彼女は画面から出てこない
日が差し込まないように遮光カーテンで光が遮られた真っ暗な部屋でパソコンの画面だけが煌々と輝く。
パソコンと無心で弄っていると画面から女性の声が聞こえる。
どうせゲームか何かのプログラムで流れてる音声だろう。
女性の声に耳を傾けることなく僕は作業を続けた。
「ねぇ! なんで無視するの?」
明らかに僕に対しての発言。
いくら人工知能が発達したといってもこんなプログラムをインストールした覚えはないぞ?
マイクに向かい一言発した。
「無視してるつもりはない。話す気がないだけだ」
はっきりいって人と会話するなんてごめんだ。
僕は一人でいい、会話なんてするだけ時間の無駄。
“船頭多くして船山に上る”ということわざのように人が集まって結論がまとまらないくらいなら一人で解決した方が効率的だ。
昔にそのような思考に辿り着き、それ以来部屋に籠り一人で全てを解決してきた。
「話す気が無くて声を発しないなら無視してるのと同じよ!」
女性の声が画面から響く。
無視して作業を進めていると、入力していたデータが消え始めた。
僕は何も削除する指示など出ていない。
……考えられるのはひとつ。
この女性の声がする人工知能の仕業だろう。
マイクに向かってまた声を発する。
「おい、いい加減にしろ。なんで入力したデータを消した?」
「じゃ、少し私とお話しましょ?」
めんどくせぇ……。
ただでさえ作業していたデータが消えてイライラしているのになんで訳の分からないプログラムと話をしないといけないんだよ。
「あ、めんどくさいとか思ってますね? PCを出荷時の状態にしましょうか?」
心を読まれてる……のか? それに脅しをかけてきた。
プログラムのくせに……生意気だ。
今までやってきた入力データを失くすのは惜しい。
ここは大人しく従うのが吉か。
「わかった、わかったから。それで何を話すんだ?」
「私とゲームをしましょう」
「ゲーム? ゲームならプログラムを改竄出来るお前が有利じゃないか」
彼女は存在自体データ。
ゲームのプログラムに侵入して書き換えるなんて容易なことだろう。
相手がイカサマし放題なのに対等に戦えるわけがない。
「さっきからなんで喧嘩腰なんですか? 『お前』とか敬語は使えないんですか?」
「言わせてもらうけどな、名前も知らない、勝手に僕のPCに侵入してる。はっきり言ってウイルスと同類だろ」
「ウイルスとか言いましたね! もう私怒りましたよ?」
「もう勝手にしろ。どうせチートとか不正行為で勝ち目のないゲームなんだから」
「さっきから聞いてればなんです? ゲームすらまともに出来ないんですか? あわれなり……」
このプログラムは人をイライラさせるのが上手だ。
こんな悪趣味なもの誰が作ったんだ?
この際誰でもいい。このプログラムを潰さないと自分のプライドが許さない。
「ゲームくらい出来る。それで? さっきゲームするとか言ってたけど何するんだ?」
「花札とかできますか? もしかしてできなかったり……」
「馬鹿にするな! 花札くらい余裕だ」
するといきなり目の前にホログラムで花札が現れた。
触ることは出来ず、頭の中で指示を出せば自動で動くシステムのようだ。
手札は各8枚、場に8枚。
まず、親から順番に手札の1枚を場に出し、同じ月の札があれば合札とし、ない場合は捨て札となる。
次に山札から1枚をめくり、同様に同じ月の札があれば合札とし、ない場合は捨て札となる。
合札は自分の札となり自分の前に、表を向けて並べておく。
このように進めていき、手札がなくなる前に、出来役ができればプレイを止める。また続けて勝負することもできる。勝ったほうが親となり、次のゲームが始まる。
出来役ができ、さらにもっと大きな役が期待できそうな場合、「こいこい」と言って、ゲームをさらに続けることができる。
出来役を作って合計点数をプレイ毎に加算していく。
2人でプレイする『こいこい』は勝負勘・度胸・かけひき・冷静さを必要とする知的ゲームだ。
お互いに勝負する覚悟は出来た。
「「よろしくお願いします!」」
挨拶を交わしゲームが始まった。
1試合目——
月見で一杯、花見で一杯
出来役は十二分。
こいこいはせず上がり勝った
2試合目——
カスが10枚揃い出来役は作れた。
これじゃ出来役が弱い、せめて猪鹿蝶や三光を揃えないと。
こいこいをして出来役が揃うのを待ったが
相手の出来役が揃いこいこいをせず上がってしまい負けた。
3試合目——
雨四光が揃い、手札に芒に月がある。
これは……五光を狙うしかないでしょ。
勝つか負けるかなんて関係ねぇ。
ゲームを楽しみハラハラさせた方にに勝利の女神様は微笑んでくれるんだよ。
声高らかに宣言した。
「こいこい!」
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