たくらんだとり11
「というわけでして……すみません、変なところをお見せして」
私が金銀ペアの財宝鳥に対する怒りをなんとかおさめ、それから立ち上がって説明すると魔王さんは手を貸しながら黙って聞いてくれた。やさしい。あと魔王さんの手あったかい。
私と魔王さんの足元には、メタリックな羽根が散らかっている。
ひとの店を散らかすな。あと高値なものを勝手に置いてくな。
そう言ってやりたくても、財宝鳥たちはどこにもいなかった。今日に限ってサッサと帰ったらしい。
『財宝鳥は相手を眠らせる声音を持つ』
「かなり迷惑なスキルですね……」
『財宝鳥の羽根は価値が高い。新たなる訪問者が売れば多くの金貨が手に入るだろう』
「そんなにお金いらないです……」
ギラギラな床を見下ろしながらそう言うと、魔王さんが黒い手をスッと出して、爪の長い人差し指で緩く何かを指すような仕草をした。そしてその指をくるくると回すと、どこからともなく風が巻き起こり、床の上でつむじ風になった。軽い羽根がどんどんそれに巻き込まれ、やがて床を離れたかと思うと、一塊になって魔王さんの手のひらにおさまった。
「おお……!! すごいですね!!」
思わず拍手する。なんかカッコイイ。魔法だろうか。
しかしメタリックなフワフワを差し出されたので私のテンションは下がった。
「……私、それいらないんですけど、あの、もしよかったら、魔王さんの方で処分してくれたり……できませんかね?」
『既に汝の所有物となっている。正規の契約に基づき所有を放棄せねば手放せぬだろう』
「え、どういうことですか?」
魔王さんがもうひとつの手を出して爪先で1枚羽根をつまみ、しげしげと眺めてからそう言った。
人を眠りに陥らせてそのあとにバラ撒いただけの羽根にしか見えないけれど、何が見えているのだろう。首を傾げると、魔王さんがスッと私から離れて壁際に近付く。それから手のひらの上にある羽根を少し掲げるように腕を伸ばすと、その手のひらからゴッと勢いよく紫色の炎が噴き出た。
「おー!!」
動物の頭蓋骨から見える目の色と同じ炎だ。ボワッと燃えた炎は1メートルほど立ち昇り、天井近くまでいった瞬間にパッと消える。ふわっと風を感じたけれど熱は感じなかった。
すごいとまた拍手する私の足元を、魔王さんは炎を出した手でスッと指した。
視線を下ろすと、ふわふわと飛んだ羽根が私の足元に集まって落ちている。
「……」
『我が煉獄の焔を以てしても滅することができぬ。所有者が決まっているのであれば、いかな過程を経ても汝の手に戻るであろう』
「……」
私の周囲を囲うように落ちた羽根のサークルから、そっと足を抜いて移動する。それからカウンターに近い、魔王さんと距離を取った部屋の角へと移動した。
「すみません、もう一度やってみてくれますか?」
魔王さんは黙って、またクルクルと風を起こした。手にこんもり載った羽根をゴッと燃やす。羽根はその勢いに乗ってぶわっと飛び散り、それからふわふわと空気に流されながら、不自然な勢いで私の方に飛んできた。私が逃げると、ふわーと進路を変える。私が移動することで起こった風に乗っているようにも見えるけれど、何十枚という羽根が似たような感じで付いてきたらそれはもうホラーである。私が歩いた道をなぞるように羽根が落ちて不気味。
あの鳥、派手だけど無害そうな顔をして、なんという呪いの品を勝手に人に装備させていったのか。
「……契約をして、これを引き取って貰うことは」
『汝が相応の望みを持たぬならば、我が金貨を対価に契約は可能』
「そうなりますよね……」
これを全部買ってくれるほどの財力がありそうな魔王さんの凄さは置いておいて、お金に変えるとなると確実にこの羽根よりは場所を取るし重くなる。私の心も重くなる。
「ちなみにこの羽根を対価にできそうな望みってどんなものがありますか?」
そう問い掛けると、魔王さんはクルクルと羽根を巻き上げながらしばし黙った。
『……我が能力ならば、四肢のうち二つを完全に蘇らせるのが相応と考える』
「すごいですね……」
色んな意味で。
魔王さんがひとの手足を蘇らせる能力があるのもなぜか納得できるけどすごいし、それくらい凄いことでないとこのギンギラな羽根を引き取ってもらえないのもすごい。
手足のうちお好きな2本を失っても大丈夫なクーポンをゲットした、と考えても全然お得感がなかった。そんなクーポン使う機会、人生で永遠に来ないでほしいし。
「とりあえずこのまま保管することにしますね……」
『汝の選択は最良といえよう』
「ありがとうございます……」
魔王さんが集めてくれた羽根は、散らばると邪魔なのでタッパーに入れておくことにした。他に入れ物がなかったので百均で買ったごはんを入れるためのものである。
ふうと溜息を吐いた私を魔王さんが心配そう(に見えた気がした)な目で見ていたので、私は気を取り直していつもの上級南国果実Bとマンゴーを渡し、別に買ってきた高級マンゴーを切って魔王さんに出した。
魔王さんが勧めてくれて私も一緒に食べた。美味しすぎて元気出た。




