契約
やっと書き終わりました...!
よし、頑張って完結させるぞー!
あと、アクセスありがとうございます!
魔王を討伐してから半年、僕はキンガで傭兵仕事をしていた。
傭兵仕事と言っても、面倒で誰もやりたがらないような雑用、薬草の納品などの新米のやるような事を毎日していた。
ま、たった半年でベテランを名乗るなんて事はしないけれども、たまに暇つぶしでコッソリとベテランクラスがやる仕事もする訳で...
皆には自分が邪神である事を隠しつつ生きていた。
どうせ言っても信じたりはしないだろうから...
僕がこの国に引っ越してきたのには理由がある。
この国、キンガには奇妙な二つ名がある。
「精霊と住まう国」という二つ名が。
なぜ「精霊と住まう国」という異名があるのか?それは誰も分からなかった。いつの間にかついていた二つ名らしい。
僕はなぜそんな二つ名があるのか、日々考えながら仕事をしていた。
「まずいまずい!寝ちゃった!」
...早めに薬草を摘み終え、草っ原に寝転がりながら考え事をしている内に寝てしまい、いつの間にか夜になっていた。
僕は走りながらどう傭兵仕事の管理人に言い訳しようか考えていた。
いつもの道を通って帰ろうとしたその時、森を見つけた。
「よし、ここは賭けで...」
僕は森の中を突っ切ることにした。
この方角だと、真っ直ぐ行けばいつもの場所にたどり着くはず。
枝や葉っぱが肌に当たる。
風を切る音の中に、何か不自然な音が聞こえた。
何か、土を埋めるような音が。
「...どうせ怒られるだろうし、気になるから見に行こう」
もう僕は管理人に怒られる事を覚悟して、音のする方へと向かった。
「なんだ...?」
暗くてよく見えなかった。
背格好から見て男だ。
男が何かを埋めていた。
穴の大きさから見て、大体大人一人分ぐらい入りそうだ。
僕は何を埋めているのか気になって気になって仕方がなかった。
けれど、その男からただならぬ気配を感じ、その場から離れようとした。
僕は男から目を話さずに後ずさりした。
すると、足を置いた位置には枝があったらしく、パキッと音を立てて折れた。
男がこちらに振り向く。
僕は観念して、男の前に出た。
「...あのー、一体何を...」
と言ったところで雲から月が顔を見せたので穴の中を覗いた。
殆ど埋めてあったが、まだ完全には埋めていなかった。
土のかかってない部分から見える人のような白い肌が月明かりをはね返していた。
「これは...?」
と言ったところで、男から殺気を感じた。
僕は身に危険を感じ、懐に入れている短剣を抜こうとした。
だが、目の前に何かを突きつけられた。
そして、鋭く大きな音が辺りをこだました。
音を聞いた瞬間、僕は目の前が真っ白になった。
「...ん?ここは?」
僕は真っ白な部屋の中にいた。
しばらく前に進んでみると、扉を見つけた。
扉を開けると、そこにはよく分からない形をした黒い何かがいた。
黒い何かは、常に形を変えつつも、どこかこちらを見ている気がした。
「どうぞ、おかけになってください」
黒い何かはそう言った。
すると、さっきは無かったはずの椅子と机が置いてあった。
椅子と机の色も白だった。
「はぁ、どうも」
僕は何が起こったか分からないまま、椅子に座った。
「自分に何が起こったか、分かりますか?」
「いえ、何も?ここはどこ?」
「いくつか質問しても宜しいですか?」
黒い何かは僕の質問に答えなかった。
「質問?」
「簡単なものですよ。それよりも...」
といって、黒い何かは体から紙の様なものを取り出した。
黒い何かは、その紙を見るような仕草をしながら質問した。
「あなたは、運命を信じますか?」
「運命?まぁ、信じる方だと思うよ」
黒い何かは、紙を別の紙と入れ替えた。
「もしそれが悲惨な運命でも?」
「悲惨な運命だったら、どうにかして変えたいものだよね」
「その運命がどうやっても変えられないものだとしたら?」
「運命っていうのはね、変わるものなんだよ。でも、うーん...もし変わらないとしたら、それでも足掻いてみると思うよ」
「それでは、少し趣旨を変えて...」
黒い何かは、体から別の紙を取り出した。
「あなたの想像する『完璧』は?」
「『完璧』?」
「えぇ、何でも構いません。物事であれ、何であれ」
「完璧ねぇ...うーん...あ!イメージとしては『メイド』かな」
「メイド?」
「うん、ご主人様のする事がなんでも分かってて、考えてる事を先回りして瞬時に行動する...それが僕の想像する『完璧』かなぁ...」
「...そうですか。では最後に、これを」
そう言うと、黒い何かは紙をこちらに渡した。
『どんな運命が待っていても、僕は全て受け入れます』
そんな内容の書いてある紙だった。
「サインしますか?」
「これに?」
僕は黒い何かにペンを渡された。
「ふーむ...これも何かの運命かもね」
そう言って僕は紙に名前を書き込んだ。
「...いいでしょう。あなたの覚悟は受け取りました。では近いうちに...」
黒い何かがそう言った途端、目の前が真っ暗になった。
(ここは...?)
目の前が真っ暗だ。
肌がすごく冷たい。
(...体が...動かない!)
必死にもがいてみるも、体はビクともしなかった。
(うおおおお!まだ僕は生きてるぞ!)
しばらく動いていると、目の前が崩れ、光が射し込んだ。
「オオオオォォォォォ!!」
雄叫びと共に、目の前の壁をぶち破った。
「これは...土?」
僕は埋まっている体を掘り起こし、土を払った。
あれからかなり時間が経ったらしく、日は既に登っていて、鳥の鳴く声が森中に響き渡っている。
「...そうだ!あの男!」
僕は見渡して見るものの、男は既にいなかった。
どうやら僕はあのあとに埋められたらしい。
何故気絶したのか分からない。
「うーん...?」
僕は頭に手をやった。
すると、チクッと痛みがした。
「ん?」
僕は額を触る。
肌をなぞっているうちに、痛みの根源にたどり着いた。
僕の額には小さな穴が空いていた。
「うおっ!?」
自分で触ってて驚いた。
まさかあの音が...?
いや、音が穴を開けるわけが無い。
だが、音と何か関係があるのはわかった。
とりあえず管理人のいる酒場へ戻ろう...
「...で、野盗に薬草を取られて、一日中追いかけ回した挙句、転んで頭を怪我した、と?」
「はい...」
キンガの管理人は、ラムライズの管理人とは違って荒っぽい口調にはならない。
「私は別にあなたがどうなろうが知った事ではありません。今すぐ依頼者に謝ってきなさい」
...この、「静かに怒ってる」感じが、別の意味で恐ろしい。
「あいつ、なんてヘマしてんだよ」
「故郷に帰って出直してくれば?」
辺りから馬鹿にするような声が聞こえた。
そりゃそうだろう。こんな薬草摘みで失敗なんて、余程のドジじゃないと出来はしない。
「とりあえず、水くれよ...喉が渇いたんだ」
「水は依頼者に謝ってから、「報酬」として差し上げます」
管理人の冷たい一言に、思わず
「そんなぁ」
と、頭をガクッと下げた。
だが、そんな中にも優しい人はいるもので、
『はい、お水です』
と、テーブルに水を置いてくれた。
「お、ありがとう!」
僕は渡された水を一気に飲んで、
「じゃあ管理人さん!謝りにいってきます!」
と言って、酒場を飛び出した。
「ヘッ、なんだかんだで、あんた優しいな」
「...?なんの事です?」
「なんの事ですって、あんた、あいつに水を出してやってたじゃねぇかよ」
「私は何もしていませんが...」
「え?じゃあ今の水は、一体...?ま、そんな事よりも管理人さんよ、早く水出してくれや」
「水ならもう出しましたが」
「え?でも俺の所には来てねぇぞ?」
「いえ、確かに水入りのグラスを置きました」
「え...?」
「本当にすみません...」
「あらぁ、いいのよ別に!いつも助かってるんだから、たまにはそんな事もあるわよ!」
薬草を納品しているお店のおばちゃんと仲が良くて助かった。
「ま、その分店の物を買っておくれよ!」
「...まぁ、そうですよね。じゃあこのりんごください」
僕は店の中に置いてあったりんごを手に取った。
『そのりんご、腐ってますよ』
「え?何か言いました?」
「...?いえ?何も?」
なにか聞こえたような気がするけど...
まあいいや。
「...あら、このりんご腐ってる。別のものに取り替えるわね」
「どうして分かるんですか?」
「ほら、この辺。柔らかくなってるでしょ?中が腐ってる証拠よ」
そう言うと、おばちゃんは別のりんごを持ってきた。
「はい。4ゴールドね」
僕は4ゴールド丁度手渡した。
「はい、丁度。また買いにいらっしゃい!」
とりあえず謝る事も出来たし、報酬も前払いして貰ったし、家に帰ろうかな...
「はぁー...ただいまー」
僕は1人っきりの家の中にただいまを言った。
そう、1人っきりのはずなのに...
『おかえりなさいませ』
という声が聞こえた。
「...誰だ!」
僕は靴を脱ぎ捨て、短剣を手に持った。
静かに居間への扉を開ける。
そこはいつもと代わりない家具の少なさの目立つだだっ広い空間が広がっていた。
「...疲れているのかな」
そう言って僕は、ソファに腰をかけた。
『肩、お揉みします』
僕は飛び上がった。
「一体誰なんだ!」
そう叫びながら後ろを振り向いた。
そこには、顔も名も知らない女性が立っていた。
『初めまして...と言いましょうか』
「君は...?」
僕の中で、少しずつ何かが起き始めているのを感じた。