ねらわれたまご23
財宝鳥の卵について、まじょばちゃんは色々調べてきてくれたそうだ。
そのいち、卵は結構丈夫。外側からは、トンカチで叩いたくらいでは割れないらしい。お尻で敷いても大丈夫。
そのに、価値はものすごく高い。時期によっては金貨なら軽トラの荷台山盛りレベル。やばい。
そのさん、愛情をこめるとそれだけ早く孵化する。
「いや、愛情って何?」
「アラ〜ユイミーちゃん、ラブヲ知ラナイ年頃ナノ〜」
「ラブくらい知ってるし! 卵に込める愛情ってなんだって話でしょ!」
「アァ〜ソコソコ〜」
変なイントネーションで変なことを言うシノちゃんをひっくり返してボサボサにしてみたら、仰向けのままイイヨ〜と足をワキワキさせていた。何がイイヨだよ。
よしんば私がラブを知らなかったとしても、人に対するラブと卵に対するラブはまた違うんではないか。ていうか私哺乳類だし卵とかいわれても。
「しかも托卵された卵だし……愛情持てる人いるの? 逆に」
「ヨシチャンハネ〜薄々ワカッテテモ育テテルトキハヤッパカワイイッテサ〜」
「誰、ヨシちゃんて」
「オオヨシキリダヨ〜カッコウニ托卵サレテルデショ〜」
「托卵される側のプロじゃん」
「シノチャン顔広イダヨネ〜」
カッコウは托卵する鳥として有名だけど、される側の鳥はよく知らなかった。今なら仲良くなれる気がする。
とはいえ、鳥類じゃないので卵を見ても特に本能とか刺激されないので、卵に愛情をこめるのはよくわからない。
「まじょばちゃん、具体的にどうすればいいの?」
「うーん、話しかけたり、撫でたり、枕並べて一緒に寝たりすればいいんじゃない?」
「卵に……?」
ちょっと話しかけたことはあったけど、撫でるとか一緒に寝るとかはどう考えてもやばい人すぎる。想像するだけでキツい。
奇行を繰り返して早く孵化させるか、普通に暮らしてゆっくり孵化させるかだと、私はぜひとも後者を選びたい。
「ちなみに、愛情をかけない場合はどれくらいで孵化するの?」
「さあ、前例があんまりないからねー。ただ5年かかったって記録もあるわよ」
「どっちに転んでも地獄すぎない?」
大学卒業してしまうじゃないか。いやだ、卵と一緒に新社会人生活始めるの。
テピちゃんたちの渾身の愛情を受けてるんだからすぐ出てきたりしないだろうか。あの集団、私なんかよりもずっと卵に優しいし。
しかし何もせずにいて5年かかっても嫌なので、なるべくメンタルに支障をきたさない形で、その愛情とやらを卵にかけることにした。卵にかけるのは醤油だけでいいのに。
しかし、まあ卵についての知識が増えたのはよかった。
よくわからない状態で預けられていた頃よりは、なんだか安心していられる。ちょっとだけ。
とりあえず孵化を目標に頑張っていこう。
「ユイミーちゃん、おかわりっ」
「ちょっと魔女、俺の夕食なんだけどー?」
「私の方が昔からユイミーちゃんの手料理食べてるしー」
「いや、どうでもいいことで争わないで。おかわりあるから」
「ホント〜ジャーシノチャンモオカワリシチャウ〜」
「シノちゃんは食べすぎ」
結局夜まで居座ったマイペースコンビは、サフィさんも交えて夕食までとってから帰った。
手羽元の梅煮、明日の昼食分もまとめて作ろうと思ってたのに、全部それぞれの胃袋に消えてしまった。いっぱい食べてもらえるのは嬉しいのでいいけど。シノちゃんは食べ過ぎだったけど。
私も一緒になってたくさん食べ、テピちゃんたちは近寄ってくるまじょばちゃんたちの指やシノちゃんの手から卵を守りつつご飯を食べ、ちょっと不満そうだったサフィさんは、熟成中のニンニク醤油を見て笑顔になった。
夜、寝支度を整えてベッドに座る。
まじょばちゃんは忙しいらしいけど、また様子を見に来てくれるらしい。卵を欲しがるお客についても大丈夫そうだということが分かったし、また今日から気持ちを切り替えて頑張れそう。
「テピちゃん、おやすみ」
「テピ!」
「卵、おやすみ」
金銀金の卵を手に持って、話しかけてみる。
「……」
いや、やっぱダメだわ。我に返るとダメだわ。
「……じゃあテピちゃん、今夜も温めといてね」
「テピー」
少しずつ、頑張っていこう。少しずつ。
とりあえず問題をローテーブルに置いて、私は部屋の明かりを消した。




