第72.5話 力なき者が王たるより、力ある者が王たるべし、とは?
大田勇介と藤田吉郎の対話コーナーの第72弾です。
今回のテーマは、力なき者が王たるより、力ある者が王たるべし、とは?です。
主人公が中国の故事のかわりにうっかり出したヨーロッパの故事についての説明です。
ナレーション
さぁ、始まりました!親友ふたりによる、夢のひととき。今回のお題は・・・「力なき者が王たるより、力ある者が王たるべし、とは?」です!!では、おふたり、お願いします。
藤田吉郎
ヨーロッパの故事って2回目くらいやな。どんなん?
大田勇介
8世紀のヨーロッパ、現在のドイツにあったフランク王国の故事やな。
ヨシロー
フランク王国?聞いたことないわ。
マタスケ
フランク王国はローマ帝国を解体したゲルマン人の一派、フランク人が建てた王国。後に西ヨーロッパの大部分を征服し、現在のイタリア、フランス、ドイツのもととなる国家となった。それを成し遂げたフランク王国の王家をカロリング家と言うんやけど、その王家が成立したときの故事になる。
ヨシロー
ふうん?
マタスケ
ま、馴染みがないから、そうなるわな。このカロリング家の王ではカール大帝(シャルルマーニュ)が有名。さっき言ったフランクによる西ヨーロッパの征服はカール大帝の偉業やね。最終的にはローマ皇帝にまでなった。一般的に馴染みがあるとしたら、この王やな。
ヨシロー
いや、知らんぞ!?
マタスケ
いやいや、カール大帝の絵は必ず見たことがあるはずや。なんてったって、トランプのハートのキングのモデルがカール大帝と言われてるからな。トランプの絵くらいは見たことあるやろ?
ヨシロー
おう、それやったらもちろん知ってるぞ!じゃあ、そのカール大帝の故事なんか?
マタスケ
いや、カール大帝の父親である小ピピン(ピピン3世)の故事になる。彼は元々フランク王国の宰相、現在で置き換えたら総理大臣やった。王様は別にいて、メロヴィング家という王家の人物が代々王になっていた。
ヨシロー
ん!?カロリング家は元々王様と違ったんか?
マタスケ
そうやねん。けど、この当時にはすでにカロリング家の方が力を持っていたし、国内の支持も王家より大きく、事実上の王様やった。けど、血筋の壁は厚くて、正式な王家とはなれなかった。小ピピンは正式な王になることを望み、考えた挙げ句にひとつの策を思いついた。
ヨシロー
何やろ?全然想像つかん。
マタスケ
このときのフランク王国はキリスト教国やった。キリスト教世界で一番偉い人は誰かわかるか?
ヨシロー
全然思いつかん・・・。
マタスケ
ローマ法王や。
ヨシロー
その名前なら聞いたことあるな。
マタスケ
小ピピンはローマ法王と交渉し、法王に認めてもらうことで正式な王となろうとした。小ピピンは法王に「力なき者と力ある者、王にふさわしいのはどっちか?」という問い合わせをおこなったんや。
ヨシロー
で、どうなったん?
マタスケ
そのときのローマ法王の返事が、「力なき者が王となるより、力ある者が王たるべきである。」との言葉やった。
ヨシロー
法王のお墨付きってやつやな。
マタスケ
そう。本来であれば、ローマ法王は教会以外のことに関わったらアカンはずや。当然、「そんなことはウチは知らん!」と突っぱねるべきや。あるいは、正しい秩序を守る立場を見せるなら、元からの王家を支持する必要がある。
ヨシロー
じゃあ、何でそうせんかったん?
マタスケ
この当時はローマ法王という存在も誕生してまだ間もない状況で、今ほどの権威はなかった。東には東ローマ帝国とその宗教指導者であるコンスタンティノープル総主教がいた。ローマ法王は何とかこれらに対抗するため、日の出の勢いの小ピピンと手を結び、王をつくり出すことで権威を高めようとしたんや。
ヨシロー
うーん、自分勝手なヤツやな。
マタスケ
宗教ってやつはデカくなったら、政治に絡みだすからな。でも、小ピピンとローマ法王のタッグができたおかげで、小ピピンは正式な王家をつくることができたし、ローマ法王は東と対抗することができた。ウィン・ウィンの関係ってやつやな。それだけやなくって、西ヨーロッパが東ヨーロッパと分かれて独自の発展をとげる道を選んだきっかけとなったんや。正義を無理くりねじ曲げたわけやねんけど、それが新しい時代を開いたわけや。似たような話はヨーロッパだけやなくて、日本や中国にもあるし、それこそ世界中で似たような力ずくでの政権奪取は行われてる。「勝てば官軍」ってやつやな。
ヨシロー
まぁ、ヤラれた方は可哀想やけどな。
マタスケ
確かにな。ま、必要悪ってやつになるかな。
ヨシロー
俺には何か、ピンと来んわ。
マタスケ
ピピンだけにか!?
ナレーション
お後がよろしいようで。




