第10話:ドッキングするチューブ
アリス=ロンドはベッド式カプセル型エネルギー補給器の中に入るためにも、久方ぶりにオープン型フルフェイス・ヘルメットを頭から脱ぐ。カナリア=ソナタはアリス=ロンドの素顔をヘルメット越しからではなく、直接、見ることになり、思わずうっとりと羨ましい気持ちになってしまう。
「こんなに可愛らしい子が、男の娘って、世の中間違っているのですゥ」
カナリア=ソナタの言うように、アリス=ロンドは蒼髪オカッパの美少女であり、これで股間におちんこさんが付いているとは到底、考えられなかった。しかしながら、こんなどこからみても美少女であるからこそ、おちんこさんが付いているべき存在なのがアリス=ロンドなのだ。
「もし、あたしにおちんこさんがついてたら、アリス様の御尊顔を拝めただけで、フル勃起してしまうんでしょねェ」
カナリア=ソナタはアリス=ロンドの魅力にすっかり引き込まれ、ショーツ一枚姿のアリス=ロンドに近づき、剥き出しの乳首をいじり始めてしまうのであった。しかしながら、両の乳首をいじり倒す前にベル=ラプソティから頭頂部に手刀を叩きこまれたことで、ハッ! と我に帰るカナリア=ソナタであった。
「うゥ。アリス様は魔性の男の娘なのですゥ。あたしが罪深いわけではないのですゥ。アリス様の存在が罪深いのですゥ」
「気持ちはわからないでもないわ。あの馬鹿はともかくとして、わたくしもうっかりしてると、アリスの眼に引き込まれそうになっちゃうもの」
アリス=ロンドには魅力というよりかは魔力とも言いたくなるような紅玉と碧玉のオッドアイの持ち主であった。元々、オッドアイのヒトは、他者を引き付ける魅力を兼ね備えている場合が多い。しかしがなら、アリス=ロンドは身体全体からもそれを発しており、レズ的な性的指向を持ち合わせぬベル=ラプソティやカナリア=ソナタにも少なからず影響を及ぼしていた。
「カナリアさん。ボクは星皇様の所有物デス。貴女のお相手は出来まセン」
「うゥ。その塩対応がますますあたしを狂わせるのですゥ」
「もうっ。カナリア、アリスから離れなさい。アリスがカプセルの中に入れないでしょ!?」
アリス=ロンドがきっぱりとカナリア=ソナタと乳繰り合うのを否定するが、そのような素っ気ない態度を示されると、余計に構ってほしくなるのがニンゲンの性だ。なかなかにアリス=ロンドから離れるのを拒否するカナリア=ソナタを物理の力でひっぺがさざるをえないベル=ラプソティであった。
ようやく自由の身となったアリス=ロンドは股間を覆い隠している女性物のショーツを脱ぎ、全裸となって、ベッド式カプセル型エネルギー補給器の中に入り、横たわる。すると、そのカプセルの蓋が横にスライドし、すっぽりとアリス=ロンドの身体をその中で閉じ込めてしまう。
密閉されたベッド式カプセル型エネルギー補給器の中には薄い桃色の液体が段々と注入されていき、アリス=ロンドは母なる海の中へと放り込まれることになる。そして、さらに外から中の状態を確かめやすいようにと、そのカプセルが徐々に起き上がり、やや斜めの縦へと姿勢を変えるのであった。
「ねえ……。これは完全にあいつの趣味よね?」
「はィ。確実に星皇様の趣味ですねェ」
「チュッチュッチュ。アリス様の調整とか称して、舐めるようにアリス様の身体の隅々をチェックしている星皇様の姿が想像できるでッチュウ」
通常のベッド式カプセル型エネルギー補給器がその姿勢を変えて、中の様子をくまなく観察できるタイプは存在することは存在する。しかし、そのようなカプセルは大変、高価であり、傷つき倒れた天使たちが入り込むそれらは一般的には通常のベッドのように横になったままである。
星皇が贈ってきたこのベッド式カプセル型エネルギー補給器はアリス=ロンドのために用意された物であることは自明の理であり、その中に入ってエネルギー補給を行っているアリス=ロンドを見ていると、ハァァァ……と深いため息しか出てこないベル=ラプソティ、カナリア=ソナタ、コッシロー=ネヅである。
「アリスのお尻の穴にチューブがぶっこまれたわね。もう、ツッコミが追い付かない……」
「これ、アリス様じゃなくて、ベル様専用となると、前の穴にまでチューブがぶっこまれるんですかねェ?」
「もしかしたら、そうかも。あいつがわたくし用に天界からプレゼントを贈るって言ってきたら、その辺りの機構がどうなっているか確認するわ……」
アリス=ロンドがカプセル内で眼を閉じて眠っていると、カプセルの下部から細長い白いチューブがミミズのような動きをしつつ伸びてきた。ベル=ラプソティは最初、何が起きているのだろうと不可思議な表情をその顔に浮かべていた。
しかし、そのチューブがアリス=ロンドのお尻とドッキングしたことで、ベル=ラプソティたちはぐったりといった感じで首級をうなだれる他無かった。この機構もまた、アリス=ロンドのためなのだということが窺い知れる。一般的なベッド式カプセル型エネルギー補給器には、こんな機構は備わっていないからだ。
「このチューブ、微妙に前後に動いてないでッチュウか?」
「やめて、コッシロー。わたくしも気付いていたけど、見て見ぬ振りをしているのよ!?」
「うわァ……。まるでチューブが生き物のようにうごめいているのですゥ!」
「だから、やめなさいってっ! クォール様に聞こえたら、あの方を本当に地中に埋めなきゃならなくなるからっ!!」
実際のところ、アリス=ロンドのお尻とドッキングした細長いチューブからは星皇自身が生み出す神力が注ぎ込まれていた。その多大な量とねっとりとした白くてドロッとした液体がチューブの中を進んでいくために、そのチューブがまるで生き物のようにうごめいてみせたのである。
しかしながら、その動きが卑猥すぎたために、カナリア=ソナタは眼を丸くして凝視せざるをえない事態になっているわけだ。さらにカプセルの下部からもう1本、星皇自身が生み出す神力をアリス=ロンドの体内に送るためのチューブが生えてくる。今度は結構な太さであり、さすがのカナリア=ソナタも恐ろしさを覚えてしまう。
「アリス様が美味しそうにチューブをしゃぶっているのですゥ!」
「だから、解説はいらないって言ってるでしょ!?」
「これは絵的にダメなやつでッチュウ。星皇様は善意でアリス様専用のこれを地上に送ってきたかもしれないでッチュウけど、これはさすがにダメでッチュウよ!?」
ベル=ラプソティたちはさすがにこれはダメだと思い、周りからアリス=ロンドがカプセル内でされていることを見られないようにと、自分たちで布を持ち合い、皆の眼からの壁となるように立ち並ぶ。コッシロー=ネヅも騎乗獣の姿に成り代わり、ベル=ラプソティたちと共にアリス=ロンドのエネルギー補給姿を一団の眼に映らないように細心の注意を払わざるをえなくなる……。




