壁ドン かーらーのー?
ある日の放課後。
俺がサッカー部の練習を終えて教室に戻ってくると、ちょうど高瀬が帰り支度をしていた。
「おっつー。今日はもうあがりか?」
「ああ、高瀬こそ今日早くね? たしか陸上部だったよな?」
「陸上部とバレー部」
「は? 掛け持ちしてんの? すげーな」
「別にすごくねーよ。今日はバイトがあるから早目にあがった」
「何のバイトしてんの?」
「コンビニと新聞配達」
「バイトも掛け持ちかよ。お前マジすげー奴だったんだな。なんか見直した」
「だから別にすごくねーって、ってヤベ! バイト遅れるから俺行くわ」
そう言って歩き出そうとした高瀬は勢い余って机の脚につまづき、バランスを崩した。
「オワッ!!」
そして、大きな体があろうことか俺の方に倒れてきた。
「いってー……」
「っ痛ーー」
支えきれずに後ろの壁に背中を打ちつけたが何とか後頭部は打たずに済んだ。
高瀬はというと俺と向かい合う格好でどうにか上体を支えていた。
俺の頭の横スレスレで壁についた右腕がプルプルと震えている。
「やばかったー」
「マジごめん。背中無事か?」
「なんとか」
その時、ガラガラと教室のドアが開く音がして俺と高瀬はそのままの態勢で振り向いた。
「……」
「シューイチ!!」
シューイチは無言のままで再びドアを閉めた。
「シューイチー! お前は何か大きな勘違いをしている!!」
状況が解らずにポカンとしている高瀬を突き飛ばしシューイチを追いかけた。
俺が誤解を解くために大変な努力を要したことは言うまでもない……。