第70.5話 唇亡びて歯寒しとは?
大田勇介と藤田吉郎の対話コーナーの第70弾です。
今回のテーマは、唇亡びて歯寒しとは?です。
第71話で出てきた「唇亡びて歯寒し」についての説明です。
ナレーション
さぁ、始まりました!親友ふたりによる、夢のひととき。今回のお題は・・・「唇亡びて歯寒しとは?」です!!では、おふたり、お願いします。
藤田吉郎
第71話で出てきたな。どういう意味なん?
大田勇介
直訳すると、歯は唇に守られてるから直接外気に触れず、寒さや物の直撃にさらされることがない。これは中国の春秋時代の故事として出てくる言葉なんや。
ヨシロー
久しぶりに中国の昔話がテーマなんやな。どんな話なん?
マタスケ
春秋時代に「虞」という国があった。この国は南隣の「虢」という国と大変仲が悪かった。そこへ北の「晋」という国が虢を攻めたいから、晋の軍隊が虞の国内を通過することを認めてほしいと言ってきた。
ヨシロー
おう、願ったりかなったりってやつやないか。
マタスケ
虞の君主も同じように思い、道を通らせるだけやなくて俺も一緒に虢を攻めると言い出した。けど、虞の賢臣として他国にも知られていた宮之奇という人が反対した。
ヨシロー
え、何で!?仲悪い敵国と戦うんやろ?
マタスケ
宮之奇は晋が莫大な贈り物を持ってやって来たことに不信感を持っていた。大国である晋が小国の虞に対してあまりにも礼が厚すぎる。何か下心があるんちゃうかってな。
ヨシロー
下心?
マタスケ
うん。晋は虢を攻めると言ってるが、実際には虞を攻めるつもりじゃないかって。だから君主に断るように諫言したんやけど、君主は財宝や名馬に目がくらんで宮之奇の諫言をしりぞけた。
ヨシロー
で、どうなった?
マタスケ
その時は晋はただ虞の国内を通過して虢の副首都を攻め落としただけに終わり、特に虞に対して変わったことはしなかった。
ヨシロー
それじゃ、宮之奇の取り越し苦労ってやつやったんちゃうん?
マタスケ
いや、話にはまだ続きがある。3年後、晋はまた虞を通って虢を攻めたいと申し入れてきた。今度も宮之奇は反対したが、虞の君主は全然相手にしてくれない。今回は宮之奇も簡単には引き下がらず、前回以上に激しく反対意見を述べ、そのときに発せられたのが「唇亡歯寒」、つまり「唇亡びて歯寒し」やったんや。虢を唇、虞を歯に例え、虢が滅べばより強大になった晋に虞も飲み込まれてしまうと訴えたんや。
ヨシロー
で、どうなったん?
マタスケ
虞の君主は「晋は我が虞の同族に当たる。晋が我が国を滅ぼすことなどあるまい。」と言った。だが、宮之奇は反論した。「晋が同族だから攻めてくることはないとおっしゃるが、今晋が攻めようとしている虢も晋や我が虞と同族の国でございますぞ!」ちなみに、当時の中国は周王朝の時代やったんやけど、この3国はどれも周の一族が立てた国やった。
ヨシロー
遠い親戚同士でケンカしてたわけか。けど、そこまで話を聞いたら、虞の君主がノンビリしすぎてて、宮之奇が正しいような気もしてくるなぁ。
マタスケ
その後、晋軍は虞の国内を通って虢の首都を攻略し、ついに虢を滅ぼしてしまった。その帰り道、虞の首都に入城した晋軍は突如虞の王宮などを攻め落とし、虞を征服してしまった。
ヨシロー
あちゃー、宮之奇が言った通りになってしもてんな。
マタスケ
ここから、「唇亡びて歯寒し」という格言ができた。過度な親切が必ずしも自分のためにならないこと、大局に立って物事を判断しなければならないことを示す教訓となってる。
ヨシロー
虞のようになったらアカンってことやな。
マタスケ
そう。君主たるもの、愚者にならんようにしっかり考えて振る舞いなさいってことや。
ナレーション
お後がよろしいようで。




