ここは何処?
一話目になります。
完全に勢いで書いています。
暇なら読んでみて下さい。
( ^-^)_旦~
「ここはどこなんだ?みんなはどこに?」
勇者クラウンはさっきまで、魔王討伐のため三人の仲間達とともに魔王城で激戦を繰り広げていた……はずなのだが……。
石のように堅い地面に、見たこともない洗練された造りの建物。自分が立っているのは、どうやら舗装された道の真ん中のようだ。
「まったく見たこともないところに来てしまった…。罠の転移魔方陣でも作動したのか?」
そんなものに引っ掛かった記憶は無い……こともないな。が、今はそんなことはどうでもいい。
「何とか戻らなければ…。皆、無事だといいが」
と、考えていたところで
プップゥー!! キキィー!
「危ない!?鉄の箱が襲ってきた!新種のゴーレムか!?」
「気を付けろバカヤローが!なんだ?変な格好しやがって!」
道路の真ん中に立っていたので、思いっきりトラックに轢かれそうになった。
「変な格好とはなんだ!これは由緒正しい勇者専用の…」
「うるせぇ!このコスプレ野郎!死にたくなかったらそこをどけ!」
車のドライバーは、体格が良く薄毛にひげ面の男だった。なかなかのコワモテである。
「コス……なんとかは分からんが、私は断じてどかん!!」
「あぁん!何だとぅ…。ん? お前……そこ動くなよ」
「そもそも動けん!」
車から降りてドライバーの男はクラウンに近づいていく。
「お前…やっちまったのか……」
「私は、断じて腰を抜かしてなどいない。勇者は何を前にしても動じない!」
「ちょっと漏らしてるじゃねぇか。…驚かせて悪かったな」
「謝るな。持病のチョイモレ腰がたまたま発症しただけだ」
「そんな持病があるか。とりあえず俺の着替えがあるからそれを着ろ」
「恩に着る」
その後、マサと名乗った中年ドライバーと勇者クラウンはコインランドリーで洗濯している間にお互いのことを話していた。
「そうか…。この世界とは違うところから来たのか…そりゃ災難だったな…」
「いや、私は必ず帰ってみせる。まずはその方法を探さなければならないが…」
「何かあてはあるのか?」
「今のところはない」
「そうか。なら俺と一緒にくるか?とりあえず飯ぐらいはなんとかなる」
「そういう訳にはいかない」
「何でだ?」
「ムサイおっさんと暮らしたくない」
「ぶっ飛ばすぞ」
マサはコワモテだが、面倒見がよく人に慕われている。今回も厄介事だと思いながらも突き放せない状況だと、助け船を出そうとしたのだが…。
「それが嫌ならこれからどうすんだ?」
「…なんとか転移魔方陣を完成させて元の世界に帰る」
「何とか魔方陣ってやつの作り方は解ってんのか?」
「……」
「お前…そもそも魔法使えるのか?」
「……」
「できるまでどの位かかるんだ?」
「……」
「お前…実は何もできないんじゃないか?」
「うるさいな!私は勇者だぞ!そんなわけあるか!」
「図星か。めんどくさい奴だな」
そんなやり取りをしていたら、洗濯乾燥が終わった。マサはクラウンを着替えさせる。
「じゃあな。驚かせた分の禊は済んだから、ここでお別れだ。元気でな」
マサが別れを告げてトラックに戻ろうとすると。
「マサ、待て。私は君について行くことは気が乗らないが、行ってやってもいい」
「結構だ。じゃあな」
「どうしてもと言うのならやぶさかでは無い」
「何遍も言わせるな。結構だ。じゃあな」
「私は、護衛としても役に立つぞ」
「間に合ってる。俺は顔が怖いもんでほとんど絡まれもしない」
「私は君のようなハゲチャビンと違って、金髪碧眼のイケメンだから、一緒にナンパすればウハウハだぞ!」
「誰がハゲチャビンだ。もう許さん」
マサは、軽~くクラウンの頬に右拳を叩き込んだ。すると、クラウンは派手に吹っ飛んで倒れ込んだ。
「ぶったね!親父にもぶたれたことないのに!!」
「お前、仮にも勇者だろう?この程度で倒れていいのか?」
「あぁ~!今ので骨が折れた!これは直るまで面倒見てもらわないといけないな!」
…たちの悪い当たり屋みたいなこと言いやがって…。
「じゃあ、病院に連れて行ってやる。お前らの世界でいうと、治療する奴がいる場所って感じか?」
「そこには美女がいるのかい?」
「あぁ、いるぞ。お前が好きそうなのがたくさん。まぁ、自分で言ったようにお前みたいなのはこの世界じゃ珍しいから、行ったらどうなるか楽しみだ」
マサはニヤリと笑う。
「冗談はやめてくれ。私のような美男子に何かあるわけないだろう」
「とにかく俺のせいで骨が折れたんだろ?今から行くぞ。早くトラックに乗れ」
「ちょっと待ってくれ!もし、骨が折れてないと言ったら?」
「心配するな。俺が今すぐ折ってやる」
「すみませんでした。折れてません」
「当たり前だバカ」
…コイツ、ほんとに勇者なのか?どう考えても虚言癖の異常者にしか見えん。めっちゃ弱いし、性格もワガママ過ぎる。
こんな奴が何処の世界か知らんが、救えるわけないと思うけどな…。
マサの推測は残念ながら大正解である。
クラウンは勇者ではあるものの、ただ神の啓示で勇者に選ばれただけであり、努力が嫌い、魔法も使えない、剣の実力もなければ頭も悪い。
そのくせプライドだけは人一倍かつ女好きで、見た目だけは良い最低の勇者だった。
「とにかく、一緒に来る気があるならさっさとトラックに乗れ。俺はまだ仕事がある」
「ビョーインに連れて行く気じゃないのか?」
「金がかかるのに、なんともない奴を連れて行くわけねぇだろ」
「解った」
「あと、お前にはちょっと教育が必要だから厳しくいくぞ。覚悟しとけよ」
「君のようなブサメン筋肉ヒゲダルマに教わることなど何も無いと思うけどね」
「お前……。ちょっと、こっちこい」
「何だね。早くこの世界の美女たちに会いに…ちょっと待て!どこにいく…!引きずらないでくれ!おい、マサぁぁぁ!!」
その後、顔面がボコボコに腫れ上がり誰だかわからなくなったクラウンと、少しだけスッキリした表情のマサは、結局病院に寄ってマサの家を目指したのだった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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