何があったのかとザワついていた、その時は中村は気を失っていた、それを言い事に部長はこう言った

「この中村が木村さんを突き飛ばしたんです」

二人は病院へ運ばれた、中村はその日の夜目が覚める

「酷いもんだな」

「河瀬…」

同じ病院に運ばれ、河瀬を慕っている社員から全て聞いた

「パーティ処じゃなかったな、なんで木村さんがそこまでやったか分かるか?、お前の事好きだからだよ」

河瀬は淡々と何かを抑えるよう話し続けた、木村の作戦も覚悟も中村が気絶した後の事も、中村は言葉が出なかった口の中が切れており痛いのもあるだが、こんな自分のためにそこまでやる彼女が分からなかった、初めは一方的な想いを抱いていたなのに彼女が自分を好き?有り得ないと唇を噛んだ

「お前のためにオレらは戦ったんだよ、何で何も戦わないんだ何で諦めてんだよ!」

「いつ願った?助けてくれなんて頼んでない!」

横になっている中村の胸ぐらを掴みかかった中村もまた河瀬の胸ぐらを掴んだ

「何してるんですか」見回りの看護師が止めに入った

「中村、諦めんなよ」

河瀬は看護師に連れられ病室を出て行った、木村はまだ目を覚ましてはいない。

朝退院し一旦帰宅、用意をして出勤した顔にいくつもの絆創膏、皆驚愕し声をかけれない、中村は何も無かったかのように仕事をこなす

「おはよう中村くん」

社長が呼びに来た、中村は何を言われるか分かった

「おはようございます」

「少しいいかな?」と屋上まで連れていかれた。

社長の話は、「君が木村君を突き飛ばした、それに動揺し自ら顔を殴った、そうなのかい?」と言った、中村は誰がそんな作り話をしたのか分かった、「はいそうです」と口が開こうとした時河瀬の顔がチラついた「諦めるな」口を閉じ唾を飲んだ

「…違います」

初めて戦う姿勢を見せた、だが

「どこもそうだな犯人は嘘をつく」

馬鹿馬鹿しい戦ったて結局こうなる、中村を残し社長はその場を後にした

「…なぁ河瀬無駄なんだよ」。

1人で過ごす正月、昼前に起きソファで寛ぐまだ大晦日、何気なくテレビを眺めていたら掃除ロボットが働いいている

「…大掃除するか」

背伸びをし1年溜まった汚れを払う、もっと早く起きれば良かったと後悔しながら一人暮らしには少し広い部屋を片付ける、布団のシーツもマットも枕・カーペットと全てコインランドリーに放り込みモップ掛けに勤しむ、カーテンも持って行けばよかったと思いながら寝室・物置・リビングダイニング・トイレ・バスルームと夜まで続けた、休憩にコインランドリーへ行きカーテンと交代しまた回す、家に帰りベッドメイキングにカーペットと寒そうだったフローリングに着せる。

晩ご飯も考えないとなと水周りの掃除をする「20時かよ」と急ぎ買い物に出掛ける、一応正月を意識して蕎麦とお節お酒を買い込みカーテンを回収する

「ふー終わった、楓ちゃんから LiNE」

掃除に夢中で気付かなかった、上原は実家に着き手伝いをして大変だという内容だった

[オレも大掃除終わったとこ返事遅れてごめん、楽しんでね]

綺麗になった部屋で一服し、お風呂へ行った、テレビを付けたら毎年恒例のお笑い番組だった、蕎麦に軽食を作りやっとまともな食卓を囲み上原との連絡を楽しむ、もうすぐで年が変わる

[もう少しで年越しますね、4日のお昼に帰る予定なのでどこかで会えませんか?]

[そうだね、7日なら休みだよ]

[帰るまでにお母さんに話しますその事を聞いてください]

上原は今まで誰かと恋仲になった事は無いそんな箱入り娘が三十路前の男と付き合っていると聞いて母親はどんな反応をするだろう倒れないだろうか、佐東は心配していた、そんなことを話していたら除夜の鐘が鳴る、佐東の携帯には祝いに連絡がいくつも来た、これまでに関係を持っていた女性や合コンの時しか連絡をしな男性や音楽友達や大学の時の知り合いなど懐かしい人達からだ、律儀に返信する、勿論上原にも[明けましてめでとう、楓ちゃんに会えて本当によかった好きになってくれてありがとう、ずっと大切にします、家族との時間楽しんでね]

友達との返事に時間が掛かったのか10分後に返信が来た

[明けましておめでとうございます、私も佐東さんに会えて良かったです、大好きです。ありがとうございます]

可愛い恋人を持って幸せだと浸っていると、母親から着信があった、一回目は無視し連絡を続けるがまだ着信が来るので渋々出た

「はい」

「明けましておめでとう、元気にしてる?あの秀哉帰ってこないの?」

「おめでとう、帰らないよ、新しい人居るんでしょじゃいいじゃん」

「秀哉、お母さんの何が気に入らないか知らないけど子供じゃないんだからそういう態度やめなさい」

「はいはい、で?他要件は?無いなら切るけど」

「どうしてそんな子になったの?お母さん悲しい」

「すみませんね!ではお幸せに!」

折角楽しんでいたのに潰され勢いよく電話を切った、佐東は注いでいたお酒を一気飲みしテーブルに叩きつける、母親は何も分かっていないいつでも悲劇のヒロインだ、おそらく今泣いて新しい恋人に慰めてもらっているんだろうと想像ができた、舌打ちをつきながらお酒をグラスに注ぐ、また着信が鳴った、佐東は画面を見てすぐに出た

「今大丈夫ですか?」

「楓ちゃん、うん大丈夫、ありがとう」

恋人の声を聞き落ち着かせる、でもやっぱっり自分は母に似ていると思い知らされる

「明けましておめでとうございます、やっぱり直接言いたくて」

「健気だね、明けましておめでとう、ご両親は大丈夫?」

「はい移動したので」

そのあと一時間ほど話し込んだ、電話越しに上原母の声が聞こえた

「友達と話すのはいいけどもうそろそろ寝なさい、朝から忙しいんだから手伝ってね」

「…はい。すみません」

「ううん大丈夫、楓ちゃんと話せてよかったぐっすり寝れるよ」

「ホントですかなら良かったです、また電話してもいいですか?」

「もちろん、嬉しいよ」

じゃおやすみと優しく電話を切った、さっきまでの怒りはどこかに消えていった、トーク履歴には桂木からも新年のお祝いLiNEが着ておりそれを最後に返信し大人しく佐東も眠りに就いた。

正月のいい所は朝からお酒が飲めるところだ、スーパーで買ったお節を並べ正月番組を見て過ごす、こういった風に過ごすのも悪くないと思う、だがずっと家に籠るのも勿体ないなと明日は外で飲もうか考えていると、昔遊んでいた女性から連絡が来た

[明けましておめでとー久しぶりー]

[明けましておめでとホント久しぶりだね元気?]

[ちょー元気、あのさ久しぶりに一緒に飲まない?]

佐東は少し悩んだ飲んで帰ればいいか行かない方がいいか

「安心してーお持ち帰りなんてしないから、彼ピいるし]

ならいいのか?と久しぶりの連絡だし何も起こらないだろう

[いいよ、ちょうど明日外で飲もうと思ってたから]

[よかったーあとさちょっと話し聞いてほしくてー]

なるほどな、[おうなんでも聞くよ]とその日はそれで終わった。

ゆっくり目を覚ました、軽食を取り夜までお酒は控えた、その間上原と連絡を取り合う、言わない方がいいだろうが隠すものでもないと、[昔仲良くしてた子と今夜飲みに行くことになったよ]

一般的にこれはどうなんだろう?、男性からこう言った報告がきて嫌だろうか?勿論嫌な人もいる、もし行かないでと言ったらどうするのだろう、でも知らないところで会っていても傷付くだろう、難しい議題だ。上原はどうするんだろう

[分かりました、お酒は程々に、楽しんでください]

文面上だと大人だと思うが内心嫌と思っているだろうそれかこれが本当にただの大人の付き合いだと思っているのか

[ありがとう、気をつけるね]

19時になり待ち合わせの場所に向かう、彼女と会うのは3~4年振りか、少し早く着いたかと携帯を見ていると視界が暗くなり少し冷たい

「だーれだ」

驚いて振り返る「かすみちゃん、ビックリした」

かすみと名乗る無邪気な女性、彼女が連絡をしてきた子だ

「早いじゃん、そんなにあたしに会うの楽しみだったー?」

「たまたまだよ」

「えーあたしはすっごく楽しみだったよ」

と腕に抱きつく

「彼ピいるんでしょ」

かすみは笑いながら「そうだった」と言いながらも久しぶりだから離さない

「気持ちは嬉しいけど、オレも可愛い彼女がいるから」

照れながら言うとかすみは少し固まった

「そーなんだ、そっか」

名残惜しそうに離れ、店に向かった、お店は彼女がよく行くお気に入りの所らしい

「ここでーす」

隠れ家的なオシャレな飲み屋だった、佐東一人なら見つけられないだろう、早速店内に入るとマスターに挨拶しカウンターの端に座る

「いいお店だね」

「でしょー、あたし良いの見つけんの上手いんよ」

かすみは慣れているようにスクリュードライバーを頼んだ佐東はビール

「かんぱーい」

乾杯をするとマスターが通しの小皿に入ったドライフルーツとチーズを運んだ、小さいメニュー表を見ていくつか注文した

「で、話って何?何かあったのか?」

「まーだ」

と肩に凭れる、彼女は昔から甘え上手だ、そこは変わっていない、佐東はその事も関係しているのだろう彼氏と揉めてると悟った、食事を食べお酒も進む、お店の雰囲気が良いせいか場酔いしやすいなと佐東は経験から察した

「かすみちゃんそろそろ言って」

「うーん、あのね」

佐東の読み通り、彼氏と喧嘩中だと言うのだ、原因は彼女が異性との距離感が近く何度言っても直らないという嫉妬、でも彼女はそれが普通で今更直せないとお互い一方通行、彼氏の監視も酷くなり束縛を嫌い困っていると話した

「だからね、今好きが減っていって、それに全然ちゅーもしてくんなくなったの」

つまり欲求不満なのだ

「なるほどな」

佐東は真面目に相談に答えるが、彼女が求めてることは違う、ほろ酔いになった彼女の手は佐東の太腿を撫でる、正直言えば佐東だって欲求不満だいつもキスで終わり我慢の日々佐東をよく知る人物にこの事を伝えたら皆驚愕するだろう

「かすみちゃん、だめだよ」

「なんでー…彼女ちゃんいるから?」

「そうだよー」佐東は続けて、そうしてるから彼氏の束縛が酷くなるんじゃないの?と正論を言う、かすみは不貞腐れ

「秀くんそんなこと言う人じゃなかった、変わったーやーだー」

残ったお酒を一気しまた注文した

「飲み過ぎだよ」

本当に変わったんだなっと自分でも驚いた、上原に感謝した。でもかすみも諦めない

「…彼女ちゃんにバレないよ」

今度は腕にしがみつく、佐東は一息付きかすみの頭を撫でる

「ちゅーだけ、だめ?」

女性の上目遣いは可愛い嫌いな男は居ないだろう、使いこなされた技は佐東には効かなかった。

デーブルにある食事を済ませ会計をした

「さもう帰ろ」

「やーーだー」

なんとか彼女と店を出ることに成功しタクシーを呼ぶ

「一回だけそしたらもう言わないから」

下を向き声が震えている、それを彼氏に言えばいいのではと部外者は思ってしまうが、佐東は二人の仲が本当に悪くそれすら言えない関係になっていると察した、でもここで許してしまったら我慢している意味もなく何より上原に申し訳ないと言葉が出てこない

「秀くん、お願い…」

「かすみちゃん」

このままでは帰せないと、彼女の正面の立ち手を握る、彼女は目を瞑る、佐東はゆっくり近付ける、周りは車が走る音人の話し声で賑わっている、それでも聞こえた唇が弾く小さな音が

「…いじわる」

目を開けた彼女は唇を尖らせる、佐東がキスをしたのは彼女の手の甲だった

「口は彼女のだから」

と自分の唇を指で指す

「これ以上はしないよ」

かすみは不満そうだったが納得し「分かった」と言ってタクシーで帰っていった、その後彼女がどうしたかは知らない。

佐東もタクシーを使い帰宅した

[今から帰るよ]

[楽しかったですか?気を付けて帰ってください]

これで本当に家にいたらどれだけいいだろうと肩を落とし大きな溜息をついた。

家に着きソファに横になる、酔っているせいだと言い聞かせ煩悩を消すため全く別の事を考える

「はぁ」

いくら考えても体は正直だ、パンツが窮屈で痛いズボンのチャックを下げパンツから溢れる、その後はもう流れるまま熱くなった硬い肉を上下に擦る、佐東の息が荒くなる、熱い肉をとろみで包むよう滑りがいいだが中々鎮まらない

「はぁクソ」

上原を想像するのは如何なものか考えたが上手く頭が回らない

「楓ちゃん」

名前を口にすると肉はより大きさを増し熱くなった手が止まらず息の荒さも増した、そのあと何度か名前を呼ぶと肉から熱い白濁したものが溢れ出た、呼吸が落ち着く、でもまだ鎮まるのに時間はかかりそうだ

「元気かよ」

その後もう一回達し放心状態だった、携帯が光っている上原からだった

[もう着きましたか?、お酒のあとはたくさん水飲んでくださいね、お父さんもよく飲んでて]

「…せめて高校は卒業してからだよな、ごめんまたやっちまった」

頭を抱え賢者モードだ、ティッシュで綺麗に拭き座り直す、もしこのまま付き合っていけばどこまで我慢できるだろう、正直かすみに太腿を触られただけでがっつきそうだった、これまで女性とこれ程しないことは無かった、いつか爆発するのではないか怖かった、上原だけは絶対に傷付けたくない

[ただいま、ありがとう]

どんな気持ちで返事すればいいかシャワーでも浴びて冷静になり、上がったらそのままソファで眠った。

朝かすみから連絡がきていた

[昨日はごめんね、お家帰って彼ピに言ったらいーっぱいちゅーもしてくれた、めっちゃ気持ちかった、ありがとーまた飲もーね]

当て馬かよとツッコんだ[そっか、よかったね]

自分は大変だったと言うのにと大きな溜め息をし、何もする気が起こらなかった、休み最後というのに勿体ないと寝て過ごした。

4日今日から仕事だと店に向かった、裏口を開け、店に入る

「ウソだろ…」

「おはようございます、ってなんですかコレ!」

店内は何者かに荒らされ弦楽器は壊され壁には落書き棚をひっくり返されていた、事務所も荒らされ金品を盗もうとしたのだろう

「酷い」

佐東は直ぐに警察に連絡し開店所ではなかった従業員は外で待機させ、警察に朝来た時の状況を話した、聞けば近くのお店も何件か入られ現金を盗まれているとの事だ

「楽器は壊されただけで何も盗まれなくて良かったですね」

「金庫持って帰って正解でしたね」

「ホントだな、でも修理費高くつくな、暫く店も開けられない」

「自分達で出来る事はやりましょ、落書き消しとか」

と沈んでいる佐東を励ますよう声を上げた

「そうだな、ありがとう」

新年早々全くついてない、これから起こることが怖かった。

仕事も晴れず笑顔がぎこちない、金田とは連絡をとっていない。

休みは掃除に買い物に必死で気持ちを変えようとしたけど何見ても心に響かなかった

「新しい年になったのよ、なーに暗い顔してんのよ」

昭子の背中をバンと叩く

「休み実家に帰らなかったの?」

昭子は首を振る。


立派な男になってほしいと願う両親からすれば昭子は汚点だった、父親は公務員母親は専業主婦、絵に書いたような平凡な家庭だった、母親の方が教育に厳しく父親が口を出すことはなかった昭子が男性に恋愛感情が芽生えた時は両親ともに怒鳴られた、家族は崩壊し家に帰る者は居なかった、ある日昭子がいる時ホストに遊ばれた母親が帰ってきた、昭子を見て頭を抱えた女の様に化粧をしてワンピースを着ていたからだ「はぁ、どうしてそうなの、昭彦あんたのせいでこうなったのよ、なのにどうしてまだそんな格好できるのよ」段々息も声を荒らげる「何不自由ない暮らしさせてるでしょ!何が不満なのよ!」それ以上は聞きたくなかった言ってほしくなかった、昭子は飲みかけていたコップを床に投げ付け出て行った、どうして理解してくれないの?昭子は流れる涙を必死に抑える、高校生には親からの否定ほど怖いものはなかった、別の日には、父親からたった一言「出てい行けもう帰って来るな」夜バイトから帰ると台所で晩酌している時に言われた、一回も目は合わなかった、けどその時の父に顔は一生忘れることは無いだろう。

たった同性を好きななっただけなのに何が悪いのかどうしてここまで言われなれけばいけないのか昭子は分からなかった、父親の言葉に母親は反論しなかった、昭子は勘当された、それが高校三年の夏、そして卒業と共に家を出た。

「帰る家なんてないから」

ママは、抱きしめながら「私の家によ」と言った、昭子はそうだったと涙を浮かべながら笑った。

お店の扉が開いた「ごめんなさいまだ準備中なの…あら」

ちょうど昭子は裏へ行っていた、来客は金田だった

「あっきーに何か御用かしら?」

「はい、話があって」

ちょっと待っててと昭子を呼びに来た、昭子の表情は変わることなく金田の元へ向かった

「お久しぶり」

「あっきーさん何で連絡くれなくなったんですか?俺何かしましたか」

ママは今にも飛び掛りそうだった

「大智さんクリスマスプレゼント気に入ってくれた?」

「え、はいありがとう」

「何が入ってた?」

金田は言葉が詰まった「え、こ、香水」

昭子は笑った、大きな声で笑った

「それは可愛い女の子の恋人でしょ?バレないと思った?」

「俺にはあっきーさんだけだよ」

昭子はゆっくり近付き頬を撫でたニッコリ微笑むと次の瞬間、足を開きボクサーのよう腕を構えそのまま綺麗な右ストレート、金田の頬に綺麗に入り吹っ飛んだ

「あっきーさん!?」

腰に手を当て仁王立ちで金田を見下ろした

「ワタシがオカマだからって舐めんじゃないわよ、香水?ふざけんなよお前の事考えてどれだけ悩んだと思ってんだよ!、可愛いだの素敵だの言ってたのはどの口だ、誰にでも吐きやがってワタシの純情返せゴラァ!」

最後は今まで聞いたことの無い低くドスが効いていた、金田は「ひぃ」と身体を縮めた、昭子はポケットからブレスレットを取りだし金田に投げ付けた

「このクソダサいの返すよ、お気に入りの彼女にでもあげたら、あぁ元々上げるやつだったか」

金田は床に落ちたブレスレットを拾い涙目になる

「あ、あっきーさん…」

「もうお前の恋人じゃねぇんだよ」

お店の扉を開けママが手で招きながら「お出口はこちらでーす」金田は急いで立ち上がり服装を直した

「お、男が変なんだよ、いい思い出来ただけ感謝して欲しいな!」

昭子がまた拳を作り振りかぶろうと構えた、金田は怯え外へ逃げた

「SEXも出来ないくせに偉そうな事言ってんじゃないわよ!!」

ゆっくり扉を閉め振り返る「気分は?」ママは心配しながら聞いた、下を向き動かないママが近付く「…ふ、あっきーたら」昭子は下を向いたまま笑って、今度は上を向き腹を抱えて笑った、涙を零さないよう上を向いて

「はは、…見たあの顔だらしない」

「えぇ見たわ怯えてた、でもよく頑張った」

力強く抱きしめた。

力強く生きていくそれを身に付けるにはまだまだ遠そうだ、心の拠り所は今は無いかもしれないけどあの頃と違う、自分を理解して助けてくれる存在がいるということ独りぼっちではなくなったということ、人並みの幸せにもまだまだ遠いでもきっといつか自分を愛してくれる人はいるそう信じた、信じる事しか出来なかった。

ただ真面目に一生懸命生きて仕事してなるべく人に恨まれない様に生きて我慢してた、なのにどうしてここまで嫌われ惨めな扱いをされなければいけないのか、自分が何をした、初めこそこの理不尽な世の中に文句や噛み付きもしたが、今は首輪を着けられた奴隷、躾のいい奴隷だ。

社長にも信じて貰えなかったが、中村は何度か駆け寄った、戦ったのだ

「木村さんを突き飛ばしたのは僕じゃありません、部長です」

「馬鹿なことを言うな、彼がそんな事する訳ないだろう」

この繰り返し、中村も段々言うのを諦めた熱く燃やした炎の消化がここまで早いと思わなかった。部長はその事を知らず日課の如くパワハラを続ける。

中村が朝出社した時ロビーでは経理の女性が話していた

「華ちゃん、骨折して暫く入院て、昨日お見舞いに行ったんだけど、華ちゃんってあんな感じだっけ?」

「私も聞いた、ビックリだよね、なんか最近ちょっと怖かったていうか」

そりゃそうだ木村は一人で戦っていたんだから、木村の誤算は河瀬の入院だった二人で社長に告発する予定だった河瀬が撮った証拠を武器に、それが出来ず木村ができる全てのカードを出した。

「中村、木村さんと仲良かっただろ?一緒に見舞い着いてきてくれ」

同じ部署の一つ上の先輩急に言われ、中村はのり気がしない、自分のせいできっと木村も会いたくないだろうと、先輩に何度も頼まれ断ることが出来ず病室には入らないと言う条件で行くことになった、部長が定時で帰ったあと尾行をする刑事のよう辺りを警戒し病院まで向かった

「木村さーんお加減どうですか」

木村は窓の外を眺めており声を掛けるとゆっくり振り返りニコリと笑った中村は直ぐに隠れた、先輩は緊張しながら話し木村は当たり障りのない返事をするばかり

「あの、外に中村さん居ますよね」

先輩は廊下に顔を出し手招きする

「こんにちわ」

「木村さん」

沈黙が続き先輩はたじろいでいた

「ごめんなさい、中村さんと二人にしてもらえますか」

先輩はいい返事をし帰って行った

「座らないんですか?、聞きました私を突き飛ばしたの中村だって、勿論否定したんですよね」

初めて会った彼女はもっと大人しく強気な発言なんてしない穏やかで優しい人だった、彼女がここまで変わってしまったのは自分のせいなのかと自分を責めるしかなかった

「自分がやったって言ったんですか」

「…ち、違うって何度も言っても誰も信じてくれなくて…」部長のことすごく信頼してるみたいだし、とそう続けた、木村は固定された手で布団を叩き悔しがる

「木村さんごめんなさい、でももう自分のせいで怪我しないで」

深く頭を下げ病室を出て、会社へ戻り残っている仕事をを片付け何とか終電で帰宅した。

1月にしては朝の気温も少し高く過ごしやすい日になったずっと曇り空だったため何処も洗濯日和、太陽が気持ちよさそうだった

「おはようございます、心配かけてすみませんでした」

12日河瀬が退院した、あんなに暗かった空間に光が差し込むよう皆笑顔を取り戻し河瀬の元に集まった、まるでヒーローの歓迎だ、ただ一人を除いて

「フン、何だもう帰ってきたのか」

不満そうな部長に河瀬は笑顔で「はい、ただ今戻って参りました」

デスクに座り中村の様子を伺う、休憩時間になり河瀬は忙しそうに他の人達と話し込んでいた。

退勤時間になり部長を呼び止めた

「少し話し良いですか?」

不穏な中河瀬と部長は消えていった

残った人達はコソコソと「退院したばかりなのに心配だ」「大丈夫かな」と、中村は二人が消えたところを見つめた、河瀬の事だまた無茶する、怖くなった。


人を傷つけないよう周りとの距離感は気を付けてきた、子供の頃から空気は読めるほうだった学校でも問題を起こす事はなく手のかからない子供で両親も育てやすかっただろう、父親はサラリーマン母親はスーパーのパートの共働きで我儘を言うのも少なかった、けどそれが嫌な事は無かった自分だけの好きな時間があったから、仲の良い友達は少なかったが知り合いは多かったクラスのいじめっ子に狙われないよう上手く付き合った、彼らからすれば当時の中村は時間つぶしのいいおもちゃだっただろう、でも虐められるよりまだマシ、特に家族仲も悪くはないどこにでも居る普通の家族、この物語で唯一平和は家族だろう

反抗期も一瞬来ては一瞬で終わった、実家もそこまで遠くはなかったが社会人になって一人暮しを始めた、初めの頃は元気か?など両親と連絡を取ったが忙しくなりパワハラが始まってからはだんだん減っていき今ではほぼ取らなくなった、平凡に生きて来た中村には現状を受け止めるほどの経験がなくどうすることも出来ない、でもせめて自分以外に人は巻き込みたくなかった。


誰よりも残り誰よりも早く仕事をする、河瀬が退院して3日、もう開始時間だと言うのに河瀬の姿が見えず昼頃に戻ってくるそんな日が何日経った。

河瀬は社長に話を持ち込んだ、木村を突き落としたのは部長で中村と言う社員にパワハラをしている中村を庇い自分は腕を骨折しこの前まで入院しいた、と初めはそんな作り話と聞く耳を持たない

「…知っていますよ木村さんのことセクハラしていること」

「セクハラだと!?ふざけるな!」

証拠ならありますと木村が撮った写真と今まで自分が撮ったボイスレコーダーを突き出した。

中村が知らないところでここまで動いていたのだ。

「中村、病院で言ったこと覚えてるか?」

トイレの洗面台で話しかけた、中村は少し考え

「諦めるなってこと」

と聞いた、でも一度戦ったそれで打ち返された中村の勇気は粉々に叩き潰されたもう戦う気力はない

「あぁ」

「河瀬、またお前が傷つくの見たくないもういいから」

蛇口を止め目を合わせることなく出て行った

「自分が全て背負うから、か…じゃお前は誰が守るんだよ」

背負う程の覚悟も強さもあるわけじゃない、けど友達と呼べる人ができた。

今まで嫌なことは見て見ぬふり自分に矢が当たらなければ誰がどうなろうがいい、でも中村が高校生の時後悔した出来事がある、クラスでよく話す友達ができた初めは隣の席それだけの関係だったが意外と気があった、でもその子はヤンチャなグループから虐めにあっていた中村も目撃していた、一緒にいる中村も狙われかけた時「そいつは関係ないだろ、俺が気に入らないなら他のやつを苛めんのはやめろ」と守ったのだ、中村には彼が格好良く見えたいつか自分も誰かを救えるヒーローにと思った、夏になりもうすぐで夏休みに入ろうとした時彼が連れていかれ中村も後を追った、鍵を壊し屋上へ侵入した彼を輪になって殴りつける「っも、もうやめろよ」間に入った瞬間、彼は突き飛ばされ腐敗しかけていたフェンスにぶつかりそのまま地面へ沈んで行った、下からは悲鳴が聞こえヤンキー達は急いで逃げた、中村は自分が余計なことしたから彼は落ちた、彼は何とか一命は取り留めたがもう二度と起き上がることも話すことも出来なくなった、自分のせいで、ヤンキーたちは退学となりその後のことは知らない。余計なことをするから大切なのものを失う、中村はもうあんなことは嫌だと自分が耐えれば河瀬も誰も失わない。

ある日爽やかな顔で部長に呼び出され

「どうだね一緒に昼でも」

階段を昇り屋上に着いた

「いやー今日はいい天気だね」

「そうですね」

誰もいない、誰が植えたか分からないガーデニング、部長はフェンス側に立ち地面を見、ニヤリと笑った

「全く河瀬のバカが戻ってきたせいで大変だよ」

手摺を殴りつけ怒鳴りはじめた

「俺はこの会社をより大きくする為どれだけ頑張ってるか、分かるか?馬鹿で間抜けなお前らに教育してやってんだろうが」

部長は鼻の穴を膨らませ唾が飛び眼光が開いていた

「パワハラだ?教育だろうが!アイツは社長にまで言いやがって」

「河瀬が?」

そこで初めて知った、驚いた顔を部長に見られ「おい中村お前はこれがパワハラだと思うか?お前は俺に教育して頂いてるだろ?そう言うんだ!…今度は片腕じゃぁ済まないかもなー」

「やめ…」

中村は言えなかった自分が言うこうと聞けばいいだけ何か言えば河瀬も彼のようになるそう脳裏に過った

「それか、お前ココから落ちろ」

「え?」

「そしたら俺が今までやってきたこと謝ってやるよ」

本当か分からない、でも、と手摺りに手を伸ばす部長は鼻息が荒くなり中村の鼓動は早くなり心臓が先に出るか体が柵を超えるかのチキンレースだった。

「だからね河瀬くん、彼がそんなことするとは信じないよ、それに昨日三人で話したじゃないか、彼は教育と言っていた私は信じるよ」

「これのどこが教育なんですか、信じないと言うなら、実際見てください」

社長の腕を引きフロアに戻った

「え?、部長と中村は?」

二人が出たことを聞き探し回った

「社長見てくださいね、あなたが今まで信じてきたものが何か」

焦れったくなったのか、舌打ちが連続で聞こえる

「早く飛べ!」

中村の背中を押し、上半身が乗り出す

(あいつもこんな感じだったのかな)

中村の目から涙がこぼれた

「な、何をやっているんだ!」

「…!、しゃ、社長」

中村から急いで離れ言い訳を探している、河瀬は急いで近づき中村を抱き寄せフェンスから引き離した

「中村!中村、大丈夫か」

河瀬の腕の中で声も出さずに涙を流す、社長の前で土下座をしながら「違うんです彼がここから飛び降りようとしたので止めていたんです」

「まだそんなこと言うんですか」

河瀬が噛み付くと社長が手を挙げ発言を止めさせた

「馬場くん、私が間違いだったようだ、君には失望した、中村くん本当に済まなかった」

初めて頭を下げた、涙で視界歪みはっきりとは見えなかったがあんなに信じてくれなかいった社長が頭を下げてると不思議な光景に脳が追いつかなかった。

中村には充分な療養という事で休暇が与えられた、その間河瀬と社長は今までの非道な行いを改め謝罪をし同意の元裁判を起こした。

中村は壁にもたれ掛かり地べたに座るそれだけの日が続く、まだ情報が完結しない結局どうなったのか全く分からないまま過ごす、休暇になってもうすぐで1月が終わろうとしていた

「どうして落ちなかったの?お前は俺を落としたのに」

(あのまま河瀬が来なかったらどうなっていた)

「お前だけ生きて、いいよな動けて話せて」

足先が冷たい

(誰も期待なんてしていない自分がいなくたって)

「俺ならもっと上手く生きられる」

夜は怖いことばかり考える、まるで悪魔が手招きするみたいで弱っている時は連れて行かれそうになる、中村は三角座りで自分自身を抱きしめる。

知らないうちに朝になって知らないうちに夜になる、太陽がどっちから出てくるのか忘れた。

カーテンを閉めても朝だと分かる光、子供達の声、中村は何を思ったのか窓を開け外を眺めた、歩いている人が嫌なほど楽しそうで違う世界にでもいるのか。

(二階でも痛いんだろうか)

自分が生きて自分より必要とされていた彼がいない、あの時落ちたのが自分だったら、中村の部屋の呼び鈴が鳴った窓を閉め玄関を開ける、そこには量産でもされた笑顔の仮面をつけた宗教の人達だった「幸せってなんだと思います」そんなのこっちが聞きたい、中村はポツポツと発言する

「あなたは幸せなんでしょうね、良かったですね、幸せの安売り、やめてください、ほっといてください、分かってます、幸せは愛される人にしかきません」

中村の止まらない言葉に恐怖を感じたのか走って帰っていった、玄関を閉めまた三角座りをする

「幸せだってお前にはいらないよ、俺にくれ」

日が沈みうすい赤色に染まっていく。

「どうしたんですか河瀬さん」

「いや電話に出なくて、中村大丈夫かな」

河瀬は裁判にと忙しかった

「今日先に帰るわ、…中村のとこ行くか」

子供の頃好きなアニメがあった、働く車がロボになり街の平和のため戦うものだった、それに憧れ消防士になりたかった、中村はそのアニメの曲を口遊ながらバスタオルを巻いていく

「それでいいそれで全て収まる」

「ゆーめと強さをー胸に…戦え街のへーいわー」

タンスの取っ手に頑丈にしたタオルを掛け腰を落とす

「愛を、希望を、ちーからをあわせて…」

足にタオルを伸ばし首に回して引っ張る、タオルはどんどん絞まっていく口遊んでいた声は枯れていく

「そうだお前もこっちに来い」

視界がぐらつく、中村の前には高校の時の彼がずっといた、ずっと、笑顔で呼び寄せる、これで許されるだろうか中村の目は白目を剥く。

「やっぱ電話に出ない、中村…」

何度も呼び鈴を鳴らす、買い物かと帰ろうとした時、何か胸騒ぎがした、今帰ってはいけないそんな気がした、河瀬は唾を飲み込みドアノブに手を伸ばす鍵が掛かっていない

「中村?」

ゆっくり開ける、玄関で声をかけるが応答がない、靴を脱ぎ部屋に入る、そこで目にしたのは「中村!何やってんだよ!やめろ!」血相を変え駆け寄る、白目に涎が口から流れていた、急いで足に掛かったタオルをずらし緩める、タオルで首を吊っていたのだ。河瀬は必死に声をかけ続けるだが反応はない

「中村、おい!中村!」

震えながら救急へ電話をした

「助けてください!」

救急車が向かう、その間も声を掛け続ける

「失礼します!」

救急員が部屋に入り、声をかけ担架で運んだ

「電話をくださったのは貴方ですか、詳しい話を来てください」

一緒に乗り病院まで向かった、河瀬は何があったか見た事をそのまま話した、病院に着くとすぐ運ばれ河瀬は待合室で祈るしかなかった

「中村、中村」

しばらくした後医者が河瀬に声をかけた、中村は無事一命を取り戻した、河瀬は何度も感謝を述べた、今病室の準備中との事で待った、河瀬はこれからの事を考えていた、看護師が呼びに来て病室へ向かった、眠っている中村の手を握り温かさを確認した

「良かった、本当に良かった」

中村の手から水が滴った。

次の日、社長が病院を訪れた

「河瀬くん、中村くんはどうだい」

「社長…」

今はまだ目を覚まさない、社長はこれも私のせいだすまないと謝った、もうそれなりに和解し裁判も順調に進んでいたが河瀬は小さい声で言った

「もう謝って済むことじゃないんすよ…」

暫く社長もいたが電話が鳴り仕事に戻った

「河瀬くん、暫く休んで中村くんのそばに…また来るよ」

河瀬は振り返ることも返事すること無かった、中村が運ばれて4日が経った時「…中村?」ゆっくり目を覚ましたのだ、中村は辺りを見渡しゆっくり口を開いた

「…死ななくてごめん」

それを聞いた河瀬は立ち上がり「何言ってんだよ!お前自分が何したか分かってんのか、…どれだけ心配したか…」悔しくて怖かった

「河瀬…座って」

ゆっくり天井を見ながら彼のことを話した、知らなかった、河瀬はなんも言わず黙って聞いた

「だから、俺がいなくなればよかったんだ、俺が…」

話が終わると中村はまた眠りについた

「でもさ、オレはお前に会えて良かったて思ってんだよ」。

目も覚め会話できるようにはなったが抜け殻のような反応だ、中村の家族にも勿論連絡が行き河瀬が全て話した、和解方向で上手く進んでいた裁判も状況が変わった。

医者から話があった、精神病院で治療するのはどうかと言う話だった、初めは迷いもあったが中村母は、一度どんなところか見てからと案内に行き入院を決めた

「中村、違う病院へ行くんだってな」

「母さんが泣いてるとこ初めて見た」

「そっか、なぁいつでも会いに行っていいか?」

「…ん」

手続きが終わり紹介してもらった病院へ無事に入ることが出来た、月はもう2月になっていた。

正月の間に連続で行われたことから犯人は同一人物と見られメディアで取り上げられた、捜査は一段落した

「写真は撮りましたので大丈夫です」

出来るだけ早く元に戻したく落書きを落としたと伝えたら状況証拠として細かく写真を撮り無事取り掛れる

「さ、やるぞ!」

従業員総出で店内の落書きを落とす、壊された楽器は何故か弦楽器だけだった、よくしてくれている修理屋に連絡したら急いで来てくれることになった、年末の棚卸しでちゃんと数えていてよかった楽器の数を確認して盗まれたものはなかった、現金を盗むために入ったと思われると警察と話をしまた何かありましたら電話してくださいと別の店に向かった

「にしても正月にやってくれますよね」

「全くだ」

割れたCDのほとんどが佐東の趣味みたいなものだった、一枚ずつ拾い何が割れたかチェックしていた、社員の一人がこの事を業務連絡した

「佐東さん皆に連絡しました…大事にしてましたもんね」

「あぁ…でも形あるモノ壊れるって言うしな」

それに今CDを聴く人も減った、そろそろ頃合だったのかもなとゆっくり拾った、連絡を聞き付けて何人か手伝いに来てくれた、とりあえず落書きと床に散らばった物を片付けたら開けようという事になった、皆協力的だ

「佐東さん手伝います」

「桂木、ありがとうでもこの辺はオレがやるから別のとこ頼めるか」

「…分かりました」

作業は一日かかって何とか綺麗にできた、明日から営業を始めると解散した、いつもより足が重くなるほど疲れた、次の日には修理屋の方が来てくれた

「こりゃ酷いっすね、災難でしたね」

「あぁ本当にな」

今回は事故ということで安く見てくれた

「助かるよ」

「いつもご贔屓にしてもらってますから」

楽器を任せ新年早々出費が酷くなった、大変な日が続き心休まることはないまま上原と会う日になった、本当はどこかに連れて行ってあげたかったが「家でゆっくり二人で過ごしたいな」と伝えると「はい」と聞いてくれた。

朝から上原を招いた

「いらっしゃい、何も無かった?」

「え?大丈夫でしたよ」

「楓ちゃん可愛いから知らない人が声掛けたりしなかったかなーって」

茶化すように言い上原は赤面させ「変なこと言わないでください」と頬を膨らませた。

ソファで寛ぎながら過ごした

「佐東さん、何かあったんですか?今日はいつもよりちょっと違うと言うか」

後ろから抱きしめ上原の肩に顔を埋めていた

「んー?何も無いよ」

佐東の体を退かし正面に向き直した、佐東の足の間で三角座りになりあと少しで唇が当たるほど近かった

「そんなに近いと襲っちゃうよ」

「…いいですよ」

全くこの子はと少し距離を取った、上原はその分詰め佐東の頭を撫でた、彼女がここまで積極的になったのも成長ととるべきなのか、佐東は目を閉じされるがままセットした髪が崩れた、上原は作業のよう黙々と撫でる

「楓ちゃん?あのそろそろ」

「あ、ごめんなさい、ハムを思い出して」

ハムとは、上原の実家で暮らすゴールデンレトリバーの事だ犬にハムとは中々のセンスを感じる、佐東は大きく口を開け笑った釣られて上原も笑う

「良かった、佐東さん元気になった」

この子なりに気を使ってくれたのかと抱きしめた

「ありかと、ねぇ」

向き合ったまま、佐東は自分の膝を軽く叩き座ってと伝えた、上原の胸の中で目を閉じ、お店のことを愚痴みたいに話した、ここまで甘えられるなんてでもそれだけ信頼していた、黙って話を聞きながら頭を優しく撫でる

「よく頑張りました」

思わず涙が出そうになった、このまま眠そうだ。

昼を周り腹が鳴る、デリバリーで注文し一緒に食べ

「楓ちゃんのお陰で元気でたよ、ほんとにありがと」

「力になれてよかったです」

食べ終わってからは映画を見て過ごした、上原はまた足の間で三角座りをしながら真剣に見ていた

「佐東さんって映画好きなんですか?」

「うん好きだよ、映画館で見た時の音楽の迫力とか」

「私も映画好きになりました」

顔を振り向きにっこり笑った、佐東は頬にキスをして微笑んだ。

映画も終わり上原は別のを見ようとした時

「楓ちゃん、お母さんに話したの?」

止まった、それを見て佐東は察し優しく手招きして抱きしめた

「怒られた?…ごめん」

「佐東さんが謝ることはないです」

さっきと交代でもしたくらい、佐東の胸の中から動かない、頭や背中を擦る

「なんて言われたの?」

上原は、寂しそうな表情をしゆっくり話した。


「お母さん話があるの」

と夜母親を呼び出し、テーブルで向き合う形で座った、かしこまった娘に母も真剣になった「どうしたの」何から言い出せばいいかまだ混乱していて中々話出せない母親はじっと待ってやっと話し始めた、「あのね、今付き合っている人がいるの」母親は溜息をつきながら「まさかあの時の?」と看病した時に会った佐東と的中させた上原は黙って頷いた、頭を抱え深い溜息をついてそれ以上何も話さなかった「優しくて私の事ちゃんと考えてくれていい人なの」、上原母は立ち上がりコップに水を入れて飲む「年は?」やっと口を開いた

「29…」また眉を寄せため息吐き椅子に座る、認めてもらおうと必死に佐東の事を話した、その間も上原を黙って見つめずっと聞き話が終わると、今度は母親から話した「いい?楓、いい人なんて誰でも出来るし油断させるためかもしれないのよ」と上原が言ったことを全て否定し始めた、優しいと言えば初めだけいつか酷く傷つけて捨てる・年の差についても遊ばれてる恋心はもっと大事にしなさい・そもそもそんな大人が高校生に手を出すこと自体犯罪、と一刀両断「認めません別れなさい」上原は納得がいかず考え直してとお願いするが母親の決断は変わらない「恋愛もしたことが無いあなたが傷つくだけよ、そもそも愛だの恋だのあなたにはまだ早い」と言いながらそれ以上はなんも聞いてもらえず部屋を出て行った。


「そっか…」

上原は泣きながら胸に蹲る

「別れたくない…」

佐東はただ抱き締めることしかできず何も言えなかった。

どんな子でも早いなんてことは無い女の子である限りいつだって誰かを好きなっていい、どんな恋でも自分を大きく変えてくれる、酷い恋愛だったかもしれない、綺麗にサヨナラできなかったかもしれない、幸せいっぱいの恋愛だったかもしれない、最後はいい思い出で終わったから経験もできて新しい自分を知って成長する、色んな事があったその感情は決して無駄なことはない、女の子もいつかは女になるその階段は人それぞれで誰かに決められることではない、恋愛こそ自由だ。

佐東は話を聞いてから唇にキスをしなくなった、夕方になり上原の携帯が鳴る、母親の警戒が強くなった

「でないの?」

「だって帰ってこいて言うから」

頭をポンと軽く撫でながら帰ることを薦めた、初めは嫌がるも佐東を困らせたくないと思う気持ちが大きくて渋々承諾した

「ごめんね」

何度も首を振る、歩いて家近くまで送った

「車じゃないんですか?」

「歩いた方一緒にいられる時間多いでしょ」

パッと明るくなり笑顔が戻った、流石と言うべきか女心を分かっている、初めは手を繋ぎながら歩いていたが上原の家付近になった時手を離した、また少し寂しそうな顔になった

「ここまでね」

あと少しで着く、上原の足が止まる、佐東も名残惜しいだが、あそこまで言われ大反対な様子から見て覚悟を決めるしか無かった

「楓ちゃん」

後ろから鈍い音がし振り向くと上原母だった、眉間に皺を寄せ走って上原の腕を掴む

「帰るわよ!」

「待って、お母さん!」

連れていかれる彼女を止めることも出来ず悲しく引き離されるのを見るしかできなかった

「佐東さん」

なんも言えず、上原は家の中に消えていった

(そうだよな…)と地面に引っ付いたのかと思うほど重い足を動かしゆっくり帰って行った。

次の日からあまり連絡を取らなくなった、その分仕事に集中した。

店も何とか落ち着き始め頃、一人のお客が店を訪れた

「オーナーにお客様です」

「え?」

店内に出て声を掛けた、女性はゆっくり頭を下げるがどこが攻撃的な視線をしていた、上原母だ、佐東はここではと場所を変えた

「すぐ終わりますので」

と店の裏口で話した、何を言われるかも分かっていた、上原母は恨みを込めたように鋭い目付きだ

「分かってると思いますが、ハッキリ言ってうちの子で遊ぶのは止めて頂けないでしょうか、あの子はまだ高校生よこれがどういう事か分かってるの?…早く別れてください、話はそれだけです」

佐東の返事も聞かず一方的に言って颯爽と帰って行った、言いたい事はいっぱいあった、遊びと言われた事が一番腹が立った、それに上原もいつまでも高校生ではない今年で卒業だ、佐東は壁を殴った

(こんな一方的、分かってる一人娘で大事にしてるのも、くそ)

頭の中がまとまらない、仕事が終わって家に帰っても落ち着かない、考えても答えは出ているのにそれを言葉にしたくなかった、子供のような我儘。

上原母と話して1週間が経った

「佐東さん元気ないですね」

「そりゃ店がこんなんじゃ」

「それだけなのかな」

バイトにまで心配をかけてしまい、情けない、佐東は両頬を叩き喝を入れるその後何も無いよういつも通り仕事をこなす、店の扉開き冷たい風が足元を駆けた

「いらっしゃいませ…楓ちゃん」

「お仕事が終わった時少し時間をください」

そう言い頭を下げ直ぐ出て行った、後2時間不安が襲った。

上原はいつも待ち合わせのカフェに居た、佐東を見つけると立ち上がった、彼女はいつものメロンソーダを飲んでいた

「お疲れ様です」

佐東はコーヒーを頼んだ、上原は制服だったもう学校が始まっている、コーヒーを飲みながら学校始まったんだと話題を出すが素っ気ない返事に沈黙が続いた

「…楓ちゃん、もう会うの止めようか」

上原は顔を上げ驚いた様子だった

「お母さんが言ったからですか」

上原母と会ったこと話した内容を上原は知らされていた

「別れたくないです」

「楓ちゃん、前にお母さんに話すって言った時のこと覚えてる?」

佐東は自分にも言い聞かせるように優しく丁寧に落ち着かせながら話した、母親に話してダメと言われたらその時考えようと

「佐東さんは別れたいと思うんですか」

酷い質問だ、泣きそうな顔でそんなことを言わせる自分も酷いやつだと

「…別れたいと思ってたらこんなに苦しまないよ」

珍しく本気で珍しく真剣で苦しかった、ここまで変えてくれた彼女を愛している離れたくない、子供のように駄々こねて泣き叫びたいほど

「楓ちゃん」

二人で話しても答えが見つからなくて、難解パズルが解けない時のよう頭が痛い。

カフェを出て近くまで送る

「バイバイ」

手を振り見送る、上原は「また」と言って帰って行った。

仕事をしても家にいても心がどこか遠い所へ行った感じで寒かった、今までの連絡を見返すと鮮明に映像がでてくる、一日が過ぎるのは意外と早く取り残されそうになる。

バイバイと言ってから一週間と少しが経った。

デスクチェアーでクルクル回っていたら歌が聴こえた

「笑顔も声も温もりも全てあなたが教えてくれた、ただ一つサヨナラの勇気は教えてはくれない、いつまでも忘れられない大切な人」

「…いい歌だね」

「嫌味ですか?」

次に新曲で歌詞を制作していた桂木だった、気にはしながらも続きを書いた

「…佐東さん、別れたんですか?」

ズバリ聞く、佐東は返答に困った

「どうだろう」

まだ、と言いたかったがいずれそうなるみたいで言いたくなかった、桂木は歌詞ノートと向き合いながら

「私こんなに未練が残るなんて知りませんでした、佐東さんが初めてです」

シャーペンを置き佐東の目の前に立つ

「私じゃダメですか」

「…桂木」

昔の自分ならここで抱きしめ一線を超えただろう

「ゴメン」

桂木はやっぱりなと息を吐いた

「まーーた振られちゃった」

桂木はさっきまで座っていた椅子に腰を落とした

「らしくない答え出さないでくださいね」

「え?」

意地悪そうに笑いながら「いつまでも私が好きな佐東さんでいてください」

少しだけ勇気を貰った気がした

「ありがとう」

桂木の頭を撫で仕事に戻った。

佐東の携帯が久しぶりに鳴った

[今日いつものカフェで話があります、お仕事が終わったら来てくれませんか?]

「楓ちゃん…」

分かったと返事をし時計を見た、もしかしたらこれで終わるかもしれない、今までサヨナラが寂しいものとは思わなかった、別れても女性には困らなかった、ろくでもない奴だなあ自分でも思うほど笑えない。

21時になり閉店する、覚悟を決めカフェへ向かったそこには上原と母親がいた、佐東は少し驚いたが急いで近付いた

「お待たせしました」

上原母はため息をし目を合わせない

「大丈夫です、お疲れ様です」

「ありがとう」

ウェイターがお冷を持ってくる

「コーヒーを」

コーヒーが届くまで沈黙が続いた「お待たせしましたー」

「佐東さん」

初めに言ったのは上原だった

「私は別れたくないです、お母さん私もう卒業するし子供じゃないの」

必死に伝えた、きっと何度も母親に言っているのだろう、母親はまたかと思うような溜息を着く、佐東はここで自分も別れたくないと言ってしまったらどうなると様子を伺った

「あのね楓、お母さんからすればあなたがいくつになっても子供よ、たかが高校を卒業しただけで大人になったと思わないで」

佐東は不思議だったそんなことを言う母がいるんだと、大事にしてると言えばそうかもしれないが本当にそれでいいのか

「佐東さん?あなたはどうお思い出?」

「…楓さんのことはとても魅力的で素敵な女性だと思います、楓さんと出会うまで僕はろくでもない奴でした彼女のお陰で変わることが出来ました本当に彼女には感謝しています」

佐東は本当のことを伝えた好感を持ってもらおうなんてせこい考えではなく、ただ純粋に感謝を伝えた

「それで?」

言葉が止まった、上原を見ると不安で今にも泣きそうだった、覚悟を決めないといけないここまで好き勝手に生きて自分のことばかり考えてきた、そんなのはもう終わりだ

「正直別れることはしたくありません」

上原母は軽蔑する目で驚いた

「でも、お母様が仰っている事も分かります」

今度は上原が困った表情になった

「なので楓さんが成人した時僕たちの事認めていただけませんか、それまでは一旦別れるという形にはなります、勿論それまでに彼女が別の方とお付き合いしていたらそのまま破局になります」

「佐東さん…」

あと二年ではあるが大人になる女性に二年はたっぷり時間がある、その間に色んなことを経験するだろう大人な女になるだろう、それでも佐東は上原を諦められなかった。

上原母は少し考え温くなった紅茶を飲み干した

「条件があります、連絡は取らない、会わない、です」

「はい分かりました」

「お母さん!」

母親は渋々と言った様子でもう話すことはないというように席を立った

「先に出てるから、最後の話でもしなさい」

「待って、最後と言うなら、今日は佐東さんと一緒にいたい」

「それはダメ」

「お願いします!」

店内に響くほど上原からあんな大きな声が出るんだと驚いた

「…はぁ分かったわ」

母親は肩を落とし店を出た、残った二人は何も言わないまま暫く見つめ合い、佐東の家に帰りやっと話した

「別れるんですね…」

「楓ちゃんが20歳になるまでね」

佐東に背中に抱きつく、佐東は直ぐ振り向き抱き締めあった

「たった2年だあっという間だよ」

「はい」

見上げる上原にキスをする今までより深い上原は知らないキス、佐東の舌が上原の口の中で踊る声と涎が零れる上原の息が零れ口から糸を引いた

「っ佐東さん、会えなくなるなら私を大人にしてください、次会うまでなんて待てません」

「…いいの?…お母さんには絶対に内緒だよ」

「うん」

一緒にいたい、何をするとは言っていない何をしてはいけないと言われていないからそんな子供の言い訳を利用した。それにこれが最後かもしれないならどうなっても良かった。上原を寝室まで抱え、優しく横に寝かせゆっくり服に手を入れる

「あ、あのちょっと明るくて恥ずかしいです」

「そうだね」

電気を消し、キスをした。

終始割れ物を触るように丁寧に傷付けないよう気をつけた、部屋には二人の体温と香りが広がった。

「…大丈夫?、飲める」

上原の汗を拭き水を渡す、ゆっくり水を飲み佐東の胸に飛び付く

「すごく幸せです、佐東さん大好きです」

「オレもだよ、大好き」

抱き合いながら眠りに就いた。

朝シャワーを浴び上原を送る、今度は車内で何度もキスをした

「楓ちゃん…またね」

「また」

「…楓ちゃん」

佐東は忘れないようにと何度も名前を呼んだ

「楓ちゃん、十代最後の二年って大事だから、オレを忘れてもいいんだよ、君は本当に素敵な女性だから」

「佐東さん、佐東さんこそ」

そんなことお互い思っていない、だから聞きたい自分だけだと、言って欲しい

「私ずっとパティシエになるのが夢なんですだから卒業したら製菓の学校に行くんです」

「そっか、頑張って」

「佐東さん二年後一番初めに私が作ったケーキ食べてくれませんか」

「楽しみにしてる」

次会う約束と最後のキスをして上原は車を降りていった、最後まで彼女を見送り居なくなった、額をハンドルにぶつけ中々発進できない、顔を上げ流れそうになる涙を堪えた、この先のことは分からない、二年きっと上原はもっといい女性になっているだろう自分なんかよりいい男と付き合うだろうと

(…嫌だな)

家に着いても車から降りられない、堪えていた涙が雨のように零れる少し泣いたらスッキリしたどういう選択を取ろうが後悔はない、車から降りると雲から光が差していた、まるで背中を押しているように。

朝日を見送り空っぽになったような生活が続く、子猫はいつも冒険気分のよう歩き回る、朝日が居ないのが分かるのかもしれない悲しそうに鳴くことがある、森は優しく撫でながら、分かるから泣かないで、と言う、泣いているのは森の方だ。

朝日の病院は一緒に働いていた助手に任せている、任せると言っても1週間に4回掃除と医療器具の点検と地元の方の診察をお願いしている。

仕事中、窓の外を眺めることが多くなった、杉野も店長も気にしているがどう声を掛けたらいいた迷っていた、森は普段あまり顔に出さなく何考えているか読みにくい方だったが朝日と出会って大きく変わった。

「森くん休憩どうぞ」

「ありがとうございます」

コンビニの袋からサラダチキンを出しゆっくり食べる

「あ、森さん休憩ですか?」

「杉野さん、上がりでしたかお疲れ様です」

森の前に座り両手を頬に当てじっと森を見つめる

「な、何でしょう」

「コレ見てください」

と真剣な顔で携帯を見せてきた、ペットグッズのホームページだった、杉野はワクワクしながら、子猫ちゃんへのプレゼントは何が良いと思いますかと楽しそうだった

「知ってましたか、猫ちゃん用のリードがあるんです!」

楽しそうだな、と肩の力が抜ける

「森さんと一緒に暮らしたら猫ちゃんムキムキになっちゃいますね」

思わず笑う、それを見て安心したような杉

「良かった、森さんずっと元気無かったから」

その日、家に帰ると子猫の姿が見られなかった、いつも帰ると玄関まで見に来るのに来ず部屋に入ってもどこにいるか分からない、外に出てしまったのかと必死で呼ぶ

「どうしよ…君まで居なくならないで…」

ソファに腰を落とし頭を抱えると隣でゴソゴソ動くものがあった、膝掛けを捲る、森は安心したように溜息を着いた

「そこに居たんですか、良かった」

寝起きだったのか森の太腿に顔を擦り付ける

「お願いですもう不安にさせないで下さい」

「にー」

分かったと返事でもしたのか、優しく抱き上げ胸の中で丸くなった、森は動けずずっと撫で写真を撮った、いつか朝日に見せるためにと。

次の日その事を杉野に話したら可愛さに悶絶しいていた

「狡い…私の家がペット禁止なの知って、クソ!」

「杉野さんペットならいるじゃない、携帯の中に」

動物と暮らそうという育成アプリの事で、そこで癒しを得ているのだ、だがやっぱり本物の温もりがほしいものだ、杉野とバイトの子が楽しげに笑いからかった。

少し明るくはなったものの、朝日に似たお客さんが来ると思い出すのか背中が寂しそうだ

「森さん、やっと笑うようになったのに…何が出来ますか」

「そうだね、今は見守るしかないんだよ、大丈夫森くんなら」

子猫との生活心ここに在らずな毎日、気付けば日課にしていた朝のランニングもトレーニングもなくなっていき、いつの間にか自分の好きな事は何だったのか分からない。

朝から杉野が叫びバイトも皆驚いた、開店前の準備中でお客さんがいなくてよかった

「なんですかそのだらしない体!」

筋肉が落ち脂肪に変わった森の体を見て一喝する

「筋肉どこに置いてきたんですか!」

「置くものじゃないけどね」

確かにとその場にいた全員が森を囲み美術鑑定士のよう各々呟く

「そ、そうですか」

杉野は皆とは違いヒヨコの性別を分ける職人のような素早さで森の腹と背中肩を触った

「やっぱり…太ってます」

「職人だね」

森は言われるまで気にしなかった、でも昼は変わらずサラダチキンにブロッコリーと低脂肪だ、でもそれにあった運動をしないと意味が無い

「そんなに酷いですか?」

珍しく荒々しい、杉野に混乱する

「杉野さん怒ってますよね、僕何かしたんですかね」

「どうだろうね」

店長はニコニコしながら開店準備に戻った。

仕事中も気にはするが特にと言った感じだった、そのころ休憩室では杉野と店長が話していた

「いい感じですね、森さん気にしてますよ」

「そうだね、いい作戦だと思うけどちょっと強引だったなー」

「え!」

何かに集中して気でも晴れたらと、森の好きなことは何か考えたらやはりトレーニングだろう言うことになりどうやってその気にさせるかこれは全く出てこず、強引で行くことになった

「で、でもほら」

「うーん変わらないよ」

「くそーどうしたら」

自分のためにそこまで考えているとは微塵も知らず、家に帰って子猫を撫でる

「危ないですよ」

埃が被ったダンベルの上に乗り遊んでいる、森は子猫を避難させダンベルに布を掛け部屋の扉を閉めた。

次の日から杉野のチェックが入るようになった、まるで校門前の挨拶で立っている生徒指導のようだ、だが杉野は思っていた反応と違い作戦を組み直すのに頭を悩ましていた、そんな時店長に呼び出された森、何かあったのか

「最近杉野さんから言われてどう?」

「でももういいかなと…」

「そうか…じゃこれ要らないかなあ」

とボディビル大会のチラシだった、店長の知り合いが主催でやる小さなものではあるがマニアが集まる人気の大会だ

「是非君にって言われたんだけど、そうか」

断りにくい狡い言い方をわざとした、困った森を見て「まぁ森くんの好きにしてよ」とチラシを渡し行ってしまった、大会は2月10日と書かれてた、今からやっても間に合わないとカレンダーを見1ヶ月もなかった、ベストまで搾るなら1ヶ月じゃ足りない、チラシを折り捨てようとした時

「なんですかそれ」

待ってましたと言わんばかりに杉野がひょっこり顔を出し、チラシを見せた

「出るんですか」

キラキラした瞳に出ないとは言いにくく、そのまま持って帰ってしまった

「どうしよ…」

子猫がチラシの上で転がっている

「きっと気に掛けて言ってくれたんだと思うんです、どうしたらいいですかね」

「みー」

こうやって朝日に聞けたらと子猫を撫でる。

お風呂に入りじっくり考えた、珍しく長風呂をして昇せてしまった、子猫が浴槽の扉を爪で掻き何とか出ることが出来た

「ありがとうございます」

「ぷーう」

多分怒っているんだろう、台所まで行き水を飲む、机に飛び乗った子猫が携帯を落としその音にびっくりしてカーテンをよじ登った

「大丈夫ですよ」

と拾ったら、通知ランプが光っていた、朝日からの着信だった、急いで掛け直す、呼出音が長いもう出ないと切ろうとした時

「もしもし、俊貴さん」

大好きな声、これだけでも胸がいっぱいになる、たった2週間朝日が現地に着いてから初めての連絡、無事に着いていて良かったと話し子猫は元気なことを話して朝日がどうしているか沢山聞いた

「…俊貴さんは?」

「え」

「自分の話してないから」

森は何も話せずにいた、彼女と離れてたった2週間だ、朝日は仕事に誇りを持ち輝いているというのに情けない

「少し時間あるの、話して、俊貴さんの事教えて」

森はゆっくり、朝日が居ないことその寂しさ、何もしなくなったこと、店長から貰ったチラシの事を話した、朝日は頷きながらしっかり聞いてくれた

「私は全然寂しくないわ」

「え」

「嘘、本当は私も寂しい、でも俊貴さんがくれた指輪があるから寂しくないの、傍にいてくれる感じがして」

膝に戻ってきた子猫を撫でた

「明日私の病院に荷物が届くの受け取ってくれない?」

「分かりました」

朝日の後ろで何か話し声がする、忙しいなら切った方がいいかと聞くと、冷やかしよ気にしないで、と恥ずかしそうに笑った

「あ、そうだ、大会やってみれば?」

「でも」渋る森に溜息をつきながら珍しく厳しい事を言った

「やりたくないならハッキリ言う、迷ってるくらいならやる」

森はやりたくない訳では無いただ言い訳ばかりを探していたのだ、自分が最も嫌いなやり方そんな選択をした自分を殴りたくなった、朝日は次に励ますよう続けた

「別に優勝しなくてもいいのよ、そこまでの努力や楽しいって気持ちが大切なんだから、それに私の中では俊貴さんが一番よ」

朝日の言葉全てが森を包み込む、分かっていた事なのに、森は改めて彼女の偉大さに気付き自分の弱さに気付いた

「ありがとうございます、葉さん愛してます」

「私もいっぱい助けて貰ったから、愛してるわ」

その後は今まで通り話し、明日に備え寝る事にした、彼女のおやすみは魔法の言葉だ、その日はぐっすり眠れた。

次の日は偶然休みもあって昼過ぎに朝日の病院へ向かった、既に宅配業者が来ていた

「あ、あの朝日葉さん宛のですか」

「あはい、森俊貴様へ」

それ僕です、と身分証を見せ受けとった、自分になんだとそのまま持ち帰りダンボールを開けた、大きいダンボールの中に小さいダンボール、マトリョーシカみたいだ、小さなダンボールには見たことがある箱、この形は「リングケース?」

上にパカりと開けたキラキラ光った銀色、小さなダンボールに子猫が入る「あ、待ってください」

大きな方を渡したら楽しそうに遊んでいる、小さなダンボールから手紙が落ちた

[俊貴さんへ、ちゃんと届きましたか。本当は直接渡したかったけど出来なくてごめんなさい、俊貴さんが婚約指輪をくれた時本当に嬉しかったの、俊貴さんのお陰で強くなれる、だからもし寂しくて不安になった時私を思い出していつもの俊貴さんになるように、いつも傍にいるわ、葉]

手紙だった、手紙なんて初めて貰った、森は手紙を汚さないよう優しく抱きしめ大粒に涙をこぼす

「にーにー」

子猫が涙を舐めて慰める

「ありがとうございます、もう、もう大丈夫」

朝日のLiNEに子猫と指輪を撮って送った。

次の日店長に大会に出ることを伝えた

「今まで心配掛けてしまってすみませでした」

「僕はなにも、杉野さんに言ってよ」

窓拭きしていた杉野に声をかけた

「杉野さんありがとうございます、大会でます」

「え…え!」

雑巾を投げ大喜びした、杉野は胴上げしてるのかされてるのか同じくらい喜んだ

「いつも心配してくれてありがとうございます」

「森さん、なんでも手伝いますから!」

感情の起伏が激しいコロコロ変わる杉野に笑った。

その日から今までだらけていた体にムチを打ちトレーニング器具を掃除し無理をしないがギリギリまで追い詰み朝のランニング筋トレの日々に戻った、訛っていた分辛いものはあったがどこか楽しくてこの前より活き活きした、子猫も応援しているのか筋トレに協力する、大会まで日は決して長くないがどんな結果でもいいこの瞬間が楽しいから。

いつもの森に戻った。

ベッドに横になりながら外を眺める、風でカーテンが気持ちよさそうに踊っている。

精神病院へ入院してから2週間が経った、重度の人は個室で軽度の人は2〜3人部屋と分けられている、中村は重度と診断され1人部屋で部屋の外は軽度の人達の話し声が聞こえる、重度の部屋は外から鍵を掛けられ中からは開かず部屋にはカメラがありナースステーションから見られる、患者全員決められた範囲しか外出できない、野外の外出は軽度の方だけでひと月に一度だけ付き添いを付けるという形だ、家族や友人の見舞いは受付に申請して許可が出た日にしか出来ない、患者の心を最優先で考えられている。

河瀬は何回か申請を出しているため受付に申請書と身分証を見せて中村に会いに来る

「中村、おはよ」

ゆっくり振り向き、少しだけ体勢を変える

「おはよ」

「気分はどうだ?」

ゆっくり椅子を出し音に気をつけながら座る

「まだ慣れないな、部屋に入る時荷物チェックされるやつ」

鞄の中やポケットの中服の上とボディーチェックをする、少しでも危険物があればナースステーションに預けて帰りに受け取る

「…大変なんだしそんなに」

「大変なことなんてないよ、大丈夫だ」

中村の入院期間は早くて1ヶ月半とされているがゆっくり様子を見ていきましょうとなった。

「聞きたくないなら言ってくれ」

会社がどうなったか教えようとした

「話していいよ」

まず部長はパワハラに自殺強要を認めた、裁判は会社に損害賠償金が支払われることになった今まで未払いだった残業代も支払われるとのことだ、部長は解雇され会社全体見直す事になったのだ

「社長がさ、環境が整ったら戻ってきて欲しいって言ってんだけどどうする」

そんな答え決まっている

「戻らないよ」

「だよな、ま俺も辞めたんだ」

河瀬は、元々自分の会社を立てたいと言っていた、河瀬はゆっくり立ち上がり窓際に立ち面格子に手を伸ばし、振り返り中村を見つめた

「中村、俺と一緒に来ないか」

「え」

「退院して落ち着いてからでいい、俺と一緒に働いてくれ」

河瀬は真剣な顔で綺麗に角度で頭を下げた、いつも誰かを思って戦って、河瀬がいなかったらどうなっていたか、中村は手を伸ばし河瀬の袖を掴む

「役に立てるか分からないよ」

「お前は最高に優秀だよ」

中村はずっとそう言ってほしかったのかもしれない、誰かに認めてもらい必要として欲しかった、嬉しくて流れる涙は美しかった

「ありがとう」。

中村の中で変化が生まれた、今まで誰とも話さなくてずっと横になっていただけ、だったが河瀬が帰った次に日から看護師と少し話すリハビリを始めた、初めは目も合わず鼓動が早く汗が出てきては休憩を取り無理ならやめるそれの繰り返しだったが少しづつ相手顔など部分的にを見ることが出来た。

次河瀬が見舞いに来た時、看護師が嬉しそうに話した「中村さん凄いんですよ」

「そうか、あいつ」

まるで我が子の成長のように泣いて喜んだ、スキップするよう軽い足取りで中村の病室へ向かった、いつも死んだ魚なのような目をして横になっていたのに、今は椅子に座って窓際で風を感じ明るい顔付きだ

「おはよう、中村」

「おはよう」

聞いたぞとワクワクしながら前のめりになる、中村は少し照れながら

「お前がいつも助けてくれたから」

河瀬は小動物を愛でるように中村に抱きつき頬を擦り寄せた

「ちょ、やめろって」

ごめんと離れ言い忘れてたと椅子に座り、木村のことを話した「昨日退院した」と、木村は見舞いに来たいと言っているが中村の心境を聞きたいと言う内容だった

「そっか…、でもどんな顔で合えばいい、俺のせいで木村さんを傷つけて」

中村の手をそっと握り「お前のせいじゃない」と強く言った、中村は少し考えたこのまま会わないというのも一の選択だでも謝りたい許されるならもう一度会いたい

「無理にとは言わない、でも今の中村なら大丈夫って思う」

河瀬はいつも凄いなと憧れる

「会いたい」

中村は少し不安は残るのもも大丈夫という言葉にここまで励まされたら前に進むしかないと手に力が込もった。

木村との面会の日程を合わせ看護師と話した

「中村さんが変わろうとされているのは分かりますが焦らずゆっくりやりましょう」

確かに急すぎではある、割れ物だって壊れたら直すのに時間も手間もかかる、人間の場合壊れたら治らない時もある、大丈夫だと言い頑張ったって知らないところで粉々にしているものだ。

「でも今しかできいない気がして」

そんなことも無い、が自分の気持ちに正直に大切に向き合って、失敗したってその選択をした自分を責めたくない、もう独りじゃないと中村の言葉の意思は強かった。

木村と面会の日中村は緊張していた、木村もまた同様に緊張し病院のロビーでしゃがみ込んで深呼吸をした

「木村さん落ち着いて」

ボディーチェックを済まし中村の病室前に着く、木村は深呼吸を何度もする、河瀬が扉を開け挨拶し木村も続けて入った

「し、失礼します…」

「ど、どうも」

扉の前から動けず、お互い一言目が出ない

「あーとりあえず、座らない?」

3人とも座り沈黙が続く、河瀬は2人の顔を交互に見て話すまで口を出さないように気をつけていたがあまりにも燻っているのが我慢できず、話すなら話す、と言ってしまった「…すまん、けど会うって決めたなら、な」と言い、2人から距離を取って、どうぞ、と空気になった

「あ、あの元気そうで良かったです」

初めに話したのは木村だった、中村はやっと顔を見上げた木村は変わらず美しかった、でも右の顬辺りに傷が残っていた、中村は「あ」と大きな声が出た

「あぁこれですか、…残っちゃって」

木村は傷口を撫でながら眉を下げて笑う

「すみません」

木村は立ち上がり必死に「剛士さんのせいじゃありません、剛士さんは何も悪くないです!」

「…木村さん」

木村は肩が力む、2人の様子を心配そうに見守る、木村は落ち着きを取り戻し座り直しまた沈黙になるかと思ったが唾を飲み込む音が聞こえ中村が話を続けた

「仕事どうなったんですか、俺のせいで、その…」

「私辞めれることになったんです」

それは河瀬も初耳だったのか「え」と驚いた、確かに社長の元で働くことになったが、社長が自分の行動を全て改まり、これはセクハラになると認め君の好きに働くも辞めるも選んでくれと言ったらしい、木村は辞表を突き出した

「そうだったんですね、あのこれからどうするんですか?」

「もし働き口が見つかっていないなら俺のとこに来てくれない?」

思わず会話に入ってしまった、河瀬はあっと口を塞いだ、木村少し考え今はゆっくりしたいと

「実家の農業を手伝おうかなって」と、確かにそれもいい彼らは随分疲れた休んだって誰も責めない

「それもいいですね」

「えぇ」

河瀬の方を向き、すみませんと頭を下げた

「いいよ、木村さんに育てられる野菜は美味しいだろうな、もしまた働きたいって思ったらいつでも言って大歓迎だから」

「ありがとう河瀬さん」

木村の晴れ晴れとした顔を見たらどこか安心した、3人で話すのも木村と話すのも懐かしくて思わず涙が溢れる

「中村?」「剛士さん?」

「…楽しくて」

中村はこんな優しさも温もりも忘れかけていた、自分はこの2人と出会えて良かったと感謝を伝えた

「また剛士さんと話せて良かった」

「俺も」

2人は目が合うと照れるように逸らす、河瀬はニヤニヤさせた

「何か売店で買ってくるよ?」

と病室から出て行った、残された2人はあの頃の様意識し始める

「河瀬さんたら」

「俺、河瀬のお陰で生きてるんだ」

中村が自殺を図ったことを知っている

「河瀬さんは私たちのヒーローですね」

「あぁ本当に格好良いよ」

扉の前で話を聞いていた河瀬は目頭が熱くなる

「華さんもヒーローですよ、本当にありがとうございました」

「剛士さん、私…」

赤面させ下を向き少しモジモジさせる

「華さん?」

木村の胸の鼓動が中村にも伝わったのか夕日が中村を当て真っ赤に染める

「…好きです!」

あの時は中村が必死で茹で蛸みたいだったのに今は逆だ、段々思い返すあの頃と言っても数ヶ月前の話なのに何年も前のように感じる、中村は彼女の一喜一憂する姿が美しくて大好きなんだと、中村は泣きそうになるのをグッと堪え

「俺も、好きです」

やっと伝えることが出来た。扉の外でガッツポーズをするやっと2人が幸せになれた嬉しくて堪らなかった、暫く様子を見ていい頃合に部屋に戻った「ただいまー」

「随分長かったな」

「まーな」

暫く3人で話し、暗くなるしそろそろ帰るよまたねと約束し賑わっていた部屋が少し寂しそうだった、でも中村の心は温かくちっとも寂しくなんてなかった、こんな風に誰かと喋ること笑うことが好きで楽しい、中村はそう言えば前にも気を許してバカ笑いした人達がいるなと思い出した

「皆今何してるんだろう」

携帯は持ち込み禁止とされているから連絡は出来ないがあの3人が気になった。

振られることが多い人ってなぜかいる、恋愛をいくら経験しても振られないようにするのは難しいきっと天才と言われた人達だって答えは出ないだろう。

よく人の気持ちは簡単に変わるものと言われるが、そんなに簡単に変わってしまうなら誰も結婚なんてしない、だから最近結婚をしないカップルが多くなった、勿論他にも色々な理由があるが、気持ちがコロコロ変わる奴なんかと人生の冒険なんてしたくない

「結婚したら奥さんが変わったんですよ」

「あぁなんか怖いよな、子供出来たらもっと変わるぞ」

「えぇ昔の方が可愛かったのに」

グラスを拭く手が止まった、マスターはサラリーマンに聞こえるかどうかの声で

「結婚はそいつと一緒の墓に入る、選択した奥さんは相当覚悟決めたんだよ、変わらない方がおかしい、覚悟決めてないのは男だけかもな」

ランチを食べてたサラリーマンは言い返す事なく気まずそうに食事を続け、急いで会計を済まし店を出て行った

「バツ2が偉そうね」

「経験者は語るんだよ」

よく行くカフェ、この前のパフェは見事に完成しオススメメニューにまでなっている

「昭子はどうなんだ」

「別れたわよ」

マスターは手を止め顔を見る

「振ってやったのよあんな奴」

何の未練も無いように笑う、だがどこか無理しているようにも見えた「やめてよそんな顔、なーんにも気にしてないのホントよ」

昭子はまたニコリと笑った。

いくらクズでも愛した人には変わらない、そう簡単に嫌いになんてなれない、マスターは深掘りはせず、目を閉じ全く違う話題を出し楽しく会話した。

「あ、そろそろ行かないと」

「働き過ぎじゃないか、老けるぞ」

「ぶつわよ…ありがと大丈夫ワタシ綺麗だから」

「そーかい」

店を出て背伸びをする、このカフェに来ると心が軽くなる、昭子にとって癒しの場所だ、昭子は気合を入れお店に向かう。

「おはようございまーす」

元気よく挨拶をする、バイトの子達はもう元気になったのかと安心して接する、昭子も機嫌が良く鼻歌を歌う。

今日はお客さんは少なく静かだった、これ以上混まないだろうと何人か帰し、ママと昭子ともう1人だけが残った、最後残っていたママ指名のお客さんも帰り誰も居なくなった、もうすぐで0時になるところだった、重そうに扉が開いた

「おかえりなさー…金田さん」

金田は1人で元気がなく深刻そうな雰囲気で来店してきた

「どうぞ」

昭子はカウンターに座らせ向かいに立った、なにか飲む?と言うと小声でビールを、昭子は何も言わずビールを注ぎ黙って置いた、金田は勢いよく飲み干す

「何かあったの」

昭子は腕を組み聞いた、下を向いたまま動かない金田に呆れる

「もう怒ってないから話しなさいよ」

捨てられた子犬みたいな顔をする、この顔に自分は弱かったのかと昭子は自分自身に呆れた。

金田はもう一杯ビールを飲み深呼吸し物々しい言い方で

「俺、結婚しないといけないかも…」

「ぶっていい?」

昭子はわざわざ振った人にそんな報告なんて酷い人なのと怒りと悲しみで狂いそうだ、ママも怒りで近くにあったテーブルを殴った

「あんたよくそんな事言えたわね!」

もう1人の女の漢と袋叩きに合った、昭子は2人を止め溜息を吐いた

「はいおめでとう、可愛い嫁のところ帰りなさいよ」

結婚の報告にしては様子が変だと何があったのか詳しく聞いた、するととんでもない事を言いこれ以上好きだった人を嫌いになりたくなかった

「気を付けてたんです、それに正直結婚する気はなくて」

金田は頭を抱えながら、4日前に可愛い彼女さんから子供が出来たと嬉しそうに言われ金田は何も言い返せず困っていたら、嫌なの?と聞かれ濁したら責任取ってよと今日婚姻届を出して書いてと言われ今のその紙を持っている

「子供なんて作る気なんてなかったのに、どうしたらいいですか」

その場にいる女の漢は金田をぶっ殺しそうになる気持ちを押し殺した、ママが低い声で聞いた

「あんた本当に…その彼女はあんたと一緒になりたいんでしょ、あんたは違うのね」

金田は少し考え、彼女のことは好きですでもまだ結婚はする気はなくて遊びたいと言うか、と金田の気持ちはよく分かった、昭子は金田の隣に行き胸ぐらを掴んで今度は拳で殴った

「命をなんだと思ってんだよ、作りたくなかった?遊んでいたい?お前の勝手で産まれる程簡単なもんじゃねぇんだよ」

産めるなら自分が産みたいと、好きな人との子供が欲しいと何度望んだか、昭子は段々涙が零れる

「責任も取れないのにSEXすんじゃねぇよ!、好きな相手なら父親になって責任取るくらいのことやれよ!」

水に強い化粧品のお陰で崩れはしなかったが溢れる涙は止まらなかった。

子供だって産まれてくるなら歓迎されたい愛されたい、仕方なく産まれるなんてそんなの嫌だ、裕福じゃなくても家族に愛されるならどんな家でもいい、昭子は生まれてきたことに何度も後悔した、だから子供にはそう思って欲しくない。

金田は昭子の本気に涙が移った、「すみません俺自分の事ばっかりで」と床に頭をつけ声を出して泣いた。しばらく泣いたら落ち着き彼女とこれからの事を話し子供を産み育てるということにまとまった

「しっかり愛してあげて、約束よ」

「はい」

金田は重い物が取れたように足軽に帰っていった、残された昭子はカウンターに座り天井を眺め溜息を吐くママはそっと肩に手を置き「よく頑張ったわね」と、沢山泣いたのにまた涙が出てきそうになる、もう1人の女の漢がこういう時は飲みしかないですよ!と3人分のビールを注ぎ乾杯した

「男なんてシャボン玉ー」

と芸人さんが言いそうなネタをみんなで叫んで乾杯し朝まで飲んだ。

昭子はLiNEのトーク履歴を眺め金田との会話を読み返し懐かしみ最後は消去した、どこか心がスッキリした気分になった、更に他の人のも見ていたらもう一つ懐かしいものが見えた、あの3人との会話だ

「…あの人達今何してるのかしら」

以外にも生活は充実した、トレーニングにも活気が出て仕事も順調で家に帰れば子猫が出迎えて癒してくれる何一つ文句はない、が一つだけ言うなら朝日に会いたい、連絡はすぐ返事が来るわけじゃなく早くて3日遅くて2週間になるそれでも忙しい中連絡できることに感謝しないとと多くは送らないようにし、絵日記の様写真に一言添える程度の内容にしている、朝日も返事したい時に反応出来ると2人の仲では居心地が良かった

「でも独り言みたいじゃないですか」

「分かるよ、僕もそんな時あったな」

「良いですよね」

えーと不満そうに話すも杉野はどこか楽しそうだった。

森は大会に向けて体を絞りだらけていた体はもう無かった、だが最高な状態までもっていけるとギリギリまで奮闘する、大会まで後1週間。

ジムが閉まっても店長が使わせてくれた

「大分変わりましたね」

「さすが森くんだよ、格好良い体だね」

黙々と取り組み、ドリンクの差し入れに声をかける

「森さん水分もとってくださいね」

「ありがとうございます」

休憩を挟みながらトレーニングを続ける、もう遅くなるからと杉野は帰り、店長と森だけになった、23時になりそろそろ帰らないと子猫が心配すると今日はここまでにした

「大会出るって言ってくれて嬉しかったよ」

「いえ、感謝するのは僕の方です」

少し話し走って帰宅した、家に着くと玄関マットで寝ている子猫

「ただいま、遅くなってすみません」

しゃがみ撫でると尻尾を床に叩きつけ起き上がりソファに行った、森はすぐ汗を流し軽食を取った最近帰りが遅いからか子猫は寂しい思いをしてるんだろうと謝りながら撫でるとジャングルジムのよう肩に頭に登り居心地がいい場所を見つけ寛ぐ、こうなったら動かすのも悪いと体幹を整えゆっくりスクワットをするこれが中々、少しでもバランスを崩すと尻尾で邪魔をする

「君はいいトレーナーになれますよ」

「ぷいぷい」

寝る時間も考えゆっくり子猫を持ち上げ床に下ろした、汗を拭きシャツを着て子猫をゲージ入れると直ぐ脱走森から離れない家に帰るとずっとそばに居る、今は寝るのも一緒になった

朝、日課のランニング一つ変わったのは、ペット用のおんぶ紐を着け一緒に走るようになったこと、信号待ちの時は子供から猫ちゃんと声を掛けられるようになった、子猫が飽きたらランニングは終了、一緒に朝ご飯を食べ仕事に向かう、出勤時間には早いがトレーニングで使せてもらってる、でも今日は違う「いつも家の中じゃつまらないと思うので来ますか」と一緒に仕事場に向かあった

「大きくなったねー」

店長は久しぶりに会う親戚のよう鼻の下が伸びる、杉野は休みでこの事を知ったら怒るだろうなと秘密にした、子猫は皆のアイドルになり疲れを吹っ飛ばした、仕事が終わり残ってトレーニングすると子猫がよじ登る

「危ないよ」

「大丈夫ですいつもの事なので」

店長は納得するように頷いた、その日の帰りはしゃぎ疲れてリュックの中でぐっすり眠った

「お疲れ様です」

電車で帰ることにした。

そして大会前夜、朝日と久しぶりの電話をした

「明日頑張ってね応援しいてる」

「はい」

その後も送った写真のことやお互いの仕事の話しをした

「そうだ、店長に見せた時一発芸と言われたんですよ」

と頭に乗ってのトレーニングを見せたら、大笑いしてくれた、こうやって顔を見ながら話したのは久しぶりだ

「凄い、どうやって覚えたの」

「他にも乗れるかもしれないですね」

出来たら見せてねと笑いながら話した、朝日は更に逞しくなっていた、やっぱり顔を見て話すのが一番いい

「葉さんまたこうやって顔見ながら話したいです」

「うん私も」

画面に映り込み私も忘れないでと言わんばかりに画面を覆う、朝日は忘れてないよーと暫く話し、またねと電話を切った

「さ、僕達も寝ましょう」

子猫は満足したように返事をして一緒に寝た。

当日の朝、行ってきますと子猫に言うと珍しく甘えるよう足元に体を擦り寄せる

「頑張ってきますね、ありがとう」

「にー」

まるで応援して元気になるようパワーを分けてくれた様だった、森は遠足に行く子供のようワクワクさせながら家を出た、会場に着くと杉野が応援に来ていた

「店長は来れないので代わりに」

アイドルのライブにでも来たかのよう団扇にタオルとペンライト「来る場所間違ってませんか」

「そんな事ないです!、今日は金堂選手が出るんです」

杉野の推しのビルダーだ、森は納得し控え室に向かった、選手は着替え最終調整に入る、皆いい仕上がりだ、番号をつけ順に並ぶ会場の盛り上がりは好調だった、そこまで大きくはない大会にしては観客は満員だった

「森さんお久しぶりです」

大会で数回会い両者僅差で争うほどの中

「金堂さん、お久しぶりです」

「…今日は圧勝させてもらいます」

と森の仕上がりを見ながら言い、開始のアナウンスが会場に響いた。

ボディビルは、筋肉の大きさは勿論・形にバランスが見られる、でかければ良いというものでもない、森は12番金堂は5番、10人1グループとされ、決められえているポーズを取り、予選から決勝と決まり最後はフリーで自分の最高のポーズで競い合うと言った流れだ、その中で会場からは掛け声が響く、勿論杉野もお手製の団扇で応援した

「冷蔵庫ー!!」

「板チョコ!」

「肩がメロン!」

「鬼がいるよ」

など独特な応援があり会場の賑わいが更に増す。

森もギリギリまで鍛えた体を披露する、意外にも森はこの世界ではかなり人気があり知らない人は少ないだろう、森がポーズを取ると会場にウェーブがかかる。

最後自由型、得意なポーズで点を稼ぐ、そして順位が発表される、呼ばれるまでポーズを取る、観客も興奮する、5位まで呼ばれた、まだ森は呼ばれていない、杉野も手に力が入る

「4位…12番」

森が呼ばれた、会場は驚きで納得がいかない人も泣く人もいた、森は悔しい気持ちもあったが清々しい顔をしていた、優勝は5番金堂だった。

控え室に戻り、選手同士でコミュニケーションを取っていた、森も少し話しながら帰る準備をしていた

「森さん」

「金堂さん、おめでとうございます」

金堂は優勝したわりには嬉しそうではなかった、それどころか怒りが見えた

「ふざけないで下さい!」

金堂の怒鳴り声は部屋に響いた

「なんですかそれ、その程度で俺に勝てると、優勝できると思ったんですか!」

金堂は森をライバルとして常に意識していただから悔しかった、最後まで競えなかったこと森が悔しがっていない様子も全て

「俺のライバルならその程度で満足なんてしない!」

知らないところで自分を気にして戦ってここまで言ってくれる人はこの先居るだろうか、森は今までの自分を反省した

「金堂さんすみいません、次は僕が勝ちます」

森は黙って見つめた、その瞳は真っ直ぐで自信に溢れていた、金堂も見つめ返し手を握りあった。

会場の外には出待ちをする人達で溢れていた、金堂と一緒に出ると更に歓声が上がった、ファンの人と話したり写真を撮ったりしてやっと帰れる

「お疲れ様です」

帰りの駅のホームで杉野と会った、杉野は金堂とツーショットが撮れて満足そうだった

「惜しかったですね、あともう少しだったのに」

「いいんです、それより未完成でここまでいけただけで充分です」

「…なら良かっです」

電車で帰り、お互い最寄り駅に着いた

「明日休みですしゆっくりしてくださいね」

「はい、ありがとうございます、また」

先に森が下りた、ゆっくり家に向かい玄関を開けると走って子猫が迎えた

「ただいま」

抱えソファに腰を落とし今日の事を話した、段々体を倒し横になった子猫は森の顔に腹を乗せ喉を鳴らす、森もそのまま眠った。

次の日朝顔を洗い軽く走りシャワーを浴び朝日に報告した

[おはようございます、昨日の結果4位でした、でもお陰でやる気になりました]

と金堂のことも話しゆっくり返事を待った、今日はどうしようかと何気なく携帯をいじりLiNEのトークを見ていた

「あ、懐かしいな」

森は頻繁に連絡をする方じゃなかった、今は朝日にだけ連絡を取るからかトークの履歴の上の方に彼ら3人とのグループがあった、子猫も一緒に画面を見る

「彼らはとてもいい人なんです…友達です」

今何しているんだろうとまた会いたくなった。

癖とは怖い起床後いつも連絡がきていないか見てしまう、会わない・連絡をとらない、耐えられると思っていたが中々厳しいものなのだと初めて知った、彼女を想えば思うほど会いたくて声が聞きたくなる、いい歳したおじさんがと思うがいつだって誰だって乙女のよう恋患いになってもいいそれだけ相手の事を本気で好きという事なのだから、世間的には賛否両論だが互いが想い合っていれば年齢は関係ないのかもしれない。

楽器の修理も無事に終わったが犯人はまだ見つかっていない、佐東は店内と裏口の防犯カメラ機能の精度を良いのもに付け替えた

「これで全部元通りだな」

CDの棚はこれを機に置くのを辞めた

「オーナーのお気に入りだったのに良いんですか?」

時代は変わる、時代に合わせて生きていかないと置いていかれる

「いいんだよ」

少し寂しくもあるが新しい物を取り入れるチャンスと思えばいい、佐東は仕事を卒なくこなすそれが少し気になる「…何かあったんですか」桂木がさりげなく聞いた、佐東は上原との事を話した

「そうですか…2年間待つんですか」

「可笑しいよな、あんな年下に向こうが待ってるなんて分からないのにさ」

そう笑う佐東に胸が苦しくなった、その日の帰り道桂木は上原が働くケーキ屋に向かった

「いらっしゃいませ…あ」

「ちょっと言いいかしら」

桂木が上原を呼び出した、裏口まで行き桂木はここまで言うつもりはなかっただけど一度開いた口は止まらなかった

「平気なフリしてるけどずっと見てきたから分かる…元気の無い佐東さん見たくないの、思わせぶりな事しないで、本当に好きで待つって言うならちゃんと態度に出しなさいよ」

桂木は何度も振られたのに何でこんなに好きなのか分からなかったでも佐東の笑顔や真剣な顔や鼻歌を歌うところも全部愛おしく嫌いになんてなれなかった

「あんたより私のほうが佐東さんのこと知ってるし大好きだし」

年下に簡単に好きな人を奪われ自分が入る所なんてひとつも無いずっと彼の隣は自分だと思ってた、悔しくて悔しくて仕方がなかった、桂木は大粒の涙を流す、佐東のこと本気で好きだと伝わったでも上原も譲る気は無かった

「…好きになったのは佐東さんが初めてで恋愛には疎いかもしれませんだけど佐東さん以外好きになることはありません、私は何年でも待ちます」

上原の瞳は真っ直ぐで綺麗に輝いていた、桂木は納得せざるを得なかった、初めて会った時はなよなよして思ったことも口にできそうではなかった子が言えるようになるなんてと

「負けた」

「え?」

だから佐東はこの子の事好きなだ、涙を拭き認めた、ここで桂木の恋は終わったのだ

「頑張って、応援するもし泣かされたら私に言って」

「ありがとうございます、あのこれ」

桂木に手紙を託した、次の日それを佐東にちゃんと届けた

「佐東さん、楓ちゃんからです、後楓ちゃん泣かせたら許さないですよ」

いい笑顔だった、素敵な。

佐東は仕事を終え家でゆっくり手紙を読んだ

[佐東さんへ。本当はバレンタインにチョコをって思ってたんですが渡せなくて残念です、なので手紙を書きました、お母さんはまだ納得がいかないところがあるみたいで中々認めてはくれませんが私の気持ちは変わりません]

と綴られ、今まで話したかったこと学校の事や卒業入学友達沢山書いていた、佐東はくすっと笑ったり手紙に向けて話したりした

[一日一日長く感じます、けど佐東さんの事考えてたらあっという間に時間が経って、だから2年なんて直ぐだって思うんです、待っててくれますか、もし他に好きな人が出来たら私の事忘れてください]

書いていたら悲しくなったんだろうか一部紙がシワが寄り涙の跡が残っていた

[最後にすみません、大好きです]

何度も好きと言う言葉が込められていたが最後にハッキリと伝わる愛情、佐東は慣れない手紙を書いた、書き出しもどう書いたらいいか分からず何度も書き直す、完成しいたのは朝になってからだった。

「…あの私郵便局員ではないんですけど」

「っすまん!渡して欲しいんだ」

今度は佐東から手紙を託され上原に届ける

「いらっしゃいませ、りんさん」

締めの掃除中だった上原が桂木に気付き近付く

「返事だよ、あと伝言、バレンタインケーキ買いに行けなくてごめんねだって」

上原は嬉しそうにありがとうと返事をしじゃまたと店を出た、でもそこから手紙のやり取りもなくなった、その一通だけで充分だった。

2月もあと一週間で終わる時、大学時代の友人に呼び出された、久しぶりだなと話しながら一緒にお酒を飲んだ

「どうしたんだ急に」

「いやーお前には言っておこうかなって」

大学の時佐東の協力もあって付き合った人とこの度結婚することになったと報告した

「おめでとう」

2人で今日は飲むぞーと店を梯子した時温かい赤提灯が見えた

「どうした?」

「いや、なんか懐かしくて」

隣を歩くサラリーマンに物腰が柔らかい男性に楽しそうに笑う女性、その時フラッシュバックするようあの3人を思い出した、友人と店に入りその3人のことを話した

「おもしろそうじゃん」

「あぁいい人たちなんだ、今何してんのかな」

また会えるし連絡取ればいいかと朝まで飲んだ。

寒さも和らぎ日が昇る時間が増えた、晴れの日も続き今年は全体的に気温は高くなるらしい、まるで何かを歓迎するようだ。

中村は他の入院患者とコミュニケーションも取れて木村とも以前の様に話すことができ3月になり無事退院することが出来た、河瀬も泣いて喜び退院祝いをしてくれた、急に働くのは早いと私生活を送れるようになってからと2人で話した、ゆっくり散歩をして景色も子供たちの声もその母親の井戸端会議も今までは雑音で吐き気がしたが少し落ち着いたのか人の声も音も日常の一部に戻った素直に元気だな平和だなと嫌に聞こえなくなっていった。木村は中村の退院を聞き暫く中村の家に通い一緒に出掛けたり共に過ごす時間が増えた、互いの気持ちを知り両思いだと言うが付き合う選択は取らなかった、今のままで充分幸せだからだという。

佐東は、正月に店を荒らした犯人が捕まった未成年の男性3人グループだった彼らの動機は正月に面白いことがしたかったお金が欲しかったというはた迷惑なものだった、店も無事元に戻り新しい試みで前はCDを置いていた場所は曲をお試しで聞けるように変え音楽に触れてもらえるようにした初めは慣れなかったが次第に馴染んでいった、桂木は音楽活動が上手く行き色んなライブに呼ばれる様になった桂木が書く失恋ソングが女性の胸に届き共感を得たのが人気の理由だろう。佐東の女性関係は全て切った元々遊びだったと割り切っていた女性とはすんなり話が着いた上手くいくことを願っていると言ってくれる人もいた、が本気だった女性からは家に来られたり何件も電話があったり中々決着がつかなかったが何度も話してふざけないでと殴られたりもしたが無事和解できた、上原の誕生日は9月3日この日で二十歳になるまでの2年の辛抱だ、初めの手紙のやり取り以外送ることは互いしなかったがいつでも思い合っているのは感じた。上原も3月6日の卒業式が無事に終わり春休みに入った、上原は無事製菓の専門学校の入学が決まった家からは少し遠くなるからと一人暮らしをすることになった、初めは家から通うよう母から言われたが学業のためと説得したら渋々納得してくれた、2人とも届けない手紙を書き続けた、届けたらどれだけ良いかでも何枚書いても慣れない手紙も悪くはなかった、意外にも今のままで幸せだったのだ。

昭子は、振られた傷がまだ完治しないままの日々だった、それでも癒されたのはママやマスター2人がいなかったらここまで元気にはなれなかっただろう、たまに客として来店する金田の心境はなんなのか話を聞いたら別れたら友達に戻るだけですよと脳天気な発想で昭子は流石にドン引きした、でもこの人の性格では有り得るかと納得もできた金田の彼女いや妻は母子とも健康らしい、まだ式を挙げるほどのお金が無いため頑張って働くと昭子に相談していた、初めは相談なんて聞きたくなかった罰ゲームにしてはあまりにも酷だと思った、幸せそうに楽しそうに話す金田が嫌いになりそうだった、でもその笑顔が大好きなのも事実だった、金田が帰った後の孤独感は初めは慣れなかった、でももうこの人とは他人なんだと次第に思うようにした、これ以上傷つきたくなかったから、見方一つ考え方一つで大分気持ちが軽くなった、ママの提案で女の漢達で社員旅行元い傷心旅行へ行くことにした、3月のハワイ旅行人が少ないと思っていたが以外にも卒業旅行で学生が数組いた、昭子はもうそんな時期なのねと1人で歩く砂浜は昭子の心をそっと寄り添うよう優しく受け入れてくれた、今まで納得したとそうあろう作っていたんだと思い知った昭子は海に向かって叫んだ、心がスッキリした、相手が居ることが全てではない自分が自分らしく居られることが幸せなんだと、昭子は今の自分を抱きしめた、これもこれでいいと、意外にも今が幸せに思えた。

森は、少ない連絡を取り合い仕事も何も不満はなかった、子猫も出会った頃に比べたら大きくなり部屋で暴れ回るには狭いかもしれないそれに朝日が戻ってきた時この部屋も朝日の家も小さいかもと2人で話し合った結果新しい家に引っ越すことに決めた、森が何件か物件を見せ2人で決め先に森の荷物共引っ越しを済ました子猫は新しい家にテンションも高かった、森は夏にある大会に向けまた1から鍛え直し今度は優勝を狙う、杉野は森のことは完全に吹っ切れ新しい恋に仕事に奮闘中だ、杉野が最近ハマっているのはライブで人気の失恋シンガー、実は桂木のグループなのだ、でもこの歌のお陰で気持ちも晴れ今まで通り接することが出来た。朝日は野生の動物が商品として狙われる被害が増えてと罠を撤去したり怪我をして群れから離れてしまった子達の手当てし群れに返せるよう奮闘していた、互い息抜きにも癒しにもなれば良いと電話をして短い時間の中沢山話した、会って触れて話して近くに感じたい正直に言えるがいつか会うため帰ってきた時の楽しみに取っておこうとそれに今のままでも充分幸せだと、生きてこうやって話しが出来るだけで充分だった。


4人がここまで“らしさ”が戻ってきたこと、それは1人では決してできなかっただろう、誰かがいてその誰かが支えて否定せず見守ってくれたからどんな生い立ちでもどんな人間でも必ず誰かは自分のことを愛してくれる人がいる、それだけで怖くなくなっていく、改めてそれを知る事ができた4人だった。

段々春に近付き、3月も終わりを迎えていた、中村は少しづつ仕事が出来るようになった、河瀬が社長を務める障害の子供たちが遊べる玩具や勉強道具などの制作会社に入社し共に働くようになった、皆今まで通り仕事に励んだ。

日は過ぎ桜が実になり今年は早い開花とニュースが賑わいだ、昭子はお店の子とお客さんで花見をしようと約束をした、森は桜が咲いたら写真を送ると約束をした、佐東の店のBGMは春ソングで一気に小春日和だ、中村は実家に帰った木村に美味しい野菜が出来たら送ると約束した、皆それぞれの楽しみで互いのことを忘れかけていたがある日思い出すきっかけができたのだ、偶然だったのか必然だったのか。

4月初めの週のこと、佐東は音楽仲間と飲みに行ったことだ、2軒目どうしようかと話した時佐東に口からいい店があると向かった「っしゃーしゃーませー」と癖のある店主の掛け声とともに懐かしさもあった、いい店だなと話し飲み会を楽しんだ、店主は何も言わなかった、閉店まで飲み帰ろうとした時「懐かしいな、元気かい?」と帰る佐東に声をかけ、「はい」と軽く返事をして店を出ていった。

昭子も同じ週のこと、ママと静と3人で飲みに行こうと話しておりお店を探していたら静がここどうですかと言った店が癖のある店主のところだった昭子は直ぐに行きたいと言った、「っしゃーしゃーませー」やっぱり癖が強い、昭子は辺りを見渡したが居ない少し寂しくなったテーブルに座り乾杯をした、ご飯も美味しく2人とも満足気だった、会計を済ました時昭子から「覚えてないと思うんですが」と他3人のことを聞いた「来てないな、けど」佐東が来たことを話した「佐東さんが」昭子は少し嬉しくなった、また皆に会える気がしたのだ。

森は休日でペットショップに居た、新しい玩具におやつを買い昼食をどうしようか悩んでいたら金堂とたまたま出会い一緒に食べることになった、「ここオススメなんです」と昼でも目立つ赤提灯「っしゃーしゃーませー」やっぱり何度聞いても癖があるな、ゴツイ男2人は場所を取りテーブル席に座り美味しい昼食を摂った、「ご馳走様でした」と割り勘で勘定をし店を出た「相変わらずデカイな」と声を掛け森は振り返った「忘れたのかと思いました」店主は小さく笑い、2人が来たことを話し「また4人で来い、アンタら以外とお似合いだよ」と森は誘うのも照れ臭く気が向いたらと答え帰って行った。

中村は入社祝いと河瀬に連れられこの店に来た「っしゃーしゃーませー」河瀬は初めて店主の癖挨拶に突っ込んだ、2人で乾杯し盛り上がる河瀬がトイレに行ったとき店主がお皿を下げに中村に話し掛けた「アンタら1日遅れで来るから笑っちまったよ仲良いのか分かんねぇな」と笑いながら厨房に行った、中村は携帯を開きLiNEを見た去年の9月から止まったままのトークでもなんて話せばいいか中村は携帯を閉じた、河瀬がトイレから戻るとどうした?と聞いた彼らの事を話すと「考えてんのはお前だけじゃないと思うしまた会えるよ」と笑ってくれた、その日の夜中村は携帯を眺めていた、また会えたらいいなと。

大人になり誰かに会いたいと思うことは減っていくように感じる、お互い仕事にプライベートにと時間が合わないことが増えていく疎遠になる人も多いだろう、連絡をとっても会う日程が中々合わなかったりして結局会わずにいて知らないうちに結婚していたり入院していたり以外な事が終わってから知るよくあるパターンだ。

結局誰も連絡をすることはないまま4月も半ばになった、何度も送ろうと試みたがその一歩が踏み込めなかった。

中村は慣れない仕事だったが楽しく働けている

「で、その3人には飲みに誘ったのか?」と聞くが「まだ」と答えると「言っといた方が良かったって後悔だけはするなよ」と背中を押してくれた。

昭子も連絡をしたいがどう送ればいいかママに相談していた「久しぶりーからじゃない?」と言ってくれたが昭子は初恋でもしているのかと思うほどその1文送るのに躊躇していたママはそんなに慌てなくても大丈夫よと励ました。

佐東と森は連絡をすると言うより店に直接行き居るかどうか見に行くことが多かった店主は呆れたように「言わなきゃ伝わらん」と一喝した。

周りが呆れてでも何処か羨ましく思うこの4人が早く出会う事を祈った、でもここまで会わないなんて以外と世間は狭いのかもしれない。

桜がチラホラと咲き花見をする人も増え、昭子も約束通り花見をし森は8分咲きだが写真を送った、花見でどの店もいっぱいだったもう少し人が少なくなってから連絡をしようと後回しにした、4月も後半今年は桜が綺麗に咲き飲食店はどこも賑わった、中村は定時で帰る素晴らしさを感じながら近くの公園で缶ビールを飲み一人花見をした。佐東はたまたま休みで家にいるのも勿体ないなと何気なく外に出て適当に店に入るも満席で何件も探した家に帰ればいいが何だか今日はこのまま帰ってはいけない気がしたもしかしたらと感じた。昭子はシフトミスで人が多いからと急遽休みになったお店に向かう途中だったのもあり今から帰るのも面倒だと、あの店に向かった「っしゃーしゃーませー」。森は仕事が終わり帰ろうとした時駅前の綺麗な桜に目を奪われ、どこかで飲みたくなり店を探した。

「カウンター空いてますか?」と昭子が聞くと店主は「今は空いてないからテーブルに座ってくれ」と言った。

缶ビールが無くなりコンビニで買うのも何だかなと帰ろうとした時あるカップルが揉めていた「あの居酒屋嫌って言ったじゃん」と彼氏は困っていた、中村は映画を見るようにカップルの喧嘩を見ていた「分かったから君の行きたいとこ行こ」彼氏が渋々折れた彼女は別人のよういい笑顔になって上映が終了した「大変だなー」と刺激的なものを見たせいかもう一杯飲みたくなり、あの店に行ってみた。

森も近くの店を探したがどこも満席だった、赤提灯には不思議な力でもあるのか森はあの店を思い出し少し早足になった。

その頃佐東は一足先に店に着いていた「っしゃーしゃーませー」と開けカウンターの空きを確認していたら店主が席を案内してくれた

「あ」

「あ!」

半月ぶりなのに何年も会っていなかったように感じた

「お久しぶり、佐東さん」

「久しぶりです、あっきーさん」

少し照れくさかった。

次に店に来たのは森だった、恐る恐る来店し見渡した「っしゃーしゃーませー」と森を見るなり店主が嬉しそうに案内した

「あ」

「「あ」」

森が座る前にまた店の戸が開いた「っしゃーしゃーませー」3人はまさかと集中して見た

「あ…」

「「「あ!」」」

店主は笑顔で相席でと言った、4人が集まったこれは偶然か奇跡か、もうどっちでもいい出会ったことが嬉しかったが誰から話すか顔色を伺うばかりだった、バイトが注文を聞いた、4人は「ビール」と佐東が言うと中村と昭子が「俺も」「私も」森は「レモンサワー」と言ったあと昭子から「何食べる?」とその後は自然と口が開いたお酒と食事が届いたら今まで会っていなかったのが嘘のよう会話が弾んだ

「元気そうでよかったわ」

「…そうですね」

「あっきーさんも」

「本当に、良かったです」

などと安否を確認しあったが細かいことは話せなかったなんだか初めて会った時みたいだなと互い思った、でも会話が途切れることは無かった、店もそろそろ閉店時間に近付いた、帰ろうかとなり割り勘で勘定を済ませ荷物を持った

「アンタら楽しそうに話してんのやっぱ良いな、俺も昔の友人に連絡をとったよ」と言い店主が外まで見送ってくれた、自分達の何気ない行動が誰かを変えることが新鮮で互いの顔を見渡しクスリと笑った、彼らは昔からの友人ではないそれでも心から気軽に笑えるほどの友になれる、駅までの帰り道互いに何か想う事があったのか店主が言ったことが気になり誰も話さなかった、昭子は立ち止まり「私皆といたときに会った人と付き合ったけど浮気され別れたの」と店では話せなかったこれまでを話し始めた

「何で皆に話さなかったのかしら」と泣きながら笑った、次に佐東が話した、3人は顔を合わせ本当に佐東さん?と確認した「オレも変わったんだよ」と拗ねるよう話した、中村が「ここの公園でしたよね」と自分たちの本当のことを話した公園に着いた、森と中村は近くのコンビニでお酒何本か買った「森さん俺いいことは何も無くて話しても気分を悪くするだけで」と先に相談した「中村くんが話したくないことなら話さなくても良いんじゃないかなと」と中村は安心したように2人の元に着いて、あの、と話し始めた、話を聞き終わった昭子は思わず中村を抱きしめた「もう言ってくれたらワタシ達がそいつぶん殴ったのに」と言った佐東は「いい同期だな」と言って森は優しく頭を撫でてくれた、森も話した、話す時は黙って聞く3人皆話し終わると佐東が「たった半年なのに濃いっすね」と笑いながら本当にねとその後会話がなくベンチに座り空を見上げた

「ずっと連絡したかったけど中々出来なかったの、もっと早くすればよかった」

昭子が囁くように言った

「これからは好きな時にすれば良いじゃないですか」と佐東が言った時3人は肩が軽くなったように返事をした

もう0時を超えたが帰りたくなかったけど明日はきてしまうから仕方なかった、森が「また会いましょ今度は連絡をして」と言いながら立ち上がった中村も「そうですね」と3人共立ち上がった

昭子は「色々あったの本当に、でも意外とこう言う人生も悪くないのしれないわね」

互いどんな人生を送ってどんな選択をしても過去は変えられないし変えたらきっと今は無かった、そう考えたら今までの自分を嫌うのはやめて優しく抱き締めてあげたい、信じられないと思うけど自分を受け入れてくれる人がいるから安心してと言いたい。

「僕も皆さんに会えて良かったです、これからも仲良くしてください」と照れくさそうに森が笑った、中村と佐東は顔を合わせ笑いながら「俺も」と言った。


帰りの電車は今までで一番名残惜しくて楽しくて不思議な気持ちになった、各自最寄り駅に着くと自然と携帯を開いきLiNEを送った

中村が[また飲みに行きたいです、今日はありがとうございました]

佐東が[今度はどっか4人で出掛けませんか?、今日はありがとう]

森が[皆色ん事があって話しそびれた事もあってまた聞いてください、今日はありがとうございました]

昭子が[皆に会えて良かった、今度は連絡して遊びましょ、本当に今日はありがとう]

と同時に送った瞬間笑いが止まらなかった、これも幸せの一つかもしれない、帰り道連絡を取りながら立ち止まって返事をして気付けば家に着いていて寝るその時まで彼らの青春は続いた。

布団に入り互い胸が温かかった

(ずっと苦しかったけど、あの人達に河瀬に会えて木村さんを好きになって良かった、みんなありがとう、これが自分でこんな自分でいいんだ。)

(最低な奴だって自分のこと思ってたけど楓ちゃんと出会って変われて感謝しかないな、桂木にも何度も助けてもらったから今度何かお礼しないとな、あの人たちにも、自分自身を好きになるなんて思わなかったこんな自分でもいいんだな。)

(今まで人に興味がなかったんだて思い知ったな、葉さんが救ってくれたんだ彼女に出会わなかったらって考えると怖いな、店長も杉野さんにも支えられて皆にも、こんな自分を好きになってくれる人がいる、僕今の自分で良いんですね。)

(自分が男運が悪いって知ってたけど無理に合わせていたせいだったのかもワタシらしくって大事なのね、ママにも皆に感謝しないと、今のワタシ好きってなんだかハッキリ言えるこれが自分で良かった。)


瞳を閉じても真っ暗な世界じゃないようで互い幸せで夢心地まま眠りについた、明日が楽しみだった。

どんな形でもいい、歪でも笑われてもそれが幸せだと自分を認めてあげることが大事でどんな結果でも過程が結構大事だったり、なんて綺麗事と言われるだろう、でも何だかんだ言って人それぞれで正解なんて何も無いだから何を言っても良いのかもしれない、ただ彼らは少なくても幸福に感じた事は事実だ。

彼らはこれからも会い旅行にも行ったり親友と呼べるほどの仲になった、私生活も充実で周りが見たら羨ましいほどだった。

これから先の彼らは自分が感じる幸せを自然と大切に出来た、何年経とうか先の彼らならきっと大丈夫だろうどんな事があっても互いに手を取り合うだろう、彼らのように前を向いて歩こう、細かいことなんて気にしないで好きな事ができる明日へ歩こう、そう思った。

どんな自分だってこれが自分で“こんな”を嫌いになるのはもうやめよう、彼らのように、どんな自分でもいいと、確かに難しいかもしれない中々できる事じゃないかもしれないでもゆっくり自分のペースでやっていけばいい。

自分を分かってくれる人は1人はいるだろうならその1人に会うその時までの楽しみに前を向いて歩いて行けばいい、時には立ち止まって深呼吸でもしながら。

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