手洗い、うがいは基本だぞ!
「38度2分……」
ある日の朝、ひどい喉の痛みで目が覚めた。
案の定、体温計は結構な高さの数値を示している。
「学校に連絡入れとくから、今日は寝てなさい」
母さんがそう言い残して部屋のドアを閉めた。
「あー、マジで喉痛てー」
俺はふとんを顔の半分が隠れる位まで引き上げ目を閉じた。
頭を動かすと氷枕がタプタプと音をたてる。
それがなんだか心地よくて、俺はいつの間にか再び眠りに落ちた。
「……?」
人の気配で目が覚めた。
「あれ……? シューイチ?」
「おう」
なぜかシューイチが部屋にいて、おれを見下ろしていた。
「何してんの? 学校は?」
時計の針は午後12時半を指している。
シューイチが学校をサボって、まして俺の部屋にいる。
……いやいや、あり得ない。
ああそうか、これは夢だ。
俺は今、夢を見てるんだな。
シューイチの指が俺の前髪をかき上げ、その手がそっと額に置かれた。
「……熱、高いな」
ヒンヤリとした手が気持ち良くて、俺はその手を掴むと自分の頬に押し当てた。
夢って温度とか感じる事できんのか?
「最近の夢ってスゲーのな」
シューイチがもう一方の手で俺の頭をポンポンと撫でた。
「あらシューイチ君、帰るの?」
「アイツぐっすり寝てます」
「そう。昼で学級閉鎖なんて、風邪がはやっているのねー。わざわざ知らせに寄ってくれてありがとね」
「いえ」
「シューイチ君も風邪ひかないでね」
「俺は大丈夫です。それじゃあお大事に」