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同級生のあいつは不良? それでも魔法陣作成手伝います。だって顔も声も好みなんだもん

作者: 銀青猫

内容を見直し、追記・変更しています(2021.9.29)

二人の心情が伝われば、嬉しいです。

 放課後、わたし、リュシー・コルネイユはいつものように図書室に向かっていた。


 廊下はあいかわらず閑散としているわね。図書室は学園の隅だから、用事がある人以外は、ほとんど通らないものね。

 部活の生徒の声がときどき外から聞こえてくるのも、いつものこと。



 差し込む日差しに、廊下の埃がきらきらと舞っている。

 あら、誰かいるわ。窓にもたれている。


 同じクラスのあいつ、ユーグ・マイヤールね。

 イケメンだけどちょっと怖いって言われている男子。


 声がいいのよ。ちょっと高めのバリトンで少し掠れてる。わたし好みドンピシャ。授業であたって答えているときなんか、ときめいちゃう。

 顔も好みのタイプなのよね。基本整っているんだけど、ちょっと野生味があるの。だから崩した制服もよく似合っている。


 いつも投げやりでつまんなそうな表情をしているから怖そうに見えるけれど、なんとなくぶっきらぼうなだけっていう気もしてる。

 なんとなくよ、なんとなく。普段は無理だけど、ユーグが授業で立って返答しているときは、こっそり見つめているもの。ずっと見ていたら怖い人ではないってわかるわ。

 そんなふうに感じる人がわたし以外にもいるみたいで、実は人気があるのよね。表に出てこないだけで。


 廊下の先にいるユーグは、一枚の絵のようだった。窓からの光と廊下の暗さのその間にいる長身の男子。

 ツンツンと立てた色の薄い髪は、もたれた窓からの日差しにさらに色が薄く感じられる。足元にカバン。襟元をかなり緩め、片手は制服のポケットに突っ込んでいる。



 あと数歩ですれ違うというとき、下を向いていたユーグがちらりとわたしを見て、また下を向いた。

「おい、今、暇か?」


 ちょっと掠れた低めの、男子の声。

 反則。急に声をかけるなんて。



「なんか用?」

 ドキドキを顔にも声にも出さないように気をつけて、わたしは返事をした。

 同じクラスだし、なんなら最高学年の今までずっと一緒だし。でも、二人の繋がりなんて、それだけなのよね。

 三年間、話したのはたぶん数回くらい。

 距離感、大事。



 ユーグは、視線をあげて、わたしの肩あたりを見てる。

「なぁ、これからつきあってくれないか?」

 ポケットから出した手が、頭を掻いた。かっこいい顔はまた横を向いてしまった。


 あ、残念。珍しくこんなに近いのに、横顔。

 いや、今はそれじゃない。ショックすぎてうっかりすっ飛ぶところだったわ。


 つきあってくれないかですって? つきあう?

 えーとー、わたしとおつきあいしたいと言っているのだろうか。

 こっそり眺めているのが見つかった? 声と顔推しがバレた? ユーグもわたしが気になる?

 胸の鼓動がさらに高まった。


 休みが多くて、放課後も付き合いが悪いから仲のいい友達もいなくて、不良らしいって噂されている、ユーグ。町の素行が悪い者たちとつきあっているという噂まである。

 そんなことはどうだっていいんだよね、わたし。噂は噂なんだし、学園で悪いことをしたわけじゃないし。

 でも、いままで一方的に鑑賞していたのがつきあうとなると、心の準備が……。


「ちょっと教えて欲しいんだ、勉強」

 あ、違った。早とちり。


 そうだよね、ほとんど話したことないしね。

 どうすんのよ、この胸の高鳴り。一瞬で戻ったけどさ。


 勉強かぁ。ユーグのイメージと真逆だけど。

 追試とかレポートとかなのかな。そういえば、一昨日の魔法学のテストのときにいなかったな。



「図書室だったらいいよ。これから行くところだったし」


 わたしはユーグと一緒に、図書室へと向かった。


「ところで、なんでこんなとこにいたの?」

「おまえのこと、待ってた」


 おう、ご指名でしたか。よく、わたしの放課後の行動知っていたよね。

 なんで? という疑問はなんとなく恥ずかしくて口にできなかった。



 * * *



 図書室で過ごすのは、わたしの趣味だ。

 本を読んでいる時間は至福だった。雑読のわたしは、なんでも読むのよね。


「本ばっかり読んでないで、少しはお友達と遊んだら?」

 母や兄にはそう言われる。自慢じゃないけど、友達いません。


 学園に入学したときから休み時間は本を読んでいたら、いつのまにか女子のグループに入り損ねていました。別にいいけど。



 あ、幼馴染の子は一人いたね。

 彼女のアドバイスでわたしは女子やれてます、たぶん。


 服やアクセサリーの流行りは全部彼女情報なの。一緒に買い物につきあってくれる。

 こんなことをすると女子から嫌われるからしない方がいいということも、彼女が教えてくれた。おかげで、クラスで浮いてはいるが嫌われてはいない状態。


 クラスの人にノートを貸してくれとときどき言われるから、嫌われてはいないと信じたい。うん、きっと大丈夫。



 クラスの子とあまり話をしないから、放課後は毎日図書室で本を読んでいるんだよね。

 幼馴染は隣のクラスなので、彼女はそのクラスの友達と一緒だし。

 卒業までに図書室の本を一冊でも多く読むのが、わたしの目標。




 横を歩くユーグを、わたしは横目で眺めた。わたしより背が高いから、視線を合わせようと思うと見上げる。

 彼は、歩きながらも落ち着かない。カバンを持っていない方の手をポケットに入れたり出したり、そわそわとしているのは、なんでだろう。


 ユーグもクラスでちょっと浮いている存在。いつも一人だ。

 動きも話し方も、少しだけどぶっきらぼう。それが周りと距離をとっているようにも感じるのよね。


 攻撃魔法が抜群にうまくて、魔法の授業では目立ってる。

 座学はどうなんだろう。上位の発表で名前を見たことはないけれど、追試の掲示にも見かけないわね。


 人のこと言えないよね。わたしだって、クラスではほぼ一人だ。



 なんでわたしに声をかけたんだろう。ご指名なんて。


 まぁ、わたし、座学の方はどの教科もそこそこの成績だけど。うん、謙遜しない。どの教科でもトップ五人の中に入ってる。

 魔法の実技はそんなに上手じゃないんだけれどね。成績で言ったら平均くらい。でも、魔法論では、いつもトップよ。


 頭でっかちなのよね、わたし。

 うん、わかってる。




 * * * * *




 ユーグと二人で入った図書室は、閑散としていた。普段の状態ね。

 今は間近な試験もない。部活のないみんなは、放課後は遊びに行ったりしているのだろう。


 いつもこの図書室に来るたびに、わくわくするの。

 入り口のあたりは吹き抜けになっていて、本で溢れた一階と二階が見える。壁一面だけでなく、いくつもの棚にびっしりと詰め込まれた本の数々。生徒だけでなく教職員も使うため、一般教養から専門書まで揃っている。棚に並びきれないものは、地下の保管庫に仕舞われている。

 先人の知識が詰まったそれらに、わたしは圧倒されるの。



 ユーグは、二階の奥まで行った。目立たない席。図書管の中でも、さらに人が来ないところね。棚が邪魔で、通路の奥まで来ないとこの席は見えないわ。


 対面して六つ椅子が並べられた机は、窓で切り取られた壁に短い縁がつけられている。採光のための窓は本を痛めないために大きくはないけれど、内庭を見下ろすことができる。今は緑がきれいな季節だ。

 わたしも好きなのよね、この席。静かで人目につかなくて。


 わたしはユーグの隣に座った。教えて欲しいって言っていたし。

 わたしが座ったら、彼がぴくっとわたしと反対側にのけぞったけれど、わたしは無視した。


 なんなのよ、いったい。同級生らしく、こいつのこと男子だとあえて意識しないフリして隣に座ったのに。



「で、何を教えて欲しいの? マイヤールくん」

「ユーグ」

 ぼそっと呟いた声は、ああ、本当にわたし好み。低すぎず高すぎす、ちょっと掠れている。


「へ?」

「ユーグでいい。俺もリュシーって呼んでいいか?」

「いいよ、ユーグ」


 心の中だけでたまにしていたユーグ呼び。いつもはあいつだったけど。

 同級生に一方的にドキドキするのが許せなくて、頭の中でなんとなくあいつ呼びになっちゃってたのね。

 それでも、気持ちが高まったときにはユーグって呼んじゃってた。もちろん頭の中。まさか本当にそう呼ぶことになるなんて。あえて気楽に聞こえるように言うのが、なんて難しいの。

 それに、この声でわたしの名前が呼び捨てで呼ばれるなんて。すごくドキドキする。まさか赤くなってないよね。



 先を促すように黙ったわたしに、ユーグは声をかけた目的を話した。

「魔法陣の書き方を教えて欲しい。

 この間の魔法学の試験、俺、受けられなくてさ。で、レポート出せって言われたんだけど。

 それがこれ」


 彼が出した用紙には、『新しい魔法陣を一つ作れ』と書いてあった。



 これは、難問ね。


 最終学年のわたしたちにとっては、魔法陣を組むのはある程度できる。すでに魔法陣にいろいろと行わせるのも実践済みだ。


 だけど魔法陣はすでに日常的に使われているのよね。

 魔法が使えない人も魔石で魔法陣を発動させられるから、卓上照明や簡易湯沸かし器、移動式調理器、手元暖房機、保冷庫、それこそ生活に根ざしている。

 それで新しいものって言われると、すごく変わったものしかないのではないかしら。


 しかも、何かに特化した魔法陣を作るためには、いろんな知識が必要になるわ。

 基礎だけでなく、それをどのように応用していくのかも問われているわよね。



「俺、魔法陣、苦手なんだよねー。

 いつも感覚でやってたんだけど、今回はそれじゃ無理でさ」

 そう言いながら、頭を掻いている。


「でも成績は悪くないでしょう?」

「全部、勘。数学も、勘で公式に当てはめればどうにかなる。史学も、年代やら何やら勘で書いたら当たる。

 魔法論だけなんだよなー、勘が働かないの。相性が悪いのかもな」



 こんな人がいるんだね。なんかコツコツと勉強しているわたしが、バカみたい。


 そう思わなくもないけれども、今、彼から漂っている雰囲気は、見た目や噂と違って真面目そうだった。いい加減に勉強しているとは思えない。

 数学だって、公式がわかるだけでは答えはでない。計算や導く過程はしっかりと身についているということだ。史学は授業の内容を理解して無意識に記憶しているのだろう。


 魔法論は魔法の分析と構築の授業。論理的なようでいて、実はいろんな人の経験のごった煮を教わっているのよね。気づいていない生徒が多いようだけれど。大まかな傾向はあっても、細かいところになると作った人の癖が出てくる。

 だから、学園で学ぶ程度だと、ほとんどの生徒は丸暗記するしかないの。魔法を発動する呪文を覚えたり、魔法陣を丸暗記したり。


 わたしは、魔法や魔法陣を作った人ごとに分けて記憶しているのよ。師匠と弟子の関係も一緒に。そうすると、その系統ごとに、何をどう考えて作り上げていったのかが見えてくるの。

 一見無駄な作業に見えるけれども、自分で魔法を作ろうとするときには大事なんだよね。特に魔法陣。

 魔法はイメージでもできるけれど、魔法陣は細部までしっかりと作り込まなくては正確に発動しないから。


 そこまでは授業ではやらない。なのに試験には出るのよ。なんでーって叫んでる人が毎回いるわ。

 エリートを育てるための学園だもの、授業から発展させたものが出題されるなんて当たり前だとわたしは思うけどね。できなくても他ができていれば追試にならない配点だし。

 そのあたりが彼も苦手なのかも。



 わたしは魔法陣を組むのが好き。自分が論理で推測したことと、発動したものがぴったの一致したときの気持ちよさったらない。将来はそっち方面で就職できれば嬉しいわ。


 魔力の少ない人も、魔法陣を使うことで魔法を発動できる。魔石を使えば魔力がない人だって。

 いろんな人が便利になるって素敵よね。



「なぁ、手伝ってくれよぉ」

 なさけない声を出す彼に、母性本能がくすぐられる。まさかこいつがわたしに甘えてくるなんて、思ってもみなかった。


 きっとわたしの手伝いがなくたって、ユーグならなんとかするのだろう。

 だけど、わたしに協力を仰ぐ意味が、きっとこいつにはあるのよね。

 三年間同じクラスだったのにつきあいがなかったけれど、ここで一緒に過ごしてみるのも面白いのかも。遠くから見ているだけから近くで話す関係になって、わたしの心臓がもつかが問題だけど。



「手伝うよ。期限は?」

「七日後」


 結局わたしは、ユーグのお願いを引き受けていた。




 * * * * *




 ユーグとわたしは、毎日授業の後に図書室に通った。



 最初は、どんな魔法陣があるのか調べるところからと考えたけれど、魔法陣のコーナーにある本を眺めただけで膨大な量があることがわかった。

 これは、作りたいものがすでにあるかどうかを調べる方が早いわよね。


 図書室司書の先生に聞くと、図書室にある検索システムが魔法省の一部のデータと連動していて、考えている用途の魔法陣が登録されているかどうかは調べられるらしい。

 さすが、教職員も使う図書室。すばらしいのは蔵書だけではないのね。



 とりあえずは、用途別魔法陣一覧表の本を手元に、どのような魔法陣を提出するのか二人で考えた。




「くそ、どれもこれも、もうある。

 無理じゃね? 新しい魔法陣なんて」


 わたしも、ため息をついてしまった。

 新しい用途なんて、そんな簡単に見つからない。


 そこでわたしは気づいたの。

 レポートのテーマは「新しい魔法陣」。「新しい用途の魔本陣」ではないわ。


「ねぇ、別に用途はすでにあってもいいんじゃない? 魔法陣が新しければ」

 ユーグは、ぽかんと口を開けて、わたしを見つめた。


 視線が合うようになったのは、いつからだったのかしら。

 最初はそっぽを向いてばかりだったのに、いつのまにか真っ直ぐにわたしを見るようになった。



「確かにそうだ」

 ユーグは、先生から渡されたテーマを確認した。



『新しい魔法陣を一つ作れ』



「欲しい要素を追加すればいいのか」


 それで新しい魔法陣になる。やった。これで道筋が見えてきたわ。

 ユーグも嬉しそうだった。



「そしたら、ユーグは魔法陣で何かしたいことある?」


 彼は腕を組んでしばらく考え込んだ。

「苦い薬を飲みやすくしたい。母親の薬が苦すぎて飲めないんだ。

 どうしても飲まないといけなくなるまで飲まないから、すぐに体調を崩してしまう」

 わたしたちは、そのための魔法陣をつくることにした。



 お母さんの苦い薬というのも気になるけれど、プライベートに踏み込むのは良くないよね。


 それより、ユーグのキラキラとした瞳が眩しい。

 もともと、隣にいるこいつがわたしに体を寄せて、そのいい声で話すだけでも心が震えるのに、視線でまで鼓動が高まるようになって、どうしましょう。

 だんだん同級生モードでいるのが難しくなってきているけれど、がんばれ、わたし。



 * * *



 パニックになる心とは裏腹に、頭は冷静モード。

 まずは、薬の服用のためにいままで作られた魔法陣の確認よね。


「薬が液体に溶けやすくする魔法陣。だから、苦くて飲めないっての。

 胃に入ったら溶けるもので包み込む魔法陣。量の多い粉薬だから、全部くるんだら飲み込めない。ちょっとずつ包んでも、一つ一つするのが面倒だ」


「粉薬を錠剤にする魔法陣。これも分割するとなると面倒よね。

 それに、飲み込みづらい子どもや老人も使えるものだと、いいな。

 つるんって」


「つるん! それだ!

 ゼリーで包むのはどうだ? それなら飲み込みやすい」

「いい!」



 わたしたちはハイタッチをした。ユーグは満面の笑みだった。まぶしい。


 これで方向が決まった。あとは、魔法陣を組み立てていくわたしの大好きな作業。



 念のために、わたしたちの考えた用途の魔法陣を司書先生に調べてもらった。


 ゼリー状のもので薬を包む魔法陣自体がなかった。

 よし、これで「新しい」というテーマはクリアよね。あとは作ればいい。




 ゼリー状にする材料は、水。簡単に手に入るのが一番だもの。


 水をゼリー状にして、それで薬を包む。手でつまめるくらいで、スムーズに飲み込める硬さが目標。

 子どもの口にお母さんがつまんで放り込んだら、お菓子みたいで子どもも喜ぶよね。なんなら果実水みたいに味つきの水を使ってもいいかも。


 一つにまとめると大きくなるから、子どもや老人でも飲み込める大きさに、自動的に分かれるようにできないかな。もっと細かくしたい人用に、魔法陣を書き換えられるようにしてもいいよね。



 さすがにわたしたちは最高学年よね。二年以上学んだことは伊達じゃない。基本の魔法陣は、すぐに書き出すことができたわ。


 わたしたちは、水を固形化する魔法陣と分ける魔法陣、包む魔法陣を書き出して、それを組み合わせていった。


 ユーグの発想が、ぴしりぴしりとはまっていく。勘がいいのは間違いないわね。彼の発想を、わたしの知識で魔法陣の形に落としていく。それをまた、ユーグの勘で選別していく。

 作り出したら早かったわ。大まかな形はできた。

 これからのことを考えて、ここまではできるだけ一般的な論理に基づいた形にした。


 ここでクセがあると、これから組み込む魔法陣が偏ってしまうもの。

 そんなことを言ったら、ユーグはびっくりした顔をした。いままで考えてもいなんかったそうだ。

 まあ、そんなものよね。まだ学園生だもの。



 ゼリーの硬さなどは微調整が必要。実際に魔法陣を使ってみる必要があるんだけど、図書室では無理。どこでしよう。


 同じことを考えていたらしいユーグが、提案してくれた。

「まだ時間は早いし、これから俺のうちに来ないか、リュシー」


 今日は授業が昼までだったから、学園の庭で昼食を食べてから図書室に来ていた。明日は休みよね。


 ユーグの自宅なら、実際に薬を使うことも、飲んでもらうこともできるかもしれない。

 だけど、いいのかな。男子の自宅なんて。

 わくわくお宅訪問なんて、想像で楽しむだけよ。


 わたしは、じとっとユーグを睨んだ。



「そんな不審な目で睨むなって。

 母親もいるし、今は叔母が手伝いに来てくれてる。

 だから、二人っきりにはならない」

「それならお邪魔するわ」



 ユーグのレポートを手伝ってるんだもの。家族がいても堂々としていていいよね。

 彼の家で二人っきりじゃないんだし……。あれ? なんでちょっと残念なんて思ったんだろう。



 わたしは、それからこいつの家にお邪魔することにした。




 * * * * *




 ユーグの家は、学園にほど近い住宅街の一軒家だった。散歩気分で歩ける距離。

 今だって、二人で並んで歩いてきたの。


 昔ながらのどっしりとした家。家族と使用人一人二人が住み込みで暮らすくらいの大きさの家よね。我が家と同じくらいだから、なんとなく想像がつくわ。


 門から玄関まで緩やかに回る道がついていて、玄関に馬車を横付けできるようになっている。その隅に、馬車が駐まっていた。その横にも何台か駐められそうな空き地があるみたい。


 玄関扉を開けると正面の階段までがホールになっていて、そこで簡単な応対もできそうだった。

 内装に木が多く使われていて、暖かい感じがした。なんとなく雰囲気が明るいのは、カーテンなどの布類にパステルカラーが使われているからかしら。

 外から見ると重い感じだけれど、中は訪れる人を歓迎する家みたい。



「ただいまー。友達を連れてきたぜ」

 ユーグの声が、玄関ホールに響く。

「おかえりなさい。お母さんは起きてるわよ」


 優しそうな女性が出迎えた。わたしの母よりも少し若いだろうか。溌剌とした雰囲気が伝わってくる。

 わたしを見て、一瞬びっくりした顔をして、それからにっこり微笑んだ。


「まあ、かわいいお嬢さん。

 ようこそいらっしゃいませ」

「お邪魔します」




 わたしを応接室に案内したあと、ユーグは部屋を出て行った。

 少し開けたフランス窓から、心地よいそよ風が入ってくる。窓の向こうは裏庭なのか、野の花がいっぱい咲いているのが見えた。ところどころに生えている木々も、自由に枝を伸ばしている。

 入れ違いに入ってきた女性はユーグの叔母さんだと自己紹介して、お茶の用意をしながら、明るい声でいろいろとわたしに話しかけてきてくれる。気さくな方ね。


「あの子が女の子を連れてくるなんてねぇ。

 母親のせいで友達と遊ぶ時間もないと心配していたのに。……よかった。

 どうぞ、よろしくお願いしますね」


 誤解されているのかしら。


「あの、今日はレポートの手伝いに」


 わたしは、好奇心に負けてさらに聞いてしまったの。

「お母さまのせいで遊ぶ時間がないって……」



「私の姉なんですけれどね、体が弱くて。よく倒れるんですよ。

 それで無理させないように、家の中のことをあの子がやっているんです。掃除とか、洗濯とか、料理とか。

 調子がいいと姉がやるんですけれどね。すぐやりすぎて倒れるから、あの子が家事をして、姉が手を出さないようにしているんです。


 手伝いの人を雇うように言うんですけれど、姉が知らない人を家にいれたくないらしくて。自分の体にはかえられないのに。


 あの子の父親は、仕事だと言って朝早く出て夜は遅くにならないと帰ってこないから、役に立たないし。

 あの子に負担がかかり過ぎだって注意しても、家のことは姉に任せているの一点張りで。姉が倒れたら、真っ青な顔をして飛び帰ってくるくせに。


 先日も倒れたので、しばらくは、私が姉とこの家の面倒をみに通っているんですよ」


「倒れたのは」


「五日ほど前だったかしら。結局あの子に学校を休ませちゃって。大切な試験があったみたいなのに。

 それで宿題が出て大変だって聞いてますよ」


 叔母さんのしかめていた眉が、広がった。


「宿題のお手伝いをしてくれて、感謝しています。

 またこんなことがないように、こんどこそ男手だけじゃなくて女性のお手伝いさんも入れるように説得しますからね。

 もうあの子も大人になるんだし、家から解放してあげないと」


 叔母さんは、拳を握って自分の胸を叩いた。とても頼もしい。



「なんか俺の悪口言ってた?」


 部屋に戻ってきたユーグは、ラフな格好だった。シャツの上に軽い上着を羽織っていて、制服よりもずっとリラックスした雰囲気がする。

 いいなぁ、こういう格好も。


 つい見惚れていたら、にやりと笑い返された。

 前は視線も合わなかったのに、なんで余裕なのよ。なんか腹立たしいわね。やっぱりこいつはこいつで十分。


 悔しいから、無駄に騒がしくなった心臓よ、鎮まって。



「そんなことしてないわよ。それではごゆっくり」


 叔母さんは部屋を出て行った。扉は少しだけ開いていた。




 * * * * *




 ユーグは、ポットいっぱいの水と何種類かの粉、コップに皿を運んできて、サイドテーブルに置いた。そしてもう一度部屋を出て、大量の紙と筆記具を持ってきた。

 粉は薬に見立てているのよね。


 わたしたちは、魔法陣を書いては、それを実際に使ってみるという作業を延々と続けた。



 最初はうまくいかなかった。


「ありゃー、これはダメだな。ゆるすぎる」

「こっちは、かちこちで飲み込めないわ」


 ゼリーから粉がはみ出たり、ゼリーが柔らかすぎたり硬すぎたり。試行錯誤を繰り返したわ。



「この魔法陣、この粉だといいのに、こっちの粉だとバラバラに散っちゃうな」

「書き換えなければ使えないわね。包むところを変えてみる? 粉をまとめるところへのアプローチもしてみてもいいかも」


 いろんな粉でうまくまとまるようになってから、さらにそれを分割できるように改良していった。


 魔法陣の一部分、あるときは一文字を変えていくの。


 二つの魔法陣を一つに合わせていくのには相性があるのよね。機能を追加すると、できたものができなくなったりもするし。

 魔法陣を作った人のクセってほんと厄介。でもたまに、とても綺麗な魔法陣があったりすると、それを作った人に想いを馳せてしまうわ。


 とにかく、うまく働かないごとに、組み合わせを変えたり文字の場所を入れ替えたり。

 繊細な作業でウキウキする。

 ん? 他の人はため息をつくって? だって楽しいじゃない。




 なんとか使えそうなものができたとき、タイミングよく叔母さんがお茶のお代わりを持ってきてくれた。

 叔母さんの後ろから入ってきたのは、お母さんかしら。ちょっと押しただけで倒れそうな、華奢な人。


「はじめまして。ユーグの母です。

 宿題の手助けをしてくれているとか。

 どうもありがとうございます」

 細い声で挨拶をしてくれた。


 わたしは慌てて立ち上がった。

「リュシー・コルネイユです。ユーグくんとは同じクラスで。

 手伝いというか、楽しませてもらってます」


「まあ」と微笑んだお母さまの表情を見て、あれ? わたし変なこと言ったかなと不安になったけれど、まあいいや。



「お疲れでしょう。甘いもので休んでくださいね」

 叔母さんは、おかわりの紅茶とビスケットの乗った皿を、魔法陣やコップが散らばった机の隅に置いてくれた。


「どうなの? うまくいきそう?」

 ユーグにそう聞く顔は、好奇心まんまんだ。



「ああ、なんとか。

 母さん、明日もここ使ってもいいかな。どうせ親父は仕事だろう。

 あと一息なんだ。母さんの薬でやってみたいし」


 そう言いながら、彼はわたしの方を見た。いいかなって確認するみたいに。



 実際の薬で確かめてみたいのは本当。魔法陣はそこまで出来上がったわ。どの粉でもうまくいっているもの。

 実際に飲んで、不都合がないか確かめて欲しいのよね。


 明日のわたしの予定は特にないのだけれども、お邪魔しちゃってもいいのかしら。

 わたしはこくりと頷いた。



「リュシー、できれば朝の薬で確認したいから、朝食後くらいに迎えに行ってもいいかな。

 馬車を出すよ」


「大丈夫よ。でも、朝だとご迷惑では」

「私は明日も朝から来てますから、何時でも問題ありません。

 どうぞ来てくださいな」


 叔母さんがそう請け負い、お母さんは頷いてくれた。



 お茶を飲んでから、ユーグとわたしは、明日使うための魔法陣を何枚か清書した。


 そろそろ帰る時間。

 ユーグはわたしの家まで馬車で送ってくれて、また明日の朝、迎えに来ると言って帰っていった。




 とうとう彼の家にお邪魔して、お母さんや叔母さんまで紹介されちゃった。

 わたしの魔法陣作成の腕を買われて、ただレポートを手伝っているだけだってわかっているのに、こいつがわたしに話かけるたびにドキドキしちゃう。


 明日、お母さんの薬でうまく成功したら、もう手伝いはいらないわよね。あとは文書でまとめるだけだもの。

 そうしたら、こいつとはお別れなのかしら。いままで通り、教室でユーグをそっと見つめるだけになるのかしら。


 わたしはそれでいいのかしら。




 * * * * *




 昨日は制服でそのままお邪魔したけれども、今日はどうしよう。

 勉強の一環だから、地味な格好がいいよね。


 わたしは、淡いピンクのシャツブラウスに紺色のフレアスカートを合わせた。髪も邪魔にならないように編み込んで、後ろで紺色のリボンで一つにまとめてある。

 ちょっとだけお化粧もした。気分がのったからよ。



 朝食を食べて支度をし、玄関まで出たわたしの後ろを、母と兄とおまけに父までがぞろぞろとついてきた。


「出てこないでよ」

「おまえの彼氏を見るチャンスを逃すはずがないだろう」

 にやにやする兄の横に、

「なんてご挨拶すればいいかしら」

とそわそわする母と、仏頂面した父がいる。



「宿題やりに行くだけだから」

「だって、彼氏じゃなくたって、あなたの初めてのお友達よ。

 ほらほら、あなたもそんな顔をしないで」

 母は父に声をかけてくれている。


「だけって言いながら、おしゃれしているよな」

 兄が追い討ちをかける。



 昨晩、友人の家で宿題をしたと言ったら、大騒ぎになったのよね。


 母は「やっと娘にも友人が」と泣いて喜び、兄には「どこのどいつだ」と男子だということを白状させられ、そのあげく父には「まだ嫁にはやらん」と勘違いな発言をされたわ。



 昨日は家の前で馬車を停めてもらい、家にはわたし一人で入ったから、ユーグと家族は会わなかったの。

 だからなのかしら。今、門を開けて家族総出でユーグの到着を待っている。

 はぁ。恥ずかしい。




 馬車が家の前に停まった。

 馬車から降りたユーグは、居並ぶ家族に一瞬顔を引き攣らせたけれど、すぐに頭を下げた。


「はじめまして。リュシーさんの同級生のユーグ・マイヤールです。

 リュシーさんにはこの度お世話になりまして。

 今日も手伝いをお願いしたいのですが、よろしいでしょうか」


 顔を上げた彼は、一気にまくし立てた。


 ほんのすこし頬が赤い。かわいい。



「まあ」「へぇ」「ふん」

 母と兄は、好感が持てたようだ。父は昨日から拗ねているからこんなもの。


「はじめまして。リュシーの母です。

 こんな娘ですが、どうぞどうぞ。いくらでも使ってやってください」


 こんな娘とは失礼な。だが、にこにこと笑ってくれているから、いっかー。



「いってらっしゃい」

と、母と兄と、不貞腐れた父に見送られて、わたしは馬車に乗った。


「リュシーちゃん、面食いね」

と母にこっそり言われるのは、帰宅後の話。


 はい、おまけに声フェチです。とは言わぬが花。




「ごめんね、うちの家族がうるさくて」

「いや、こっちこそ騒ぎにさせてすまない」

 今朝のこいつもいい声だ。すぐ側で話をされるとうっとりとしてしまう。



「リュシーの私服姿」

 ユーグが一瞬詰まる。そしてほんの小さな声が聞こえた。

「かわいい」


 ひゃっ。びっくりしたー。一気に動悸がして、苦しい。きっと顔が赤い。

 横に座っていたユーグも、真っ赤な顔をしている。

 なんなの、これー。



 ユーグが空咳をし、話をそらした。

「母さんは、今頃朝食を終えているはずだ。

 食後の薬を待ってもらっているから、ついたらすぐに昨日の魔法陣の検証をしよう」


 今日の実験の話をしていると、すぐにユーグの家についてしまった。




 * * * * *




 ユーグの家では、今朝も叔母さんが出迎えてくれた。


「いらっしゃい。わざわざありがとうございます。

 お母さんは食事を終えて、応接間で待ってますよ」



 挨拶をして、二人でさっそく支度を始める。

 お母さんは、わたしたちの様子をにこにこと見ていたわ。




 お母さんが飲んでいる薬は、ユーグが言ったように粉だった。

 濃い緑色の、塩よりもちょっと大きめの粒ね。よくある、植物エキスを粉状にしたものじゃないかしら。

 大抵苦いのよー。中には、すごく苦くて、飲み込むのに涙が出るものもあるわ。



 昨日清書した魔法陣の上に、薬とコップに入った水と皿を置き、ほんの少し魔力を通す。


 水が皿に移り、細かく分かれた。その中に小さくまとまった薬が飛び込み、水にくるりと包み込まれる。

 動きが止まったときには、皿の上にいくつかの水の塊ができていた。くっつかずに、ぷにぷにしている。

 中に緑色の薬が見えている。



「母さん、噛まないで飲んでみて。

 つまんでもいいし、スプーンでもいいよ」


 お母さんは不審な顔をしていたが、一つを指でつまんで口に入れた。喉がこくんと動く。


「苦くない!」

 お母さんは、そのまま全部飲んでくれた。


 成功よ!



「どう? これなら薬、飲める?

 もっとこんなのがいいっての、ある?」

 嬉しそうに顔を輝かせながら、ユーグはお母さんに聞いている。嬉しすぎて言葉が途切れ途切れになっているのが珍しわね。


「もう少し小さければ、お皿ごとスルスルって飲めそう」

 お母さんは、改良するところを教えてくれた。


 やっぱり、使う本人の意見は貴重ね。

 なるほど。そういう飲み方もあるのね。

 一つずつ飲む必要はない。細かければ、水を飲むようにまとめて飲み込むこともできる。うん、確かに。


「それも作りましょう」

 ユーグもこくりと頷いてくれた。




 お母さんと叔母さんは部屋を出ていった。

 わたしとユーグは応接間で、そのまま魔法陣を組み立てたの。



 もっと細かくすると、今のままでは水の量が多くなってしまう。水の層の厚さをずっと減らしたい。


 あっちを変えたり、こっちを入れ替えてみたり。できた魔法陣を実際使ってみて、また組み替えて。

 なんとか魔法陣ができたところで、昼食の時間になった。




 ユーグの家でいただいたお昼は、おいしかった。野菜が新鮮だったというと、家庭菜園があると教えてくれたの。

「簡単なものだけだけど。母さんに新鮮な野菜を食べてもらいたいから」

ユーグは照れ臭そうだった。

 叔母さんがたわいもない話をして、食卓を賑やかにしてくれてたわ。


「こちらは、リュシーさんにいただいたものですよ」


 今日は、午後までかかりそうだと思ったから、昨日のうちにパウンドケーキを焼いて持ってきたの。レモン風味とナッツ入りの二本。

 これなら翌日でも味は落ちないし、数日は楽しんでもらえるもの。


 彼の瞳がキラキラした。お母さんの瞳も輝いている。

 よかった、喜んでもらえて。


 和やかに昼食は終わった。




 昼食後は、昼までに改良した魔法陣の確認ね。


 ユーグが薬をセットした。

「ここに魔力を流してみて」

 彼の指示で、お母さんが魔力を流した。


 水と薬が動いて、薬が水に包まれた。小さな透明のつぶつぶがいっぱいできて、その中に緑の薬が見える。


「はい」

 ユーグが差し出した皿を、お母さんが今度は躊躇いなく受け取り、するりと飲んだ。


「やっぱり苦くないわ」

 お母さんは嬉しそうだった。



 わたしはユーグと両手の平を合わせて叩き合い、「やった!」と叫んだ。

 彼と声が重なったわ。気持ちも重なった気がして、すごく嬉しかった。




 * * * * *




 翌日の放課後の図書室で、わたしはユーグと会った。いつもの席よ。

 窓の外では、数日のうちに木々の青さが濃くなっていた。


 もう、額を近づけて同じ魔法陣を覗き込む必要はないけれど、なんとなく隣同士に座ったの。

 いつのまにか、この位置も馴染んじゃったわね。



「昨日あれから魔法陣を清書して、経過もレポートにまとめて、さっき、先生に提出した。

 どうもありがとう」

 ユーグが座ったまま、頭を下げた。


「うまくいって、よかったわ。

 わたしも楽しかった。ありがとう」

 にっこりと笑ったわたしに、ユーグは頭を掻きながらにやけてみせた。



「先生に、これはあなた一人で完成させたのですか? と聞かれたから、おまえに手伝ってもらったって言っといた」


「え、それって減点になるんじゃないの?」

「それでもいいさ。ほんとのことだもんな。

 俺一人だったら、ここまでできなかったし。きっと適当にでっち上げて終わりにしてたから」



 ユーグはわたしをまっすぐ見つめた。

「ありがとう! おかげで助かった。

 おまえのおかげで、魔法陣もちょっと好きになった」


 照れて頭を掻く癖は相変わらず。だけど、最初に逸らされていた視線は、今はまっすぐにわたしを射抜く。



 かっこいいなぁ。


 もともとわたし好みの顔と声だった。

 整っているけれども完璧ではなくて、整っていながらちょっと野生みのある顔。

 高めのバリトンで、ほんの少し掠れているのに艶もある声。最近はときどき甘くも感じられる。


 家族を支える愛情深さ、一人で立てる強さ、発想の豊かさ、繊細な作業にコツコツと努力できる忍耐強さ。

 そんなのをここ数日で見せられた。


 まだ五日しか経っていないのに、ユーグの存在そのものが、さらに何倍にも好ましくなってしまった。


 いままで以上に見惚れてしまうのも、わたしの目元が緩んじゃっている気がするのも、仕方がないよね。



「次の休みの日に、礼をさせてくれ。町で昼食を奢るのでどうだ?」

「いいわ、それで手を打つ」


 七日先の予定が決まった。

 つい緩みそうになる頬を、わたしは引き締めた。



 * * *



 それから休みまで、わたしの放課後は相変わらずの図書館通い。

 ユーグは、放課後に図書室にふらり来ては、わたしと少しだけ話をして帰っていく。その繰り返しだったわ。


 用事がないなら、来なくてもいいのに。どうせ教室で顔を合わせるのだし。


 そう思ったけれども、言わなかった。だって、ユーグと図書室で話すのが楽しかったんだもん。



 教室では、お互いに目が合ったら軽く微笑むくらいになったわ。それだけ。

 わたしもユーグも、放課後の図書室では仲良く話して家まで行き来したのに、そういえば教室では全然変わってなかったわ。二人とも、ひとりぼっち。


 寂しくなんかないよ。いままでと変わらないもん。



 ユーグと二人だけで過ごす図書室の時間。何気ないことを話す一時。

 でも、ユーグの声を聞いて、ユーグの微笑む顔を見て、横に座ったユーグの体温をほのかに感じる時間。

 わたしは、毎日、心待ちにしていたの。


 そして、一緒にお昼を食べる約束の日も。




 * * * * *




 次の休日、わたしはおしゃれをして家で待っていたわ。

 水色の膝丈のワンピースに同じ色の帽子。ピンクのカーディガンに白い靴。お化粧はほんのりと明るめに。髪は編み込んでからひとつにまとめて、残りはゆるく巻いた。


 今日は町まで歩くので、靴の踵は低いのにしたわ。



 時間通りにユーグが来た。彼も淡い色のジャケットとパンツよ。


 家族が我先にと挨拶し、わたしの挨拶は一番最後だった。

「行こうか」

 家族に行ってきますと手を振り、わたしはユーグと門を出た。



 町は、わたしとユーグの家の中間くらいにある。

 公園広場の北側に、食堂や喫茶店、洋品店、帽子屋や靴屋、小間物屋などがあり賑わっている。南側は、市場や古着屋など、生活必需品の店が多い。安い居酒屋も南側にあるらしい。


 そこまでわたしたちは、のんびりと歩いた。




 ユーグが連れていってくれたお店は、わたしたちと同年代で賑わっていたわ。男女の二人づれが多くて、若者が多いわりにあまり騒がしくない。

 食事だけでなくケーキや飲み物も豊富で、疲れたときの一休みにもちょうど良さそうだった。


「叔母さんが、ここが人気だって教えてくれたんだ」

 よく知っていたわね、と言ったら、そう答えてくれた。


 わたしはこの店一押しのメニューを、ユーグは肉をメインにした料理を食べながら、ゆっくりと話をした。



「先生がレポートを褒めてくれたよ。魔法陣の用途が画期的で、展開も素晴らしいって。

 リュシーにも話を聞きたいってさ」

「え、どうしよう。でも、褒めてくれて嬉しいね」


 魔法陣を仕事のひとつにできたらいいと考えていたので、本当に評判がよかったら嬉しい。

 でも、用途や細かい設定を考えたのは、彼なのよね。わたしがしたのは、魔法陣の展開の方。


「呼ばれたら行けばいいのよね」

「ああ。一緒に」


 なんか、共同研究を一緒にやった気分。実質、そうなんだけど。

 今の話だと、わたしが手を出してもユーグの成績に悪影響はなかったみたいだから、よかったわ。



 ユーグがもっと自由に時間を使えるようになるという話も、聞いた。


「今回の件で母さんも反省してさ、お手伝いさんを入れるって。

 あと、もう薬も苦くないから、具合が悪くなる前に飲んでくれるって。


 あれから毎日薬を飲んでくれているんだ。

 いままで、苦いからってなかなか飲まないせいで体調が悪化していたから、これからはそんなにひどいことにならないと思う。


 ありがとう。リュシーのおかげだ」


 テーブルの上に出ていた右手を、ユーグが両手で握った。

 え? って思ったときには、彼は慌ててその手を離していた。


「ごめん」

 ぽそりとつぶやいたその言葉に、わたしは頬が熱くなったまま首を振った。

 彼に握られて離された手が熱い。わたしは、膝の上にそっと右手をおいた。



 * * *



 食後は、薔薇が盛りだという公園へ行った。


 通路を歩いているだけで、薔薇の香りに包まれた。いろんな色が溢れかえっている。

 奥の方は、あちこちの茂みの中に小さな空き地が作られ、ベンチが置かれているみたい。茂みが目隠しになっていて、まるで秘密の空間ね。



 わたしはいつの間にか彼と手をつないでいた。どちらからつないだのか、なんとなくどっちもからだったのか。

 意識したとたんに、胸の鼓動が高鳴ったわ。でも、今さら手を離すのもおかしいし。


 その手をユーグがひっぱって、茂みの中の細い道へといざなわれたの。そこにもベンチが一つあった。

 彼は、ハンカチを取り出してベンチに敷いてくれ、わたしを座らせた。



 横に座ったユーグが近い。腿と腿が触れ合っている。一度離れた手は、また握られている。


 どうしよう、だんだんと顔が熱くなってきた。ユーグの息も、ほんの少し荒くなった気がする。

 彼が息を吸い込んだ。



「リュシー、好きだ」

 その声は、わたしの耳元で響いた。わたしの顔は、一気に熱をもった。


 うわ、うわ、うわ。

 こんな声でしかも耳元でこんなこと言うなんて、反則。


 好きだって、好きだって、好きだって。

 言ったよね。聞き間違いじゃないよね。



「好きなんだ。つきあって欲しい。これで終わりじゃ、嫌だ」


 ユーグがつないでいた手を引き寄せた。わたしの指先に彼の唇が触れた。

 わたしはパニックの真っ最中よ。頭の中は真っ白。


「ねぇ、ダメ?」

真っ白な中に、彼の艶のある声がしみ通ってくる。


 ずるい。

 いつもより甘い声で耳元でささやかれて、拒否できるはずがないじゃない。

 きっともうこいつは知っている。わたしがこいつにすっかり虜になっていることを。



「ダメじゃない」

 やっと出た小さな声は、ユーグに届いたかしら。


「ほんと?」

 わたしは、下がっていた目線を上げて、ユーグを見た。彼がキラキラしてわたしを見つめていたわ。

 わたしはこくりと頷いた。



「嬉しい」

 そうささやきながら、ユーグの顔が近づいてきた。わたしは目を閉じた。


 わたしの唇が、あたたかいものでふさがれた。わたしの背中に、力強い両腕が回された。

 わたしはユーグの背中に、両腕を添えた。


 触れる幸せを知ってしまったら、もう見ているだけには戻れない。

 さよなら、こいつを見続けていたわたし。ようこそ、ユーグと一緒に過ごすわたし。




 * * * * *




 ユーグの魔法陣は医療関係者から大絶賛され、先生の指導でさらに改良された。そして、ユーグとわたしの二人の名前で医療補助の魔法陣として正式に登録された。

 まずは病院で広めていくのですって。


「喜ぶ患者さんやお医者さま看護師さん、親がたくさんいますよ」

 そう言う先生も嬉しそうだった。

 自分の子どもが薬を飲むのに使ってみて、とても助かったそうよ。



 その実績を評価されて、わたしは希望の大学への推薦をもらって、入学が内定したわ。魔法陣の研究が盛んなところよ。やったー。

 そこでまた数年、学びながら研究に携わっていくわ。



 ユーグは大学進学をあきらめていたのだけれど、家の仕事から解放されて進学できるようになったの。

 わたしと同じ大学の攻撃魔法での推薦が取れて、入学が決まったわ。そこでさらに魔法を磨く予定なんですって。

 そこは、今の平和な世の中ならではの攻撃魔法の使い道も探っているらしいの。彼の発想のすばらしさや勘の良さも、きっと生きるわね。




 おかげで、わたしとユーグのデートの時間もとれるわ。


 つきあい始める前から結果として家族に紹介しあったこともあり、それぞれの家族も応援してくれている。


「やっとリュシーも彼氏ができたわね。

 恋バナ、楽しみにしてるわよ」

 幼馴染はそう言って喜んでくれたわ。


 デートのときの服やデートコースは、幼馴染の助言がとても役に立っている。

 男子とのつきあいかたもね。



 彼女に言わせると、男はケモノでガキらしい。

 相手を立てておいて、実質は手の平で転がせと言われているの。


 けれども、人とほとんどつきあってこなかったわたしには、難しいの。

 ユーグも、女子どころか男子との友達つきあいもあまりなかったはずよ。その割にわたしは、いつのまにかユーグの腕の中にいた気がするのよね。わたし、彼に転がされたのかな。



「お互いに、相手に言いたいことをはっきりと言えばいいのよ。

 そのときはケンカになっても、お互いのことを想いあっていれば、丸く収まるわ」


 幼馴染みのこの助言が、一番役立つような気がするわ。



 卒業式まであと少し、クラスでも学年でも、誰と誰がつきあい始めたとか別れたとか、その手の話が盛んになった……らしい。

 わたしは横でクラスメートが話しているのを聞くくらいなので、詳しくはわからないのよね。

 卒業すると離れ離れになるから、その前に意中の人に声をかけるのだって。うまくいけば、同学年だったら卒業パーティのパートナーになるらしい。

 パートナーがいなくても卒業パーティには参加できるが、いた方がいい。とは、これも女子で盛り上がっているのを横で聞いたわ。



「ねぇ、リュシーはもう大学の入学決まったんでしょう。

 卒業パーティのパートナー、決めた?」

 そう聞かれるけれど、にっこり笑って首を傾げれば、それ以上何も言われないの。


 たまに、教室の入り口で声をかけてくる別のクラスの男子もいるけれども、何か用かと聞くと何か言いたそうにしたまま、帰っていくの。

 なんなのよ、いったい。


「リュシー、優しくすればいいのに」

 女子にそう言われるけれども、冷たくしてないよ、わたし。



 ユーグが女子に声をかけられるのも、たまに見かけるようになった。

 女子が彼に何かを言って、彼が返事をして、女子が走り去る。教室からは廊下の様子が見えるので、つい、最後まで見てしまう。

 そのあと教室に戻ったユーグが、わたしと目があって眉をしかめるまでがお約束になってしまった。

 椅子に座ったユーグに、周りの男子がやいやいと何か言っている。




 放課後の図書室で、ユーグは弁解してくれる。


「リュシー、誤解するなよ。俺はぜったいリュシーだけだからな。

 でもなんで、急に声をかけられるようになったんだろうな」


 その答えはわかってるわ。

 ユーグ、以前は怖い顔をしていたのに、最近はときどき頬が緩んでいるときがあるもの。

 いつのまにか不良って噂も消えたし。

 もともと顔も声もいいユーグ、もてないはずがないわよね。


 でも、言わない。

「なんでかしらねー」

 そう言って笑ったわたしに、ユーグはため息をひとつこぼした。



 * * *



 学園の卒業式は、しめやかに行われた。

 ユーグはいつもはちょっと崩していた制服をきちんと着ていた。その姿は凛々しくて、見惚れてしまったわ。



 卒業式後のパーティは、先生と卒業生が参加する。みんなドレスアップよ。

 もちろんわたしも力を入れたわよ。だって横に立つユーグが、せめて恥ずかしくなくしないとね。


「おまえは淡い色が似合う」

 ユーグがそう言ってくれたから、わたしは水色のドレスにしたの。初めてのデートのワンピースと一緒。青のグラデーションになるように、スカートに工夫がこらされたもの。編み上げた髪には、白い小花を散らして。

 彼は、濃紺のスーツ。クラバットはわたしとお揃いの布にしたわ。



 お祝いの乾杯が終わり自由時間に入ってから、ユーグはわたしの腰に手を回して、同級生の前で二人の婚約を発表した。

 あまりにも密着していて、ちょっと恥ずかしい。


「俺とリュシー、婚約したから」

 会場は「えー」「うそー」と騒然となった。


「リュシーには手を出すなよ」

 ユーグは会場をぐるりと睨みつけたわ。男子は、肩をすくめたりニヤニヤしたり。

「きゃーーー」と女子の歓声があがった。



 わたしはあっという間にユーグの横から引っ張られ、女子に取り囲まれたの。

「ねぇねぇねぇ、いつからつきあってたの?」

「ちっとも気づかなかった」


 向こうでは、彼が男子に質問攻めにあっている。



 魔法陣の共同製作については、先生方だけがご存知だ。

 名前を隠しているわけではないけれど、いつも使っている魔法陣を誰が作ったかなんて、みんな興味がないもの。


 だから、ユーグとわたしが魔法陣を一緒に作ったことは、誰も知らなかったわ。



 その後、図書室でずっと会っていたけれど、クラスでは仲の良いそぶりも見せてない、はず。


 町でわたしたちが遊んでいるのを同級生に見られていたけれど、みんなは人違いだと思っていたようね。


 堅物と言われるわたしと、一見素行の悪そうだったユーグ。あまりにもイメージが違いすぎて、結びつかないのでしょう。



 きっとこれからは、ユーグとわたしを結びつけて考えてくれる。

 そのための、彼の宣言だったもの。



「大学に行ったらいい男がきっといるから、今のうちにみんなに知っていて欲しいんだ。

 リュシーは俺のものだ」

 ユーグは、わたしを喜ばせてくれる。わたしも彼に喜んで欲しい。

「ユーグはわたしのものよ」


 二人で相談して、このパーティでわたしたちの婚約を発表したの。




 気がついたら、ユーグとわたしは並んでいた。周りを同級生たちが取り囲んでいる。


「それでは、婚約者同士のくちづけを」

 男子の一人がそう言って、周りにいたみんなが声をあげたり拍手したりした。


 まさか、こんな展開になるなんて。どうしよう。


 わたしは、ユーグを見上げた。

 彼は、微笑んだ。



 ユーグの手が、わたしの顎に添えられた。

 ユーグの顔が近づいてくる。

 ユーグの唇が、わたしの頬に落ちた。


「おめでとうー」「おめでとう!」

「幸せにね」

「やったな、このやろう」


 みんなのお祝いの声とあたたかい拍手で、涙が滲んだ。


 わたしは一人だと思っていた。友達はいないと思っていた。

 でも、違った。

 同級生という仲間がいたのね。


 きっと彼らとの縁は、ずっと続いていくわ。



 * * *



 卒業パーティは、和やかに終わった。

 みんなのお祝いに、まだ胸の中があたたかいまま。


 大学では、新しい出会いがあるでしょう。

 もしかしたら、いままではとは違った関係になるかもしれないわ。




 わたしの横を、ユーグが歩いている。

 今日、みんなに婚約者と認められた彼。ユーグ。


 わたしの大好きな人。

 わたしの愛している人。

 わたしを愛してくれる人。




 大学を卒業する頃には、二人の環境は変わるでしょう。

 それまで、時間はあるわ。


「好きだよ、リュシー」

 わたしの大好きな声が、耳元でささやく。

「好きよ、ユーグ」

 わたしも彼の肩に頭を寄せながら応える。


 似たもの同士、ゆっくりと歩んでいこうね。




 * * * * *




 わたしもユーグも、大学を卒業した。


 わたしは、魔法陣を使って生活用品を作る会社に就職が決まったわ。みんなに使ってもらいたいというわたしの理想通りよ。


 ユーグは、魔法研究所に入ったの。大学に通っている間に、新しいことをする悦びに目覚めたみたい。

 わたしの影響? うん、たぶんあるよね。

 デートの時間の半分は、お互いの守秘義務に反しない程度でいろんなものを討論してきたもの。わたしにはユーグの発想力がありがたいし、ユーグには、わたしの雑多な知識が役立つの。




 そして、ユーグとわたしは結婚した。

 仕事の同僚だけでなく、大学や学園の同級生までお祝いに駆けつけてくれたのは嬉しい誤算。

 スーツに身を包んだユーグが、とても眩しかった。彼がわたしを見つめる瞳の熱が、心地よいような恥ずかしいような、不思議な気分だった。




 その夜、わたしはユーグから信じられないことを聞いたの。


「リュシーがずっと好きだったんだ。入学した頃から」



「リュシー、入学式に新入生代表で壇に上がったよね。

 あのとき、なんてかっこいい女子なんだろうって思った」


 わたしは空いた口が塞がらなかった。まさかそんな前から意識されていたなんて。

 わたしが一方的に見ていたんだと思っていた。


「一年のときから、クラスのまとめ役でいつも大活躍だし、成績はトップクラスだし。それなのにクラスのみんなに優しいし。

 俺なんか、不良って言われていたのに。


 そんな俺でも、リュシーとつきあいたいって思ったんだ。せめて教室で話ができる友達になりたいって。

 だから、自分のできることを伸ばした。攻撃魔法、めっちゃ頑張ったんだぜ。


 それでも、声をかけよう、声をかけようと考えている間に三年になって。

 これじゃダメだって思い切ったのが、あの日。図書室への廊下。

 おまえが毎日図書室に行っているのは知っていたから、レポートを言い訳にした。もちろん、手伝って欲しいのは本音だった。


 待ち伏せたはいいけれどやっぱり話しかける勇気がでなくて……帰ろうかと考えていたらおまえが来たんだ。

 恥ずかしくて顔をあげられなかったけれど、あのとき頑張ったんだぜ、俺。あのあと何度自分で自分を褒めたか」


「え? だってレポートが完成してつきあってくれって言うまで、そんなそぶりは全然なかったじゃない。

 ただ魔法陣の得意な同級生に声をかけたんだと思ってた」


「痩せ我慢してた。だって、勉強をおしえてもらうのにデレデレしていたらカッコ悪いだろう。


 あのとき手伝いを頼んでなかったら、俺たち、こうやって一緒にいれなかったよな。

 リュシーのおかげで、母さんも元気になったし」


 ユーグの顔が近づいて、彼の唇がわたしの耳元をかすった。

「ありがとう。俺の奥さん」


 ああ、ささやくようなユーグの甘い声は、今でも胸に響く。最近は、カクリと体から力が抜けそうにもなる。


 艶っぽい声にとろけてしまったわたしは、こう返すのが精一杯だった。

「わたしも幸せよ、ユーグ」



 わたしたちはこれからもずっと、幸せに暮らしていくの。



 ~ 終わり ~



お読みくださり、ありがとうございます。

日常からちょっとだけ外れた日々のお話を、ほんわかと楽しんでくださったら嬉しいです。


ブックマーク、評価、どうもありがとうございます。

応援、すごくすごく嬉しいです。


また話を書くエネルギーの原料になります。



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― 新着の感想 ―
[良い点] あぁ......こういうの好き......。 心が洗われるかのような純愛ストーリーでした。 リュシーとユーグが徐々に仲良くなる過程を丁寧に描き、きちんと物語の道筋を整えた上で執筆されてい…
[気になる点] 多分ですが 構成で考えてた話だったのかな? 図書館での潜りが2つあるみたいです [一言] 面白いです(^-^)
[良い点] むずかしいところもありましたが、リュシーちゃんとユーグくんが だんだん仲良くなっていき、最後は結婚するところが素敵でした。 さらに水魔法で薬の苦さを改善し、ユーグくんのお母さんを喜ばせるシ…
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