衝撃の山羊
私は帰ってきたぞォォォォ!!!
というわけで、また書かせていただきます。
そして、アクセスありがとうございます!
精一杯、頑張らせていただきますよ
僕はプトレに案内され、厨房の奥にある階段をのぼり、部屋に案内された。
「じゃあ、僕はこれで。詳しい事はまた明日ね」
と言って、部屋のドアを閉じた。
部屋はいかにも簡素という感じで、テーブルとイス、ベッドと家具が片手で数えられるぐらいしか無かった。
「うん、なんというか...すごくシンプルな部屋というか...」
僕はそう言いながらベッドに腰をかけた。
神霊...組織...平和...なんだかとても面白そうな事になりそうだ。
いや、人間達にとっては面白くもなんともないと思うけど。
『神だからこそ思えることですね』
エリースは何の前触れもなく現れた。
「うおっ!...突然出てこられるの、まだ慣れないなぁ」
僕はエリースを上から下までまじまじと見つめた。
女性の平均的な身長よりも少し大きくて...メイド服を着ている。
「なぁ、どうしてそんな服を着ているの?」
と言うと、エリースはしみじみと目をつぶって、
『生と死の狭間で、貴方は確か完璧の象徴はメイドだとお答えしましたね?』
「あぁ、確かそんな事を言った気がするよ」
『私は貴方の「完璧」...貴方の心の内のひとつを表現し、発現したものです。なら、貴方の完璧の象徴であるメイドの姿になるのは当然の事です』
まるで当たり前のように言うエリースに、僕はただ、
「はぁ...」
としか言うことが出来なかった。
「とにかく、君は僕の神霊で、もう一人の僕である...という事でいいんだよね?」
『はい、その認識で構いません』
と言うと、エリースは机の方に向かって、何やら作業をし始めた。
「何してるの?」
僕は作業しているエリースを覗き込んだ。
どうやら、矢印で作った銃を作っては分解し、作っては分解しを繰り返しているようだ。
「...何してるの?」
『戦闘中において、どんな状況下に置かれてもスムーズに出せるように訓練しているところです』
僕は銃をじーっと見つめた。
こんな物を作れるなんて、人間というのはすごい生き物なんだなぁ...
そんな事を考えているうちに眠くなってきた。
僕はベッドに横たわるとエリースを見て、
「おやすみ」と言った。
『おやすみなさいませ...』
という声が、微睡みの中にこだました。
『おはようございます』
僕はエリースの声で目が覚めた。
「あぁ、おはよう...」
僕はベッドから起きて、下の階のレストランへ向かった。
下に降りてみるともう他の人は起きていたらしく、皆朝食を摂っていた。
「ナラク君は早起きが苦手みたいだね」
プトレはニコニコしながらご飯と味噌汁と焼き魚の「これぞ朝ご飯」ともよべる物を席に並べてくれた。
「いただきます。...美味しい!これはプトレが作ったの?」
プトレは得意げな顔をして、
「僕は後方支援が得意なんだ」
と言って、笑ってみせた。
しばらくして、朝食を食べ終わった頃。
「さて、早速だが平和の追跡を始める」
マッカスがそう言ってプトレの方を向いた。
「お前の『ピスキィ』の能力で、ナラクの記憶を覗いて欲しい」
...なんだって?僕の記憶を?
「ちょっ、ちょっと待って!記憶を覗くってどうやって?」
プトレはピスキィを発現させて、
「大丈夫だよ、すぐに終わるから!」
と言って、神霊をこちらに近付けてきた。
神霊の姿は、簡単に言えば青い金魚...といった出で立ちだった。
...なんて思っている場合じゃない!この神霊...!
「僕の頭の中にどんどん入っていくッ!」
と言うと、ガレは落ち着いた様子で、
「心配すんなって!全然痛くないからな!ま、初めはちと驚くだろうがよ...」
と言って、肩を叩いた。
感覚としては、頭の中を泳がれているみたいだった...想像出来ないとは思うけど、そんな風にしか表現出来なかった。
「なんか、変な感じ...」
しばらくして、ピスキィが額から何かを背負ってでてきた。
それは、あの夜にあの男に突きつけられた拳銃だった。
「これに撃たれてから、ナラク君は神霊を発現出来るようになったみたいだね」
ピスキィが持ってきた拳銃をマッカスはじっと見つめている。
「...うむ、間違いない。これが我々の回収すべき物、平和だ」
...あれ、これもう終わりじゃない?
「ねぇ、これが平和ならさ、これで回収したことにならない?」
と言うと、今まで黙っていたジャンが、
「これはお前の『記憶』の産物だ。本物はここにはない」
と言って、また静かになった。
まぁ、何となくそうだろうとは思ってたけど...
「...とにかく、この銃を探せばいいってことか...エリース、何とかなる?」
エリースは首を横に振った。
『これは先程ジャン様が言っていた通り、あなたの記憶の産物です。分析する事も出来ませんし、この記憶を頼りに製作する事も出来ません』
そっかぁ...ん?ジャン「様」?
「なんで様付けしたの?」
『私の姿は仮にもメイド...如何なる時でも他人への敬意を払うのは当然の事かと』
「でもさ!僕の事は様付けしないよね!なんかズルくない?」
『では、ナラク「様」とよんでほしいのですか?...違いますよね?』
うむむ...確かに、様は嫌だ。でも、なんかそれよりもいい呼び名が欲しいな...いつまでも「あなた」じゃアレだし...
『では、もう出番もないことですし、あなたの呼び方でも考えておきます』
そういってエリースは僕の中に消えた。
「拳銃のことなら...あっ!思い出した!あの男に聞けばいいんだ!」
僕はここに来る前にあった男の事を思い出した。
あの武器商人の男に、この記憶の拳銃を見せれば何か分かるかもしれない。
「なんだ、何かいい案でも思い付いたのか?」
ガレは記憶の拳銃を持ち上げたり、銃口を覗いたりしながら言った。
「あぁ、ここに来る前に武器商人と知り合ってね...その人に聞けばわかるかも」
「餅は餅屋...って訳か。名案だな」
ガレがそう言うと、マッカスもその案に賛成したらしく、
「なら、ナラクはその武器商人の男に詳しく話を聞いてくれ。他のものはここに待機しろ」
これを聞いたガレは不服そうに、
「チェッ、俺もここから出て体を動かしてぇなぁ」
と言って伸びをした。
すると突然、ガレは自分の手をパンと合わせて、
「なぁ、気になったんだが、お前の神霊は強いのか?」
と聞いてきた。
「まだ発現したばかりだから強いかどうかは分からないけど...」
と言うや否や、
「なら俺のカプリと勝負しねぇか?」
と言って、こちらにずずいと近付いた。
「近い近い...」
「あぁすまねぇ。でもな?これから行動を共にする仲間なんだ、どのぐらい強いか知りたいってのが性だと思うのよ」
「なんの性なの...でも分かった。君がどのぐらい強いのか、僕も知りたくなってきたよ」
ガレはガッツポーズをとり、
「っしゃ!じゃあここじゃあれだから外に出ようぜ!」
といって勢いよく飛び出していった。
「ねぇ...その、ナラク君。君ももしかして、彼と同じような熱血漢タイプだったり...」
プトレが恐る恐る聞いてきた。
「いや、そうじゃないけどさ、やっぱり売られた喧嘩は買う...っていうの?なんていうか、知りたくなったからかな」
「やっぱり熱血漢じゃあないかぁ!」
そう言うプトレを尻目に、僕もレストランの外に出た。
「よーし!ちょっと臭うが、ここの上でやるよりかはマシだな!」
...忘れていた。ここは下水道だった。
汚水が流れる道が真ん中に一本あって、右と左に点検用の広い道が続いている。
臭いがキツイが、戦っているうちに鼻が慣れるだろう。
「よぅし、それじゃあ...」
ガレは神霊を出した。
見た目は...顔は山羊のような見た目だが、胴体はレオと引けを取らないぐらいに筋肉質だ。足は蹄だが、手は人と同じ拳だ。
「来いッ!」
ガレはキッと引き締まった顔で僕を睨んだ。
僕も戦闘態勢に移る。
『まずは能力がなんなのか、しっかりと分析しなければいけませんね、しばらく防御を固めておきましょう』
エリースの声が頭に響く。
なるほど、こうすれば相手に自分の手の内を明かさずに済むわけか。
「来ないのか?来ないなら...こちらから行くぜッ!」
ガレはこちらに全力で突っ込み、カプリでラッシュを仕掛けた。
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「かなり強烈...!だが、エリースなら防御出来るッ!」
ラッシュの衝撃で後ろに飛ばされそうになるも、何とか堪える。
「へへへ...お前、今俺の攻撃を防御して、活路を見出そうって考えているな?」
「あぁ、君の攻撃を防御して、能力を分析しようって考えさ」
ガレは不敵な笑みを浮かべる。
「ふっ、俺の能力を見て、いや、食らっても、そんな事考えてられるか見物だな!」
というセリフを聞き終わると同時に、腕に凄まじい衝撃を感じた。触れられても居ないのに。
「何!?」
後々来る衝撃で、腕が弾かれ胴体が無防備に晒される。
「これが俺の『能力』ッ!『衝撃を遅らせる』能力だッ!」
隙を突かれ、胴体にラッシュをかけられる。
「うぼぉぉぉぉっ!」
そのまま僕は中に打ち上げられ、下水の方に飛ばされる。
「俺の勝ちだな...まァ、お前の神霊はまだ未熟だ、これから強くなるだろうし、また戦おうぜ」
このままだと落ちる...汚水まみれにはなりたくない!
「まだだッ!『矢印』ッ!」
僕は空中で吹っ飛びざまに大きめの矢印を作り、下水道に橋を掛けた。
「お前の能力は『分析』じゃないのか!?その『矢印』は一体...!?」
そういうと、ガレは再び戦闘態勢に移り、ニヤッと笑った。
「お前...何かまだ隠しているな!やっぱり戦いとはこうでなくっちゃあな!」
僕は橋を渡り切ると、頭の中でエリースに提案を持ちかけた。
「なぁエリース、あの衝撃を利用できないか?」
『敵の技を利用すると?...なかなかに面白い事を言いますね。ですが、そういう考え方好きですよ、「我が主」』
僕は敵が目の前にいるのに、思わずびっくりした。
「我が主ぃ!?」
『えぇ、折角考えたのですから、今後はこう呼ぶことにしますよ、我が主』
「何ゴチャゴチャ言ってんだ!」
ガレが再びラッシュをかける。
僕はそれに当たらないように躱す。
「避けんじゃねぇ!」
ガレがラッシュの最後に蹴りを加える。
思わず僕は蹴りをガードする。
「入った!衝撃発動ッ!」
蹴りの衝撃で僕は壁に吹っ飛ばされた。
「食らえ!」
カプリの拳が凄まじいスピードで迫り来る。
僕は咄嗟にしゃがみこみ、攻撃を躱す。
壁が衝撃で崩れるのをみて、あんなのが当たってしまったらどうなるのか、想像するまでもなかった。
『...あれです!』
エリースの声が突然頭に響いた。
「え!?何!?今すっごい忙しいんだけど!」
『あの壁の下を見てください。カプリによって破壊されて瓦礫になっています』
そう言われた瞬間。ある計画が閃いた。
「そうか!その手があったか!」
僕は瓦礫を拾って、ガレに投げつけた。
「へっ、当たるかよッ!」
ガレは瓦礫を避けて、ガラ空きになった僕の胴体に重い一撃をかました。
「今度の衝撃は耐えられるかなァ?衝撃発動ッ!」
殴られた時よりも重い一撃が胸に突き刺さる。
僕は思わず膝をつく。
「ぐっうううあぁ...」
息ができない。アレはまだ来ないのか...?
「へぇ、まだ意識があるのか、だが...!」
霞む目で上を見るとカプリが拳を上に上げていた。
「これでトドメだッ!しばらく寝てなァ!」
拳が振り下ろす瞬間だった。
ガレの後頭部にさっき投げつけた瓦礫がぶちあたった。
「がぁっ!?」
ガレは意識外からの攻撃に思わず前によろける。僕はそれを見逃さなかった。
「エリースッ!」
『HAAAAAAAA!』
カプリの力を分析したエリースの溜めの一撃がガレの顎にクリーンヒットする。
「ぐがぁぁぁぁぁぁ!!」
殴られた方向に思いっきり吹き飛ばされるガレ。
「お前...俺の能力を利用したな...!わざと壁を殴らせたな...!」
『瓦礫を投げたのは目先の攻撃をする為じゃありません...能力を解除したとき、後ろから瓦礫を当てる為に投げつけたのです』
そう言ってエリースは僕の中に消えた。
僕は吹っ飛ばされたガレに近付き、手を差し伸べた。
「ほら、立てる?」
ガレは一瞬ふらついたが、頭を横に振り、僕の手を取った。
「お前...なかなかやるじゃねぇか!」
ガレは僕の背中をバンバンと叩くと、
「これからヨロシクな!相棒!」
と言って握手を求めた。
「相棒...か。フフ、わかった。今後ともよろしく、相棒」
僕はガレとかたい握手を交わした。
「なかなかの腕前だな」
...いつから見ていたがわからないが、そこにはマッカス、プトレ、ジャンまで僕達の戦いを見ていたらしい。
「ナラク君!凄かったよ!」
「ガレ...頭も良くしないと、この先生き残れないぞ」
「うるせぇよジャン!次は勝つからな!」
そう言って、みんなと一緒にレストランに戻った。
『さて、予定が少し遅れてしまいました。遅れを取り戻すために、休み無しで武器商人の元に向かいましょう』
エリースの声が無慈悲に響く。
「遅れを取り戻すためにって、競争してるわけじゃないんだし...」
『時間は待ってはくれません。この瞬間にも時間はどんどんと過ぎ去っています。早く行きましょう』
「分かったよ...あ、そうだ」
僕はエリースを発現させる。
『何ですか?』
「さっきはありがとう、君の言葉抜きじゃこんな作戦は浮かばなかったよ」
エリースは一瞬呆気にとられたような顔をしたが、すぐにいつもの無表情に戻り、
『...私はあなたです。私の言葉は我が主の言葉でもあります。お礼を言う必要はありません』
そう言って僕の中に消えた。
「まぁ、それでもお礼をいいたくてさ、そんだけだよ」
僕は出口に向かおうとしたその時、
『...これからも精一杯、完璧に我が主に従います。ですから、また頼ってください』
という声が頭に響いた。
「...あぁ、また頼らせてもらうよ」
僕はそう言って下水道の出口のハシゴを登った。
名前:ガレリエ(ガレ)
性別:男
年齢:22
神霊名:カプリ
神霊の姿:山羊のような頭で、かなり筋肉質。足は蹄だが、手は人間の手。
力:かなり強い
速さ:ふつう
精密さ:ちょっと低い
能力:殴った衝撃を好きなタイミングにずらすことが出来る。
いわゆる熱血漢。
声もガタイも大きい筋肉男で、本人自体もそこそこ強い。
が、それ故に頭が悪く、複雑な事になるとよく分からなくなる。
性格も非常にシンプルで、深く物事を考えない。