第6.5話 三河国の諸勢力について
大田勇介と藤田吉郎の対話コーナーの第7弾です。
テーマは三河国の諸勢力についてです。
当時の三河国も色んな家が争っていましたので、ぜひご一読ください。
ナレーション
さぁ、始まりました!親友ふたりによる、夢のひととき。今回のお題は・・・「三河国の諸勢力について」です!!では、おふたり、お願いします。
藤田吉郎
今回の戦場になった三河国って今で言ったら何県なん?
大田勇介
愛知県の東側やな。本文中にも出てくるけど、徳川家康の出身地になる。
ヨシロー
諸勢力がテーマやけど・・・三河国も守護ってのがおったんやろ?
マタスケ
うん。一応、西三河・西条城の吉良家が守護とされてる。吉良家は足利将軍家の分家で、元々の家の格では尾張の斯波家より高かった。
ヨシロー
されてる!?はっきりせんな。どういうこと?
マタスケ
応仁の乱のゴタゴタのときに守護とされてんけど、あんまり守護として力を発揮した様子がないねん。この当時も弱ってて、矢作川の対岸の東条城の分家と守護の座を争ってる。
ヨシロー
ひょっとして尾張の斯波家よりも弱いかも、ってことか?
マタスケ
そうやな。ほぼ空気って言っても言い過ぎに聞こえん感じやな。そのせいもあって、当時の三河はグチャグチャや。
ヨシロー
じゃあ、一番強かったんはどこなんや!?
マタスケ
今川家やな。駿河と遠江の両国の守護、現在で言うと伊豆半島を除く静岡県の「王様」やった。
ヨシロー
ん?静岡県の家が何で関係あんの?
マタスケ
今川家は北の甲斐の武田家、東の相模の北条家と政略結婚をして強力な同盟関係にあった。そうやって、西の三河へ全力投球できる状態を作って、侵略していた。あと、今川家は吉良家の分家やし、先祖は三河国今川荘を領地にしていた。三河国にはかなり縁が深い家やったんや。
ヨシロー
なるほどな。ところで、さっきから西三河とか東三河とか言ってるけど、何でそういう言い方なん?
マタスケ
三河国は西と東を分けるように三河山地が走ってる。それに、北の信濃国、現在の長野県との間も山地が広がってる。つまり、西三河、東三河、北三河に分かれてると思ったらいい。せやから、どうしてもひとつにまとめるのが難しかってん。
ヨシロー
そういうことなんや。ところで、家康の徳川家が見当たらんかってんけど?
マタスケ
西三河の岡崎松平家がそうやな。後に家康が徳川に名字を変えるまでは松平家やったんや。松平家は分家が多くて、「十八松平」って呼ばれるほどあった。家康の家は一応本家ということになるな。西三河は吉良家以外、松平家ばかりと思ってもいいくらい、松平家が根を張ってる感じ。
ヨシロー
本家って言っても、本文中ではなんか弱そうな感じやったな。
マタスケ
この時の当主は家康の親父さんの松平広忠って人やったんやけど、織田や今川に挟まれて、力が弱かった。まだ幼かった家康を織田や今川に人質として出さなアカンほど、追い詰められてた。家康の爺ちゃんの清康の時は三河国全部をまとめるほどの力があったんやけどな・・・。
ヨシロー
それってすごいやん!家康の爺ちゃんは強かったんやな。
マタスケ
けど、織田信秀と戦ってるとき、いきなり暗殺されてしまった。まだ26歳やったらしい。子供の広忠は幼かったから、当主の座を追われた。後に今川家のおかげでやっと当主になれたんや。その間のゴタゴタで、岡崎松平家の力は一気に落ちた。
ヨシロー
家康の家は苦労続きやったんやな。
マタスケ
こっからリカバリーしていくんやから、家康って人はやっぱ凄かったってことやな。
ヨシロー
他に物語に絡んでくる家はあるん?
マタスケ
一応もう出てきた家としては、東三河・渥美半島の戸田家があるな。どちらかと言えば、今川家に反抗的な家やな。あと、東三河では牧野家が力を持ってたけど、当時は戸田家のライバルやった。だから、こっちは今川家と親しい。
ヨシロー
北三河はどんな家があったん?
マタスケ
「山家三方衆」って呼ばれる勢力が物語に絡むかな。作手の奥平家、長篠の菅沼家、田峰の菅沼家の3つの家のこと。ま、出てくるとしても、だいぶ後やわ。
ヨシロー
ホンマ、三河国はグチャグチャやってんな。今川とか織田に好き放題されてるやん!
マタスケ
ああ。他国からみたら、隙だらけやったやろな。
ナレーション
お後がよろしいようで。
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※三河諸勢力図を追記しました。
戦国時代の三河国と言えば、徳川家康のイメージです。
しかし、彼が幼い頃は織田と今川の二大勢力に挟まれ、人質として長く三河を離れることになります。
本文中で出てきた勢力は、後々家康の家臣となっていきますが、この時期はまだ独立勢力です。
三河衆は家康の下でよくまとまり、忠義者のイメージがありますが、元々は徳川家と同格の存在でした。
今作当時の状況を見れば、弱小勢力から身を興して三河武士たちの忠誠を勝ち取り、天下統一までたどり着いた家康のリーダーシップの非凡さがよくわかります。