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バイト先が異世界迷宮だったけどわりと楽しくやっています  作者: 夏野 夜子
本編

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異世界探し1

 山田さんと日にちを相談して、まず翌週の金曜日に迷宮ダンジョンへ行くことにした。金曜日は比較的早く大学が終わるし、もし時間がかかったとしても次の講義まで60時間以上時間がある。


「つっても、なるべく早く帰るようにしたほうがいい。異世界は何が起こるかわからないからな。長くても半日。それ以上探すなら協力できない」

「わかりました」

「何度も言ったからわかってると思うが、異世界からの不必要な生物持ち込み禁止、危険物やその可能性があるものも禁止、この世界に危害を加える可能性があるものを怒らせるのも禁止、異世界における不要な破壊行為も禁止、異世界と繋がる通路の無断構築も禁止だからな」

「はい」


 いよいよ当日になって、山田さんは改めて説明を始めた。

 注意事項については、スケジュール合わせのときから今まで山田さんに100回くらい繰り返された気がする。もう聞き飽きたくらいだけれど、山田さんはご近所セイバースーパー山田としての使命を全うしなければならないのだ。

 私が黙って頷いていると、その横で文句が聞こえた。


「オイソレ何回言ウンダヨ〜モウ耳ガタコツボダヨネ〜ネ〜ユイミーちゃんシノチャンノ耳ドコニアルト思ウ〜?」

「ほっぺでしょ。真面目に聞こうね」

「シノチャン退屈ダト死ンジャウダヨネ〜モットユーモアヲ交エテ話サナイト聞ク気ニナラナイッ!」


 山田さんが眉間に皺を寄せつつ堪えているので、シノちゃんは抱っこして黙らせておくことにした。仰向けにして撫でるとシノちゃんは「アーソコソコ〜」と言いながら目を細める。


 私たちが今お邪魔しているのは、山田さんが所属している「組織」の拠点のひとつ。

 駅近で新しい、なんの変哲もないマンションの一階にある部屋だ。玄関とそこから見えるリビングは、綺麗に片付けられてわずかに花瓶や雑誌が置いてある、生活感があるようでないモデルルームのような雰囲気だった。さらに進んだところにある洋室に案内されたけれど、ここは一転して何もない。ただ何も飾られていないというだけではなく、文字通りに何もなかった。


 窓やクローゼットの扉があるはずの壁も、フローリングや照明があるはずの床と天井も、全面が白い素材で覆われている。靴のまま歩いた感じだと、プラスチックか陶器のような滑らかさがあった。

 何もないのに、結構眩しい。部屋を囲う6面の壁がそのまま発光しているような眩しさがある。目が眩むほどではないけれど、家電量販店の照明売り場くらいには明るい。

 明らかに普通じゃない部屋は、やはり山田さんが所属する組織というのが実在しているのだと私に実感させた。


「すみません、どうぞ続けてください」

「……うちの転送装置は、死の鳥は使えない。その使い魔は大丈夫だろうけど、もし帰ってくるときに大量に増えてたりすると魔力検知器に引っかかって通れないかもしれないから気を付けて。もし引っかかっても野々木さんは帰ってこれるけどな」

「増えても数匹なので大丈夫です」


 連れてくるテピちゃんたちについてはかなり迷ったけれど、全体の半分ほどの数を連れていくことにした。何かの役に立ってくれるかもしれないという気持ちと、またいなくなるかもしれないという心配、そしてまた付いてこようとしたヒナたちを家でお世話する必要性との兼ね合いから決まった数である。

 ちなみに黒テピちゃんとハーフテピちゃんも、リュックの中に入ってきた。ハーフテピちゃんは元々いなくなったテピちゃんのひとりだ。場所を教えてもらえるかもしれないと同行をお願いしたら、黒テピちゃんも当然のようについてきたのである。仲良しになったようだ。


「転移する前に、この機械を付けといてくれ。転移してからの体調の変化を記録してくれる装置だ。時間経過も教えてくれるし、転移可能なエリアも探してくれる」

「便利ですね」


 山田さんが取り出したのは、幅3センチくらいの薄い布のようなものだった。小さな四角いパネルが付いていて、そこに様々な機能が詰まっているようだ。

 私に断ってから、その装置を左の二の腕に付ける。服の上からでも大丈夫仕様らしい。なかなか最先端だ。


「この近くの本部にある機械と通信できるようになっていて、その機械は会話をすることもできる。緊急時マニュアルなども呼び出せるので、もし何か困ったことがあったらこのボタンを押して呼びかけてみるといい」

「へえ。やってみてもいいですか?」


 山田さんが頷いたので、私は小さなパネルについている赤いボタンを押した。


『ハイ。コチラハイパーヘルプマシーン537号。ご近所セイバースーパー山田専用機器デス。ナニカ御用デスカ?』

「…………ハイパーヘルプマシーン537号…………」

「…………」


 山田さんを見ると、山田さんは明後日の方向を向いたまま頑なにこちらを見なかった。見えている耳が赤くなっている。


 小学校2年生から使っている機械なんだろうなあ。相棒なのかな。


 シノちゃんがウェッウェッウェーッと爆笑し始めたので、私はネーミングについては触れないでいてあげることにした。山田さんには過去を乗り越え強く生きていってほしい。






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― 新着の感想 ―
新たな黒歴史公開になることがわかっていても職務を全うするスーパー山田さんえらいなぁ……。
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