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【改稿前】Fallen Heaven  作者: 甘宮るい
Fallen Heaven Another story ♭1
44/52

第一章前編/その後の話 ナナ・グリーゼン


FALLENHEVEN 番外編 

ナナ・グリーゼン 「“存在証明”の操り人形」





「何故、あのようなことをした」

「……お姉さまは?」

「ナナ・グリーゼン! 私たちは君に対し五代目血の眼監視任務を命じた。その際、アキラが四代目血の眼と同一人物だと確定しない限り、行っていい処置は特例四〇五のみとしていたはずだ!」

「お姉さまのことあんなに雑に扱うくせに! 酷く扱うくせに! 私が居ると邪魔なんでしょ? お姉さまが使えないから!」

「……話にならない。この続きは後日だ、処罰についても追って連絡する」


 涙が、止まらなかった。お姉さまが心配で心配で。あんなのもこんなのもどうでもよかった。心が痛くて痛くて、たまらなかった。

 また、私が私でなくなる。

 分岐して擦り減った感情を抱えて、それでもお姉さまが居れば……。





「お姉さま! お姉さま……!」


 偽りの如意輪観音、それがお姉さまの呼ばれる二つ名。

 お姉さまはグリーズにとっての奥の手であり、私にとっての唯一無二の大切な人。


「お姉さま、ナナ・グリーゼンが帰りました! 戻ってきましたよ!」


 折角あの場所からお姉さまを救い出せたのに、今度はこんな牢に閉じ込められている。

 重い、鎖の音が響く。


「今日もお食事を摂られなかったのですね……。私が居ない間、酷いことはされませんでしたか。お姉さま……」


 返事はない。これも、いつものことだった。


「お姉さま、今、ナナがお身体を綺麗に」


 お湯で温めたタオルを体に当てると、酷く脆いその体が喚く。鎖の音が、また鳴る。


「っ……お姉さま、ごめんなさい。傷むのですね、感覚が苦しいのですね。お姉さま、私には何もできません。お姉さまの傍にずっといることすらできません」


 こんなに泣いても、お姉さまの傷は癒えない。


「お姉さま」


 私が泣いても、もう前世のように慰めてはくれない。


「お姉さま」


 私が壊れても、もう私のことを認識さえしてもらえない。


「私は、どうすればよかったのでしょうか」


 私が壊れたら、お姉さまを守る人は誰もいなくなる。強く握った抜身のナイフを太ももに突き刺して、深呼吸した。


「……大丈夫です。ナナは大丈夫ですよ、お姉さま。ずっとお姉さまをお守りします」


 お姉さまの体を拭って、髪を溶かす。

 私は治癒魔法が使えない。使えても、そもそもお姉さまには効かない。それでも少しでも休まるようにヴェートで買ってきた薬を塗って、包帯を巻く。


「ねぇ、お姉さま。いつか、ナナのことを思い出してくださいね。お姉さま、私は何時だってお待ちしています。ずっとずっと」


 私だけの能力、実在しないナナを使い続けていつかダメになっても、きっとお姉さまが救ってくれる。できるだけずっと、ずっとお姉さまを守らないと、守らないといけない。


 私たち以外の全てから。






ここまで読んでいただきありがとうございます。

あと2話ほど番外編が続きますがよければお付き合いください!


「続きが読みたい」「面白い!良いな!」と思っていただけましたら、

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