3Dプリンターの性能
ある博士が、3Dプリンターで人間を作り出すことに成功した。
世の中はこの事実に大いに沸いた。全世界の興味は今、この博士がつくった人造人間にあった。この人造人間は非常に緻密にできており、見た目も人間と全く差が無く、普通に喋ることもできる。その上、心臓も脳もあり、肺もあるため、絶えず血液が巡り、絶えず息をしているのだ。
ある評論家は、倫理的に許されないと言った。ある企業の社長は、博士と一緒に開発をしたいと言った。しかし、博士はこの人造人間に危機感を感じていた。もし、この人造人間が世界に放たれたら、どれが本物の人間か、どれが人造人間か分からなくなってしまう。
博士は、本物の人間と人造人間とを区別できるようにする必要があると思った。そこで博士は、ある機械を作った。それは、心を映す眼鏡だった。見た目は普通の眼鏡だが、レンズを通して人間を見ると、ちょうど心だけが映るようになっていた。心があるのは人間だと一目で分かる。
その眼鏡を持って、博士は街に出た。博士は、発明を試せるとわくわくしながら雑踏を目の前にその眼鏡を掛けた。するとそこには何も映っていなかった。あれ?博士はおかしいと思った。完璧な理論で作った完璧な機械だったからである。
博士はもう一度眼鏡を掛けた。しかし決して、そこに心が映ることはなかった。
完璧な理論に穴があったと知った博士は、落ち込み、家に帰った。家のドアを開けて、「ただいま」と元気なく言った。すると、一番初めにつくった人造人間がすぐさま出迎えてくれて、こう言った
「博士、大丈夫ですか?落ち込んでるようですけど…たまにはお休みなさったらどうですか?」