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勇者と相撲大会 その1

暇潰しに読んでみてください。


どうぞ。


( ^-^)_旦~

 今日は仕事もない休日。クラウンは公園でトレーニングに励んでいた。


「フン!フンッ!」


 剣の素振りで剣筋を確かめながらいい汗をかいていた。


「ねぇ。あの人、格好良くない?」


 女子高生らしき2人組が離れたところからクラウンを見ていた。


『これはアピールチャンスだ!私が決してジジイではなく、イケメン勇者であるということを世間にアピールするのだ!』


 と意気込んだのも束の間、女子高生の一人が


「あの人噂の若作りジジイだよ。この間、平木さんとこのウメさんと見合いしたって」


「ウソ!マジで!」


「しかも自分を勇者とかホラ吹いて回ってるらしいよ!頭のネジが飛んじゃってるんだよ」


「こわ~!そのうち『ロックンロ~ル』とか言い出しそうじゃない?」


 クラウンは歓迎会のあと、次の日には金髪エイティーとかゴールデン好色ジジイとか様々な異名で呼ばれていた。

 今やこの町で知らない人はいない有名人である。現代の情報拡散能力を舐めてはいけない。


 クラウンはコメカミをピクピクさせながらも、いたって平静を装っていた。


『くそぅ。何か挽回できるチャンスはないものか!……帰る手段も見つからないし、もっと勉強しとくべきだった。…私は80年も生きてて今まで何やってたんだ…』


 一人で勝手にしんみりしたところで、どこからか風で飛ばされてきたチラシが、クラウンの足に絡みついて止まった。


 そのチラシを見たクラウンは、近くにいたオジさんを捕まえ、何が書いてあるのか聞いた。

 内容を聞いたクラウンは、これだ!と何事か思いついた様子で、急ぎ足でアパートに向かった。


「マサ! おいマサ~!!」


 玄関を壊さんばかりの勢いで開けて入ってきたクラウンは、休日だからと、ゆっくり布団で寝ているマサの枕元で叫ぶ。


「うるせぇな!なんだバカ勇者!」


「これを見てくれ!これ!」


 見せてきたのはさっきのチラシ。そこに書かれていたのは【町内相撲大会開催のお知らせ】の文字。


「それがどうした?出たいのか?」


「これに出て、優勝したら私がジジイじゃないと証明できると思わないか!?」


 マサは頭をかきながら欠伸をする。


「かもしれねぇけど、俺より弱いお前が優勝できるとは思えねぇけどな」


「私は本気を出してないだけだ。お前は勘違いしている。100パーセントの私ならお前など恐るるに…… ほげぇーー!!」


「とりあえず靴を脱げ。アホ」


 マサのヤクザキックが顔面にクリーンヒットし、クラウンは吹っ飛んだ。


「これじゃあ、優勝はまぁ無理だな」


 マサは、目を回して畳でのびているクラウンを横目に顔を洗いに向かった。



  ★  ★  ★  ★



 後日、会社にて仕事帰りにクラウンが、


「シャチョーさん!今度、町内の相撲大会に出ることにしました。そこで優勝して私が年寄りでないことを証明してみせますよ!是非見に来て下さい!」


 と社長に猛アピールしている。


 …その時、クラウンは気付いてなかったがギラッ!と社長の眼が光った。


「おぉ!それは名案だ。それなら誤解も払拭されるかもしれないな」


「シャチョーもそう思いますか!よ~し、今日から特訓しないといけないな!」


「いいな!それなら、私も相撲は好きだし、クラウンの稽古に付き合うぞ!」


 小太りで愛嬌のある顔をした社長は、笑顔で言う。


「それは心強い!よろしくお願いします!」


 二人は熱く握手を交わした。

 


  ★  ★



 相撲大会に出場することにしたクラウンは、先程のくだりを家に帰ってマサに話すと、


「…まぁ頑張れや。けど…今から気合い入れとかないと、お前大変なことになるぞ…」


「何がだ?そんな強敵がいるというのか?!」


「こっちの話だ。……すぐにわかる。骨は拾ってやるよ」


「おかしな奴だ!!まぁ見ていろ。相撲大会で優勝したら次は……マサ!貴様の番だ!今までの恨みを晴らしてやるぞ、このハゲチャビン!」


「生き残れたらな……楽しみにしとくわ」 


 後日クラウンは、マサの言ったとおり大変な目に遭う。


「オーガだ……。この世界にもいたのか…」


 クラウンはつぶやく。それは対戦相手に向けてではなく……


「ごらぁ!クラウン!早く立たんか!また踏んづけられてぇのか!あぁん!!」


「ヒィィー!すいません!!」


 社長だった。


「だから言ったろう。気合い入れとけって…」


 稽古を見ていたマサがボソッとつぶやく。


 社長は、普段はえびす様のような風体で、人が良さそうだが、昔は大学相撲で有名な力士だったらしい。なので、相撲のことになると人が変わってしまうことを会社の皆は知っていた。 


「昔、質の悪いレスラーみたいな当たり屋が会社に乗り込んできたとき、笑顔の張り手一発で病院送りにしてたな……」


 クラウンは社長に掴まれては投げられを繰り返している。既にボロボロだが、回復力だけはあるので心配はしていない。


「おい!マサ!無間地獄だ!社長を止めてくれ!!」


 クラウンはべそを掻きながら懇願してくる。


 ふぅ、と嘆息してマサは言う。


「社長」


「おぅマサ。何だ?」


「クラウンはまだ余裕があるように見えます。もう、ケガも回復してきているし鍛え方が甘いんじゃないですか?」


「なにっ!?お前もそう思うか!俺も年上だからってかなり遠慮してたんだよ」


 これで?…嘘だろう…


「コイツは優勝を目指すと言ってました。けど、今のままじゃ町の猛者達に勝てないと思います」


「確かに…そうかもしれん」


「俺は、コイツの可能性を信じたい。だから本気で稽古をつけてやってください。お願いします!」


 マサはバッと社長に頭を下げた。マサの肩に両手を置いて社長は言う。


「マサ…お前の気持ちは受け取った…。俺に…俺に任せろ!!」


 何だ、この茶番 とクラウンは思った。


 唖然としているクラウンを見てマサは言う。


「言ったろう?骨は拾ってやるから心配するな。ツヨクイキロ」


 振り返ることもなく帰って行くマサの背後から、しばらく声にならない悲鳴が響いていた。

読んで頂きありがとうございました。



ヾ(o´∀`o)ノ

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