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勇者と相撲大会 その2

ようこそ。


暇なら読んでみて下さい。



( ^-^)_旦~

 迎えた相撲大会当日、社長以下会社の皆はクラウンの応援に来ていた。


 会場は町の由緒ある神社で、土俵の近くにブルーシートを敷いて、出店からつまみを調達しつつ花見のように酒を飲んでいる者もいる。我らがエビス運送もその例に漏れない。


「さぁ、みんなクラウンを応援するぞ!とりあえず乾杯!」


「「「「「「乾杯!」」」」」」


 応援する気があるのかないのか、すぐに皆はそれぞれに飲めや歌えや楽しみだした。ちなみに、マサは皆の代わりに仕事で欠席だ。


 その頃、クラウンはというと…。


「やはり…緊張するな。私としたことが恐れているのか…」


 出場選手の集合場所で、他の選手に気圧されていた。


 見渡せば、強者に囲まれていた。八百屋の平八、魚屋の権兵衛、焼き肉屋の田五郎など噂に聞く猛者ばかりだ。


 ゴツイ奴らの中に入れば、クラウンなどただのヒョロガリ金髪クソ野郎である。彼はすっかり萎縮してしまっていた。


 そんな中、一人の男が話し掛けてきた。


「おい!金髪!お前どこぞの勇者らしいけど、相撲なんか取れるのか?おじいちゃんよぉ!」


「なっ!私はジジイではない!君たちと肉体年齢はほぼ同じだぞ!」


「どうだかなぁ?おめぇウメさんと見合いしてかなり良いムードだったんだろぅ?」


「だったら何だというんだ!ウメさんは素敵な女性だ。旦那さんを早くに亡くし、女手一つで子供を育てたと聞いた」


「そんなこと、てめぇに言われなくても百も承知だ!!てめぇがウメさんに相応しいか…俺が確かめてやるからな!」


 ………ん?


「君は私のことを馬鹿にしたいだけ、ではないのか?」


「あぁん?!こっちは若ぇ頃ウメさんに相当世話になってんだ!幸せになって欲しいだろうが!ただし、てめぇがウメさんを守れないようなヘボい奴なら、付き合いとか認めねぇからな!じゃあな!」


 そんなことを言って男は去って行く。


『あの若者、いい奴だな。…だが、君は大きな勘違いをしている。ウメさんは…ビッチだ。私と見合いしたとき彼女にはすでに彼氏がいたんだ……しかも三人……80過ぎてもなお、お盛んで恐れ入る。知らぬが仏とはこのことか…』


 後味の悪さを残して、いよいよ大会が始まる。



  ★  ★  ★  ★



 大会はトーナメント形式で、16名で行われる。くじ引きの結果、なんとクラウンのブロックはクラウン以外は子供という奇跡が起きた。その他の猛者どもは反対のブロックで潰しあいだ。


「ムフフッ!これで、決勝までは楽勝だ!うーむ、せっかくの稽古が無駄になってしまうかもな!」


 社長との稽古を思い出したクラウンは、キリキリと胃が痛んだ……。


 流石に子供に負けることはないクラウンは、順調に決勝まで勝ち進んでいった。


「僥倖! 圧倒的実力!」


 そして、一旦お昼休憩を挟むこととなり、会社の皆のところへ行くことに。すると、


「子供相手に大人げないぞ」

「勝ち方にも色々あるだろう」

「金髪マザーファ〇カー」

「キル・ユー!」

「…社会のクズ」

「生ゴミ」

「生ゴミの汁」


 バリエーションに富んだ言葉で同僚に攻められるクラウン。ちなみに全員泥酔しているようだ。


「なぜだ!みんな私の勝利を見に来たのではないのか?!」


「子供相手に本気出して勝ってどうすんのぉ?これは町内の相撲大会だぞぉ。器、小さすぎぃ!お前の器、このおちょこくらいしかないなぁ!」


「獅子はどんな相手でも全力を尽くす!私も同じだ!」


「獅子なのはお前の頭だ。このライオン丸が」


 そんな風に思われてたのか、とあからさまにテンションを下げたクラウンであったが、


「クラウ~ン。…ヒック! お~ま~え~ …ヒック! もし優勝できなかったら、 わかってんだろうなぁ~?!」


 眼前にシャチョー現る……。


「あんだけ俺と稽古しといて、負けはありえないぞ~?」


 社長がそう言うと、同僚達からも


「社長~!もし負けたら罰ゲームをやってもらうのがいいと思う~!」


「確かにぃ!」「見たい見たーい!」

「賛成っ!」「坊主じゃー!」

「クズには制裁を…アイアンメイデン」


 歓喜の声が上がる。


 いや… 最後のは死んじゃうやつ…。


「よ~し!決まった!クラウンもそれでいいな?」


「いいでしょう!私は負けない!!ただし、私が優勝したら皆に罰ゲームをやってもらいます!」


「「「「「それでいいぞ~!」」」」」



  ★  ★  ★  ★



 今日の大会は、それぞれ離れた場所にある二つの土俵を使ってブロックごとに取組を行っているため、逆ブロックの決勝進出者が誰なのかまだ分からない。


「誰が来ても同じことだ。向こうのブロックは強者同士の潰しあいでかなり体力を消耗しているはず。それに比べて、私は万全の状態で臨むことができる!ありがとう、弱っちいガキンチョども!ハッハッハッ!」


 そんな最低なことを考えていたら、


「まもなく決勝を行います。選手の方は土俵下にお集まり下さい」 とアナウンスが入った。


「さぁ、行くか」


 気合い充分といった様子でクラウンは意気揚々と歩き出した。



  ★  ★  ★  ★



 土俵際には多くの観客が集まっていた。


「おや?」


 その中に今日は仕事のはずのマサがいた。


「おぉマサ!君も私の雄姿を見に来たのかい?仕事なのにご苦労!」


「…ちょっと色々あってな…」


「? 何でもいいさ!私の優勝の瞬間をそのドブのように濁った目に焼き付けるがいい!」


「この野郎… 調子に乗るなよ……いや、まぁいいか。楽しみにさせてもらうぜ」


 マサはクラウンに向かって、何故か憐れみを大いに含んだ視線を浴びせたあと、どこかへ去って行った。


「それでは、決勝戦開始します!」


 いよいよだ!やっと私の勇者らしい姿を皆に見せることができる!そしたら、あとは罰ゲームをやらせて…ムフフっ!楽しみだ!


 先に土俵に上がったクラウンは、まだ見ぬ対戦相手を待っていた。一体、誰が勝ち上がってきたのか。


 ドキドキしながら待っていると、どこから来たのかマサが土俵に近づいてくる。その後ろには、マワシを締めているが、フードを被って顔を隠したガッチリした体格の男が立っている。


「何だ?結局、応援にきてくれたのか。マサは素直じゃなくて困るな」


「勘違いすんな。俺はお前の対戦相手を連れてきただけだ」


 何故マサが?というクラウンの一瞬の逡巡のあと、男は土俵に上がりフードを外す。


 クラウンはその男の顔に見覚えがあった。


「そんな……なんで君が!」


「探した。こんなとこにいたなんて」


 それは、元勇者パーティーで共に冒険していた、戦士ガイルだった。

読んで頂きありがとうございます。


(*´▽`*)

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