第3話
10:15。
パロンは、城の正門前でリオンを待っていた。
「どうしたのかな、待ち合わせは10:00なんだけど…」
昨夜、女の子はデートの時遅れることが多いと言っていた友達の言葉を思い出しながら待つ。
ーー昨夜、寮内食堂
「おいパロン聞いてるのか?おーい」
同期で何かと行動を共にすることが多い、耳にピアスで茶髪を一つ結びしているヴォルフが聞いてきた。
「うん、聞いてたよ。ヴォルフに筋肉ムキムキの彼女が出来たって?おめでとう」
筋肉ムキムキ彼女より僕は明日の事で頭がいっぱいなのだ。
「いやそんな話してないしそんな彼女いらない…」
「女の子の中でも、王室にいる黒髪の子の話をしてたんです。パロンくん。」
これまた同期のマスクマンことポールが教えてくれる。
彼はテトラの弟で、シュピオナージェに入るために頑張っている少年だ。
「ああ、リオン姫のこと?」
教会に行く時に着ていた正装も可愛らしかったがやっぱり、年相応と言うべきか、その…お風呂場での事を思い出してしまった。
「パロンお前、好きなのか。顔がきもいぞ。」
「そして真っ赤ですね?」
好き?…そりゃあ好きだけど…姫を嫌う理由はない。
「なんで赤いんですか?パロンくん」
「それは、その…えっと」
言えるわけがないだろうが。2人が顔を見合わせる。
「とりあえず、俺らに任せておけよ!明日のデートで告白しろ!
王女様は許嫁とかいうのまだ無さそうだもんな!」
「え、あ、はい…」
違う、違うんだよヴォルフ。
僕はただ、姫様を守りたいんだよ。
「パロンくーん!ごめんお待たせ!」
金髪のカツラにピンクのジャンパースカート。
ふわっふわしている。
僕はというと、ただのスーツである。
「いえ、大丈夫ですよ。行きましょうか姫様。
どうぞお手を。」
これも昨日2人に特訓されたものだ。
エスコートの仕方、とか言って。
「ありがとう」
いつにも増して笑顔が輝かしく見えるのはきっと快晴だからかな。
城下町の中心にある大きな柱時計を見るとお昼にはまだ早い。
「少し、お店でも見ましょうか。」
街に出ることが少ない姫様には楽しいのではないかと思ったのだ。
隣国のナーサリー王国程ではないが、この街も色々なお店があるし。
結局、雑貨屋に入ることにした。
あ、この羽がついたネックレス、可愛い。
姫様が付けてる所までは想像できた。
姫様はなにを見ているのだろうか。
店のあちこちを探すと、店員と何か話している。
邪魔をしては悪いし買ってしまおう。
それぞれで気の向くままに買い物を終わらせると、本命であるハンバーグを食べに来た。
「あら、森の中にあるようなお店で素敵ね!行列が出来ているじゃない!私達も並ぶのね?」
「いいえ姫様、予約済みですので大丈夫ですよ。さ、中へどうぞ。」
…そう言えば今日の姫様はやけにテンションが高いような気がする。
注文を済ませ、前菜が運ばれてくると他愛のない話を始める。
「それで、その時ヴォルフが転んで…」
どうしよう、姫様が苦笑いをしている。
いや、というよりあまり話を聞いていないような。
別のことを考えているような。
こんなこと、今まであっただろうか。
「姫様、その…」
「おまたせ致しました、メインディッシュでございます。」
ここで料理が来てしまった。
「うわああ、美味しそうっ」
さっきまでとは違って、目の前のハンバーグに大興奮な姫様。
なんだ、ただ僕の話がつまらなかっただけか…
「んんんんたまらなく美味しいわね!ジューシーな肉汁とデミグラスソースが口の中で絡み合って肉自体の美味しさを引き立たせていて…最高だわ!」
ほっぺたを押さえながらいう姫様は本当に世界一の笑顔で、可愛らしいと思った。
「ええ、本当に美味しいですね。」
「どうしてパロンくんはこのお店を知っていたの?」
「ああ、それは…家族に誕生日のお祝いに連れてきてもらったのです。
貧しい家庭でしたが、10歳の節目として。
あの時も美味しさに衝撃を受けましたが、今回もです。
姫様の笑顔が目の前にあると、また…」
好きな人の最高の笑顔があるのとないのでは違うものだ。
ん?好きな人…?
いや、違う…はず。
「そうなのね、ありがとうパロンくん。また来ましょう!」
うーん。念のため聞いておこう、念のためだ。
「姫様、僕の思い違いならいいのですが、何かありましたか…?
1兵士が聞いていいことではないと思うのですが…?!」
涙が。
姫様の陶器のような肌からガラスのような涙がほろほろと溢れていた。
「え、姫様…?!
ごごごめんなさい僕出過ぎた真似を…!」
どうしよう泣かせてしまった。
なにか拭く物を…勢いで立ち上がってしまった僕を姫様は静かに制した。
「ごめんなさいパロンくん。取り乱してしまったわね。
その…自分にとって身近な人が噂で悪い事を言われているのを聞いてしまったらどうする?」
「悪いこと…ですか。」
なんだろう、例えば裏切りとか?不倫とか?ズキズキする。
頭が痛い。
なにか…僕は忘れているような。
「僕だったら、信じますよその人のこと。だって、本人から聞いたわけじゃないんでしょう?
なら、信じます。大切な人だから…」
姫様ははっとした表情で、また泣いた。
何度も自分を責め、謝りながら。
僕は、何も出来なかった。
ただただ、見守ることしか。
でも、姫様を泣かせた奴は許してはいけないと思った。
そして、姫様をずっと守っていたいとも。
「姫様。」
僕は立ち上がって、姫様が座っている椅子の前でしゃがみ、彼女の手を取る。
「王家の者には、一生涯仕える護衛、ソシオが1人存在すると言います。
もしよろしければ、僕に姫様を一生涯守ると誓わせてはくれませんか?」
これが、僕なりの告白だ。
「…うん!相棒ってことね!私に勝ったパロンくんがなってくれるなら怖いものなしだわ。
でも…兵たちは私とは最低限しか関わろうとはしないわ。
黒髪の私の護衛になって、あなたの立場は大丈夫なの…?」
「髪の毛の色だなんて、関係ありません。
僕はリオン・フィールに仕えたいと思った。だからです。」
「そっか、ありがとう。」
彼女は安心したように、でもどこか寂しそうに笑った。
いつか彼女の憂いを晴らさなくては…
「それじゃあここまででいいわ。兵舎は向こうでしょう?
今日はありがとうね、パロンくん!」
城門前で姫様は言う。
「いえ、こちらこそありがとうございました!それじゃまた!」
兵舎に向かって歩きながら改めて考える。
ヴォルフ達が言うように、この気持ちは恋なのだろうかと。
ーー違う。恋ではない。
ただ、自分が仕えるべき主を見つけた。それだけだ。
「…?!」
はっとして振り返る。
今、パロンの横をすり抜けていった2人は…
「スランダー兄弟?!なぜここに…」
兄のルーク・S・スランダーは、帝国最高の軍師であり、弟ギーク・C・スランダーはシュピオナージェの長である。
そんな全騎士、兵士の憧れとも言える2人が何故兵舎の方から来たのだろう?
パロンは本能的に、尾行した。
「ああ…隣…戦争が…われ…るぞ」
「王はなに…パーティ…」
え、戦争…?
断片的にしか聞き取れないが、大変なことを話しているのはわかる。
帰ろう。
僕達の隊長はなにも指示を出していない。
だからまだ、大丈夫だ。
まだ、僕は姫様の傍にいられる。
本当はソシオが決まると王に報告し、バッチを貰うのだが、リオン姫の場合はそんなものはないらしい。
どうせ城の外に出る機会なんて限られているから、だそうだ。
「そういえば来週、王妃の誕生日を祝うのでパーティをするからと言って、オーツク国の王家がいらっしゃるんだよな…」
深呼吸を1つ。どこからか焦げ臭い匂いがした。
読んでくださり、ありがとうございます。
先日初めて、レビューの見方が分かってないだろうと思い見たら1件!!!
感動しましたありがとうございます。励みになります。処女作なので大目に見てね!とか思っていたのですが、皆様の期待に添えるよう、頑張ります。リオン達にプレッシャーをかけていかなくては笑
まだまだ長いと思いますがどうか最後までお付き合い下さい!




