第一章前編/その後の話 ナナ・グリーゼン
FALLENHEVEN 番外編
ナナ・グリーゼン 「“存在証明”の操り人形」
「何故、あのようなことをした」
「……お姉さまは?」
「ナナ・グリーゼン! 私たちは君に対し五代目血の眼監視任務を命じた。その際、アキラが四代目血の眼と同一人物だと確定しない限り、行っていい処置は特例四〇五のみとしていたはずだ!」
「お姉さまのことあんなに雑に扱うくせに! 酷く扱うくせに! 私が居ると邪魔なんでしょ? お姉さまが使えないから!」
「……話にならない。この続きは後日だ、処罰についても追って連絡する」
涙が、止まらなかった。お姉さまが心配で心配で。あんなのもこんなのもどうでもよかった。心が痛くて痛くて、たまらなかった。
また、私が私でなくなる。
分岐して擦り減った感情を抱えて、それでもお姉さまが居れば……。
「お姉さま! お姉さま……!」
偽りの如意輪観音、それがお姉さまの呼ばれる二つ名。
お姉さまはグリーズにとっての奥の手であり、私にとっての唯一無二の大切な人。
「お姉さま、ナナ・グリーゼンが帰りました! 戻ってきましたよ!」
折角あの場所からお姉さまを救い出せたのに、今度はこんな牢に閉じ込められている。
重い、鎖の音が響く。
「今日もお食事を摂られなかったのですね……。私が居ない間、酷いことはされませんでしたか。お姉さま……」
返事はない。これも、いつものことだった。
「お姉さま、今、ナナがお身体を綺麗に」
お湯で温めたタオルを体に当てると、酷く脆いその体が喚く。鎖の音が、また鳴る。
「っ……お姉さま、ごめんなさい。傷むのですね、感覚が苦しいのですね。お姉さま、私には何もできません。お姉さまの傍にずっといることすらできません」
こんなに泣いても、お姉さまの傷は癒えない。
「お姉さま」
私が泣いても、もう前世のように慰めてはくれない。
「お姉さま」
私が壊れても、もう私のことを認識さえしてもらえない。
「私は、どうすればよかったのでしょうか」
私が壊れたら、お姉さまを守る人は誰もいなくなる。強く握った抜身のナイフを太ももに突き刺して、深呼吸した。
「……大丈夫です。ナナは大丈夫ですよ、お姉さま。ずっとお姉さまをお守りします」
お姉さまの体を拭って、髪を溶かす。
私は治癒魔法が使えない。使えても、そもそもお姉さまには効かない。それでも少しでも休まるようにヴェートで買ってきた薬を塗って、包帯を巻く。
「ねぇ、お姉さま。いつか、ナナのことを思い出してくださいね。お姉さま、私は何時だってお待ちしています。ずっとずっと」
私だけの能力、実在しないナナを使い続けていつかダメになっても、きっとお姉さまが救ってくれる。できるだけずっと、ずっとお姉さまを守らないと、守らないといけない。
私たち以外の全てから。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
あと2話ほど番外編が続きますがよければお付き合いください!
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