繁忙期とお休み21
うちって、先祖に外国人がいるんだろうか。
『なにまだ中二病なの? 残念ながらうちは代々農民! おじいちゃんの代からサラリーマン! お父さんとこも立派なサラリーマンでしょ。変なこといってないで彼氏の一人や二人作りなさいね』
「……彼氏2人はいたらダメでしょ……」
バイトを終えて部屋に戻った私にすげない返事を書いてきたのはお母さんだ。
話していてもメールでも大体はやく孫の顔が見たいという結論になるのが厄介な、ちょっとお節介な普通の日本人である。
お父さんもお母さんも、ついでにいうとどっちのおじいちゃんおばあちゃんも純日本人顔なのであんまり期待はしていなかったけれど、やっぱり魔女の要素が入っていなさそうな答えだった。どういう経緯で魔女のナントカ成分が流れる家系になったんだろう。
「テピちゃんたち、お風呂入るから卵よろしくね」
「テピ!」
浴室の近くにタッパーを移動させて、私はシャワーを浴びる。疲れた体にお湯が気持ちいいけれど、頭をぐるぐる回るサフィさんの話は流れていかなかった。
魔女って、何なんだろう。
魔術を使うとサフィさんは言っていたけれど、サフィさんの職業である魔道士とはちょっと違うそうだ。魔力の量が重要視される魔道士とは違い、魔女は血統でなれるかどうかが決まる。そして身内に魔女がいればほぼ確実にその資格はある。
とかいっても。
例えばユウと顔を合わせるのが嫌だからといって、魔女の力を身につけてどうにかしようとは思えなかった。というか、自分にそんな可能性があるというのもやっぱり信じきれないし。
まじょばちゃんは、どうして魔女になろうと思ったんだろう。
「ふーさっぱりした。テピちゃんたちもお疲れ」
「テピー!」
ローテーブルの上にタッパーを載せると、テピちゃんたちがてぴてぴと動き回った。ムニムニと撫でつつ、卵の様子もチェックする。相変わらず卵だ。
「ん?」
ふと違和感を感じてベッドの方を見る。
なんだか、様子がおかしい。
ざわざわした気持ちを抑えながら、私は掛け布団を掴んでめくった。
「……シノちゃんんんー!!」
「ン〜チョット〜シズカニシテヨネ〜」
「人の布団で寝るなー! ていうか一日中寝てたの?!」
仰向けでスヤスヤしていたシノちゃんは、全身が羽根で覆われていて顔色がわからないせいか動いていないとパッと見死んでるっぽくて心臓に悪い。
大きなクチバシを開けてクワーとあくびをしたシノちゃんを両手で掴んで起こすと、乱暴ダヨネ〜といいながらも翼を伸ばし、それから私の足を梯子がわりにのしのしとベッドを降りた。
「ズット寝テタンジャナイヨ〜、1時間クライ出カケタカラ」
「ほぼ一日中じゃん」
「アトハネ〜、留守番シテタヨ〜。シノチャンイイコダネ〜」
ナデテと頭を差し出してきたので、わしわしとトルコブルーとピンクの頭を揉む。
「シノちゃん、お留守番してくれてたんだ。……誰か来た?」
「ピンポン何度カ来タダカラネ〜シノチャンノオハコ、強ソウナオッサンノ声デ返事シタラ帰ッタヨ〜」
「おっさん……?」
シノちゃんが咳払いをして、いきなりおっさんの声を出した。なんだコラやんのかコラと威勢よく発した声は、確かに強そうだった。あんまり気軽に仲良くしたいとは思えないタイプの声なので、インターホンを押した人物もドア越しに何度か返事したらいなくなったそうだ。
「そっか。シノちゃんありがとう」
「デモ〜タブンマタ来ルダヨネ」
「また来るの……」
シノちゃんを膝に乗せてわしわし揉みながら思う。
多分、このまま何もしないでいても事態は好転しないんだろうな。会いたくないけど、こうやっていつ来るかとか考える毎日も嫌だ。
なら、どうにかするしかない。
「シノちゃん、明日も来てくれる?」
「イイトモ〜。ソウイエバ、シノチャンノ生クリームハ?」
「あ、あれ、お菓子に使おうかなって。魔王さんにも食べてもらいたいし」
「シノチャンノ生クリーム奪ワナイデッ!!!」
「ちょ、静かに」
「シノチャンノ生クリームッ!!」
「分かった、分かったから」




