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魔力さがし14

「チョットユイミーちゃん〜黙リコクッチャッテ怒ッテルノ〜心配シナクテモユイミーちゃんガ一番撫デ上手ダカラネ〜ユイミーちゃんハシノチャンノコト大好キダヨネ〜」

「いや別に怒ってはないけど」

「モージャアシノチャンノコト撫デテモイイワヨッ!! 抱ッコシテ好キナダケ撫デタライイジャナイッ!!」

「いや今は撫でてる場合じゃないような……なんかさあ」


 バッグから出てきそうなシノちゃんを押し留めつつ、私はさっきから疑問に思っていたことを聞いた。


「帰り道……長くない?」


 そう。

 大学から突然の飛翔をさせられてから殿下と騎士のおもしろ漫才が繰り広げられた空間に到着するまでの時間より、今飛んでいる時間の方なんか長いような気がしてきたのである。


「行きはもうちょっと飛行時間短くなかった?」

「シノチャン寝テタカラッ!」

「ハイパーヘルプマシン、どう思う?」

『往路ト復路ノ飛行時間ニハ明確ナ差ガアリマスネ。速度ハ計測困難デスガ、振動カラスルト翼ヲ動カス間隔ハホボ同ジナタメ、現在ノ飛行ノホウガ飛距離ガ長イ可能性ガアリマス』

「スジャークさーん! そろそろ帰りたいんですけど! バイトあるし!」


 首をそっと叩いて声を掛けると、前を向いていたスジャークさんがチラッとこっちを見る。そしてヨキカナッと鳴いてからまた前を向いた。


「いや絶対ヨキカナじゃないよね。飛び続けてるんだけど」

「ウケルヨネ〜」

「ウケてる場合じゃないよシノちゃん。帰るの遅くなったらまた晩御飯冷食だからね」

「チョットアンタヤメナサイヨオォッ!! シノチャンタチハ帰ルノヨッ!!!」


 クワッと怒ったシノちゃんは、スジャークさんが振り向くとサッとバッグの中に隠れた。赤い頭が前を向くと顔を出し、また振り向くとサッと隠れる。何回か繰り返しているけれど遊んでる場合じゃないと思う。


「ねえスジャークさんマジで帰うわちょっとまたどっか行こうとしてる!」

『異世界ツアーデアリマスネー』

「いやそんな呑気なものではなくない?!」


 感じた覚えのある急降下に荷物を抱えつつスジャークさんに掴まる。

 どうにか無事に着地した私は、周囲を見渡した。

 なんでか花畑にいる。


「だからここどこ」 

「ヨキカナッ」


 ファッサァと翼を畳んだスジャークさんを、とりあえず揺すってみた。ぐわんぐわんさせてみたけれど、スジャークさんは優雅な顔でぐわんぐわんさせられている。何だろう。さっきの王女殿下と何が違うんだろう。やっぱり王家の気迫だろうか。

 ヨキヨキ、と何故か私のわがままを許しているかのような寛容な声で鳴いたスジャークさんがのしのしと歩き始めたので、私もついていくことにした。今度スジャークさんの好きなお弁当が入荷しても、教えずに私が食べてもいい気がする。


「ヨキッ」

「……なんか教会ですね」


 荘厳な雰囲気のある、彫刻の施された高い建造物。なんかそれが光の柱みたいなのに包まれている。

 見上げると空はきれいに晴れているので、雲の隙間から降り注いだ光というわけでもなさそうだ。どういう仕組みなんだろう。なんかセキュリティ強そう。


「ヨキカナ」


 見上げている私の隣に移動してきたスジャークさんが、布越しに宝玉をつつく。


「え? もしかしてこれも吸えと?」

「ヨキカナッ」

「なんかこれ、白いですけど……大丈夫なんですか?」

「ヨキッ!」


 今まで黒っぽいモヤモヤは宝玉に溜めてきたけれど、これは神々しいほどに眩い光を放っている。同じ魔力なのだろうか。ていうか混ぜて大丈夫なんだろうか。


「……本当にいいんですか? なんかバチとか当たるんでは」

「ヨキ」


 そのヨキ、バチが当たってもいいという意味じゃないですよね。

 私が疑いの目で見ていると、バッグからニュッと頭が出た。


「ハヨ吸エッ!! シノチャンガオ腹スカセテルデショウガッ!!」

「ええー……怒られたらスジャークさんとシノちゃんのせいだからね」

「ハヨハヨッ!」


 ふたりの鳥に迫られて、私は宝玉を掲げた。






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