たくらんだとり14
金銀メタリックな財宝鳥。赤くて派手で声の大きいスジャーク。そして水色とピンクが眩しい死の鳥。手のひらに乗るそれらの羽根を眺めていると、何かがズシッと背後に押し寄せてきた。
巨大なサイズになった金の財宝鳥が、ホロローホロローと私を見下ろしている。押されて前に進もうとしたら、銀の方が前からサンドイッチしてきた。
重い。そして暑い。
前後を挟まれているので横から逃げられないかとじわじわ動いていると、肩をグッと引っ張られた。巨大スジャークが私の肩をクチバシで咥えて「ヨキカナッ!」と叫んだ。
何この地獄。
羽根を握りしめて脱出を図るけれど身動きが取れない。
スジャークが咥えている肩と反対側の手首を誰かが握って、何か話しかけている。振り払おうにも体が動かない。
だれかーと声を上げたけれど、言葉もうまく出なかった。
けれど伝わったのか、大きな黒い影が近寄ってくる。
大鎌を持ち、黒いボロボロのローブを被った頭蓋骨がカチャカチャと動いた。
「コンニチワ〜死神ダヨ〜」
「……うっ?!」
ハッと目を開けると、そこは自分の部屋だった。
天井が斜めに見えている。閉めた窓の外から朝日が差し込み、鳥の声が聞こえていた。
「暑い」
どうやら夢を見ていたようだ。
気温が上がったせいで、冬用の布団と毛布が暑かったせいだろうか。いつになく寝相が乱れていて、斜めになっているため右肩と腕がベッドからはみ出していた。体が変に反り返っている。
ゆっくり体勢を戻してから起き上がって溜息を吐いた。
変な言い伝えのある3種類の羽根を全部押し付けられてしまったので、心配のあまり悪夢を見てしまったようだ。デカい鳥は圧迫感があったし、死の鳥の甲高い声を出す死神さんはかなりカオスだった。ノリは似ているけど、混ぜたらダメなふたりだ。
いや落ち着こう。
何かが起きるとはいえ、悪いこととは限らない。
いらないと言っている羽根をグイグイ押し付けてくるあたり、どんなことであれあんまり嬉しくないのは事実だけれども。
まじょばちゃんのブレスレットがあるから、怪我とかそういうことはしないはずだ。
怪我以外でもイヤなことは山のようにあるけども。
それにもし何かあっても、もらった羽根を売れば金銭面では心配はない。
むしろ多過ぎて既に憂鬱だし、あの鳥たちを見てるとお金で解決できないことが起こりそうだけれども。
ダメだ、どう前向きに考えようとしても現実的なネガティブさが襲ってくる。
諦めてとりあえず起きることにした。冷蔵庫から水に浸していたオレンジ色の玄米を取り出して炊飯器のスイッチを入れる。それから顔を洗って着替え、洗濯ものを集める。
シーツを剥がそうとしたとき、枕元に3本の羽根が転がっていることに気が付いた。
金の小さな羽根と、赤くて長い孔雀のような尾羽、そして水色の真っ直ぐな羽根。
「……」
それらを掴んで、壁にある古めかしいドアを開ける。
棚に置いたメタリックなものが入ったタッパーも、その上に置いてある水色メインの羽根が入った大きいジッパーバッグも、それらの手前にある大きくて長い羽根も、昨日置いた場所から動いていない。
ならばベッドの上にあったこの羽根は何。
「……」
何もなかったことにしよう。
持っていた羽根をその棚に置いて、私はまた自分の部屋に戻った。羽根よりもごはんだ。
「いらっしゃいませー」
買い物をすませてから迷宮へ来るとすぐにテピちゃんたちが来て、それから間もなく魔王さんも来た。昨日はありがとうございました、とお礼を言うと、コクッと頷いている。
果物屋さんイチオシだったビワをそれぞれ1つずつ剥きながら食べてから、その残りといつものフルーツを持って魔王さんは帰っていく。ドアを開ける直前に、紫色に光る目が私の方を向いた。
『新たなる訪問者よ』
「はい」
『…………汝に幸あれ』
黒い靄に包まれた魔王さんが、また謎に包まれた言葉を残して帰っていった。
グッドラックってことだろうか。それにしては謎の間があったな。
この、羽根が揃ったタイミングでそんなこと言われると、なんだか不安だけど、関係ないよね。
はしゃいでいるテピちゃんたちからビワの皮を回収しつつ棚から目を逸らした瞬間、ドアの方からコツコツと音が聞こえてきた。
「あっ」
私がドアに近付くまでもなく、ガチャガチャとドアノブが動いてドアが開く。外側のドアノブに並んで乗っていた金と銀の鳥が、バサササと羽ばたきながら店内に降り立った。
こいつら、とうとう自力で入ってきた。
ビワの皮を持ったまま見つめると、金色の方が全身をふっくらと膨らませ、心なしかドヤ顔でホロロローウ、と鳴いた。
不吉だ。




