最期の言葉
最期、それは儚くあっけない。
そして、それを悟る時は突然やってくる。それが果たしていつなのか? 知りたいという人はいるのかもしれないが、僕は知りたくない。
人生という、一世一代の大勝負。それがいつ終わる100%の精度で予知できてしまうと、その別れを常に意識しながら生きて行かなければならなくなるから。
何にも思いつかない。でも、何か沸きあがってくるものがある。
身体は動こうとしていない。でも、気付けば足の先が動きたくってうずうずしている。
私は、今が最期だと思う
空が青く、雲は白い
それは、地平線まで途切れはしない
海は平穏を守り、山は一部の隙も見せない
これで、バランスは取れていた
それで良かった
変わる必要はなかったし、変わって欲しくもなかった
そのままで、どこも悪い所なんてなかったはずだ
私は、今から先に旬は来ないと思う
だって、もう頂上を越えてしまったから
あの充実感、満足感を味わってしまったから
御籤で大吉を引けば、後は下り坂しか残っていないだろう
その坂は、知らず知らずの内に傾斜を荒げていく
スピードは上がっていく
もう止まらない
私は、今から先の暗闇を越えることは、多分できないと思う
一度、明るさを体験してしまったから
暗がりを拒む権利を一回手中に収めた事があったから
権利というものを失ってから、抗う気力を使い果たしてしまったから
暗闇は果てしない
我が道の長さと、闇の大きさは正比例する
私は、今からやり直すことなんて、できないだろうと思う
保険をかけているわけでもない
私は手ぶらで、ただここに在るだけ
私という存在は、私にとって重くなった
デコレーションケーキは、分解してしまうとつまらない
苺1つでは、物にならない
新たな道は、今までよりも細かった
木々がうっそうと茂る、あぜ道だった
少なくとも、私の目にはそう見えた
私は、今から最期の言葉を発しようと思っていた
あぜ道を進んで行くと、見晴らしのいい原っぱに出た
そこの空気は美味しかった
気づけば、涙が止まらなかった
この道に進んで良かったなんて一瞬思った刹那、その先が見たくなった
期待してしまった
もう期待なんて言葉、遥か向こうに棄ててきたと思っていた
手元に残っていたのは、ガラクタばっかりだと思っていた
でも、その中にも光を私は見てしまった
それに魅せられて、引き止められてしまった
私は、もう一回人間という奴らに会いたくなった
最期の言葉は、遺せなかった
勢いで書いちゃいました……
とにかく、ご一読、ありがとうございました。